「丹愛ちゃんを調べさせて頂きましたが、結論から言いますと現段階の診察でわかる範疇では、丹愛ちゃんは人間と同じだと思ってもらってかまいません。耳の代わりにネコミミ、そして尻尾があるだけで、その他骨の形成や内蔵組織など同年代と思われる一般の幼児と差異はありません。血液やDNA検査など結果が出るのに時間がかかる検査の結果待ちなところはありますが、私個人の想像ではありますが、そちらの結果も同じように他の幼児との差異はないんじゃないかなと思います」
検査結果を伝えると先生は丹愛の頭を撫でながら、今日は沢山頑張ったねと丹愛に言い微笑んだ。
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朝から病院に向かい、入口で河野さんと合流して病院で受付をする。突如現れたネコミミ幼女に周囲の患者さん達から多くの視線を感じたが、その視線の主役、丹愛は初めて入る施設にキョロキョロ目線を彷徨わせている。
「児童相談所から参りました河野です。昨日の相談者様の件で伺いました」
河野さんが受付対応してくれたおかげでスムーズに診察室まで案内してもらえることとなった。
診察室に入ると、高齢のベテラン先生が待ち構えており、その後ろには研修生や現職のドクターがその診察風景を学ぼうと立っている。
先生は一目丹愛を見ると一瞬目を見開いたが、すぐに柔らかな微笑みに表情を変えた。
「よろしくおねがいします」
「いえいえ、こちらこそよろしくおねがいします。皆さんの椅子をご用意してますので、どうぞお座り下さい」
先生がそう言うと、後ろに控えていた研修生達がパイプ椅子を広げてくれた。それぞれ椅子に座ったが丹愛は目の前に知らない人が多い為かはよくわからないが、緊張で縮こまってしまっており、手をギュッと握ったまま離さなかった。仕方ないのでそのまま一度抱きかかえ、膝の上に乗せることとした。
「はじめまして。私は小児科医長の
互いに頭を下げ、好大先生は丹愛の方に目を向ける。
「今日はよろしくね。お名前は、えっと。読み方あってるかな? にあ? ちゃん」
「読み方、にあで大丈夫です」
先生に話しかけられ、丹愛はチラッと先生の方を見た。目が合い先生が微笑むと、その微笑みで緊張が少し和らいだのか丹愛は顔を先生の方に向けることができた。
「おお、カワイイお顔してるね。よし、今日は頑張って沢山調べようね」
先生はそう言いながら丹愛の頭を微笑みながら撫で、ある程度撫でるとなるほどねと一言呟き、カルテに何かをメモ書きしていた。
「では早速ですがDNA検査と採血をさせてもらいます。結果が出るまで時間を頂きますので、本日結果は出せないのですが、身体のことを調べるために大切なことなので頑張りましょう。じゃぁ丹愛ちゃんお注射頑張ろうね!」
初めて聞く言葉に頭にハテナマークを浮かべている丹愛は興味津々に着々と準備される注射に目を輝かせている。
「新谷田さん、ギュッとしててあげてくださいね。じゃぁ丹愛ちゃんちょっと痛いけど頑張ろうね」
まだ何が起こるのか分かっていない丹愛だったが、先端の尖った物が自分の身体に近づいていることを理解し、本能的に身体を固く緊張させはじめた。
ぷちゅ
「にゃぁぁぁぁああああああ!!!!」
診察室に丹愛の叫び声が響き渡った。
「はい、終わりだよ。よく頑張ったね」
採血が終わり、先生が優しく頭を撫でるが、痛みと驚きのせいで大泣きしている丹愛は、大粒の涙を流す目で先生を睨んでいた。
よくよく考えると、初めて丹愛の涙を見た気がするな。そう関心しながら丹愛を抱きしめてあげる。ひとまずTシャツが涙やら鼻水やらでぐしゃぐしゃになっているのを感じながら。
しばらく泣いていたが落ち着いたのか、いつの間にか腕の中で丹愛は寝息を立てていた。
「丹愛ちゃん寝ちゃいましたね。今のうちにレントゲンなどしましょうか。チャンスです」
先生がそう言うとどこからともなく案内役の看護師が現れた。
「では、いってらっしゃいませ」
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一日を通し様々な検査を終え、検査対象である丹愛はやりきったような満足気な顔をしながらグッスリとチャイルドシートの中で寝ている。
血液とDNA検査の結果は来週となったが、今日の所見では同年代の幼児と変わらないという言葉は心の中で少し安心を与えてくれた。昨日は丹愛は丹愛だと言っていたが、やはり人間なのかそうじゃないのかという問題は心の中で引っかかっている。
だけど、先生の言葉でその引っかかりが少し解けたような気がした。来週の結果次第ではそれがいい方向で解決するんじゃないかなと期待を膨らませつつ、ハンドルを握るのであった。