助けたネコが「にゃー」と言う   作:ぉけいさん

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机の中も鞄の中も探したけれど上は見ない

 

 

 丹愛がやってきて数日、家の中は以前と比べて騒がしさ、賑やかさがすごく増した。とくに琥珀と二人して遊んだりイタズラをするので部屋の散らかり具合がとんでもないことになっている。

 

 片付けても片付けても、片付けている横で散らかされていくオモチャに遂に私のイライラは爆発した。

 

 

「ごぅるるらぁぁぁ! あんたたち! いい加減しなさい! 遊んだオモチャ片付けなさい!!」

 

 

 突然の怒号に背筋をピンっとさせ、驚きの表情で琥珀と丹愛は私の方を見た後、部屋を一瞥し、目と目で合図したかと思うとそれぞれ散り散りに別れ

 

 

 

 

 逃げた

 

 

 

 

 

 

「あ、待っ! あんた達! 逃げるな!!」

 

 

 斯くして、私か勝手に鬼となった隠れんぼが我が家で開催されることとなった。

 

 

 

 店舗兼自宅ということで、一階部分は居住空間は少ない我が家だが、二階部分は下層に店舗の売り場面積を確保している分、一般家庭よりも広い。寝室を含め物置やら、旦那の父母の寝室だった部屋も含めると6部屋もの隠れ場所がある。さらにそれぞれ大小なりの押入れやクローゼットがほぼあるため、隠れる側には有利な部分が多い。

 

 

 

 だが、所詮は子どもの隠れんぼ。

 

 

 

 

 早く見つけ出して二人のほっぺをムニムニ抓りながらお説教しなければ。これより二階の全部屋をローラー作戦を行います。

 

 

 

 最初は普段寝ている寝室。勢いよく扉をあける。

 

 ひとまず部屋の中を見渡すが、布団を仕舞っているので部屋の中で物陰に隠れるということは不可能。押入れも一応扉を開けて確認してみるが特に変わった様子もない。

 

 予想はしていたがこの部屋はシロ。子ども達はいなかった。

 

 

 次に隣の部屋に入る。この部屋は親戚とかがお客さんが来た時用の部屋らしく、空き部屋となっているのだが、大和くん曰く数回しか使ってるのを見たことがない部屋らしい。

 将来的には琥珀が大きくなったら琥珀の部屋にしようと考えてる部屋だ。

 

 この部屋も寝室同様、部屋全体ガランとしており、クローゼットもなにも入れていないので常に扉を開けており換気させるようにしている。ひとまず部屋を一瞥し二人の姿がないことを確認し次の部屋へと移る。

 

 

 他の部屋より狭いその部屋は、数台の本棚が並べられている書斎となっている。とは言っても本がびっしり並んでいる訳ではなく、CDやDVD、ブルーレイ、ゲームソフト、はたまたフィギュアやプラモデルなど大和くんの趣味のものが飾られている。

 

 そして本棚の対面には作業机がありデスクトップPCやプリンターが置かれていて、見積もりなどの書類がまとめられたファイルが幾らか立てて並べられている。言わばこの書斎は大和くんの趣味兼仕事部屋だ。この部屋自体は私も偶にしか入らないが、大和くんのマメな性格かキレイに整理整頓されている。

 

 この部屋に子どもたちが入った気配はなさそうだ。そもそも隠れるスペースがない。クローゼットや押入れもこの部屋だけないし、部屋全体も見渡せるようキレイに整理されているが物はしっかりあるので、隠れる隙がないからだ。

 

 一応は確認の為に開けた部屋だが、すぐ次の部屋に向かう。

 

 

 私に宛てがわれた部屋。化粧道具が並べられた化粧台や趣味の手芸の為のミシン台。モチョモチョの大きなビーズクッション。あとは私の好きなネコのシリーズ『ネコ娘〜プリティーニャンコ〜』のキャラクター達のモチモチぬいぐるみが棚に並べられている。

 あとは私がここで作業しているときに琥珀がよく遊びに来ているのでその時用の小さなおもちゃ箱を棚の下に並べている。

 

 化粧台の下や作業台の下を探したり、クローゼットの中を開けるがこの部屋にも来ていないようだ。

 部屋を一周して退室。次へと向かう。

 

 大和くんの両親の寝室だった部屋。今は宿主が居らずある程度整理されたこの部屋は、畳が敷かれ昔から使われていたであろう年季の入った箪笥や机、椅子が置かれているため、レトロな雰囲気のある部屋となっている。

 たまに換気の為に部屋の窓を開けたり掃除機をかけにくるが、畳特有のイグサの香りが心を落ち着かせてくれる。

 

 そしてそのイグサの香りに癒やされ油断したのか、私が部屋に入った瞬間に黒い瞳と目があった。

 

「コラ琥珀! 逃げたなぁ」

 

「ごへんなはぁーい」

 

 部屋の真ん中、畳の上で仰向けに寝転んでいた琥珀を見つけ、そのポヨポヨのほっぺたをウリウリと抓んだり潰したりしながらお説教をする。

 

 ある程度ほっぺたの感触を楽しんだ後に開放してあげて、

 

「早く下の部屋を片付けて来なさい」

 

 と一言伝え、片付けるよう促した。観念したのか琥珀は肩を落としながら階段を降りていった。

 

 

「さて、あとは本命の部屋だね」

 

 そう、最後の部屋である物置が本命である。

 物が雑多に置かれ死角が多いこの部屋は隠れるのに最適だ。

 

「さて、子ネコちゃん。いつまで隠れていられるかしらね」

 

 琥珀を見つけことでテンションが上がっていたのか、自分でもよく分けのわからないことを言いながら捜索を始めた。

 

 

「ここか!? ·······いない」

 

「ここね! ······ちがう」

 

「そいやっ! ·······さぁ」

 

 

 

 全く見つからない。物陰や隙間など隠れれそうなスペース全てを見てみたが気配すら感じない。

 

 何で居ないの? 他の部屋で見落としてた?

 

 一旦、冷静になるため部屋から出て一回みた部屋に戻ろうとすると何やら下の階からワイワイと騒ぎ声が聞こえた。

 

(?)

 

 琥珀しか居ないハズなのにと思い、下の階のリビングに戻るとそこには、

 

「な、なんで·······?」

 

 

 先程より比べ物にならないくらい散らかりあげたオモチャ達とそのオモチャ達に囲まれた琥珀と丹愛がキャッキャキャッキャと楽しそうに遊んでいる景色が広がっていた。

 

 

 さっき片付けたのに。そして丹愛はどこに隠れていたか見つけられなかった敗北感で、私は膝からガックリと崩れ落ちるのであった。


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