MAGES.ちゃんと5pb.ちゃん、2人のある日の放課後

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あんまり重要な設定じゃないですが、2人の学生時代のお話のつもりです


少女達を繋ぐヘケト

 「5pb.、そのストラップは何だ?」

 

 彼女が左にかけたバッグの持ち手についていたそれに、私はなぜか引き付けられた。普段なら何気なく流しているであろう、取るに足らないカエルのストラップ。顔は笑っているのか真顔なのかもよくわからず、だらりと垂れ下がった細長い手足が何とも言えない脱力感を醸し出している。正直言って、あまりかわいいとも思えない。

 

 「ああこれ?ギョロかえるンだよ。MAGES.、もしかして知らないの?」

 

 「ギョロかえるン…?知らないな」

 

 「いま大人気のキーホルダーなんだよ。欲しくてもなかなか手に入らないんだから」

 

 「そんなものが人気なのか…相変わらず俗世の人間の考えることは、よくわからないな」

 

 「えー?よく見なよ、愛嬌があってかわいいと思うよ?」

 

 「全くそうは思わないが…ハッ!?そのギョロかえるンというヤツの流行…さては機関の陰謀だな?そいつから発信される電波で、徹底的な管理社会を……」

 

 「はぁ…またMAGES.の中二病が…そうだ!」

 

 「こうしてはいられない、今すぐラボに戻って…」

 

 「ねえMAGES.、駅前のホビーショップに行こうよ!」

 

 「む?まだ新しいプラモデルの入荷日では無いぞ?」

 

 「違う違う、ギョロかえるンだよ、あそこなら、ガチャガチャくらいはあると思うから、MAGES.に買ってあげるよ!」

 

 「な、何?私はそれに興味がないのだが…」

 

 「いつも放課後はラボで過ごしてばかりだし、たまには二人でデートってことで!良いでしょ?」

 

 「デ、デート!?」

 

 「えへへ、決まりっ!」

 

 「ちょ、ちょっと待て、手を引っ張るな!もしもしっ、私だ、5pb.も機関の手にかかってしまったようだ、一応だまされたふりはするが、もし連絡がつかなくなったら…その時は頼む!ルクス・トゥネーヴェ・イメィグ・ノイタミナ・シスゥム…」

 

 

 こうして私は、デートという名の拉致にあった。久しぶりにやってきた駅前にはやはり人が多く、私は2回、人にぶつかってしまった。それなのに5pb.は、臆することなく人をかき分け進んでいく。以前ならば私が先導をしていたのに。やはり軽音部のボーカルになり、少数とはいえ人前で歌う事により、人ごみに抵抗がなくなってきているのだろうか。

 

 「あったあった、しかもまだ売り切れてない!ラッキー!」

 

 「えっと何々…一回200クレジットか…」

 

 「一番人気がこのゴールデンギョロかえるンでね、二番人気がシルバーギョロかえるンなんだ、今回はラインナップされてないけど、ファイヤーギョロかえるンも人気だよ」

 

 「何を言っているのかサッパリ分からない…」

 

 「ゴールデンギョロかえるンはネットオークションで1万クレジットの値段が付いたこともあるんだよ?まあボクも実物は見たことないくらいレアだけど…」

 

 「何?1万クレジットだと?よし5pb.、それを当ててラボの活動資金にするぞ」

 

 「いやいや、滅多に出ない上にガシャポン限定だから1万クレジットもするんだよ?ネットでは売り方が汚いとか言われるほどだし…そもそも今日はMAGES.とデートに来た思い出のために回すんだから、何が出ても売っちゃダメだよ?」

 

 そう言いながら5pb.は100クレジット玉を二枚、ガチャマシンの筐体に入れる。

 

 「さ、MAGES.、回して?」

 

 「あ、ああ…」

 

 ガチャ…ガチャという音が響く。この感触とカプセルが出てきたときの高揚感に代わるものを、私は知らない。先ほどまでまるで興味のなかったギョロかえるンに、いまはワクワクさせられている。ガチャガチャの魔力といってよい。

 

 やがて左下の出口から、黄色のカプセルが出てくる。私はセロテープを爪に引っ掛けてはがした後、カプセルを少しつぶすようにして回し開ける。

 

 「これは…」

 

 カプセルの中で前屈のような姿勢になっていたそいつを広げると、金色の輝きが私の瞳に映った。

 

 「MAGES.、これ、ゴールデンギョロかえるンだよ、すごいすごい!」

 

 「何!?」

 

 5pb.の声で、ショップ中の視線が私たちに向いた。

 

 「何々?」 「ゴールデンギョロかえるン?」 「あの子が?」 「良いなぁ…」

 

 5pb.の目はギョロかえるンに釘付けになっているが、私は一斉に向けられた視線に対して顔が赤くなっていた。

 

 「5pb.、店を出るぞ!」

 

 「え?あ、うん!」

 

 ゴールデンギョロかえるンを胸ポケットにしまい、彼女の目の前に右手を差し出すと迷いなくその手が取られた。私はホビーショップの冷たい床を蹴り、店の外へと駆け出した。

 

 

 所々錆のついた戸が開かれ、ヘトヘトになった少女二人が入る。結局あの後私たちはラボに戻ってきたのだが、よく考えるとあんな逃げるようなことをしなくてもよかったと思う。

 

 「はあ、疲れた…」

 

 「ドュクプェでも飲むか?」

 

 「…一応聞くけど、それ以外の飲み物は?」

 

 「……水ならある」

 

 「じゃあそれで」

 

 5pb.はドュクプェがあまり好みではないらしい。私は冷蔵庫から水とドュクプェのペットボトルを一つづつ取り出し、水を5pb.に投げる。

 

 「よっ、ありがと」

 

 ペットボトルをキャッチした5pb.が、キャップを開けながらこちらに笑顔を向ける。

 

 「それで…そのギョロかえるンさ…」

 

 「んくっ、ぷはぁ、安心しろ、売りはしない」

 

 「本当?」

 

 5pb.が瞳を輝かせる。

 

 「ああ、だが持ち歩くには少々貴重すぎる。だからこれは…」

 

 胸ポケットから取り出したゴールデンギョロかえるンを高々と掲げ、宣言する。

 

 「我がラボの宝として、厳重に保管する!」

 

 「ふふっ、よかったあ」

 

 「5pb.、私はこいつの魅力はいまだに分からない。だが今日、お前と街を歩き、ガチャガチャを回し、意味もなく走った」

 

 「そうだね、疲れたけど、楽しかったな」

 

 5pb.はペットボトルを両手でそっと抑える。次に私が口を開くまでの間、時間の流れが遅くなったように感じられた。

 

 「私も……楽しかった。また機会があれば…一緒に街に繰り出そう」

 

 照れくささからか、最後の方は背中を向けて言ってしまった。しかし5pb.の鼓膜にしっかり声は届いている。

 

 「うん!」

 

 嬉しそうな声が、肩越しに聞こえたから。

 

 




新作に2人が出たらまた何か書きます(言霊)


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