炎導に惹かれて   作:ねをんゆう

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比較的明るめの話です。


20.未来の後悔

朝目を覚ましたら、珍しくノルアはまだ眠っていた。そういえばと思い出せば、彼女は今日は休みを取ってダンジョンに行く予定だと言っていて、そんなことを直前になって言われたものだから、アミッドは合わせての休みなんか取れるはずもない。

先日の1週間の休みでそれなりに仕事も溜まっており、青の薬舗に行くなりしていたこともあって、余裕なんか何処にもない。

一方でノルアの方は自分の仕事はさっさと終わらせているのだから、最初から今日を休みにする予定だったとしても、要領がいいというか何というか……

 

「……行ってきますね、ノルア」

 

寝息を立てている彼女の頭を撫でて、起こさない様に慎重に彼女の上を乗り越える。寝ていたのはいつも通り壁側だったから。立ち上がるとベッドが軋んでしまうので、四つ足になりながらも慎重に……乗り越えようとして。

 

「ひんっ!?」

 

突如として伸びて来た両手に、抱き締められた。

 

「おっ、おっ、おっ、起きてたんですかノルア!?」

 

「えぇ……なんだか、良い匂いがして」

 

「ちょっ、起きたばかりの臭いを嗅がないで下さい!?というか離して下さい!?」

 

「ん……あと2時間くらいは」

 

「あと10分でも遅刻なんですが!?」

 

「アミッドは柔らかいですね……」

 

「ふ、太ってないですからね!」

 

「キスしてもいいですか……?」

 

「な、なな、なんで良いと思ったんですか!?」

 

「耳に、ですよ……」

 

「耳だとしてもですけど!?」

 

「ん」

 

「しました!?今しましたよね!?今キスしましたよね!?」

 

「してないですよ……」

 

「も、もういいから離して下さい!!」

 

顔を真っ赤にしながら、急いでベッドから降りるアミッド。明らかに冷静さを失った様子でノルアの方へ頬を膨らませながら見るが、彼女は布団の中から穏やかな笑顔で小さく手を振るだけ。

そんなことをされてしまうともう怒るにも怒れなくなってしまって、一度溜息を吐いてから立ち上がる。

 

「……無事に帰って来ないと許しませんからね」

 

「アミッドも、頑張ってくださいね」

 

「………」

 

言われなくとも、頑張っているつもりだ。

個人的には。

けれどノルアの様にさっさと仕事を終わらせることは出来なくて、起きた問題に対して即座に解決策を提示したりすることは出来ない。

 

自分の部屋に戻って、着替えと髪を整える。

 

「頑張っては、いますが……」

 

アミッドの本音としては、ノルアに対しての嫉妬がないこともない。そして同時に、彼女に精神的に強く頼ってしまっている自分が居ることも自覚している。

もし彼女が居なくなったら、このファミリアの仕事の全てを1人で指揮していくことになるだろう。そしてもしそうなった時、果たして自分だけで十分な役割をこなせるのか不安で仕方がない。

アミッドが普段からしている業務より、ノルアがしている業務の方が難しくて面倒なのは明らかだ。アミッドの忙しさを理解して彼女が進んでそういった仕事を引き受けてくれているのは知っている、彼女が最近それとなく自分の仕事を分配し始めていることも知っている。

けれどそれをされている団員達の大半は、アミッドと同じことを考えているだろう。

 

(この人が居なくなったら残業時間的な意味で絶対やばい……)

 

幹部陣に配られた引継ぎ書は、それぞれ書物1冊分。業務量自体はそれほど多くないとは言え、引き継がなければならない内容が多過ぎる。その上、どれもこれも交渉でどうにかなる内容ではない。一時的な頑張りで解決出来るようなものでもない。必要な知識も多岐に渡る。

そもそも、この材料とこの材料を組み合わせたら、どうしてその新薬が出来るという前提で計画がここまで進んでいるのか。いやまあ、予知なのだろうけれども。新薬一つを認定するのにどれだけ面倒な手順が必要だと思っているのか。

ここに書いてある全ての途中研究を理解して、完成まで漕ぎ着けろという内容の仕事(研究)まであった。しかも元はその幹部自身が途中で捨てた研究であるというのだから、最早嫌味ではないかというくらい。

他にもギルドや他ファミリアとの連携だったりとか、今後の治療師の立場の移り変わりだとか、掘れば掘るほど色々な課題が出てくる始末。

 

気になって他の団員達に普段どんなことについてノルアに判断を仰いでいるのか聞いてみれば、ちょっともう引いてしまう様な失敗話ばかりが聞こえて来てしまって。どんだけ団員の代わりに地雷処理をして来たのかと。

実際のところ、ノルアが仕事分配をし始めたことを聞いて誰よりも早く顔を真っ青にしたのは、そういった地雷処理を彼女にぶん投げるような形でお願いしていたファミリア中堅の団員達である。責任ある立場を任されながらも、どうしようもないミスをしてしまい、他の幹部達には到底言うことが出来ず、手紙で地雷処理を依頼していた彼等にとっては、ノルアが居なくなるというのは考えたくもない損失なのだろう。

 

確かにノルアが居なくともファミリアの仕事は回る。ただこれまで表面化して来なかった問題が大量に浮き出てくるというだけだ。そしてこれから見込める彼女が仕込んでいた凄まじい利益と、これから生じる筈であった大量の課題と向き合うことになる。つまりは阿鼻叫喚の地獄絵図。

 

「……副団長という立ち位置が、居なくなっても問題ないだなんて。本気でそんなことを考えている様なら引っ叩いてやりたいですね」

 

自分自身、ノルアが居るから安心して今の団長という立場でやっていられるのだから。最初から自分一人であったのならまだしも、ずっと支えてくれていた人が急に居なくなって、それまで通りになんて出来る筈もないのだ。

 

 

 

 

 

「ノルア」

 

「行きましたか?」

 

「ああ、お前の言う通りな。どうやら気付かれてもいないらしい」

 

「良かったです……」

 

ダンジョンの3階層、主となる通路から少し離れたその空間。ノルアはフードとマスクを取り、戻って来た輝夜からの報告を受けて、安堵の息を吐く。

 

「狼男と金髪のエルフ、あとは黒髪のエルフの3人が走って行った。ここから30分後に出発で良いんだな?」

 

「はい、今回の件はタイミングが重要ですから」

 

「異常事態は想定しているのか?」

 

「それも含めて私達がタイミング通りに辿り着くのは確定しています。距離的に多少時間が合わないので、恐らく何かしらの妨害はあるでしょう」

 

「軽く言うな」

 

「あの蔓状のモンスターの根城ですから」

 

「私に火力を期待するなよ、物量で攻められれば守り切れん」

 

「ええ、承知しています」

 

そこから30分、先行した剣姫とヘルメス・ファミリアはそろそろ突入する頃だろうか。

ヘルメス・ファミリアの面々も知らない訳ではないし、何人かは顔を合わせたこともある。特に団長を務めているアスフィ・アル・アンドロメダは昔少し話したことがある。彼等の仲間を見殺しにする様な形になるにも関わらず、救世主面しながらこれから向かうのだから、本当に図々しいと思わざるを得ない。

特にこの件で最も心に深い傷を負ってしまうのは、チラと見た予知の光景的にロキ・ファミリアのレフィーヤ・ウィリディスだろう。ノルアは彼女とはまだ言葉を交わしたことは無いとは言え、その情報だけは知っているし、以前に酒場で顔を見た。あの時の様子を見るに、もう既にまともに会話を出来る関係ではないのだろうが。

 

「ノルア、今日の予定の中にステータスを上げる算段はあるのか?」

 

「……すみません、正直無いです」

 

「それなら両手を縛った状態で先行しろ。モンスターを倒す必要はない、ただし予定の時刻には絶対に遅れるな」

 

「……相変わらず厳しいですね、輝夜さんは」

 

「遠征に行く前にレベルを上げるのだろう、時間がない」

 

「はい、わかりました」

 

正直に言えば、相当キツイ。

そもそも以前にアミッドと潜った際にも片手を縛っただけで厳しかった。人によっては無茶というかもしれない。けれどそんな無茶を出来る機会というものが、安心して無茶を出来る機会というのがこれまでのノルアにはなかった。ダンジョンに潜るにも遠征に着いて行くにも、信頼できる仲間など居らず、むしろいつ背後から刺されてもおかしくない状態。そんな頃と比べれば、心から信用できる輝夜が側に居てくれるという安心感は相当なものだ。だからこうして輝夜からの無茶振りの様な指示にも応える。それも全て自分のために言ってくれていることだと分かっているから。それくらいしなければ間に合わないと、そう言ってくれているから。

 

 

 

 

 

「アミッドさんって、副団長とどういう関係なんですか?」

 

「え?」

 

そんなことを聞かれたのは、アミッドが新人の女性団員と食事をしている最中のことだった。昼休憩を取るために近くの店を紹介して入ったそこで、突然そんなことを聞かれた。

 

「どういう関係、と言いますと……」

 

「いえその、朝アミッドさんが副団長の部屋から出て来たところを見てしまいまして……一緒に寝てるのかなぁと」

 

「う……ま、まあその、一緒に寝ては、いますが……」

 

「付き合ってるんですか?」

 

「つ、つき!?私とノルアは姉妹の様な関係なだけで……!!」

 

「あ、そうなんですね。私まだ副団長と会ったことないので、どういう人か分からなくて。てっきり男性なのかと思ってました」

 

「………」

 

新人とは言え、団員が副団長の顔どころか性別すら知らないというところに少しの問題を感じながらも、アミッドは息を吐く。

しかしまあ確かに、人によってはそう思ってしまうのも仕方ないのかもしれない。この年になって寝床を共にしているとなれば、同性と言えどそういう関係であることを疑われてしまうのは当然であるし。実際アミッドとノルアの距離感は単なる姉妹や女友達であったとしても近過ぎる。

 

(け、今朝なんてその……キス、されましたし……)

 

耳にであるが。

確かに普通の姉妹はこんなことしないだろう。

それも19にもなって、あんなこと。

とは言え、する方もする方であるが、されるがままになっている方も問題である。しかもそれが普通に嫌ではないというところも問題で。

 

「なんか不思議な人ですよねー、副団長さんって」

 

「不思議?」

 

「ええ。だって先輩方も凄く避けてるのに、凄く頼ってるみたいなところあるじゃないですか?全然顔見たことないですけど、存在感だけはあるっていうかー」

 

「……いつも引きこもっている訳ではありませんよ、偶には市場に出て調査もしています。治療の手が回らない時や、緊急の依頼が発生した時、他にも薬材が不足した時なんかもですね」

 

「へぇ、なんか意外ですね」

 

「本当に頼りになる人ですから」

 

そうは言っても、あの日、ディアンケヒトと共にお酒を飲みに行ってから、ノルアは殆ど外に出ることは無くなってしまった。外に出る時には目を隠すのは当然として、フードを被ったり、自分の姿をなるべく隠す様にし始めている。

あの日誰に何を言われて、そうし始めたのかは分からない。けれどそれまではどんな目で見られようとも外に出ていた彼女が自分の身を気にし始めた。否、気にしなければならないようなことを言われたのだろうと思う。

……普通の人間として、普通に混じって生きてはいけないのだと、そう突き付けられてしまったのだろうと思う。

 

「って事はカッコいい系なんですかね、副団長さんって」

 

「え?……そ、そう、ですね。確かにカッコいい女性ではあるでしょうか」

 

「いいですね〜、カッコいい女の人って憧れるんですよ〜。あー、カッコいい大人のお姉さんと結婚したい……」

 

「結婚って、貴女は女性ではありませんか」

 

「ん〜?でも性別とかどうでも良くないですか〜?」

 

「え?」

 

クルクルとスパゲティを巻きながら、新人の彼女はそう言う。新人とは言え年齢はアミッドと然程変わらない。このファミリアで長く働いて来たアミッドと同じくらいの時間を、彼女は別の場所で生きてきた。

 

「ん〜……男性と恋愛するのと、女性と恋愛をするの。何が違うと思います?」

 

「それは……子供が出来る、とかでしょうか」

 

「逆に言えば、それくらいしか違いなんて無い訳じゃないですか?子供を諦めたら、正直相手の性別どっちでも良くないです?」

 

「……そう、なんでしょうか」

 

それは少し極論の様な気もするが、言いたいことはなんとなく分からなくもない。異性を選ぶ意味というか、しかし恋愛において選ぶというのも違う気がするのはアミッドがまだ若いからなのか。損得で語るのは違うような気がどうしてもしてしまって。

 

「私、どうも生まれ付き子供出来ない体質みたいなんですよね〜」

 

「!」

 

「まあそれは諦めてるので別にいいんですけど、個人的に付き合ってて楽だったのは何故か同性だったんですよ。元々子供なんて出来ないのは承知の上だったからかもですけど」

 

「それは……」

 

「男でも女でも、どうせ子供が出来ないなら自分が好きな方と居たいじゃないですか〜。私がオラリオに来たのも、カッコいい女の人を探すためですし〜」

 

「そ、そうだったんですか?」

 

「探索者の女性なんて気が強くないとやってられないと思いますからね〜。父親が村の医者でその手伝いもよくしていたので、治療系ファミリアが丁度良いかなって」

 

それは理由としては不純であるのだろうが、実際この新人の女性、新人にしてはかなり優秀である。多少専門的な話をしても難なく付いてくるし、最低限の器具の扱いは心得ている。何より血や臓物を見ても顔色一つ変えない胆力、これは才能と言ってもいい。そこに彼女の趣味も合わさるのであれば、それは正しく天職と言ってもいいのかもしれない。

 

「団長は好きな人とか居ないんですか?」

 

「え?……好きな方、ですか?」

 

「団長くらいになると有名な冒険者とも面識があるんでしょうし、1人くらい居たりするんじゃないんです?」

 

「それは……」

 

ふと頭を過ぎったのは、神ミアハの顔。

想いを寄せては、いるのだろう。

特別意識しているのは自覚している。

常から女性から人気のある神格者である彼は、むしろ惹かれない方が不思議と思ってしまうくらいの神物だ。自分もまた彼と会う度に不思議と胸を高鳴らせ、会話をするだけで幸福感を得ている事実がある。

 

「も・し・か・し・て、実は副団長のことが好きだったりするんですか?」

 

「えっ?」

 

頭が白に染まる。

 

「いや、割と居るんですよ。同性同士の恋愛を否定する人ほど、実は身近に心当たりがあったり、強い興味があったりとか」

 

「そ、そんなことは……」

 

「でも毎日いっしょに寝てるんですよね?」

 

「そ、それはそうですが……!ノルアと私はその、本当にただの姉妹の関係で!」

 

彼女と自分は、決してそういう仲ではなくて。

 

「団長、そういうのが簡単に分かる方法、教えてあげましょうか?」

 

「そ、そんな方法があるんですか……?」

 

「簡単ですよ。その相手と自分が抱き合ってキスをしている姿を想像してみればいいんです、それも思いっきり濃厚な」

 

「なっ、ななっ!?」

 

「そこで少しでも嫌悪感や抵抗感が出て来れば、それは単なる友愛かもしれません。ただ、嫌ではなく、むしろ求めるくらいであるのなら、その気はあると思います」

 

そんな不埒なこと、そんな、ノルアを汚すような想像、出来る筈がない。しかし新人の彼女は迫るようにして視線を向けて来るし、むしろここでやらない方が怪しく思われてしまうだろう。

 

(あ、あくまで否定するため……純粋な関係だと、証明するためですから……)

 

顔に上った熱を抑えながら、目を閉じて想像してみる。

自分より背の高い彼女に抱かれながら、自分は彼女の顔を見上げている。

 

(……違う、ノルアならきっと)

 

ただ立って抱き寄せるだけなんてしない。

むしろ意地悪をする様に顔を近付けて来て、抱き寄せるどころか抱え込んで来るだろう。こちらが明確に嫌がらない限りは今日の朝のように少し強引に迫って来て、壁とか、ベッドとかを使って、逃げられないように詰めて来て……奪われて……

 

そのまま、されるがままに……

 

「い、いやいやいやいや、いやいやいやいやいやいや……!!」

 

「どうしました?キス以上までいっちゃいました?」

 

「行ってませんが!?」

 

「キスは出来たんですねぇ」

 

「なっ!そ、それは違っ……そ、そもそも私にはミアハ様というお方が……!」

 

「へぇ、団長はミアハ様がお好きだったんですか」

 

「しまっ!?」

 

人は慌てると碌なことにならない。

口が簡単に滑ってしまうし、余計な情報を与えてしまう。

 

「そうしたら今度はミアハ様で想像してみたらどうですか?」

 

「なんでそうなるんですか!?」

 

などと言いつつも、結局は言われるがままに試してみることになってしまうアミッド。

先程と同じように瞳を閉じ、想像を深めて広げて行く。相手は男神ミアハ……彼は一体どういった雰囲気でそういったことをして来るのだろうか。例えばそう……

 

「……………………」

 

「……団長?どうしました?」

 

「……………………………………っ」

 

「ああ、想像してる間にミアハ様の顔が副団長に変わっちゃうんですね」

 

「だからなんで分かるんですか!!」

 

「それくらい衝撃が強かったのかなぁって」

 

ああそうだとも。

彼女の言う通りだった。

ノルアとそういった行為をするという想像自体の衝撃があまりに強過ぎて、逆に神ミアハがそういった行為をするという想像があまりに出来なさ過ぎて、無理矢理想像しようとすると自然と思考がそっちに寄って行ってしまう。

というか、一度してしまうとノルアとのシーンがあまりに簡単に再生出来てしまうのも悪い。そもそもキスに関する知識なんて殆どないアミッド、想像出来るパターンというのが殆どない。強引に抱き寄せられて奪われて、そのまま身体に力が入らなくなるまで好き放題されて……よりによって唯一再生出来るのがそれなのだから、ミアハがそんなことする筈もなくて、解釈違いに拒否反応が起きてしまって。

 

「ちなみに副団長とはどこまでしたことあるんですか?」

 

「どこまでもしてませんけど!?」

 

「手を繋いだりとか」

 

「それくらいは、まあ……」

 

「抱き合ったりとか」

 

「偶には、はい……」

 

「耳とか首にキスされたりとか」

 

「しっ、ししっ、してませんが!?」

 

「ああ、したんですね」

 

「してませんが!?」

 

「多分それ副団長からですよね?なんだ脈ありじゃないですか」

 

「親愛のキスですから!!」

 

「単なる親愛で耳にキスするとか、むしろ気持ち悪くないです?」

 

「家族が頬にキスするとか!そういうのです!」

 

「じゃあ耳じゃなくて頬で良かったと思うんですけど」

 

「〜〜〜!!!」

 

何を言っても打ち負かされる。

悔しいが言葉が出ない。

 

……だって実際、嫌ではなかったし。

もし本当に嫌であったのなら、もっと明確に拒否の反応をする筈で。しかしだからと言ってそれは容易く受け入れられる事実でもなく、足を踏み外せば元に戻れなくなるような恐怖もあって。

 

「全部気のせいです!」

 

「別に良くないです?好きな人が2人居たとしても」

 

「気のせいですから!!」

 

「………」

 

なんだか冷ややかな目を向けられる。

しかし今の距離感がベストであり、これ以上変なものを持ち込みたくないと思っているのも事実だ。そうでなくとも考えなければならないことも多く、こんなことで余計な乱れを生じさせたくない。変に拗れていられる時間も余裕もないのだから、現状を変えたいとはアミッドは少しも思わない。

 

 

「……後悔しないといいですけどね〜」

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