作者念願の1000人まであと100名……!!
それはそうと遂にver2.5来ましたね。
私は八重神子をもとから引くつもりでしたので色々準備をしていたのですが、今になって経験値本が170冊しかないことに気が付いて絶望してます。
そして八重神子引き終わったら、次は2.6の綾人へ向けて石貯めだ……!!
「――――そこで僕たちは足止めを食らったけど、ヤツがここへ向かったから来た。って感じだね」
久劫の話を聞いて、やはり夢の魔神の本体がこの戦場のどこかにいることを確信する。
夢の魔神の本体は一度久劫たちの前に現れた。しかしそこでも自らが戦うような真似はせず、ヒルチャールたちを使役することによって時間を稼いだ。
本人は「力を僅かに奪われた可能性がある」と言っていたが、自身が表立って行動していないことから察するに、誤差のようなものだろうと推測する。
「俺たちは――――」
久劫の説明が一通り終わったのを見計らって、襲い来る魔物たちを避けたり斬ったりしながらこれまでの経緯を話す。
甘雨から久劫の過去の事について聞いたこと、璃月へ久劫の存在が公表されること、そして胡桃に聞こえないくらいの声で岩王帝君が操られそうになっていることを告げる。
鍾離先生の件について久劫へ告げると、久劫はやはりというべきか顔を顰める。
「ヤツが言っていたのは、やはりはったりではなかったか。
……恐らく、帝君がヤツの術中にはまったのは僕のせいだろうな」
「……? どういうことだ?」
久劫の言葉の意味を理解できず、パイモンが彼に問う。
すると久劫は自嘲するように「ハッ」と笑いながら答えた。
「ヤツの術にかかる要因として大まかに二つ挙げられる。一つはヤツの振りまいた能力の霧を体内へ取り入れてしまっていること、もう一つはその霧が体内に存在するときに『心の弱さ』を露呈してしまうことだ」
「心の……弱さ?」
「あぁ。きっと僕が中途半端なところで魔神に敗れ共に地下深くに幽閉されたことで、恐らく帝君は僕が死んだと思い込んだ。
帝君は堅物感は否めないが帰終様と同じく心の優しい方だ。自惚れではないが、『僕を魔神へ差し向けてしまったこと』を悔やんだに違いない。
そしてそのことはいつしか帝君の中で決して消えない『心の弱さ』として残り、ヤツの霧を吸い込んだのちに何かがきっかけでそれが爆ぜた。それが操られそうになっている帝君の現状だろう」
……仮に久劫の仮設が本当だとするならば、俺たち二人はとんでもないミスをしているということになる。
「な、なぁ空、そ、それってもしかしてあの時の……」
パイモンもその事実に気が付いたようで、顔を真っ青にしている。
「凡そ、君たちが僕の面を持っていることから察するに、帝君に面を持って行って「これはなんだ」と尋ねたのだろう」
「ひぇぇぇっ!! 気付かれてたーっ!!」
「何、別に君たちを責めたりはしないさ。君たちはそのことについて知らなかった。意図的にやったのでないのなら、僕も帝君も目くじらを立てて怒ることはない」
魔物をぶった切りながら笑顔で言われてもあまり説得力がないが、とりあえず俺たちに責任を押し付けるような人ではなくて安心する。
まぁ甘雨が惚れてしまうような人格者なのだから、当然と言えば当然か。
「――――ここからは、敵の情報も何も関係ない、僕個人が気になる話なのだが……」
久劫の纏う雰囲気が、少しだけ変わった。
ギラつくような闘争心剥き出しの感じから、何かを憂うような物悲しい感じへ。
「甘雨は、君とはうまくやれているか……?」
久劫は、甘雨の事を妹のように可愛がっていたことはあの時の甘雨の話から推測できる。
だからこの質問は、可愛がっていた甘雨の事を心配しての質問なのだろう。
甘雨は冒険でとても助かっている存在だ。氷元素が拡散する強力な重撃は見事と言う他なく、彼女を怒らせたことは……誤って一度角を触ってしまったときくらいしかない。それも怒るというよりかは注意といった感じだったので、彼女との仲は良好と言えるだろう。
「うん。彼女は、かけがえのない存在だ」
「……そうか。なら、よかった」
鍾離先生程はあるであろう久劫の背中が、いやに小さく見えた気がする。
きっと久劫なりに思うところがあるのだろう。俺と蛍のように目の前で連れ去られた訳ではなく、甘雨の前から突然消えてしまったのだから。
――――お兄ちゃん!!
「……残された方は、そのような表情になってしまうのだな」
「ごめん。不幸自慢をするつもりは……」
「気にするな。さて、情報交換も済んだ。後はこの魔物どもを蹴散らしてヤツを仕留めるだけだ……!!」
久劫が大剣を構えなおし、俺も大詰めだと剣を握りなおす。
「はは、全てが終わった後、君と共に旅をしてみるのも悪くはないのかもしれないな」
「心強い味方は、いつでも歓迎……!」
久劫と俺は、ようやく数が減り始めて終わりが見えてきた魔物の群れへ向かって同時に走り出した。
「……くっ……うぅ……」
「大丈夫よ、あなた。空たちが戦ってくれているわ。アイツなんかに負けないで……!」
雨が屋根を叩きつける音と、外で未だ繰り広げられる迎撃戦の轟音が鳴り続ける璃月のとある一軒家で、始帰は鍾離の手を握り続けていた。
6000年という『長い』という言葉では片づけられない程に永い年月を寄り添い続けた伴侶の額には、止めどなく汗が流れており、用意していたタオルは既に一枚が汗でぐしょぐしょになってしまっていた。
もうじき結婚3000年を迎える超超超熟年夫婦だが、二人の熱は新婚の頃より変わらない。
互いを必要とし、互いに助け合い、互いに困難を乗り越えてきた二人。鍾離が『浮世の錠』を解錠してしまったときは婚約する覚悟でいた始帰も驚いてしまったが、二人は配下全員から祝福されて晴れて夫婦となったのだ。
だからこそ、こんな形で夫を失うなんてことあってはならないと、始帰は握る手の力を強めた。
絶対に、喪う訳にはいかない。
――――コン、コン、コン。
こんな危機的状況で、あるはずのない来客。
冷静な始帰であれば、普通この場で出たりはしないが、愛しい旦那の緊急事態とあって冷静な判断ができなくなってしまっていた始帰は、その扉を開けてしまった。
「どちら様――――ッ!!」
ドカァッ、と無遠慮に入ってきたその人物によって家具はなぎ倒され、中に入っていたものが散乱する。
扉を開けた始帰はその首をがっしりと掴まれ、壁に押し付けられて足をバタバタとさせていた。
「ぐっ、うぐぅっ……!!」
「くはは……いいねぇ、少し奪っただけでこの強化度合い……!」
「あ、なた……は……!!」
「久しぶりだなァ、クソアマ。暫く見ねぇウチに旦那様と惚気て弱ったか? くははっ!!」
久劫と対峙した時とは違い、家へ押し入ってきた不審者――――ダンタリオンは明らかに人体と呼べる肉体を有しており、その表情もくっきりと分かる。
口が裂けているのではないかと思うほど口角を吊り上げ、かつて単独で出会ったら逃げるしか道がなかった『塵の魔神』相手に優位に立てていることに優越感を覚えているのか、その目は凶悪と言っていいほどに歪んでいた。
「だが、今回の我の目的は貴様のような貧弱なアマじゃァねェ」
ダンタリオンは首を掴んでいた始帰を乱暴に部屋の中へ投げ捨てると、ベッドの上で苦しそうに眠っている鍾離へ舌なめずりしながら視線を向ける。
「やめ……て……!」
投げられた衝撃と先ほどまで息が出来ていなかったことにより立てない始帰が、這いつくばってでも鍾離を奪われまいと手を伸ばす。
「さて……そろそろ頃合いか? ――――『起きろ』」
だが、始帰の願いは届くことはなかった。
「くははっ……!! くはははははっ!!! くははははははははっっ!!!
くっははははははははっっ!!! 」
ダンタリオンの言葉に従うように、今まで眠っていた鍾離が嘘のように目を開き、ベッドから起き上がる。
その目にハイライトは宿っておらず、さながらダンタリオンに操られるためだけに生まれてきた人形のような、形容しがたい不気味な感覚が始帰へ襲い掛かった。
「あな……た……」
「くははっ、いいのかァ? 優しい優しい奥様が、お前の事を呼んでるぜ?」
始帰の悲壮に満ちた声にも、ダンタリオンの質問にも、鍾離は答えない。鍾離はただただ次の命令を待つだけの機械に成り下がってしまったのだ。
「さァ、行こうぜ岩王帝君!!
テメェが作った
――――刹那、
「
かつてこの地に天啓を齎していた龍の咆哮が、悍ましい絶望の咆哮へと変わり璃月全体へ響き渡る。
雨雲などは一切が霧散し、夜空に輝く満月が全てを見定めるように輝いていた。
「あれは……」
「まさか……!!」
「嘘だろ……!?」
「帝君!?」
「遅かったか……!」
「どどど、どうするんだ空!」
「あれは……不味いでござるよ姉君!」
環境の変化に敏い万葉が、否、それは上空を見上げていた誰しもが気付いた。
月明りに照らされ、無数に浮かぶ先端のとがった棒状の巨大な何か。
それは、かつて『弧雲閣』という巨大な島を作り上げた岩王帝君の最大にして最強の武器。魔神オセルを海底へ封じ込め、地形そのものを作り上げた自然の驚異そのもの。
――――岩の槍の雨。
「くはは……さァ、リセットだ。帝君さんよ」
その全てが、降り注いだ。
――――岩王帝君、闇落ち……!!
▶ダンタリオンさんのフォントが『源界明朝』に昇格しました。