日曜日にお休みを頂いている間にまたもやランキングに載ったらしく、お気に入り登録者数がついに1000名を突破しました!! ありがとうございます!
評価者数も70名を突破し、驚くことに9評価のバーに色まで付くという作者史上類を見ない伸び方をして驚いております……!!
今回から『後日談 / 流るる星霜、華咲きて』編をお送りしていきますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。
渦の余威戦までは甘雨といちゃいちゃほのぼのしたり、間章に首を突っ込んだりと平和な感じが続きます。
ifルートは後日談編(これも15話程度)が終わり次第上げていければと思っております。
※2022 2/22 ウェンティについて言及していたシーンを一部修正。ウェンティは5000年前にはまだ精霊でした。
※同日 雷電眞の掲げる『永遠』の理念が久劫の例えと一致していなかったため該当箇所を削除。
詳細についてはコメント欄で詳しく解説してくださった方がいるのでそちらへ。
1.朝の一幕
「……おはようございます、兄さま。ふわぁ……」
「おはよう甘雨。
はい、これ今日のお弁当だ。それと朝ごはんはそっちに準備してある」
「ありがとうございます兄さま。……いただきます」
帝君との『契約』もなくなり、魔神の脅威が過ぎ去ったからと言って僕の朝が遅くなるわけではない。
甘雨の話によれば1000年以上もダンタリオンと共に封印されていた僕だが、体に染みついた生活習慣というものは変わらないために朝は日の出より前に目覚める。
それに、近いうちに行われる海灯祭の準備と、オセルが封印されたことに腹を立てたあの『
平和になったというのに朝早くから起きなければならないということに、最初こそ僕の中で不満が溜まっていくと思われたが、別にそんなことはなかった。
「んふ……やはり兄さまの作る料理はとても美味しいです♪」
「そうか。ありがとう……いただきます」
僕の作ったご飯を食べてほにゃっと表情を綻ばせる甘雨を見ていれば、不満など溜まるわけもなく。むしろ毎日朝早く起きたいという願望までもが芽生えてしまった。
……甘雨の為ならば何でもできる、という気になってしまうのは、空とパイモンがこそこそと話していた『惚れた弱み』というやつなのだろうか。
どちらにせよ、何でもできるというのは事実に変わりはないのでそういうことにしておこう。
「あ、そうでした兄さま」
「ん? どうした?」
「海灯祭、留雲借風真君の所へ行った後、一緒に回りませんか?
昔みたいに、一緒に回りたいです」
「そうだな。僕の感覚だとそんな昔じゃないけど、1000年も経ってるしな。一緒に行こうか」
「はい! ありがとうございます」
まぁ、夜叉の視点から言ってしまえば海灯祭はそんなに好きではない。むしろ嫌いな傾向にある。
こればかりは仕方のないことだが、岩王帝君の作った街でお祭りなんかが行われていれば、封印されていても外の様子がなんとなく分かる魔神共は良く思わない。
その感情が外へあふれて妖魔や魔物が活発に動き回るのだ。
我々夜叉はその対応に追われて、祭りの期間中は四六時中敵と殺し合わなければなくなる。海灯祭は岩王帝君が生み出した祭りではないからか、魈の当たりが特に強かったなという印象だ。
甘雨と一緒に回って甘雨が眠りについたら魈の手伝いに行くことも視野に入れておこう。
1000年も経って、もう残っている夜叉は魈だけとなったと聞いた時は驚いた。一人でずっと璃月を守ってきた魈に、祭りの期間中の大変な時期くらいは楽をさせてやるべきだろう。
「そうそう、甘雨、お前は本は読むか?」
「いえ……普段はあまりそのような時間が取れないので……ごめんなさい」
「そうか。いや、謝ってほしい訳ではなくてな。以前に本屋に行ったときに稲妻から輸入された本を見つけたんだ。
稲妻が鎖国してるから珍しいよ、なんて店の人が言うから買ってきたんだが、」
「む、『八重堂』……? もしかして、神子さんの出版社?」
「……? その神子っていう人が僕には分からないが、それより稲妻が鎖国してるって聞いて驚いてな……眞さんはどこかに頭でもぶつけたのか……?」
『小さなものでも変化があることで、永遠は保たれる』という事を語っていた雷神が他国の文化の一切を否定して鎖国を行っているとは考えにくいことだが、まぁ、彼女も『変わった』のだろう。
「あっ、兄さまにはまだ話してませんでしたっけ……先代の雷神は既に亡くなっています……」
「っ……! そうか……つまり、今の雷神は……影ちゃんになるのか……?」
「空さん曰く、そうらしいです。少し前までは『目狩り令』を行って民衆から神の目を徴収したりしていたそうですが、空さんが解決したらしいです」
「本当に何者なんだ空は……でも、そうか……眞さんは亡くなったのか……」
せめて最期に一目でも見ておきたかったが、それももう出来ないとの事。
僕が稲妻へ赴いた時に良くしてもらったり、璃月へ来たときはよく話をしたりしてくれたいい人だった。
そして、今の雷神は妹の影ちゃんに変わったと。
確かに、性格も姿も殆どが似通っていた双子ではあったが、掲げる『永遠』の形がいつも眞さんと相反していたから、将軍の座について鎖国やその『目狩り令』を行っていたのも頷ける。
今度空に頼んで稲妻に連れて行ってもらうのもいいかもしれない。
1000年ぶりに影ちゃんに挨拶とかもしたいしな。
あぁいや稲妻には確か……だが顔くらいは見せるべきか。仕方ない。
ちなみにだが、風神とはもう会ってきている。初めて酒を片手に璃月へ突撃してきた時から変わらないようで安心したというか不安になるというか、複雑な気分だったが、僕の姿を見て心底安心したような顔を見せたのを見てパイモンが驚いていたのは記憶に新しい。
……結局あの後二人で酔い潰れるまで飲んで、甘雨に連れ帰ってもらったんだっけか。本当に甘雨には頭が上がらないな……。
「兄さま? やはり眞さんが亡くなったのは気の毒ですが、そう俯かないでください」
「え……? あ、あぁ、そうだな。心配かけてごめんな」
恥ずかしさで顔が赤くなってしまいそうだったので顔を俯かせたが、甘雨には違う意味で認識されたようだ。確かに眞さんが亡くなったのは悲しいけれど、なんか、こう、まだ若干気配があるというかなんというか。
「あ、もうそろそろ時間ですね。お仕事に行ってきます」
食事が終わって後片付けをしていると、時計を見た甘雨が出勤の準備を始める。
荷物の入った鞄を肩にかけ、甘雨は玄関の扉を出る――――
「はい、兄さま」
――――前に、扉の前で両腕を開いて前へ突き出してきた。
僕が甘雨の家に居候することになってから、彼女が家を出る際に毎回行っている習慣。
「ん、行ってきますね。兄さま」
「うん。行ってらっしゃい。甘雨」
腕を差し出した甘雨を、更に覆うようにして抱き締める。甘雨の腕がそれに応えるように僕の背中に手をまわしてぎゅっと僕を自分の方へ抱き寄せ、僕も甘雨の頭を二、三度ポンポンと撫でる。
帰終様と帝君との『契約』を破棄した僕は、甘雨と新しい『契約』を結んだ。
それは『恋人になる』だとか、『夫婦になる』だとか互いの気持ちを無視した一方的なものではなく、単純に『兄妹のように思う感情を捨てる』というもの。
僕と甘雨の気持ち次第で、どのような関係にもなれる契約。
けれど多分、口には恥ずかしくて出せないが僕の気持ちが変わることはないだろう。
「夕刻までには終わらせられるように頑張ってきますね」
「じゃあ、晩御飯を作って待ってよう。頑張ってな」
「はい!」
二コリと微笑んで甘雨は家を後にする。
さてと、と一言僕しかいなくなった部屋で呟いてから、部屋の掃除を始める。
家を貸してもらっている身なのだから、家主がいない間にできることを尽くすのは当然の事である。
またしても前に空とパイモンがこそこそ「主夫だ、主夫だ」と言っていたのを僕の夜叉耳が聞き取っていたが、何とでもいうがいい。
これは僕が勝手にやっていることで、それで甘雨が喜んでくれているから毎日やっているに過ぎない。
――――僕は、甘雨が好きだ。
だが、いかに数千年生きていようが色恋の一つも経験していない僕にとっては、これを甘雨に伝えるべきなのか伝えないべきなのか分からなかった。
これに関してはどんな妖魔よりも厄介な問題なのだ。
以前にこのことを帰終様……いや、今は始帰様か、始帰様に相談した時はひとしきり笑われた後に「わたしの時は色々と特殊だったから言えることはあまりないわ」と言われた。なんだか一方的に辱めを受けた気がするが、気にしないでおくことにした。
だが、最後に「思いを告げるには、雰囲気が大切よ」という言葉を残してくれた。
始帰様はそれ以上ヒントを与えてしまったら貴方のためにならない、と言ってそれ以上は語らなかったが、その『雰囲気』があれば甘雨へ気持ちを伝えてもよいという僕の疑問への答えは得られた。
『雰囲気』というのが一体どんなタイミングでどんな時に現れるものなのかは分からないが、ともかく気長に待つのが一番だろう。
「今日でこの部屋を片付ける……!!」
そんなことを考えながら、僕は普段仕事で家に帰る機会が少なかった甘雨の家の部屋の一つである『
寝起きのふにゃふにゃ甘雨を公式が出すのをずっと待ってます。