6人目の仙衆夜叉   作:貮式

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前回の内容が完全に胡桃ファンを敵に回すような内容だったため、コメント欄が阿鼻叫喚でした。申し訳ない。

ちなみに本作品は甘雨一筋なので他キャラとのCPはifでしようと思います。

距離の近い女友達みたいな感じで胡桃は今後も出てくるので、ふ、胡桃ファンの皆様、こっ、殺さないでっ!(懇願)


3.昼の一幕 下

 

 胡桃が帰ってから数時間。

 

 何やら外が騒がしくなったので一旦掃除を終わりにして外の様子をうかがうために家の外へ出る。

 

 

 路地を抜けて大通りへ出れば、一部の人があっちへ走ったりこっちへ走ったりととても忙しそうにしていた。見る限り、一般人は何が起きているのかさっぱり分からないという表情をしていることから、走り回っているのは商人の人たちだろうか。

 

 

「あっ、久劫さーん!」

 

「む? 香菱か。……この騒ぎは一体なんだ?」

 

「えっとね、凝光さんが群玉閣の再建の大詰めに必要な素材を発表したらしくて、それを持ってきた人たちは凝光さんになんでも一つ質問できる権利が与えられるから、みんなそれを手に入れようと急いでるって感じかな」

 

「なるほど。璃月の経済の実権を握っているも同然な凝光殿になんでも質問をしていい、か。

 それは商人からすれば何億モラよりも価値のあるものかもしれないな。やはり、人の扱い方が上手いな。あの人は」

 

 

 聞けば、凝光殿は最初はただのしがない路上販売人だったらしい。そこから七星に上り詰めるには、かなり、否、凄まじい努力が必要だったことは容易に想像できる。

 そして今や璃月の経済にはなくてはならない人物となった。

 

 何億モラも経費から落とすことなく、自身の経験から来る答えを言うといっただけで素材が勝手に集まってくる。この荒業は凝光殿にしかできないものだろう。

 

 

「して、香菱は僕に何か用が?」

 

「あ、ううん。実は新しい料理を作ろうと色々試行錯誤してたら失敗しちゃって……

 そのせいでちょっと火傷しちゃったから、今から不卜廬に行こうと思ってたんだ」

 

 

 不卜廬、と聞いたところで夕飯に入れようと考えていた瑠璃袋がなかったことを思い出した。

 あそこは薬屋だが、瑠璃袋を取り扱っている場所はあそこしかないため、買う際はあそこへ行くのだ。

 

 店長もそれを理解しているために処方箋がなくても僕と甘雨には清心や瑠璃袋を販売してくれる。

 

 

「僕もついていこう。丁度夕飯に入れようとしていた瑠璃袋を買わなくちゃいけなくてな。

 ついでに、香菱から新作レシピについて色々訪ねたいこともあるしな」

 

「瑠璃袋を料理に……じゃあ今度、甘雨さんにも食べられる瑠璃袋を使った料理を考えてみる!」

 

「それは有難いな。では行くとするか。マルコ……グゥオパー、ほれ」

 

 

 そこらへんを走り回っていたグゥオパーは、僕が手を差し出せば身軽そうにステップした後に僕の頭へ器用に乗る。

 

 ここら辺の性格はあの時と変わっていないなと思いつつ、香菱と共に不卜廬へ向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 グゥオパーと戯れつつ香菱と料理について話し合いながら歩くこと十数分。

 璃月の北側にある睡蓮の広場を抜けた先にある高台に建てられた豪華な薬屋、不卜廬が見えてきた。

 

 

「あっ! ししょー!!」

 

 

 と、隣を歩いていた香菱が玉京台の方にいたピンを見つけ、不卜廬へ続く階段ではない方の階段を駆け上がっていった。火傷は大丈夫なのだろうか。

 

 

「あたしは師匠に挨拶してくるから、久劫さんは先に行ってていいよー!」

 

 

 と階段を半ばまで登った香菱が大声でそういったので、僕は「じゃあね」と香菱に手を振って歩き出す。

 

 

 不卜廬へ続く長い階段を登っていけば、店の入り口……なのだが、店の中から何やら凄く大きな声で話し合う人の声が聞こえた。

 他の客へ迷惑なのでは、と思ったが、その声に心当たりがあることに気付く。

 

 若干低めの男の子の声、特徴的な高い声、そして凛と透き通る女性の声。

 

 

「ふむ、やはり空たちだったか」

 

「あっ、久劫! どうしてここに?」

 

 

 僕がここへいることが不思議だったのだろう。パイモンは顎に手を当てて疑問を浮かべる。

 

 

「今日の夕ご飯に使う瑠璃袋の調達にな」

 

「そうだったのか! あっ、でも……」

 

 

 別に隠すことでもないので正直に伝えると、パイモンは視線を泳がせながら隣で立っていた申鶴へ目をやった。

 彼女の口元から漂う薬剤の匂い、カウンターに広がっている薬剤がのっていたであろう紙。それらを見ればパイモンが何を言いたいのかはある程度予測ができた。

 

 

「久しいな、申鶴。あの時以来か」

 

「ああ。主があの夜叉だと知ったときは驚いたが、同時に納得した。

 そして……その、すまない。ここの清心は我が殆ど食してしまった……」

 

「ふむ、そうか。謝る必要はない。僕が野外で調達してくれば済む話だからな」

 

 

 僕が璃月港に来る前に仙人たちと会ったとき、留雲借風真君が言っていた弟子というのは、もしかしなくとも申鶴で間違いないだろう。

 

 大方、港に来てまで凡人である彼女が薬剤に拘るのは、本当に璃月港に永住するか決めかねているからだろう。

 

 しかし、これに関しては僕が口をはさむことではないだろう。

 第一、昔から身分を隠して璃月港で暮らしていた僕の助言などしても無駄だろうし、本当に彼女がそう思っているのかも分からない。

 

 

「久劫と親しげに話してるぞ! やっぱり仙人なんだ!」

 

 

 パイモンが何やら勘違いしてそうだったので、正してやろうと口を開きかけたが、

 

 

「店の外から何やら話し合う声が聞こえると思ったら、あなたたちでしたか」

 

 

 店の外から僕たちと同じように入ってきたのは、店主の白朮。

 ……しかし、傍らに連れていると思っていた七七の姿はなく、どうやら彼一人で外出していたらしい。

 

 曰く、凝光殿から大量の傷薬を仕入れてほしいと依頼があったらしく、今から出発するところらしい。なぜ傷薬が必要なのかは明かしておらず、顧客の事情に深追いはしない白朮もそれ以上は詮索しないようだ。

 

 

 十中八九、あの渦の余威(厄介な嫁)の関係だろう。

 

 

 僕はもう直接甘雨からそのことについて知らされている。

 しかも、凝光殿からの伝言で僕と甘雨は決して戦闘には手を出さず、遠巻きに見守っていてほしいとのこと。

 

 理由は聞かなくても分かる。璃月の仙人たちに人だけでもどうにかなる、という事を知らしめるためだろう。

 

 しかし本当に璃月が滅びそうになれば大人しく負けを認め、仙人へ助力を求め、璃月の実権を仙人へ引き渡す。言わずもがな、その時白羽の矢が立つのは僕か留雲借風真君であることも甘雨から聞いている。

 

 

「白朮殿、七七の姿が見当たらないようだが?」

 

「おや久劫殿。それがですね、凝光殿が私から七七を借りていきましてね。ですので、今現在不卜廬はかなりの人手不足でして……。

 どうです久劫殿、それに旅人さんたち。ここで働いていきませんか?」

 

「あぁー、悪いな白朮、オイラたちは他にやることがあるんだ。

 そうだ! 白朮、久劫、お前らは「鳴霞浮生石」って聞いたことあるか? っていうか、久劫は仙人だから知ってるよな?」

 

 

 パイモンが露骨に話題を逸らした。

 しかしそうか、七七はいないのか。ここへ来るたびにトコトコと寄ってきて可愛がっていたのだが、仕方がない。

 

 

「群玉閣の再建に必要なものでしょうか? 確か、古い文献に記されている空を飛ぶ巨大な岩石でしたね……。

 しかし、書物が確かならもうそのほとんどが採掘され、ほぼ残っていないと思います。これに関しては、飛雲商会、否、ここにいる仙人様の方が詳しいかもしれませんね」

 

 

 白朮がこちらへ話を振ってくる。確かに、そんな摩訶不思議な岩石を求めるのなら、僕に話を振るのが正解と言えよう。

 

 実際、僕の洞天に二つほど使われていないものがあったはずだ。

 かつてまだ僕の名が隠されていなかった太古の時代、洞天を形作るために『鳴海栖霞真君(なるみせいかしんくん)』と共に探し当てた三つの『鳴霞浮生石』。そのうち二つは彼女の善意により僕の洞天へ。そしてもう一つはコレクターだった彼女が引き取った。

 

 空たちを僕の洞天へ導くのは簡単だ。

 

 何せ、この一週間のうちにそこへ行ってきた際にはどこも荒らされた形跡もなく現存していたから。

 魔物も住み着いておらず、仕掛けた装置から何まで全てが当時のまま残されていた僕の洞天は、彼らにとってとても都合のいいものだが。

 

 

 

 

 

「僕からは、口を噤ませてもらう。

 仙人が簡単に協力してしまえば、凝光殿が目指す『人の時代』には到底辿り着かないだろうからな

 

 ……何とでも言ってもらって構わない。だけど僕は、一般人として暮らし、仙人としては見守るだけと決めたんだ」

 

 

 

 

 

 

 そんな僕にパイモンは、不満や暴言を吐き捨てるわけでもなく「そうだよな……オイラたち、頑張るぞ!」と空と自らを鼓舞した。

 

 

「じゃあ、申鶴にも頼るわけにはいかないよな。じゃあな申鶴! またどこかで会おうぜ!」

 

 

 が、誤解を解くのを忘れていた。

 

 申鶴はなぜ置いていかれようとしているのか分からず、困惑の表情を浮かべている。

 

 

 

「あー、パイモン。申鶴は仙人ではなくて、仙術を学んだ凡人だ」

 

 

 

「そうか! なら一緒に行こう……って、ええええええええっ!!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 治りかけていた鼓膜が、再び破れそうになった。




やっと不卜廬の二人を出せる!!

ちなみに七七と久劫との接点を作り出すために、七七が封印された時期をズラすことになりますので、よろしくお願いします。




if編のアンケートを設置してますのでご回答よろしくお願いします!
投票数の多かったキャラクターからifを投稿しようと思ってます。

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