6人目の仙衆夜叉   作:貮式

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評価をしてくださった方もありがとうございます! この場を借りてお礼を……


3.邂逅

 

 天衡山に到着した俺とパイモンと甘雨の下に広がっていたのは、数百人規模の千岩軍の軍勢と、その千岩軍と同等か、それ以上の規模を誇る魔物の軍勢の戦闘だった。

 

 

「お、おい! いったい何が起きてるんだ!?」

 

「近年、層岩巨淵にて異常事態が発生していたのは、お二人もご存じですよね」

 

「うん。璃月港でも失業者の人を沢山みたからね」

 

「それが原因かは定かではないのですが、層岩巨淵から今見ていただいている通り、大勢の魔物が璃月港に向かって攻めてきているのです。

 急なお願いであることは承知です。空さん、どうかご助力願えないでしょうか?」

 

 弓矢に氷元素の力を込めて、魔物の軍勢のちょうど真ん中辺りに打ち込みながら甘雨は俺たちにそう聞いてきた。

 

 甘雨がいるのなら、仙人を呼ぶことは容易いはずだ。

 しかし、この場には甘雨以外の仙人はいない。つまるところ、この魔物の侵攻は是が非でも人類のみの力で撃退したいということだろう。

 

 岩王帝君が事実上死に、凝光が『人の時代』を宣言した一年後に「すみません助けてください」では、璃月人、特に七星は仙人に愛想を尽かされてしまい、その立場を失ってしまう。

 

 

 ……そして何より、

 

 

「璃月港を守るためだ! オイラたちは喜んで協力するぜ! な、空!」

「うん!」

 

「ありがとうございます。 空さん、パイモンさん!」

 

 

 狙撃手として天衡山から狙い撃つ甘雨から感謝の言葉を受け取り、パイモンと頷きあって俺は今まさに璃月港の命運をかけた戦いが巻き起こっている戦場へと飛び降りた。

 

 

 

(空さんが持っていたお面……やはり、久劫(クゴウ)兄さまの『彝面』……でしたよね……)

 

 

 

 ちらりと後ろを振り返った時、やはり甘雨は思いつめたような表情をしていた。

 

 

 羅刹大聖、訪凞、彝面。

 

――――層岩巨淵付近で封印した魔神の怨嗟によって生じた妖魔を退治するために向かった彼は、そのまま戻ってこなかった――――

 

 

 何か予感めいたものを感じざるを得ないが、その事について深く考えるのは今目の前で起きている問題を処理した後。

 

 大丈夫。ヒルチャールやアビスたちなら既に一年以上続いている旅の途中で何度も何度も倒している敵だ。時には仲間に助けられたときもあったけれど、若干だが力を取り戻しつつある俺なら、このくらい大丈夫なはず!

 

 

「空、来たぞ! 目の前からヒルチャール暴徒だ!」

 

「うん、わかってる!」

 

 

 普通のヒルチャールより体格は大きいが、ヒルチャール岩兜の王よりは小さい。粗悪で無骨な大きい斧を手にしたヒルチャールは、ヒルチャール暴徒に他ならない。

 

 ヒルチャール暴徒は、普通のヒルチャールより筋力は遥かに上だが、その筋力を殆ど巨大な斧を振り回すことに使ってしまっているので、斧の攻撃さえ対処できてしまえば対応は簡単だ。

 しかし、攻撃タイミングを一手でも読み間違えればあっという間に重症患者になってしまうだろう。

 

 慎重に見極めて、安全に倒――――って、え……?

 

 

「おい! このままじゃ真っすぐ璃月港に行っちゃうぞ!」

 

「まっ、待てっ!」

 

 

 俺に攻撃を仕掛けるかとばかり思っていたヒルチャールは、吸い寄せられるように璃月港へと向かって行ってしまう。

 

 璃月港に巨大な地脈鎮石でも現れたのか? それともアビス教団が裏で糸を引いているのか?

 

 疑問は尽きないが、取り敢えずこのヒルチャール暴徒を倒すことが最優先だ。

 自分に背中を見せているのなら、斃すことは容易だ。がら空きの首筋に刃を当てて斬るだけでヒルチャール暴徒は物言わぬ死体へと成った。本当に、呆気なく。まるで抵抗の意思も見せず。

 

 

 この感情はなんだ?

 

 ヒルチャール暴徒を倒したことによる安心感? 達成感? いや、違う。

 

 

 これは、違和感だ。

 

 

 

 戦場を見れば、こちらに向かってくる魔物の殆どが目の前にいる千岩軍を無視して璃月港の方角へ突っ込んできている。

 

 それはヒルチャールだけに留まらず、スライムに、裏で糸を引いているのではないかと思っていたアビスまで、例に漏れず千岩軍を無視して一直線に突っ込んでくる。

 

 

くっ、邪魔だ! どけっ!

 

「っ! させないっ!」

 

 

 ヒルチャールを止めていた千岩軍に、アビスの魔術師が攻撃しようとしていたので、それを横から止める。

 こちらの対処をせざるを得なくなったアビスは、千岩軍へ向けようとしていた攻撃を、俺が突き出していた剣先へ向ける。

 

 俺の剣がアビスの魔術師の放った攻撃を打ち消し、その切っ先はアビスを守っていたシールドを破壊する。アビスは「ふぎゃ」という情けない声とともに地表へ投げ出された。

 

 ……この違和感の正体を突き止めるには、このアビスの魔術師に聞くのがいいだろう。

 

 

「この魔物の軍勢を率いてきたのは、アビス教団か?」

 

違う! 我々はただ逃げてきただけだ! 我々の拠点に突如謎の魔物が現れ、仲間も、地下に蔓延っていた掘削機もすべて切り捨てられた!

 我々はその魔物に斬られぬように、ここまで逃げてきただけだというのに、そしたら今度は人間からも挟み撃ちだ!

 

「それはお前らの普段の悪行のせいだろ!」

 

くっ……私が最後に振り返った時、()()はもう地上へ出て来ていた!

 直にここにも――――っ!! うわあああああっ!! 来たっ、来たぁぁぁぁっっ!

 

「そんな演技をしても無駄だぞ! 今からオイラたちがこの軍勢をすぐに倒し…………え?」

 

 

 俺たちが尋問していたアビスの魔術師の首が、いきなり切り離された。

 

 先ほどまでつながっていた首からは血がドパドパと溢れ、いい日差しを浴びて育っていた草木を赤黒く染め上げていく。

 

 

「ひっ、ひぃぃぃっ!!?」

 

 

 数々の戦闘をともにこなして、多少なり死体に耐性が付き始めたであろうパイモンが完全に腰を抜かしてしまっていた。

 

 

 

 見れば、先ほどまで千岩軍が相手をしていたヒルチャールやスライムたちも、全て死体となって地面に転がっていた。

 

 数百、もしかしたら千匹以上はいたであろう魔物の軍勢が、ものの数秒で全て死体に変わってしまった光景は、はっきり言って異常と言う他ない。

 

 

「お、おい……」

「あれは……一体……?」

 

 

 ざわつく千岩軍。

 誰かがあれは何だと指をさし、畏怖の視線を送り、恐怖の余り武器を向ける。

 

 

 

「アアアァァアァァァァァアァァ……」

 

 

 

 それは、到底『言語』とは呼べない、うめき声だった。

 

 魔物の返り血で真っ赤に染まってしまった衣服を身に纏い、恐らく美しい白髪であったであろう髪の毛も同じく赤黒く染められている。

 紺碧の瞳は赤く充血し、その整った顔には古びた民家のガラスのように(ヒビ)が入ってしまっていた。

 

「かっ、構えろっ!!」

 

「「「はっ!!!」」」

 

 千岩軍の、恐らくリーダーの人がそう命令すると、数百人近くいる千岩軍が一人残らずその人物を取り囲むように槍を構えた。

 

 

 ふら、ふら、と不規則に揺れながら歩く彼(?)の姿は、誰がどう見ても魔物のそれにしか見えず、千岩軍が彼(?)に槍を突き刺すのは時間の問題だろう。

 

 ふと、バッグの中で何かが揺れていることに気が付いた。

 と同時に、鍾離から言われたことを思い出す。

 

 

 そのお面が近い未来、お前の助けとなる場面が来るだろうという予感がする――――

 

 

「空……? はっ、もしかしてあれって……!!」

 

 

 バッグから取り出した『彝面』が、微かに震えている。

 層岩巨淵、羅刹大聖、行方不明、鍾離から聞いた話がここで全て繋がった。

 

 

「あれが恐らく、『羅刹大聖』……!」

 

 

 俺が『彝面』を持って彼に近づこうとした、その時。

 

 

 

「久劫兄さまっ!!」

 

 

 

 甘雨の悲痛な叫び声が、沈黙を貫いていた平原に木霊した。




ここいらで夜叉くんプロフィール

名前:久劫
誕生日:9月5日
所属:璃月仙人
神の目:氷
命の星座:訪招凞王座

岩王帝君が存在を秘匿した、かつての璃月で最強と謳われた仙人。帰終のかつての部下でもある。


別名:訪凞、羅刹大聖、妖滅夜叉

本編のエンディングはどれがいい?

  • 甘雨とほのぼの√
  • 鍾離&始帰の養子√
  • 魈と一緒に治安維持√
  • 申鶴の修行監督√
  • 孤独の旅√
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