※日刊ランキングを見てたら30位くらいにこの作品がいてリアルに「ふぁ」って声が出ました。ありがとうございます。
そのおかげでUAとお気に入りと評価数がめっちゃ増えまして。ほんと、重ね重ねお礼申し上げます。
※昨日アンケートの設置をミスって、投稿してしばらくしてから設置ということになってしまったので、アンケートの締め切りを翌日まで延ばしたいと思います。
皆さま是非とも投票をお願いします!
璃月北西部、絶雲の間。
岩王帝君が直接形作った弧雲閣とは違い、この地は岩王帝君の元素力に反応したのかどうかは定かではないが、切り立った岩山が無数に存在する場所である。
そして同時に、この地は璃月人からは『仙人が住まう場所』として認識されており、迂闊に近づけば不敬とみなされて反撃されたり、場合によっては琥珀の中に封印されてしまうこともある危険な場所だ。
そんな場所を一人、白い髪を後ろで編み込んだ女性が周囲を特に警戒する訳でもなく、優雅に歩いていた。
彼女の名は、申鶴。
数十年前に魔物に身を捧げられ、襲い来る魔物に抵抗していたところを璃月の仙人である留雲借風真君に助け出された陰陽師の血を引く人物である。
仙人の厳しい修行を行い、魔を払う陰陽術に加えて仙術までも使いこなせるようになった彼女は、近く行われる群玉閣の再建に必要な素材の一つである仙家呪符を璃月にいる凝光へ渡すために山を下っていた。
(『人の世に戻れ』……か)
山を下る途中で見つけた清心を渋い顔をしてもしゃもしゃと食べながら、申鶴は出立する前に留雲借風真君に言われたことを思い返す。
申鶴は別に留雲借風真君と離れることが嫌なわけではない。幼少期から仙人の暮らしを営んできた彼女にとっては、出会いも別れも生きている中で確実に起こるものであり、仕方のないことであると割り切っているがために別れに悲しみはあまり感じないが、彼女が危惧しているのは生活の方だった。
先ほども言ったが、申鶴は人間の子であるとはいえ幼少期から仙人の生活をしてきた。
彼女は自身が仙人といるよりも人といる方が良いと考えている留雲借風真君の真意は理解はしているが、『人としての常識』がいささか欠如しているのを自覚している申鶴は、人の世でまっとうに暮らしていけるのか不安に思っていた。
それでも時間は流れる以上、それも仕方のないことだと彼女なりに折り合いはつけたものの、やはり不安は残るものらしい。申鶴の顔にはそれが顕著に……否、育ちが悪い清心を食べて顔をゆがませているだけであった。
(む? あれは……なんだ?)
山を半ばまで下り、岩山と岩山の間にかけられた吊り橋を臆することなく渡っていた申鶴は、一つの不思議な物体に気付く。
かつて仙人たちが行っていたとされる『天の試練』と『地の試練』。
そのうちの一つである『地の試練』が行われていたとされる秘境、『太山府』のすぐそばの泉に、不自然に光り輝く物体と、申鶴の師匠である留雲借風真君と似た気配を放つ青年が横たわっていた。
――――我々の役目は、璃月の民を守ること。
幼いころより教えられた璃月の仙人の役目。自身は仙人でなくとも、そういう考えの人物たちと共に育ってきた申鶴に、見捨てるという考えはなかった。
「息は……ある。だが、凄まじい邪気に憑りつかれているな」
口元に手を当てて息があるのを確認した申鶴は、その人物――――久劫が凄まじい邪気に憑りつかれていることに気付く。
(我一人の力で払うのは……不可能だな。あまりにも邪気が大きすぎる。だが、何もしないよりかはマシか)
久劫と久劫の武器をひょいと女性とは思えない怪力で担ぐと、申鶴はどこか落ち着ける場所はないかと歩き出した。
申鶴一人で完全に邪気を払うことはできなくとも、少しばかり久劫にのしかかっている邪気を払うことができる。少しでもできるのなら、やった方がいいだろう。
と考えながら歩いていると、丁度よく岩壁に動物が掘ったと思しき洞穴が空いており、申鶴はそこへ久劫を担いで入っていった。
幸い、洞穴の中には誰もいなかった。
野生動物がいたとしても仙人として修行を積んだ申鶴であれば軽々と撃退できるが、面倒ごとが減ったと申鶴は担いでいた久劫を優しく寝かせ、改めてその顔を見て驚く。
(顔に、ヒビが……!?)
恐ろしく整った端整な顔には、それらを無に帰すかの如くヒビが入っていた。
稲妻の地下には、かつて栄えた古国が眠っている。その名は白夜国。
そこには未知の元素力に飢えたヴィシャップの始種であるアビサルヴィシャップが闊歩しており、その特殊な水弾を受けると元素力を吸われてしまう。
そして、元素力が無くなった状態でそれを受ければ、今度は代わりに生命力を吸われる。
生命力を完全に吸われてしまえば、その人間は空に返る。つまり死ぬ。
久劫の体は、生命力を完全に使い尽くし、空に返る直前に復活するということを
しかし、それを知っていようが知っていまいが、申鶴の為すべきことはすでに決まっていた。
「『払魔滅殺』、『命心療気』、急急如律令」
仙術と陰陽術を掛け合わせたものを、申鶴はてきぱきと久劫へ施していく。
久劫から感じる邪気自体は先ほどとはほとんど変わらないが、僅かに久劫の表情が苦痛に歪んだものから楽なものへと変わっていた。
(ふむ……効果があったようで何より……だが、我の術でできるのはこのくらいが限度だろう……。
そういえば、師匠の昔話に出てくる帰終様は、帝君の疲れを癒すために“ひざまくら”なるものをしていたと言っていたか……)
表情が和らいだ久劫の顔を見ながら、申鶴はそんなことを考える。
人の常識が欠如している申鶴にとって、
(“ひざまくら”……“ヒザマクラ”……“膝枕”か……?
ふむ、ならばこうして足を畳んで、ここに乗せるのか……? しかし、これでは“太もも枕”ではないのか……?)
申鶴の無意識の暴走を止めるものは、残念ながらこの場所には存在しない。
あっという間に洞穴内で正座した申鶴は、久劫の頭を自らの足の上へ乗せた。
(これで本当に彼の疲れは癒えているのだろうか……? 疑問は尽きぬが……うむ。
……やはり、人肌というのは暖かいもの……だな)
申鶴は物心ついた時から仙人のところへいた訳ではない。漸く物心がつき始め、この世のすべてに興味を抱いていた時期に、彼女は父親のほんのひと時の静かな発狂によって居場所を失った。
仙人に引き取られてから、申鶴は人肌に触れていない。
だから、久劫から感じる人体の暖かさに、彼女は記憶の片隅の片隅、そのまた片隅にある村で生活していた時のことを思い出した。
(“膝枕”というのは、悪くないものだな……)
申鶴の口元から、笑みが零れる。年相応の儚い笑みは、御伽噺に出てくる神女のように美しかった。
(ところで……これはいつまで続ければよいのだろうか……?)
師匠の話の通りに始めてみたものはいいものの、終え方が分からず困惑する申鶴であった。
申鶴の俗世を知らないが故のポン、可愛くない?
まぁ、作者申鶴持ってないんですけど。
本編のエンディングはどれがいい?
-
甘雨とほのぼの√
-
鍾離&始帰の養子√
-
魈と一緒に治安維持√
-
申鶴の修行監督√
-
孤独の旅√