明日ちゃんのセーラー服見ながら気の向くままに書いた怪文書が某雑談版で何故かやたら好評だったんで、ハーメルンで初投稿してみました。
その時の文から加筆修正結構してます。
好評だったらまた書く……かなぁ。わかんね。
「じゃあ、また後で。ゆっくり浸かって温まっておいで」
「うん」
プラチナと一旦分かれ、男湯に入る。今日は待ちに待ったプラチナとの一泊2日お忍び温泉旅行だ。
本当は一緒に入りたかったが……まぁいい。その旅館は予約がいっぱいだったんだ。仕方ない。(チッ)
この温泉旅館は、荒廃したこのテラにおいてもはや希少となりつつある、自然に囲まれた隠れ家的旅館だ。サルゴンの密林のど真ん中にあるし、ここなら誰にも見つかりはしないだろう。
レビューサイトでも
『露天風呂では星の煌めきが綺麗に見えますわ。ここなら星占いもしやすそうね。でも、天球儀は持ち込めないと言われたので星4にするわ。』
★★★★☆
『ここはいい旅館だねぇ。とても気に入ったよ。テキサスも喜んでいたしね。温泉ももちろん良かったけど、何より僕が気に入ったのは遊戯スペースにロクロがあることさ!温泉で温まった手で少し冷たい粘土に触れるとひんやりしていて気持ちいいんだ。のぼせた体と頭をリフレッシュしてくれる。ふふ、たまらないね。この感覚が僕はサイッコーに好きなのさ。陶芸家のオペレーター達には是非ともここをお勧めしたいね。ところで、一緒にきていた僕のテキサスを知らないかい?』
★★★★★
『私が入ったら温泉が蒸発しちゃったんだけど!これじゃお湯に浸かれないじゃない!』
★☆☆☆☆
『それはあんたの体温が高すぎるからだろ』
★★★★★
……なんか知り合いに似た口調の奴が何人かいる気がするが、気のせいだろう。
なるほど、たしかにレビューの通り、露天風呂から見る星がとても綺麗だ。きっとプラチナもこの壁の向こうで星を眺めていることだろう。
1時間ほど経って、温泉から上がった。用意されていた浴衣を着て、キンッキンに冷えたコーヒー牛乳を一息に煽る。ふふ、たまらないね。
暖簾をくぐったところで、マッサージチェアでくつろぎながらテレビを見ているプラチナを見つけた。この時間帯に毎週やっている科学実験番組がテレビには映っている。過激な実験を繰り返しては毎回爆発騒ぎになるので、放送倫理委員会から睨まれているらしいが、司会兼実験進行役のアナティとリーベリのコンビがコアな人気を集めているらしい。以前なんてゲストに喋るペンギンを招き、龍門のマフィアのビルに爆薬を搭載したメカカワウソとドローンをけしかけ、建物ごと消し飛ばしていた。あの回は傑作だったな。
マッサージチェアに近づくとプラチナがこちらに気づいた。
「温まった?」
「ああ、いい湯だったよ。待たせたね」
「私も今上がったところだよ」
「部屋に戻ってゆっくりするかい?」
「そうだね。そうしよう」
そう答え、マッサージチェアから立とうとするプラチナの手を取り引き寄せる。頬が赤らんでいるのは少しのぼせたからだろうか。そのまま手を離さず、私は歩き出した。
少し俯くプラチナのポカポカした手を引き、部屋に戻る途中で遊戯室の前を通りかかった。そこでふと、執務室でアーミヤの目を盗みながら見た、ここの旅館のレビューを思い出した。
「そういえばここの旅館、ロクロがあるらしいよ」
「ロクロ?あの陶芸に使うクルクル回る道具のこと?」
「うん。そうみたい。どう?やってみない?」
「う〜ん、じゃあせっかくだし……」
そうして私たちは遊戯室に入った。
確かにそこには、卓球台やスロットに紛れて、電動式のロクロが一台あった。源石で稼働する窯まである。ていうか違和感すごいな。ご丁寧にロクロのそばには鉢に入った湿り気のある粘土まで用意されている。
「本当にあったね。ドクターはやったことある?」
「前に一度、ラップランドが執務室にロクロを持ってきたことがあってね、その時に一度だけさせてもらったよ」
「え、何その状況」
それは私が聞きたい。あのループス、いきなり執務室にロクロを持って現れたと思ったら、陶芸の素晴らしさについて2時間も力説してきたのだ。とうとう素質の精神破壊が自分に作用し始めたらしい。治療を1ステージ引き上げるようケルシーに進言しよう。
「やってみなよプラチナ」
「うん。やり方、教えてくれる?」
「もちろん。まずこの粘土をだな……」
そういって私は手をプラチナの手のひらに添え、一緒に粘土を捏ねる。プラチナは一瞬ビクッと体を震わせたものの、顔を少し俯かせ粘土をゆっくり丁寧に、まるでこの瞬間を味わうかの様にそっと捏ね始める。
なるほど、たしかにあのレビューにあった通りこれはいいものだ。プラチナの暖かい手とひんやりした粘土が心地よい。プラチナの手は普段あの厳しい弓を引いているとは思えないほど細く繊細で、彼女も立派な乙女であり、可憐な一人の少女であるということを再認識した。
「いい感じに捏ねれたね。じゃあそろそろロクロに乗せて形を整えていこう」
「うん」
「プラチナは何が作りたい?」
「そうだなぁ……その、マグカップとか、どうかな」
「ふふ、お揃いで作るかい?」
「〜〜〜!」
おっと少し茶化し過ぎた様だ。火照って朱みがかったプラチナの顔が一層朱くなる。
ロクロの電源を入れ、捏ねた粘土を載せる。再びプラチナの手を取り、今度は粘土と一緒に包み込む様に柔らかな手を押し当てていく。
しばし無言で時が過ぎた。ふと、プラチナが口を開いた。
「ねぇ、ひとつ聞いていい?」
「なんだい?」
「ドクターはさ、その、なんで今回私を旅行に誘ってくれたの?」
「ああ、そうだな〜。まぁ、プラチナとゆっくり過ごしたかったから、かな」
「またそんなこと言って……。本当は二人きりになって私の正体とか、無冑盟について聞いたりするためだったりするんじゃないの?」
「ハハ、まぁそれもおいおい知りたいけど、今は君の正体や無冑盟についての調査よりも、君自身についてを知りたいね」
「そっか。フッ……前に比べたら乙女心が少しはわかってきたみたいだね」
「そりゃどうも。ほらそろそろできてきたんじゃない?」
二人分の体温ですっかりぬるくなった粘土の形を整え、取っ手を整形してくっつける。
「やっと一つできたね。ふぁ〜。いい感じに眠たくなってきたな」
目の前の乙女はそろそろお眠らしい。
「じゃあロドスに帰ったらもう一つ作ろうか。ラップランドが私の執務室に置いて行ったロクロがある」
整形したマグカップを崩さないようにそっと源石窯に入れる。この火力なら、明日の朝にはできているだろう。
「先に部屋に戻っててくれ。ちょっと売店に行ってくる」
「わかった」
プラチナと一度分かれ、一人売店に向かう。プラチナはあまりお酒には強くない。カシスオレンジのほろ酔いにしておこう。私はカップ焼酎でいいか。
部屋に戻ると、プラチナは窓辺のソファに腰掛けて外を眺めていた。髪が窓から差し込む月明かりに照らされ、輝いている。少しサイズの大きい濃紺の浴衣がプラチナの白磁にように白い肌とコントラストを生み、額縁に入れて執務室に飾りたいくらい絵になっている。
「ただいま」
「おかえり。おや、私にも買ってきてくれたの?」
「もちろん。ほろ酔いでよかったかな?」
「ああ、ありがとう」
プラチナに缶を手渡して反対側のソファに座る。
小さな両手で350ml缶をもち、ちびちびと飲む姿がまた私の胸を刺激する。
自分もカップ焼酎を開け、少しずつ飲む。
しばしの時間が過ぎた。プラチナはすでに顔が朱くなり始めている。
外の景色を眺めるプラチナを見ていると、ひとりでに声が出た。
「……綺麗だな」
「ああ、なかなか綺麗な景色だね。カジミエージュじゃこんな自然滅多に見られないよ。露天風呂から見た星も綺麗だったしね」
「いや、私はプラチナのことを言ったんだ」
「ッ、……ばか」
頬杖をついていた右手で顔を抑えるも、朱に染まった顔を隠しきれていない。
時刻は午後9:30。寝るまでにはまだ少し時間がある。
「トランプでもするかい?」
「それもいいけどさ……、その……」
朱色の頬がさらに真っ赤になっていく。何をモジモジしているのだろうか。プラチナは横目で部屋の中の布団を見る。なんだろう。何を伝えたいのか……ああ、なんだそういうことか。初めてくる部屋だ。一人で寝るのが怖いのだろう。プラチナもまだまだ子供っぽいところがあるんだな。
普段の凛としたプラチナとは違う一面に微笑ましく思い、笑みが溢れそうになるのを堪えようとふと窓の外に目をやると、一際輝く星に目が止まった。
「なんだ、あれ?」
目を凝らしてみると、その星は大きくなっていくではないか。いや、というかなんか、こっちきてね?
轟音と共にこちらに、というか私めがけてその星は飛んできた。
「ドクター危ない!」
プラチナの叫び声で我に変える。そして気づいた。
「くそっ、アーミヤのデスクの中にやりかけの書類全部ぶち込んできたのもうバレたのか!」
そう、この飛翔体こそ、わがロドス製薬CEOアーミヤが保有する地対ドクター誘導弾、CEO砲だ。当たったら死ぬ。
せめてプラチナだけでも守ろうと椅子を蹴り跳び出すが、時すでに遅し。ガラスを突き破ったアーミヤの真っ黒なアーツが私の体を貫いた。視界に驚きで顔を歪めたプラチナが映る。薄れゆく意識の中で、私はなんとしてもプラチナに伝えねばならないことがある。最後の声を振り絞って私はその言葉を伝えた。
「プラチナ……、私のPCの……、『子猫』の写真フォル、ダーだけは……、削除を、頼、む……」
そこで私の視界は暗転した。
人生で初めて小説なるものを書きましたが、なかなかに楽しいですね。
読むばっかりだったけど書くのも悪くない。