「……本日はお招きいただきありがとうございますライドウ殿。【万神連合ネオベテル・ウルトラスープレックスホールド】の幹部の一人として参りました司馬達也です」
【超人 司波達也 Lv45】
「いや、こちらこそ急な招集に答えて貰って感謝するぞ達也殿」
【超人 葛葉ライドウ/風鳴弦十郎 Lv46】
東京都の何処かにあるヤタガラス・クズノハの応接用の屋敷の一室、そこには【16代目葛葉ライドウ】を含む関東ヤタガラスの上役達が集まっており、下座に座る和装の青年──最近作られた謎の組織【万神連合ネオベテル・ウルトラスープレックスホールド】の幹部であり東京きっての武闘派寺院【浄増寺】の長である【司波達也】と相対していた。
……尚、達也こと寺生まれニキは内心で『術的に意味があるのは分かるんだけど、このシリアスな場面で組織名を言うのは恥ずいなぁ』と思っているが、持ち前のポーカーフェイスのお陰で表情には一切出ていないのでヤタガラスの重鎮達に『あんな堂々と宣言するなんて、やはりあの名前には何か意味があるのでは……』とか深読みされていたりする。
「それで今回は我々との会談を希望するとありましたが、こちらとしてはヤタガラスとネオベテルで協力関係を築きたいと思っており、どう協力していくのかを話し合いたいと思っております」
「うむ、近頃の混迷とした状況において協力してくれるのは有り難いのじゃが、失礼かも知れんが我ら【関東ヤタガラス】としては御主達ネオベテルがどの様な目的で作られたのかすら分かっておらんでな」
「然り、お互いどう協力するにしても最低限の信頼は得ておきたい故、まずは御主達の事について詳しく聞きたいのだ」
(うーむ……まあ俺らって側から見ればクッソ怪しい組織だからなぁ。この手の交渉ごとの経験はあんま無いからちょっと焦り過ぎたか)
内心いきなり話を吹っかけたのはミスだったと考えていた寺生まれニキだがやっぱり表情には一切出ておらず、更に高レベル霊能者特有の強者の気配も合わせてヤタガラスの重鎮達から『これだけの霊能者に囲まれても表情一つ変えずに話を始めるとは、やはり噂に違わぬ相当な凄腕』『“あの”【アンデルセン神父】と互角に渡り合ったのも嘘ではなさそうだ』とか思われてたり。
「ところで司波殿、事前にそちらの盟主であるという【博麗神社】の当代巫女も話し合いに参加すると言っておられたと記憶していますが」
「それに関しては申し訳ありません。脇巫女ネ……代表は所用が入ってまだ博麗神社本殿に詰めております」
「では本日は司波殿とのみ話をするという事で……」
「いえ、彼女は用事が終わり次第
寺生まれニキがそう言った瞬間、結界で覆われている筈の屋敷の龍脈が僅かに励起すると同時、誰も居なかった筈の彼の背後に肩に三本足のカラスを乗せた巫女服を着た少女とスーツケースを持った赤髪の男性がいきなり現れたのだ。
それを見たヤタガラスとクズノハの霊能者達は流石に驚くものも直ぐに敵襲と判断して戦闘態勢を取ろうとし……その直前に少女の“規格外な
「この様な訪問になってごめんなさいね、ちょっと面倒な仕事が入ってしまって慌てて来ちゃったのよ。……私が【博麗神社】現当主及び【万神連合ネオベテル】の……まあ代表みたいな事をやっている【博麗霊夢】よ。こっちは私の仲魔のヤタガラスとアカガミ、本日はよろしくね皆様」
『カァー! 当代のヤタガラスも中々良い面構えをしているなー!』
「お初にお目にかかる。俺は博麗神社に祀られし【秘神 カグツチ】の分霊である【神造魔人 アカガミ】だ。今回は博麗神社の現状を説明する為に参った」
「「「「「………………ッ!」」」」」
そうして脇巫女ネキは手早く自分達の説明を終えると、そのまま畳の上に何処からか出した座布団を敷いてから綺麗な正座で座り込むと同時に霊圧を引っ込めた。
その間にヤタガラスとクズノハの霊能者達は一切動かなかったが、これは彼等が優秀な霊能者故に脇巫女ネキどころかその肩に留まっている【ヤタガラス】すらもライドウを含む此処にいる全員を相手取って尚圧倒出来るバケモノであると理解出来てしまっていたからだ……が、彼女が圧を引っ込めて座った事で敵意が無いと判断し、更に
「久しぶりだな
「あの時とは姿が違うんだけど流石に鋭いわね。まあ【
「ええ、今では前世の記憶との折り合いをつけてヤタガラスの技術研究班として働いていますよ……しかし、この屋敷は来客用故に強度は低いとは言え結界に覆われていた筈なのにどうやって入って来たのですか?」
「ああ、ちょっと【龍脈渡り】を使って富士山の本殿から転移して来ただけよ。私を招く気だったから結界にも隙間はあったし、龍脈を介した転移ぐらい大正時代のヤタガラスなら出来た芸当でしょう?」
ちなみに大正時代のヤタガラスが使っていた龍脈渡りは事前に大規模な術式装置を配置した拠点から拠点へ転移するものであり、しかも当時と違って日本の霊地の多くをメシアガイアファントムに奪われた現在のヤタガラスには失われた技術の一つなのだが、それを結界を擦り抜けながら超長距離を転移してみせると言う脇巫女ネキにヤタガラス霊能者達は驚愕の視線を向けていた。
それに加えてライドウが言い放った【八雲紫】は10年以上前に戦後メシア教によって各地の異界に封印された日本の土着悪魔の何柱かを解放・仲魔とし、更にそれを危険視して差し向けられたメシア教の追手を返り討ちにした危険人物としてマークされていた謎の霊能者の名前だった事もあって辺りは俄かに騒めき始める。
『カァー! 騒ぐのは分かるが落ち着けい! ヤタガラスを名乗るならもっとビシッとせんか!』
「まあ、あの時は私も若かったから大分無茶をしたからね。何せ当時は【カグツチ】の封印が緩んでたから、それをどうにかする為にカグツチが封印されている魔界レベルの異界に潜る必要があったから戦力が足りなかったし。……ああ、異界はどうにか攻略して最奥に封印されているカグツチとの話し合いの結果、再封印と私自身がカグツチの正式な巫女になる事で問題は解決したわよ。お陰で霊格もかなり上がったわね」
「我が巫女である霊夢の言う事は本当だ。封印が緩んだ理由は龍脈の活性化と封印自体の寿命、後は戦後のアレコレで日本の霊地が乱れた事だったが、少なくとも霊夢がいる間は本体が暴走する事は無いだろう。その証として分霊である俺は彼女の仲魔となっている」
件の組織の盟主が危険人物だった事や異常な実力を持っている事に動揺しているヤタガラス霊能者を霊鳥の方のヤタガラスが一喝し、多少話を聞ける状態になった所で脇巫女ネキとアカガミが簡潔に博麗神社の過去と現状について語っていく。
……そんな会話のキャッチボールならぬドッジボール気味に話していく脇巫女ネキにポーカーフェイスのままずっと座っていた寺生まれニキは内心頭を抱えたが、同時にその明晰な頭脳は脇巫女ネキの行動が『会議のイニシアチブを力尽くで握る』為だと気付いて敢えて口を噤んだままにしていた。
「成る程、霊夢さんは【魔界帰還者】になっていたという事か。それならそのレベルも頷ける」
「まあ、日本最大の霊山である富士山麓の裏に作られた異界【カグツチ封印地】は限りなく魔界、というか黄泉比良坂に近い場所だったからね。そこを攻略したら嫌でもレベルは上がるわよ」
「ではアカガミ殿と呼べばよろしいですかな? ……【カグツチ】は封印されたままである事を許容しており、更に今後も博麗の巫女が引き継がれている間は富士周辺の霊地の守護に当たるという認識で構わぬので?」
「ああ、その認識で構わんぞ。……元より本体である【カグツチ】は生まれてすぐ殺されて黄泉比良坂に封じられた故、他の神格の様に自分の縄張りを広める気も氏子を増やす気も無く只その神殺しの炎を求められたら振るう程度の意思しか無かったのでな。今は巫女と話して貢ぎ物を貰って分霊を派遣し、更に霊格の高い氏子もそこそこ増えた現状に本体も『ようやくまともに神っぽくなった』と満足しているからな。キチンと祀られていれば十分であるし、何処ぞの天津神国津神みたいに領土拡大なんてやる気は無いしな」
その後は圧から解放されたライドウや長老を中心とした精鋭中の精鋭が、脇巫女ネキ自身に害意が無い事もあって気を持ち直しつつ【博麗神社】と【カグツチ】についての質問を投げかけ、それに脇巫女ネキが答える形でようやくまともな会議に入っていった。
……後、昔脇巫女ネキが【八雲紫】を名乗ってやっていた数々のやらかしは黙認される事になった。まあ被害を受けたのは各地のメシアガイアだったし、解放した悪魔もしっかりとデビルサマナーとして使役する或いは危険なものは全部排除してるし、それによって問題になっていた地方の霊的事件を解決したりもしていたのでお咎めなしとなった感じである。
「……ふむ、とにかく【博麗神社】や【カグツチ】には一切問題なし。むしろ封印が強固になってカグツチ本体との交渉も成立した以上、今後のGP上昇によるカグツチの暴動や富士周辺の霊地の大規模異常は起きないという事で良いんだな?」
「ええ、少なくともカグツチ本体との交渉のお陰で、仮にカグツチを利用しようとする者がいても対処出来るぐらいに封印は強化出来たわ。そのオマケで富士周辺の霊地も安定してるし、GPが上がっても霊災にまでならない様に調整するぐらいは問題ないわよ」
「日本の霊地の要の一つである富士山が問題ないというのは有り難いな。……では本題だが、長年の問題を解決した筈の【博麗神社】が今回新たに【万神連合ネオベテル・ウルトラスープレックスホールド】なんて組織を作ったのは一体何故なんだ?」
((改めてライドウにこの名前を言われるとシリアス感が薄れるなぁ))
そんな大分失礼な事を内心で思っていた脇巫女ネキと寺生まれニキであったが、それでもようやく『本題』と言える会議の内容に入った事で改めて気を引き締め直しつつライドウ達への質問に答えていった。
「それはともかく、組織を作った理由の一つ目は上昇するGPに対抗する為だよ。こう言っちゃアレだけどヤタガラスだけじゃ手が足りてないみたいだし、せっかく身が軽くなった事だし日本最大の霊地を預かる身として自分の治める場所を守る為の手を打ったほうが良いって思ってね」
「……まあ我らの手が足りていないのは事実であるし、各地方の霊能組織が自らの霊地を守る為に戦力を整える事に一々文句を付ける事もせぬ。何処もヤタガラスに態々言う事無くやってる事であるしな。……ただ、それを差し引いても御主らネオベテルの勢力拡大は異常じゃ。今までほぼ繋がりのない霊能組織や企業が短期間であっさりと合流するなど普通ではあり得ん。正直儂は【博麗神社】が言ってしまえば“外法”な方法や国に仇なす目的を持ってで勢力を拡大したのではないかと疑っておる」
(側から見れば怪しさしかない組織だからな。……どう説明するつもりだ脇巫女ネキ)
相変わらず表情には一切出さずにそんな事を考えている寺生まれニキを横に、ヤタガラスの“長老”から鋭い視線を向けられている脇巫女ネキは“ニヤリ”と不敵な笑みを浮かべてみせた。
……ちなみにそんな脇巫女ネキだが『強く当たって後は流れで』ぐらいの気持ちで会議に望んでおり、逆に長老の方は『最悪向こうの機嫌を損ねたのならこの老骨の首一つで許しを請えるぐらいには説得せねば』とか護国ガンギマリな覚悟を決めてるので大分温度差があったり(笑)
「それに関しては私達がネオベテルを立ち上げた二つ目の理由が関わってるわ。……私達は近い未来、この国で
「……それはそちらの達也殿も同じ考えという事なのか?」
「俺を含めてネオベテルの中核メンバーは凡そ【終末】への危機感を持っていると思ってくれて差し支え無い。まあそうでないメンバーもいるがそこは個人差で、組織としては『いずれ来る【大破壊】や【終末】への対処』というのが大目標だ。……ちなみに俺は洗脳されている訳ではないし他の人間を洗脳する事もしていない。なんならアナライズで見てもらっても構わん」
そんな二人の台詞を聞いて長老やライドウを始めとするヤタガラスの霊能者達は総じて訝しげな表情を浮かべた……この業界にはメシア教やガイア教を始めとして『世界が崩壊する!』『人類は滅亡する!』といったお題目を教義に掲げるカルト集団は珍しくなく、更に現在の上昇するGPによる霊的事件の頻出によってそういった組織は雨後の筍の様に乱立してはいる。
だが、そんな連中は嫌という程に見てきたヤタガラス達故、この二人が誇大妄想や意味不明な教義を盲信している訳ではなく
「……つまりネオベテルではGPの上昇によって大規模な霊災が起きると考えていて、それに対処する為に規模拡大・戦力増強やヤタガラスとの協力関係の確立などを行なっていると?」
「規模拡大云々は大体その通りだけど、これから起こりうる【大破壊】は
……【星の大動脈】とは地球上における最大の龍脈である『大陸・海洋プレートの各境界』が複数交わっている地点を指し、基本的に龍脈はこの境界からまるで毛細血管の様に地球中に細かく枝分かれする形で広がっており、それ故に土地の自然的な霊質の強さは境界に近い程に高いとされている。
そして学校のプレートテクトニクスについて書かれている教科書でも見れば分かる通り、日本という国は合計四つのプレートが交わった位置にある国なので霊脈の質も世界的に見て非常に高いのだ。加えて土地の霊的資質を決めるもう一つの要因である『そこに住む人間や文明の霊的歴史』に関しても、千年以上もトップに国の最上位シャーマンを据えているなどの理由でこちらも非常に優れおり、総合的な土地の霊的資質という点において日本という国は世界でも最高峰の立地条件にあるのだ。
「我々は現在のこの国では様々な組織が世界規模の大術式を狙いやすい環境にあると考えている、何せ戦前は水際で国内進出を防げていたメシアガイアファントムなどの勢力が多数流れ込んでいるからな。このカルト連中の何処かが自分達の目的を達成する為に日本の霊脈を利用する可能性は十分にある。現在も日本の霊的中心地である首都東京では複数の組織が凌ぎを削っているからな」
「幸い国としての霊的中心である【皇居】と【やんごとなきお方】は無事だし、そもそもあのお方々には“日本という国体が残っている限り例え怪獣王が東京に上陸しても悪影響を受けない”っていうレベルの“加護”があるけどね。勿論言うまでもなくそれでも完璧とは言えないし、その状態でも霊脈をどうにかする裏技は幾らでもあるから」
尚、二人はこう言っているが根幹には『転生者故のメガテン・ペルソナの原作知識』があり、この情報を中心として現実的に『どんな理由で原作の事件が起こりうるか』を考察・調査した結果がこれらの意見になっている。具体的にはメガテンで何故か日本の東京ばっか滅びてるのは、各勢力が高位の霊地である日本を大規模術式の儀式場や大破壊後の霊的拠点として狙っているからだと考えたのだ。
「……まあ、それにひきかえ我々ヤタガラスを始めとする日本の霊的組織は大分弱体化しているからな……」
「しかし、幾ら何でも考え過ぎでは……?」
「まあこの考えが『考え過ぎの誇大妄想』で済めばこっちとしても有り難いんだけどねぇ。そうなれば只の笑い話で済む訳だし」
……まあ、その辺りの事情は転生者にしか分からないし、二人もそこまで話す気は無いのでヤタガラス霊能者達からの視線は懐疑的なものとなっているが、それでも脇巫女ネキの雰囲気は妄想を語っているだけのソレでは無い事は分かっていたので引き続き会議は真剣な空気で進んでいった。
あとがき・各種設定解説
脇巫女ネキ:交渉戦略は『レベル差によるごり押し』
・尚、どう考えても交渉の戦略とは思えないが、そもそも転生者の事や原作知識など話せない内容が多いのでまともな交渉になれば不利であり、それ故に勢いによって押し切る方がいいとちゃんと考えての事。
・約十年前に【八雲紫】として活動していた時期、なんか『終わりの名を持つ者!』とか言って前世の記憶を暴走させた転生者(メガテン的)を成り行きで共に止めたのが現ライドウとの出会いで、その際に変身の術が解けたので姿は知られていた。
・彼女含むネオベテルでは原作知識を鵜呑みにせずに終末要因の具体例などを調べており、脇巫女ネキは龍脈関連やカグツチの巫女としては無視出来ない【東京受胎】の詳細について自分の担当として主に調べている。
・ちなみにヤタガラスに関しては『せっかくのヤタガラスとの交渉だし高レベルの【ヤタガラス】連れてけば箔がつくでしょう』と言ったノリで召喚していた。
ヤタガラス:箔付け
・脇巫女ネキの個体は悪魔合体の結果作られた分霊だが、今回は本体の【ヤタガラス】から『現在のヤタガラスがキチンと私の名前を使った護国組織として働いているか、外の勢力の視点で見てきてほしい』と言われてるのでちょっとだけ口調が厳しい。
寺生まれニキ:天然スーパーポーカーフェイス
・脇巫女ネキに急な仕事が入ったのは事実だったので事前の打ち合わせはあまり出来なかったが、彼女の思惑を読んで適時フォローを入れるなど頭脳や機転の面でも優秀。
・【終末】に関しての調査はよく壊滅する【東京】についての諸問題や各組織の動向を担当しており、東京の土地の一角を任されている事もあって情報収集にはかなり力を入れている。
・ちなみに彼の造魔である【アーゼウス】は流石にゴツいロボットを連れて行く訳にもいかないので寺の守りに置いてある。
読了ありがとうございました。
今回は思ったより長くなったので分割します。ちなみに星の大動脈云々は【問題児シリーズ】を参考にメガテンナイズした独自設定ネタです。