香川県にある【神樹館小学校】の地域ボランティア活動を行う部活である【勇者部】の部室、そこでは部長である【乃木若葉】を中心とした六人の勇者部部員とその同学年の少女である【木原最愛】が備え付けのソファーに座って向かい合っていた。
……最も室内は小学校のボランティア活動部とは思えないぐらい空気が張り詰めていたがそれもそのはず、勇者部というのは地元霊能組織である【大社】所属の年少霊能者の隠れ蓑となる為の集まり(ちゃんとボランティアもやってる)であり、そんな彼女達が相対する最愛は言わずもがな新興霊能組織【万神連合ネオベテル・ウルトラスープレックスホールド】のメンバーの一人であり今回はお互いの関係をどうするかを話し合う場であるのだから。
「……というわけで、家族会議の結果こっちとしてはそちらと事を荒らげる気は無く、出来れば友好的な関係を築きたいという話に超なりました。ネオベテルの方針としても真っ当な霊能組織とは可能な限り友好的な関係を築く事になってるので」
「あ、ああ……こっちでもあの後【大社】の方で問い合わせて、あの【ネオベテル】という組織は【関東ヤタガラス】と協力関係を結んだ事は確認済みだ。私としてもクラスメイトと敵対したいとは思わん」
まあ、幸いな事に【大社】に於ける地元のフリー霊能者に対する基本方針は『所在と素性を把握しつつ何もしなければ強硬な事は起こさずスルーし、出来れば友好的な関係を築いておく』であり、関東ヤタガラスからネオベテルの情報が伝わっていた事もあって話し合いは穏便に終結しようとしていた。
「ありがとうございます。私達としても無駄に地元の霊能組織と事を構えたくはなかったので。……後、さっき言った通り私の兄も覚醒者で【讃州中学校】に通ってるので超よろしく。基本的な考えは兄も私と同じです」
「それに関しては安芸さんからも話を聞いている。大体木原さんと同じ様な事を言っていたらしいな」
「でも、安芸さんは『顔と口調が怖かったから正直ビビった』とか言ってたけどな」
「そこは超大丈夫でしょう。うちの兄は顔は完全に悪役顔ですけど根がヘタレなので同級生の女性に手を出したりはしませんwww……あ、おいし」
勇者部部員の一人【土居球子】が冗談めかして言った事に対して、最愛は容赦なく通行をネタ的に生贄にする返答で場を和ませつつ、勇者部でありクラスメイトの一人である【上里ひなた】から出されたお茶とぼた餅を食べて敵意が無い事をアピールする(実際美味しかった)
……そうして多少雰囲気が和やかになった所で勇者部部員の一人である赤髪の快活そうな少女──【高嶋友奈】が元気よく手を挙げて最愛に話し掛けた。
「はい! それじゃあ最愛ちゃんも勇者部に入らない? 同年代の覚醒者の女の子って【大社】でも珍しいから仲良くしたいんだよね」
「? 私は一応ネオベテルの所属なので大社に入る気は無いですよ?」
「ううん。大社では無く学校の勇者部に所属してみないかって提案だよ」
「大社がバックにある【神樹館小学校】と【讃州中学校】にある【勇者部】は年少の異能者の受け皿としての機能もあるからな」
「……良くも悪くも覚醒者と愚者では違いがあり過ぎて色々とトラブルの元になりますからね。【勇者部】には覚醒者同士の集まりを設ける事で年少覚醒者のストレス発散などを行うある種の受け皿として機能していると聞きます」
実際【大社】が小・中学校の運営を行っているのは身内の子供、或いは組織で保護した覚醒者の子供に義務教育を受けさせて社会生活を送らせる為というのが大きいのだ。覚醒者の子供だけ隔離する選択肢もあったが、それでは多かれ少なかれ人格が歪んでしまうので子供の時ぐらいは真っ当な社会生活を送らせた方が良いと昔の【大社】の人間が決めた方針である。
……その為、二つの学校の教師には大社所属の人間もかなりの割合で在籍しており、更に前述の理由や愚者と覚醒者のスペック差からスポーツ系部活をやらせる訳にはいかないなどの理由で覚醒者の受け皿の為の部活として【勇者部】を運営したりしているのだ。
「うーむ……ボランティア活動の部活ならまあ別に良いんですが、流石にオカルト関係の仕事をタダでやる訳には行きませんよ? ネオベテル本部からも『命を掛ける仕事だからタダ働きはやめた方が良い』と超言われてますし」
「それなら大丈夫ですよ。私達も部活のボランティアではないオカルト依頼に関しては普通に【大社】から報酬が出ていますから、最愛さんの場合はフリー霊能者への依頼と同じ様に交渉の結果依頼料が決まる形式になるかと」
「作って貰った口座の通帳にゼロが一杯あるのはちょっと怖いですけどね」
「お陰でゲームが買い放題だから別に良いけど……まあ、無闇に使うのは気がひけるわね」
苦笑しながらそんな事を言った勇者部部員である【伊予島杏】と【郡千景】の発言を聞いた最愛は『まあ嘘ではなさそうですね。こんな事で嘘をつく理由も超無いでしょうから疑いすぎでしょうけど』と内心思いつつ、勇者部に入る事のメリットとデメリットを検討し始める。
……尤もネオベテル地方メンバーの『地元霊能組織とは仲良くする基本方針』故、そのメンバーである彼女達と友好を深める勇者部加入は殆どメリットしかなく、デメリットも強いて挙げれば『騙して悪いが』展開ぐらいしか思い付かなかったので直ぐに答えは出たが。
「まあ私としても同年代の異能者とは仲良くしたいですしね。……分かりました、勇者部に入る事にします」
「ありがとう! 最愛ちゃん!」
「これからよろしく頼む」
凄く嬉しそうな様子で手を握ってきた友奈と、勇者部部長・大社の勇者として今回の交渉が上手くいった事に内心ホッとしている若葉に握手を返しつつ、とりあえず今後どうなるかはわからないが新しく出来たこの友人達とは出来れば仲良くしたいと思う最愛であった。
──────◇◇◇──────
【結ぼう協力関係】地方転生者相談スレpart48
32:名無しの貫通ネキ
そういう訳で勇者部に加入したぞい
顧問の先生である【大社】職員さんからも友好的な関係で行こうって話になったので
とりあえずは一安心かな
33:名無しの転生者
おめー
34:名無しの転生者
おーやるじゃん
35:名無しの転生者
これで貫通ネキも勇者だなwww
36:名無しのギリメニキ
その後なし崩し的に俺も中学の勇者部に入れられたんだけど
しかもこっち殆ど名前だけ登録の幽霊部員ばかりだし
37:名無しの転生者
表向きのボランティア活動はどうした?
38:名無しのギリメニキ
>>37 中学になると霊能者の仕事が忙しい
+ボランティアとかめんどいって理由で幽霊部員化してるって言ってた
良くも悪くも覚醒者は我が強くなるとか顧問は言ってたな
39:名無しの転生者
まあ日夜悪魔と戦ったりしてると世間一般の常識から離れる感はある
40:名無しの貫通ネキ
こっちは勇者部のクラスメイトと仲良くしてますけどね!
最初は微妙に距離のあった黒髪ロング美少女も最新ゲームの話題を出せば普通に話せる様になりましたし
まあこれでも前世持ち転生者なんで小学生と仲良くするぐらい余裕ですよ
41:名無しのギリメニキ
グギギ……こっちはネオベテルの行動方針を聞かれて
素直に『これからくる【終末】を乗り越える為』って言ったら凄く怪しまれたのに
42:名無しの転生者
前世持ちだと一般小学生と仲良くするのは難しいと思うけど
43:名無しの転生者
コミュ力があればいける
44:名無しの転生者
>>43 ねえよ、2回目の小学校はボッチだったよ
45:名無しの転生者
ギリメニキはドンマイ(笑)
まあウチの行動方針は終末思想のカルト組織そのものだしな
46:名無しの転生者
貫通ネキの方はどうだったの?
47:名無しの貫通ネキ
>>46 まあ流石に【終末】云々を話したら多少訝しがられましたが
最近上昇し始めているGPからくるオカルト事件の解決が主な活動って言ったら納得されましたよ
48:名無しの転生者
具体的な行動を見れば真っ当に活動してるオカルト組織に見えなくもないと
49:名無しの転生者
これってギリメニキのコミュ力が足りないだけでは?
50:名無しの転生者
方針はともかくやってる事はまともって感じにすれば良いと
51:名無しのギリメニキ
>>49 こっちは大社職員の顧問の先生に色々説明する必要があったからな
まあ確かに今世ではあんまり友達付き合いがある訳じゃないけど(泣)
52:名無しの貫通ネキ
愚兄は昔から近寄りがたい雰囲気とか言われて友達少ないですもんねwww
53:名無しの転生者
お労しやギリメニキ
54:名無しの転生者
>>51 気持ちはすごいわかるよ
前世の記憶があると回りと話が合わない事多いよね
55:名無しの転生者
思い当たる節が多過ぎて心が痛い
56:名無しの転生者
話を変えよう(滝汗)
そっちで見た限り大社とネオベテルって協力出来そうなのか?
57:名無しの貫通ネキ
それはまだ分からないですね
こっちが接触出来た大社の人間は勇者達と学校に教師としている職員だけですから
58:名無しのギリメニキ
一応その二者には悪意とかは一切無かったぞ
こっそり学校の近くに伏せてたウチの霊犬の鼻で霊視したから間違いない
59:名無しの転生者
何気に用心はしてたんだな
60:名無しの転生者
交渉が決裂した場合にはレベル30越え霊犬がエントリーしてた訳だ
61:名無しの転生者
伏せ札を残しておく辺り用心深いな
62:名無しの貫通ネキ
まだ大元の大社がまともかどうかは分からないですし
オカルト業界人は何か情報とか知りませんかね
63:名無しの転生者
知らん
64:名無しの転生者
自分の地元霊能組織の事すら知らないです
65:名無しの転生者
ネットで転生者オフ会見つけて加入した業界素人が殆どだからなぁ
66:名無しのメイドスキー
又聞きだけど大社は割と真っ当な霊能組織って話を聞くにゃー
戦後のゴタゴタの後に表の地方名士と手を結んで地域の霊的安定に尽力してるとか
67:名無しの転生者
メイドスキーニキ! メイドスキーニキじゃないか
68:名無しの転生者
期待の大型新人だから脇巫女ネキ達に幹部入りを打診されまくってるとか!
69:名無しの貫通ネキ
成る程、確かに学校とか経営して覚醒者の子供とかを受け入れてますもんね
70:名無しのメイドスキー
>>68 まだ自由にやりたいから断ってるにゃー
それとそこまで子供に配慮してくれる霊能組織は稀だから信頼できる側だと思うぜい
京都の一部とか学校にすら通わせないのもザラだからな
71:名無しの転生者
所々から溢れる闇
72:名無しの転生者
地域にそこまで顔が効くって事はかなり大きい組織らしいし
大社とは仲良くした方が良さそう
73:名無しのギリメニキ
刑事やってる親父からの情報だと大社は警察にも顔が効くっぽいしな
74:★運営
ネオベテルとしても勢力の大きい真っ当な霊能組織からの信頼関係は欲しいので
二人には今後も大社と良い関係を築いて欲しいですね
情報提供や資材などの要求があればいつでもご連絡を
75:名無しの転生者
運営からも期待されてるな
76:名無しの転生者
資材までくれるとか贔屓が過ぎねぇ?
77:★運営
>>76 では貴方はどれだけ組織に貢献してくれたのですか?(無慈悲な正論)
二人にはオリジナルの悪魔召喚プログラムの実験運用もやって貰ってますし
資材搬送をちょっと割引するぐらいのサービスはしますよ
78:名無しの転生者
地方への資材搬送サービスって金が掛かるし予約も満席なんだよなぁ
79:名無しの転生者
転移魔法による輸送とか出来ないのか?
80:★運営
>>78 強力なオカルトアイテムを運ぶとなると運び手にも相応の実力と信頼が必要なので
何人かの転移系魔法の使い手にそういう仕事を回してますが人手が足りません
81:★名無しの巫女サマナー
>>80 転移系は色々と制限も多いからね
物資を輸送するにしても始点と終点に大規模な儀式場を作る必要があるかな
龍脈渡りとか下手すると途中の龍脈地点で物資を奪われる可能性もあるし
82:名無しの転生者
じゃあ早く地方支部設立を!
83:名無しの転生者
と言ったら地方組織との交渉次第なんで友好関係結んでねってなるんだな
84:名無しの転生者
うむむ、悪魔召喚プログラムが実装されるならトラポート持ち悪魔と契約すればとか
85:名無しの転生者
転移能力付き造魔作ればよくね?
86:名無しのメイドスキー
脇巫女ネキも言ったが転移魔法は色々と制限が多いぜい
人によって移動距離制限があったり高位の霊地にしか移動出来ないとかな
87:★名無しの巫女サマナー
日本全国に転移出来る造魔とかは現状の技術じゃ難しいかな
88:名無しの転生者
やはりターミナルシステムを作るべきでは
89:名無しの転生者
技術班に期待
90:名無しの貫通ネキ
まあ今は現状のままでどうにかやってくしかないって事ですね
91:名無しのギリメニキ
この前のレベル20越えレギオンみたいに強力な悪魔が出始めてるみたいだし
出来る限り早く地方への対応も充実させてほしいけどな
92:★運営
地方派遣の依頼ぐらいなら出せますし
一応協力関係を結べそうな組織を見つけて交渉とかもやってます
93:名無しの転生者
今は我慢の時か
94:名無しの転生者
しゃーなし地道にやっていこう
95:名無しの転生者
それまでに地方の状況がこれ以上悪化しなければ良いんだが
96:名無しの転生者
レベル20越えのレギオンの話もあるし無理そう
97:名無しの転生者
最低限自分と身内を守れるぐらいの備えはしておくべきか
98:名無しの転生者
せめて同じ地方内に派出所とか作って貰えないものか
99:★名無しの巫女サマナー
まあやばそうな案件がある地方には優先して援軍を派遣するから
なので地方情報は適時上げてくれると嬉しいな
100:名無しの転生者
おかのした
101:名無しの転生者
掲示板か直通メール辺りで良いのかな?
102:★運営
>>101 イエス、大体いつもどおりでおk
103:名無しの転生者
分かったー
104:名無しの貫通ネキ
じゃあ大社との協力関係の推移含めて適時掲示板にアップしますね
105:名無しの転生者
事件は起こらない方が良いんだが
106:名無しの転生者
メシアガイアファントムが進出してきたら優先対処してくれますか?
107:名無しのギリメニキ
やばい野良悪魔出現の場合にはどうなるんだ?
108:★運営
内容次第でこちらで判断して優先対応します
109:名無しの転生者
でも援軍依頼を出すにしても金が掛かるしな
110:名無しの転生者
地方で派出所建てられそうな場所を見つけて確保するって手も……
111:名無しの転生者
まともな霊地には大体先客がいるだろうからな
112:名無しのメイドスキー
関東も関東で色々大変らしいからにゃー
どうもメシア連中の動きがキナ臭いらしい
113:名無しの転生者
またメシアか
114:名無しの転生者
ICBM来るー?
115:名無しの転生者
知ってた(白目)
116:名無しの転生者
それに呼応してガイアも動きがあるとか
117:名無しの転生者
地方にまで波及しないで下さいお願いします
118:名無しの転生者
こっちにはヤタガラスもクズノハも居ないんです
119:名無しの転生者
ペルソナ使い的には地方にも散見されるマヨナカテレビやメメントスやタルタロス分塔の対策も気になる
120:名無しの転生者
>>119 何それ聞いてない
121:名無しの転生者
詳しい事はペルソナ使いスレに乗ってるぞ
122:名無しの転生者
あれら通称【認知異界】はペルソナ使い始め一部の異能者にしか認識・侵入不可だからなぁ
123:名無しの転生者
魔界寄りの普通の異界と違って集合無意識による特殊異界だったか
124:名無しの転生者
大衆がいれば発生し得るメメントスはともかく
マヨナカテレビやタルタロスが複数発生してるっていう異常事態だからな
125:名無しの転生者
やっぱり終末要因はペルソナ関連でしょう!
だからこっちにも援軍プリーズ!
126:★名無しの巫女サマナー
ペルソナ使いに関しては専スレでね
話題に出す事が危険なアレコレがあるから
127:名無しの転生者
アレコレって?
128:名無しの転生者
>>127 ああ! それってハネクリボー?
あとがき・各種設定解説
最愛:兄妹揃って結構ゲーム好き
・ちなみにこの世界は90年代ですがゲーム会社やコンピュータ関連企業を経営している転生者のお陰でゲーム関係の技術はかなり進んでいたり。
・交渉では相手の感情まで読めるハヤタを敢えて近くに伏せていたり、協力関係が結べた辺りで高レベルレギオンの話をしてみて反応を伺ったりと色々頭を使っていた。
・レギオンの話をした後に勇者達が顔を青くしていて、事情を聞いたらあの時近くで異界を探索してたとの事だったので不思議な縁があるものだと思いつつ大社の能力がレベル20代の悪魔に対応するのが難しいレベルかなと考察している。
勇者達:レベルは大体4〜6ぐらい
・この年代としては非常に優秀な霊能者であり【大社】から【勇者システム】を試験運用として預けられているので普通の異界なら攻略出来るぐらい強かったりする。
・……が、勇者となって強化されても流石にレベル10ぐらいの悪魔の相手が限界なので、レベル20越えのレギオンは厳しく最愛達がそれらを相手取れる戦力を持っている事に結構動揺した。
・ちなみに【大社】の戦力的にレベル20越えレギオンは対処可能だが、相応の準備をした精鋭を向かわせて犠牲が出る可能性があるレベル。
読了ありがとうございました。
【勇者システム】などの詳細は追い追い。原作ゆゆゆのやつと違って大分メガテンナイズされてます。感想・高評価・誤字報告いつもありがとうございます。