【急募】貰った悪魔召喚プログラムの使い方   作:貴司崎

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勇者部の日常

「……はーい、おはようさン」

「おはよう通行、朝食は出来てるわよ」

 

 朝起きてリビングに降りた俺──木原通行を待っていたのはぱっと見だと中学生ぐらいにしか見えない女性……もとい俺の母親である【木原できる子】だった。

 よく見ると既に妹の最愛はテーブルについてトーストを食べていたので、俺もいつも座っている椅子へと向かい用意されたトーストを食べ始める……やはり最愛は母親似だな。

 

「……愚兄、今なんか超失礼な事を考えませんでしたか?」

「さァ? 気のせいじゃねェ?」

「あ、ハヤタも朝ごはんよ〜」

『ありがとうございまする、できる子殿』

 

 俺はジト目を向けてくる最愛をスルーしつつ母から与えられたドッグフードを食べるハヤタに目を向ける……ハヤタが喋れる霊犬だと分かってから母がああして会話する機会が増えたんだよな。曰く『物心ついた頃からの付き合いだから話せる様になったのが嬉しい』との事だが。

 そんな事を寝起きでイマイチ回らない頭で考えつつデザートのバナナを食べていると、リビングの扉からぱっと見だとどっかヤバいマッドな悪の組織にいそうな人相をした長身の男……もとい俺の父親である現職刑事【木原数多】であった。正直母と並べばお巡りさんが呼ばれるレベルだ。

 

「通行また失礼な事を考えてねぇか?」

「……気のせいじゃねェ?」

 

 ……現職刑事だけあって流石に鋭い「いや通行が割と分かりやすいだけだと超思いますよ」だまらっしゃい。

 

「あ〜、部署が移動になったから新しい事を覚えるのが大変だぜ。……つーか、この歳になって神話や民話なんかの()()()()()()を詰め込む事になるとは思わなかった」

「新しく赴任した【第二資料室】……“警察のオカルト担当部署”はやっぱり大変なんですか?」

「まあそれなりにはな……といっても俺は“覚醒”とやらをしてないから実戦には出させて貰えず、普通にオカルト資料の整理ぐらいしかやらせて貰ってないが。まあ給料はめっちゃ上がったから文句は無いけどよぉ、オカルト仕事って儲かるんだな」

 

 そう、俺と妹が覚醒者でありネオベテルの一員だと【大社】にバレてから、しばらくした後に親父が香川警察のオカルト担当部署である【第二資料室】への移動を命じられたのだ。

 ……尚、当初は【大社】からの俺達への牽制か脅迫ではという考えになってハヤタを連れて直接交渉(物理)を行おうなんて話にもなったが、親父が『移動を提案されたのは事実だが最終的な決定権は自分にあったし。向こうも人材不足で俺がオカルトについて以前から調べてた事もあって前々から目を付けられてたみたいだし』と言われたので、とりあえず大社関係者に事情を聞いて悪意の無い事を(ハヤタの鼻で)確認するぐらいで済ませた。

 

『でもよォ、オカルト関係の仕事は危険だぞ。一番弱い悪魔でも普通の人間にとっては“認識出来ない野生の熊”レベルだしなァ』

『まあ俺はこれでも警察官だからなぁ。相手がオカルトだろうが悪魔だろうが市民の血税から給料貰っている以上、その市民を守る為の仕事なら否やは無いさ。……そもそも危険なオカルト仕事をしてるのはお前らも同じだろうが。子供が頑張ってるのに親が仕事しない訳にもいかんだろ』

『それは超そうなんですがねぇ……いざとなればネオベテルに再就職する事も出来ますよ』

『とりあえず某の守りの術を込めたお守りを渡しておきましょう。少なくとも下級悪魔や低レベルの呪詛程度なら弾けるレベルには出来ます』

 

 ……まあ自分達も望んでオカルト関係の事件に首を突っ込んでいる以上は俺達も余り強くは言えなかったしなぁ。まあ覚醒してないうちは……もとい覚醒してもレベルが低いウチは直接悪魔と対峙するなと、物理反射持ちの俺が組手で一方的に格闘技の達人である親父をボコす事で具体例を示して念を入れておいたが。

 

「まあ流石にモヤシの通行にあそこまでボコられた以上は迂闊に悪魔とか異能者と戦おうとは思わねぇよ。……殴っても反射出来るなら寸止めの要領で拳が当たる直前に引けば行けると思ったんだが」

「悪りィが【物理反射】スキルは『俺への物理攻撃を反射する概念』みたいなもンだからな。それが“物理攻撃”である以上はどれだけ小細工しても無駄だ。破りたければ物理以外の属性か反射を突破出来る貫通スキルが必要だぞ」

「ちなみに私は反射突破出来る貫通スキルを持ってます。なので立会いなら通行を一方的にボコボコに出来ますね」

 

 実際ボコボコにされたしな……反射と補助スキルしかないから反射出来ない攻撃持ちとのタイマンだと弱いんだよな俺。やはりデビルサマナーになって正解だったか。

 

「しっかし覚醒ってどうすりゃ出来るんだ?」

「俺は車椅子に乗ったヤベー不審者と遭遇したら覚醒した」

「私は通行殴って反射ダメージ食らったら覚醒しました」

『……この二人は霊能者として破格の才能……数多殿やできる子殿を10とすれば100ぐらいの才覚を持っているのであっさり覚醒しましたが、普通は数年以上に渡って霊地で修行するなどが必要です』

「でも覚醒すると外見が若くなるんでしょう? いいわね〜」

 

 ……お袋はそのままでも十分過ぎるぐらいに若いのでは? と俺は思い、多分苦笑している最愛も同じ事を思ってるだろうと察しつつ朝食を食べ終わった。

 

「あ、今日は私【勇者部】のボランティア活動(真)があるので少し遅くなると思います」

「わかったわ〜」

「ごっそさン。じゃあ俺も中学行くわ」

 

 しかし向こうの勇者部は楽しそうだな……こっちは覚醒者の数が少ない谷間世代なので讃州中学勇者部に人がいない事とか、ボランティア活動をめんどくさがって参加しないヤツがいるからとかで実質幽霊部活なのに。

 ……まあ俺も幽霊部員だからとやかく言える立場でもないし、その方が楽でいいけどさ。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

「うーい、来たぞー」

「あ、木原じゃん。アンタが自主的にここに来るのは珍しいね」

 

 そんな訳で放課後、俺は朝方最愛が言っていた事もあって気まぐれに讃州中学勇者部の部室に立ち寄った……それを迎えたのはこの勇者部の部長であり、霊能組織【大社】で巫女見習いとして所属してもいる俺の隣のクラスに在籍している少女【安芸真鈴】であった。

 ちなみに一般生まれで偶々覚醒出来たから大社に入った巫女見習いであり異能者としてもそこまで強くはない彼女が部長なのは、単に他の主だった大社系異能者部員が多数卒業してしまって誰もいないからであると以前本人が言っていた。

 ……実の所、他に大社系異能者でこの学校に通っている人間もいるのではあるが、彼等は大社関係の霊能名家生まれであるからなのか学校が終われば大社関係の施設で修行を行ったり、最近増えてきたオカルト関係の事件を解決する為のサポート人員として動いているので勇者部に立ち寄る余裕が無いのだそう。

 

「まァ特に予定も無かったし暇つぶしにな」

「ふーん、まあちょうど良かったけど。ちょっとオカルト側の勇者部活動記録の整理を手伝ってくれる? 山田先生から頼まれちゃってさ」

「そんな所にしまってあったのか。まあ良いけどよ……って、結構多いな」

 

 そう言って安芸は勇者部部室にあるオカルト的な施錠がなされた小部屋からそこそこの量がある資料を取り出して並べていたので、俺も彼女からやり方を聴きながら整理する事となった。

 その間に資料を少し見てみたが報告書というよりは活動日記みたいな感じだったな。学校に提出する物もあるから普通のボランティア活動記録とは分けられてるだけって感じか。

 

「……しかし内容はちょっとした悪魔未満の怪奇現象の解決や亡霊レベルの除霊ぐらいか。学校が魔界に落ちたり高レベル悪魔が主の異界を攻略したり天から降りてきた名状しがたい怪物を倒したりとかしなかったのか」

「いやそんな大事件を学生が解決出来る訳ないでしょ。……というか、そんな漫画かアニメみたいな事件が起こる訳ないし、もし起こっても【大社】とか【ヤタガラス】とかが当たる案件でしょうに」

「……まァそうだな」

 

 少なくともGPが上がり始めたのはここ最近だし、まあ【大社】も学生を大事件の前線に駆り出す程に人材不足じゃないならこんなもんだろうな。正直ちょっと【ネオベテル】の終末思想に毒されてた気がする。

 ……これまで余り勇者部に寄り付かなかったが、この【大社】の方針とかを知る為には丁度いい資料があったならもう少し積極的に関わった方が良かったかもな。どうせやる事も無いし。

 

「実際、俺が【ネオベテル】の一員だと言って勇者部にも所属したのにまともなオカルト依頼もくれないしなァ。この資料にあるみたいな簡単なヤツばっか。……異界攻略ぐらいやらないと資金も貯まらないしレベルも上がらんのだが」

「だから中学生の部活にそんな危険な依頼をさせる訳ないでしょうが。大社所属の霊能者の家系の子なら訓練も兼ねて異界攻略の手伝いぐらいはさせられるけど、基本的に最前線には出されず危険が少ない様に配慮されてるって言ってたしね。……そんなに強くなりたいの?」

「まァこの業界強いに越した事はないしなァ。それに今後の事も考えるとよォ」

 

 勿論、俺も最愛もハヤタを師匠として霊能者としての訓練を欠かさずやってるけど、やっぱり悪魔を倒すのが一番手っ取り早く効率よく強くなれるからな……と思ってると、こちらを見ていた安芸が訝しげな表情をしていた。

 

「うーん、木原ってさ霊能者家系の子みたいに『御役目の為に』とか悪魔事件被害者が『悪魔絶対許さねぇ!』みたいなタイプじゃないでしょ? どちらかと言うと私みたいに偶々覚醒したから成り行きでやってるタイプに見える」

「……確かに覚醒したのは偶々だし、成り行きでしょうがなく霊能者やってるってのも大体間違っちゃいねェよ」

「うん、凄く機嫌が悪そうに見えるけど実は大して気にしてないんだよね、分かってきたわ。……そんな木原がそこまで強くなりたいって思ってるって事は、やっぱり報告にあった【終末】が来るってあんた達【ネオベテル】は本気で信じてるの?」

「“いつかは来るだろう大地震”ぐらいの感覚で信じてるぞ。そもそもオカルト業界……()()()()()()なら力があった方が良いだろうに」

 

 確かに側から見ればネオベテルは『今までGPが上がっても大丈夫だったのに、いきなりこのままでは世界が滅びるとか言い出してそれに対抗する為に意味☆不明な速度で勢力を拡大してるヤバい連中』だからな。

 ……まあ、最近はGPの上昇でオカルト事件が増え続けているから『あり得ないでしょ』が『もしかしたら……』ぐらいには変わってるか。彼女の態度的に。

 

「まあ確かにそうなんだけどねー。私って覚醒はしてるけど木原みたいに才能無いし戦いとか苦手だし……給料貰ってる以上は御役目をやる気はあるけど、後輩の勇者達ほどに役に立ててる気がしないんだよねー」

「戦いたくないなら無理に戦わなくてもいいんじゃねェか? そもそも大社の巫女って後方支援系の霊能者担当って聞いたけどなァ。ネオベテル(うち)にも普通に事務員とか居るし、組織に所属しているなら戦う以外に幾らでも仕事があるだろ。この資料整理みたいによォ」

 

 組織の最大のメリットは“そこ”だしな。この業界は個人でやるなら実力が無いとどうしようもないが、組織に所属するなら力が無くても仕事さえしてればその庇護下に入れる。

 そもそも『覚醒』してるだけで十分に希少な人材なんだからそこまで不安に思う必要は無いだろう……そう考えていたら部室の扉が突然開いて一人の男子生徒が入ってきた。

 

「おい〜っす……山田先生いないのか。今日呼ばれたんだけど」

「なんだ平賀か」

「今日は珍しく人が多いね。これは集められたかな?」

 

 黒髪黒目で何処にでもいそうな男子中学生な見た目の彼の名前は【平賀才人】という……なんか異世界に召喚でもされそうな名前だがこの世界はメガテン故に魔界に落ちるぐらいはあってもそんな事は無く、彼は最近悪魔事件に巻き込まれて偶然覚醒したので勇者部所属となった讃州中学生というポジションだ。

 ちなみに巻き込まれた悪魔事件というのは運悪くちょっと強めの悪霊に彼が襲われて、そこを悪霊の目撃情報があってパトロールしていた【神樹館学園】の勇者部メンバーに助けられたといった感じだったらしい。

 ……そして現在は覚醒してしまった事もあってオカルト側の常識を学ぶ為や悪魔からの自衛手段を学ぶ為に勇者部に所属して顧問である山田先生から指導を受けているとの事。

 

「え? 二人も山田先生に集められたんじゃないのか?」

「私は前から言われていた資料整理の為に来てたんだけど」

「俺は気まぐれで……これはすれ違ったか?」

 

 俺と安芸の二人を呼ぼうとしたけど先に俺らが部室に来てた感じで……山田先生って思春期で一番荒れやすい中学生霊能者の面倒を任されるぐらいだから、大社でも数少ないレベル10を超えてる凄腕の霊能者なんだけどちょっと抜けてる所があるんだよな。

 とりあえず下手に動いてまたすれ違いになるのもアレなのでしばらく待ってみるかという結論になって十数分後、慌てた様子で部室の扉が開かれて一人の小柄で童顔な若い女性が入って来た。

 

「ああっ⁉︎ やっぱり二人とも先に来てたんですね! どうりで校内を探してもいないと思ったら」

「あー前に言われてた資料の整理をしてたんですよ。どうも入れ違いになってた様ですいません」

「いえいえ、むしろ以前に言っていた資料の整理をちゃんとやってくれてありがとう。最近は大社の方にヘルプに入る事も多くて忙しくて……とにかく集まってくれて改めてありがとう」

「いえ〜山田先生の為なら」

 

 彼女が勇者部顧問であり大社所属の霊能者である【山田真耶】先生である。年齢は見た目通り20歳で先生としてはかなり若いのだが、大社の霊能者と教師の二足の草鞋を履きながら頑張ってる人なので校内でも結構人気がある。

 ……ところで才人よ、流石に人気の理由の一端であるとは言え山田先生の超重胸部装甲(暗喩)をガン見するのは良くないぞ。そもそも女性って男のそういう視線には気付いてしまうものだし(前世で一敗)。安芸もジト目になってるし。

 

「……それで山田先生、今日俺達を呼び出したって事は何か用事があるンすよね。またボランティア活動ですか?」

「いえ、今回は『オカルト関連の依頼』になります。……この讃州中学校の今は使われていない旧校舎、最近そこの取り壊しが決まったのですが校舎内に入った業者が次々と負傷したり呪いが掛けられたりする事件が起きました」

 

 旧校舎って言うと確か学校の敷地の外れに建ってる木造校舎の事か。戦前に建てられたが古くなって危険だからという理由で立ち入り禁止になっていたヤツだな。

 

「成る程、任せて下さい山田先せ「とりあえず報酬の確認。それで受けるなら被害にあった業者の情報と旧校舎についての情報もだな」ちょ……」

 

 なにかデレデレしながらやる気を出してる才人を遮って、俺は山田先生に今回の依頼についての詳細を確認していく……そもそも命の掛かった仕事なんだから念入りな確認は必須だろうが。まあこの業界に入って大した時間が経ってないなら仕方ないかもしれんが(←オカルト業界2ヶ月目の男)。

 

「ええ勿論です。報酬に関しては受けて貰えれば…………ぐらいで、成功すれば…………」

「…………まあコレなら受けてもいいか。十中八九悪霊の仕業だし……でもこの学校オカルト関係の生徒が多く在籍してたから……」

((…………いかん、置いてけぼりになってる))

 

 俺の返答を聞いて仕事モードの真面目な雰囲気となった山田先生は報酬含む交渉を始めて、ちょっと付いて行けなかった二人も慌てて気を取り直してそれに参加する事となった……さて、久しぶりのオカルト依頼だがどうなるかな。




あとがき・各種設定解説

木原一家:全員割と肝が座ってる
・もちろん父の移動とか覚醒者である事がバレた事などから色々と警戒しており、ハヤタは母の護衛に付きっ切りになりながら覚醒してない両親にお守りを渡すなどしている。
・ちなみに父親の移動に対して大社は警察に木原一家の調査の為に『木原数多』という人間の確認を行っただけなのでほぼ関わっておらず、大体本編で言った理由で資料室がオカルトの事を知ってる刑事をスカウトしただけである。
・兄妹二人は自衛出来る程度には強いので常に装備やアイテムを忍ばせたりしつつ、勇者部の活動を通して大社の事を探りながらも良い関係を作ろうと心掛けてる。

讃州中学勇者部:現在は大体幽霊部活
・本編で出てきた四名以外にも部員はいるのだが本編で語った理由及びあんまり人数を増やすと作者が捌き切れない、後はキャラを考えるのが難しいから基本この四人で回します(笑)
・勇者部と言ってもこれまでの活動はあくまでボランティアと簡単なオカルト事件の解決ぐらいで、基本的に小・中学在籍霊能者が過ごしやすくする為の居場所という面が強かった。
・ちなみに安芸は初対面の時は通行の事を怖がっていたが、話していく内に性格は割と普通な上で意外と分かりやすいと知って態度が軟化した感じ。


読了ありがとうございました。
讃州中学勇者部編(尚ゆゆゆメンバーはほぼ登場しない)……あくまでこの世界は『女神転生』ベースなので。高評価・感想・誤字報告などはいつでもお待ちしています。
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