『TあべチャUzoおオォォ──!!!』
【喰らいつき*1】
そんな風に甲高い奇声を上げながら腹部の牙を剥き出しにして迫ってきた【バグス】に対し、真っ先に反応したのは歴戦の霊能者である山田先生だった。
「ッ⁉︎ 皆さん下がって!」
【マハザン*2】
『Kヤa!!!』
彼女は突撃して来たバグスに自身が使える最大の魔法でもある広範囲に拡散する衝撃波を叩き込み、その勢いでもって相手を弾き飛ばしたのである。
そのまま彼女は未だ事態について行けていない真鈴と才人を庇うように立ちながら自身の得物である霊刀を抜き構えるが、弾き飛ばされたバグスは念動力によって空中で体勢を立て直して再び突撃した……所で通行が動いた。
「……ガイスト
【サバトマ*3】
『( ̄Д ̄)ノ』
【スクンダ*4】
『承知した!』
『Eえェ⁉︎』
まず、ポルターガイストのスクンダによってバグスの機動力を下げて、動きが鈍った所にCOMPの召喚機能よりも早く召喚出来るサバトマのスキルによって【造魔 シャアザク】を呼び出してバグスに向かわせる。まずは一旦足止めしてこちらの態勢を整えるのが狙いだ、
『そこだ!』
『Koのヲぉ!!!』
【喰らいつき】
そんなサマナーの意を汲んだシャアザクは持ち前の機動力で撹乱しながら装備したザクマシンガンから無数の針を放ち、動きの鈍ったバグスへと正確に叩き込んでいく。
それに怒ったバグスも反撃として腹部の牙で接近戦を挑むが、自身の素早さが下がって相手の素早さが上がっているので攻撃を失敗して目論見通りにシャアザクに引きつけられてしまっていた。
「通行君! 助かりました!」
「物理耐性もあるからこれで暫くは持つだろ。まずは召喚とアナライズだな」
【召喚→アマノザコ】【召喚→ジャックランタン】
「おおっとぉ? ようやく出番が来たみたいだね。ね!」
『ヒーホー! やってやるホー!』
その間に彼は手早くCOMPから残りの悪魔を呼び出しつつ、それと並行してデビルアナライズの機能でバグスの情報を確認していく。そして山田先生とも合流して今後の方針を手早く決めようとした。
「【妖獣/
「それよりコレどうするんだ⁉︎」
「落ち着いて下さい才人君。……あの悪魔を放置しておく訳には行かないので戦いますが、才人君と真鈴ちゃんの実力では足手まといなので直ぐにこの旧校舎から出て【大社】へ連絡を取って下さい。正直言ってあの悪魔は大社の精鋭部隊で相手取るレベルのモノですから。通行君は申し訳ないですが足止めをお願い出来ますか?」
「わ、分かりました!」
「了解」
圧倒的なレベル差のある悪魔と遭遇したせいで少しパニックになっていた才人と真鈴だったが、山田先生のはっきりとして具体的な指示のお陰で冷静さを取り戻して視聴覚室の外へと脱出しようとした……が、扉に手を掛けた才人がどれだけ動かそうとしてもその扉はピクリともしなかった。
「駄目だ⁉︎ 扉が開かないし壊そうにもビクともしない!」
「私の魔法や剣でも駄目……まさか部屋を限定的に異界化させて⁉︎ どうにか脱出は……!」
「……ここから出る方法は山田先生に任せます。アイツは俺たちが暫く相手をするンで……シャアザク、挑発。アイツは火炎弱点だからランタンの魔法メインで攻める。ガイストを引き続きデバフとシャアザクへのバフ、アマノザコは感電狙いで電撃攻撃、シャアザクには当てるなよ」
『了解! こちらだ!』
【挑発*7】
それを受けて扉を破壊してどうにか脱出を試みようとする山田先生を見た通行は、即座に思考をバグスとの戦闘に切り替えて仲魔へと次々に指示を出していく……伊達に脇巫女ネキの理不尽詰め込み修行をさせられた訳ではないのだ。
そして契約によりサマナー《通行》の考えをある程度読める彼の仲魔達はそれに答えて各々の役回りを果たしていく。まずシャアザクがバグスを挑発し、これまでの相手の攻撃に対して耐性のある自身のみに向く様に仕掛ける。
『MアTeエえェ絵江ぇ!!!』
【サイオ*8】
『何ッ⁉︎ グゥッ!』
「アレは……まさか念動属性かよ! バグスがそンな呪文覚えたか⁉︎」
だが、挑発されたバグスは強力な念力によってシャアザクを弾き飛ばしてダメージを与えて来た。希少属性である念動属性魔法ではシャアザクの優秀な耐性も機能せず、不可視かつ不意の攻撃だったので回避も出来ずに吹き飛ばされてしまった。
それを見た通行は前世で自分がやった『真・女神転生Ⅴ』に出て来たバグスが使ってこなかった魔法に少し驚くが、そもそもアナライズ結果がペルソナ系も混じってる異常なものだったし多分そっち側のスキルだろうと思い直し、シャアザクが離された事をチャンスと考えてアマノザコとジャックランタンに攻撃の指示を出す。
「今だ! お前ら撃て!」
『ヒーホー! 燃え尽きるホー!!!』
【アギ*9】
「あいよ! 撃っちゃうよ。よ!」
『きYアぁァaAぁァー!!!』
ジャックランタンから放たれた火球とアマノザコの放った複数の雷撃はスクンダによって動きが鈍っていたバグスに直撃して見事に大ダメージを与えた。
そして通行はその隙にポルターガイストに【魔石*12】を渡してシャアザクを回復させる様に指示を出しつつ、自身は
『YO苦モヤッTaなAァ!!! 死NNじァEえェ!!!』
【マハムド*13】
「確かオマエはその魔法も持ってたよなァ! テトラジャ!!!」
【テトラジャ*14】
そんな怒りの叫び声を上げながらバグスが部屋にいる敵対対象全てに向けて放った呪殺魔法だったが、その直前に通行が張った対破魔・呪殺の防御魔法バリアが代わりに砕けた事で誰一人として呪いの餌食になる事はなかった。
「(行動待機しといて正解だったな。以前のレベルアップと魔除け系修行のお陰でテトラジャを習得してた事を含めて幸運だった)……それで山田先生、この教室からは出られそうですか?」
「……出来なくは無いですが私一人だと異界破りの術式準備に3時間はかかります。後は異界の要であるボス──あのバグスを倒す方法ですが「じゃあそれで行くか。シャアザク
レベル20代の大悪魔が作り上げた異界に閉じ込められて、更には低レベルの生徒二人を守りながら戦わなければならない現状を考えて苦しんでいた山田先生だったが、そんな状況でも一切動じずに仲魔への指示を出す通行を見て思わずポカンとした表情を浮かべていた。
……元よりバグス程度は歯牙にも掛けないレベルの化け物である脇巫女ネキに鍛えられた通行であるので、たかだが自分よりレベルが少し上ぐらいの悪魔と遭遇してもビビる事は無いのである。
『了解した! 喰らえっ!!!』
【マカジャマ*15】
『Hiえぇ?』\CLOSE!/
【サイオ→使用不能】
そうして指示を受けたシャアザクが怪しげなオーラの波動をバグスに向けて放って見事に命中させてみせた……その魔法【マカジャマ】によって“あらゆる魔法スキルが封じられた”事によって、バグスはサイオ・マハムド・ドルミナー*16といった厄介なスキルが使用不可に陥ったのだ。
「よし魔封入ったな。シャアザクはそのまま挑発とマカジャマで敵の動きを制限、MP節約の為に攻撃せずに防御で。ガイストはシャアザクへのスクカジャ*17とバグスへのスクンダを続行」
『まったく他に居ないとはいえ私が前衛での壁役とはな! 了解だ!』
【防御】
『( ̄^ ̄)ゞ』
【スクカジャ】
『NアrAA!!!』
【通常攻撃】
追加の指示によりシャアザクはバグスからの通常攻撃を左肩に付けられたシールドで防ぐ。物理耐性もあってダメージが少なく行動に支障は出なかったので、ポルターガイストからかけられたスクカジャによって増した機動性でバグスの注意を引きつける壁としての役割を実行して行く。
「ランタンとアマノザコも引き続き魔法攻撃を続行、アマノザコはシャアザクの回復も頼む。魔封が外れる可能性もあるからテトラジャを掛け直す必要もあンな」
『イエッサーだホー!』
【アギ】
「ほいほーい。……後あのテレビから出てる『霧』ってさぁ、何かこう見知った気配がするんだよね。黄泉比良坂的な。な」
【メディア*18】
アマノザコが全体回復しながら見た先には先程から『火炎や電撃の余波を食らいながらも傷一つ付かずに画面にノイズを走らせ、更には何故か画面から僅かに霧の様な何かを出しているテレビ』があった。
……まあ、通行はそのテレビの“元ネタ”を知っていたしペルソナ使いでは無い自分では根本原因はどうしようもないので、とりあえずテレビ自体の破壊は難しそうだとだけ考えつつ戦闘の余波から低レベルの二名を守っていた山田先生と合流した。
「……これがネオベテルの、デビルサマナーの力……」
「いや割とギリギリなンですけどね。……後出来れば山田先生にも攻撃に回って欲しいンですけど。俺は攻撃系のスキルを覚えてないし、仲魔にマグネタイト供給しないといけないんで。二人の護衛は俺がやります」
「ハッ! わ、わかりました! お願いします!」
大悪魔を半ば完封仕掛けている通行の戦いぶりに目を奪われていた山田先生だったが、即座に思い直して彼に二人の護衛を任せながら自身も前線に出て行く。
……自分の常識を遥かに超える戦いを行っている
「ええと……俺らは何をすれば……」
「油断なく戦闘を見ながら決して死なない様に立ち回れ。安芸の方は回復とかして貰う事があるかもしれンが、近接戦しか出来ン才人は突っ込んだらレベル差で死ぬ。……マハムドなら俺のテトラジャで防げるけど、あの念動属性魔法とかオマエらだと物理的に“ひしゃげる”からな」
「ヒ……わ、分かった」
「向こうが余り賢くないから上手く引きつけられてるけど、挑発やマカジャマだって必ず決まる訳じゃないから運が悪ければ攻撃がコッチに来る可能性もある。もしそうなったら死ぬ気で避けろ」
「「ア、ハイ」」
眼前で起こってる戦いが自分達では手出し出来ないレベルな事は理解していた二人だったので、ちょっと青い顔をしつつも通行の後ろに隠れながらバグスから出来るだけ距離を取る様に教室内を移動していた。
また、通行はバグスが状態異常魔法を使う事を懸念して二人に【アムリタソーダ*20】を持たせて、自分が食らったら出来れば治してくれと言っておくなど出来る限りの備えをしていた。
「……さて、後は俺のマグネタイトと仲魔のMPが切れる前にダメージレースで勝てるかどうかだ。……ジャイアントキリングはデビルサマナーの嗜みだしなァ。やってやるさ」
……そうして通行は自分に言い聞かせる様にそう呟きながら、通行は真剣な表情で戦闘を見守りながら仲魔へとMAGを供給し続けるのだった。
──────◇◇◇──────
『KうオN悪Oオぉ!!!』
【喰らいつき】
『来るぞ! 私が防ぐ!』
【挑発】
「んじゃアタシが攻撃ね。ね!」
【電撃プレロマ】【ショックバウンド】
みんないっしょうけんめいたたかっている!
『俺も行くホー! 食らうホー!』
【アギ】
『(`・ω・´)ノ』
【スクンダ】
「速度が落ちた! 今なら!」
【ヒートウェイブ*21】
……みんないっしょうけんめいたたかっている!!
『む、そろそろ封印が解けそうだしもう一度だ!』
【マカジャマ】
『MアたぁァA a〜!?』\CLOSE!/
『*\(^o^)/*』
『よし、今の内総攻撃だホー!』
「ほーい」
…………みんないっしょうけんめいたたかっている!!!
「……なんかさっきからワンパターンな戦闘が続いてるんだけど」
「パターンが決まったら後は延々と同じ戦術を繰り返すのが最善だからなァ。尤もこれでも結構大変なンだが、特に命のかかった戦場で同じ最善の行動を繰り返し続ける所とかな」
「実際戦ってる山田先生は大変そうだし、見てるだけのコッチも結構疲れてきたし」
「そう言えば……」
それに今は運良くコッチの戦術が嵌ってるけどどれか一つでもズレたら途端に形勢が傾くぐらいにギリギリの戦況なのだ。ボス補正でも掛かってるのかあのバグスのHPはやけに多いからな……と考えつつ、通行は油断なく戦局を見ながら仲魔へのMAGの供給と指示に集中していた。
『当たれっ!』
【マカジャマ】
『Iイや駄ァぁA!!!』\MISS!/
「チッ、外れたか……テトラジャは貼ってあるから全員呪殺以外の魔法に注意!」
そして、とうとう懸念していた事態……封魔の失敗によるバグスの魔法が使用可能になる瞬間が訪れて、それを受けてその場にいる全員がバグスの繰り出す魔法に一層の注意を払う構えをみせた。
……少なくとも事故死の可能性が高い全体呪殺は無効に出来るし、単体高威力魔法であれば食らった人間を下げて回復させつつ残りのメンバーでそれまでの時間を稼ぐ。或いは最悪自分が前に出る事も必要かと通行が考えた時にバグスは思わぬ行動に出た。
『オOぉMアaEえェェGAアあA!!!』
「げっ⁉︎ コッチに来たぞ!!!」
「そう来るかよ!」
なんとバグスは山田先生や仲魔達が魔法を警戒している隙を突いて、怒りの叫び声を上げながら後方で見ている通行達へと襲い掛かったのだ。
戦っている自分達の誰かに魔法を撃つだろうと警戒していた彼女達は、その思わぬ行動に一瞬反応が遅れてバグスの突破を許してしまい……それを見た通行は即座に『背後の二人の所に通すわけにはいかない以上は自分が迎え撃つしかない』と判断してバットを振りかぶりながらバグスへと突っ込んで行った。
「おらァ! 無様に
『⁉︎ 死ネェe!!!』
【サイオ】
その通行の言葉を聞いたバグスは激高してダメージを無視した全力の念動攻撃を放った……これまで通行は戦闘を見続けながら霊視を続ける事で何となくバグスの“由来”を察していたので、内心ちょっと罪悪感を覚えつつも霊視の導きによる挑発を行う事で相手の狙いを自分に絞る事に成功したのだ。
「(この挑発に反応するって事はアイツの由来は“そういうヤツ”だろうなぁ)……それはそれとしてとっておきの【アギラオストーン*22】を喰らえェ! ぐへァ⁉︎」
『Eエ? GいヤAァぁAA!!!』\WEAK!/
そして念動攻撃が当たる直前に通行は手に持っていたアギラオストーンをカウンター気味にバグスに投げ付けて、自身は念動で大ダメージを受けながらもアギラオストーンを相手に当てて大爆発を起こさせて大ダメージを与えたのだ。
更に弱点を突かれた事でバグスが怯んだそこに追いついた他のメンバーによる一斉攻撃が放たれ、これまで積み重ねて来たダメージと合わせてとうとう相手のHPを削り切ったのだ。
「アークソ、急所は外したけど骨が何本かいったな。まあ回復魔法で治る範囲内だから大丈夫だが。……もう此処にはオマエを虐めるヤツはいないからさっさと逝っとけ」
『Aア……YおカっT a……』
……どこか穏やかな雰囲気を浮かべながらバグスはマグネタイトへと代わって霧散して、それが引き金になったかの様に教室を覆っていた異界も解除されて、ずっと砂嵐と霧を出していたテレビも単なる普通のテレビへと戻ったのだった。
あとがき・各種設定解説
通行:この後めちゃくちゃディアされた
・脇巫女ネキによる実戦でダメージを受けても怯まない様にする訓練としてぶっ殺されては祖先されるみたいな事をやらされてたので負傷には耐性があり、更には重症にならないダメージの受け方とかも出来る。
・修行のお陰か霊視の精度が上がっているのでバグスの正体を察した、他にも補助魔法の習得なども出来たお陰で順調に後方支援系サマナーとしての道を歩き始めている。
・この後は一旦旧校舎から離脱してからハヤタを連れて再度あの『マヨナカテレビ』らしき現象を調査したり、その事をネオベテル本部や何か知ってると思われた山田先生に報告したりと忙しい模様。
バグス:メガテンのボスらしくパターンに嵌められた
・その正体は昔旧校舎でイジメにあって自殺したペルソナ使いの少女の怨霊(当時は異能者へのフォローが不完全だった)が、増加したGPによる活性化と偶然繋がってしまった『マヨナカテレビ』の力でもって悪魔とシャドウの複合体として限界したもの。
・故に悪魔とペルソナとしての【バグス】を併せ持っているが、やはり不安定な怨霊がベースなのでマヨナカテレビが繋がる条件を満たさなければポルターガイストや呪い程度しか使えなかった模様。
・今回は優れた霊能者である通行達が入ってきた事と『午前0時の雨の日』という条件が重なったのでボスクラスのスペックを持って限界できたが、本来はそこまで強くない怨霊でしかなかった。
山田先生他:レベルはかなり上がった
・ちなみに山田先生は今回の戦闘及びその後の調査によって通行から得られた情報から『ネオベテルと悪魔召喚プログラムやばい』と思って、大社にネオベテルとの交渉や繋がりを作る事を本格的に打診したとか。
読了ありがとうございました。
久しぶりに本格的な戦闘シーンを描写したけどまあそれなりかな。感想・評価・誤字報告いつも感謝です。