【急募】貰った悪魔召喚プログラムの使い方   作:貴司崎

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新年度の始まり/新たなる仲間

「……はい! そういうわけで今度から香川県に引っ越して来た高知県民ニキこと、スーパー美少女ペルソナ使い【結月ゆかり】さんだよ! よろしくね☆」

「「いやニキじゃねェじゃん」」

 

 自分家のリビングでそんなドヤ顔キメポーズをかますスレンダーJKを見て、木原兄妹は思わずジト目になりながら突っ込んでしまった。

 ……彼女【結月ゆかり】は引っ越して来たにあたって、四国地方代表(暫定)である木原兄妹との顔合わせの為に彼等の自宅へと挨拶しに来ていたのだ。まあ事前に来る事は掲示板で言っていたが、サプライズの為に自分の性別を伏せていたのでこんな事になってるのだが。

 

「まあ、私は前世では男だったから掲示板ぐらいはそれっぽい口調にしてるんだよ。勿論リアルではファッションや口調や仕草にも気を付けて完璧美少女超人をやってるけどね! 前世ブサメンネクラ引きこもりオタクから活動的ペルソナ使い美少女になったんだから、これは革命的なレボリューションと言っても過言ではないのではないだろうか」

「「……そっすか」」

 

 引き続きドヤ顔でそんな事を宣うゆかりに対し、木原兄妹は揃って溜息を吐きながら『コイツでマヨナカテレビとか大丈夫かな』と思いつつ現在仕事中の両親(ハヤタは母親の護衛)への説明もしとかないとと考えていた。

 ちなみに彼女の家族が引っ越して来たのは偶々空き家となっていた木原家の隣なので、これからは否が応でもお隣さんとして付き合って行く事になる。

 

「おっと、その顔はこっちの事を疑っている顔だね? 大丈夫、ネオベテルの一員としてマヨナカテレビの解決には力を尽くすよ。家族も此処に住む事になるんだし、不安は取り除いておきたいから。それに君達には物件の紹介以外にもそちらのハヤタ君に家の守りもついでにやってくれる様に頼んでくれた恩があるし、他にも何か手伝える事があったら手伝うわよ」

「元々ハヤタは家の近辺を縄張りにしてオカルト的治安維持してたからそのついでだけどな。後あくまでその範囲内ぐらいしか守る気無いと思うからな」

「それで十分、家にいる時だけでも安全で居られるってのは本当に重要なのよ。……高知県に居た時はメシア教警戒し続けて休むに休めなかったし……」

 

 そう言ったゆかりは先程までのアッパーな雰囲気から一転して、物凄くテンションが下がった様子で頭を抱えながら思いっきり溜息を吐いた。

 ……これまで彼女がちょっとテンションアゲアゲだったのは、メシア教の脅威から自分と家族が逃れる事が出来た安堵によるものが大きかったのだ。

 

「その様子だと高知県の現状はあまりよくは無いみたいだな。事前に聞いてはいたが……」

「ええ、私が引っ越す直前には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()わ。ぶっちゃけ私が引っ越しを決めたのはメシア教の勢力拡大が思った以上に早かったからだし。形振り構ってられないから家族にも事情を説明してどうにかね」

「「oh……」」

 

 そうして近場の現状を聞かされた木原兄妹は思わず頭を抱えて天を仰いでいた。メガテン原作知識を持つ転生者達にとって『メシア教』というだけで最警戒に値するものであり、それが自分の生活圏の近くで急速に勢力を拡大しているというのは頭を悩ませるだけの問題なのである。

 

「確かメシア教もGP上昇に対処する為に色々動いているから活動は鈍ってるって聞きましたが」

「“だからこそ”なのよね。……高知県に進出したメシア教は上昇したGPによって発生した悪魔事件で大きな被害を受けていた地元霊能組織、それらに事件解決の戦力を送る代わりとして傘下への加入や協力関係を結ぶ事を促していったのよ」

「成る程……まァ、俺らがやってる事でもあるし連中も当然同じ事は出来るよなァ」

 

 ゆかり曰く、元々高知県ではメシア教の勢力が強かった事やそこのメシア教勢力が比較的穏健な派閥で地元の霊能組織とも良好な関係を築いていたらしい。

 まあ穏健派とは言えメシア教なので彼女は深入りや協力関係を結ぶ事はせず、メシア教と近しい地元組織ともあくまで仕事上での最低限の付き合いだけをしながら引越しの準備をしていて、今回メシア教が勢力を伸ばした事と木原兄妹からの要請を機に引っ越したのだ。

 

「まあでも勢力拡大したのが穏健派ならまだマシか?」

「そう思いたかったんだけどねー。……ちょっと前にメシア系列の教会に追加の人員が来たって小耳に挟んだんだよ。それから少し後に比較的話が分かってまともに話せた穏健派の神父さんが、何故か積極的にこっちに入信を進めて来たんだよね。GPの上昇に対抗する為に結界を張る必要があるから形式的なもので構わないとか言ってたけど、こっそりアナライズしたら【魅了】って状態異常に掛かってたんだよねー」

「どう見ても過激派に超乗っ取られましたね。本当にありがとうございましたorz」

 

 そんな現状から思ったよりも時間は残されていないと判断したゆかりは形振り構わず引っ越す事にしたのだ。幸いメシア教とも地元組織とも距離を取ったフリー霊能者という立場だったので引越し自体に妨害は無く上手くいったのだが、そんな性急な行動をとる推定メシア教過激派が近場にいる現状は変わってないのである。

 

「ほら、二人は四国最大の霊的組織である【大社】に伝手があるんでしょ? その伝手を辿ってメシア教に対抗出来ない? 大社とネオベテルが協力すれば行けそうだと思う!」

「……伝手があるって言っても今の所は精々依頼を受けるか所属している人間と知り合いなぐらいだぞ。それにネオベテルとの協力関係を結ぶ事も含めて交渉はしているが、そもそも現状【ネオベテル】という組織が【大社】へ直接的な支援をするのが難しいからなァ。現状じゃ“仲良くしていきましょう”って言う口約束レベルの協力関係だ」

「脇巫女ネキ達とも相談しましたが、現状だとネオベテルからの大規模な人材派遣やCOMP供給はリソースが足りないから超難しいみたいです。またこの香川に大規模なウチの支部を建てるのも現状難しいですから、転生者の派遣も厳しいとの事」

 

 まず組織同士の協力関係は両者にメリットがある必要がある。そして現状のネオベテルでは大社に対して大きなメリットを与える事は出来ず、逆に大社がネオベテルに与えられるメリットも支部を建てる許可などを与える程の信頼が無い以上、主な活動圏である関東と距離が離れている事もあって殆ど無いので協力関係は非常に薄いもの止まりとなっているのだ。

 まあ木原兄妹個人としてならそれなりに信頼は獲得出来ているが、それはあくまで『依頼するフリー霊能者相手』としてのものであり、彼らが年若い事とあくまで一組織員でしか無い事から組織同士での協力関係の構築には手間取っているのが現状である。

 

「一応俺達個人としては協力関係は作れてるし、ネオベテルについても色々と説明して真っ当な霊能組織だと分かっては貰えてるけどな。ヤタガラスが協力関係を結んだ事や関東圏での活躍の情報とかもあったから。だからこそここら辺がハヤタの縄張り状態になってるのも黙認されてるんだし」

「ただやっぱりネオベテルの活動圏が関東から中部ぐらいなのがネックですね。距離が離れすぎてるので協力関係を結んでもメリット無いよね、むしろ普通に不戦協定レベルの関係で十分だよねって話になってます」

 

 これに関してはそもそも地方の一般霊能組織はあくまで自分の縄張りであるその土地周辺を守るものであり、他組織の協力関係と言っても普通は『お互いの管轄に干渉しない』ぐらいが普通である独立独歩の姿勢が殆どなのが大きな理由である、

 また【大社】の様な大規模組織であれば周辺の霊能組織を実質的に傘下とする様な協力関係を築く事もあるが、それでもあくまで自分達の管轄周辺のみでありそれ以上離れた所に関しては基本的に情報収集をする程度。日本の霊能組織のまとめ役であり全国的に活動する事もあるヤタガラスやクズノハは例外としても、大社とネオベテルの様に活動圏の離れた霊能組織同士はそんな事をしても大して意味がないので本格的な協力関係など結ばない方が普通なのだ。

 

「むしろ支部まで作って勢力圏を拡大しようとしてるネオベテルの方が例外枠なんだよなァ。この辺り複数の組織や霊能者が『転生者』って言う余人には理解できない理由で集まって作られた互助組織で、それ故に対応する範囲が広がってもどうにか出来る異常な人材が揃ってるネオベテルがおかしいンだよ。側から見ればな」

「そんなに勢力を拡大して何が目的なのかとかも聞かれましたね。主に地方メンバーが利用できる支部を作る事と全国的に起こっているGPの上昇に対応する為とか言ったら、そこまでしてこの国を守ろうとしている護国精神溢れる組織なんだなとか言われて草でした」

「私らは自分の楽しみの為に動いてるか、自分や家族の安全確保の為に地域の安全を確保出来ればいいぐらいの連中が殆どなんだけどね」

 

 そもそも先も言った通り普通の霊能組織は自分の縄張りを守る事に精一杯なので、そこに自分の活動圏以外の事件にも対応しようとしていればそう思われるのも当然なのだが。他にそんな事をしているのは護国組織であるヤタガラスとクズノハだけであるし(メシアガイアは除く)

 

「でもそう思われてるなら支部ぐらいは作らせてくれるんじゃない?」

「そこは面子的な問題もあるみたいですね。実際はどうあれ大社がネオベテルの傘下に入ったと思われたら駄目ですし、協力関係結ぶには他にも調整する部分が多いとか」

「後はネオベテル側に支部を作るだけの余裕が無いって言う根本的な問題もある。……そもそも協力関係を結ぶ交渉の為に幹部メンバーを派遣する事すらままならン現状では、支部を作っても中身が無いなんて状態になりかねないからな」

「駄目じゃん」

 

 この辺りはネオベテルの組織としての弱点……組織の主軸である転生者の殆どが個人主義の人間であり、それ故に組織を纏められる或いは組織の“代表”になれる人間が少なく、個人の支援ならともかく組織として動く事が難しいのである。

 ……もし日本の霊能組織が大きく弱体化していて実力だけはある転生者の集団に初手全裸土下座足舐めするレベルで擦り寄るまでに追い詰められていれば、地元組織を実質的な傘下として組織運営は“良きに計らえ”する事で組織としての力が低くともどうにかなったかもしれない。

 だが、当然そんな事にはなっていない程度には地元組織もちゃんとした霊能組織をやってるので、交渉もキチンとした形式のものが必要であり、それが個人主義過ぎて組織としての動きが鈍いネオベテルの体制では難しいのが問題になっているのだ。

 

「現在動ける幹部がいないからな。脇巫女ネキとスライムニキは組織運営やら造魔作成で手一杯、同じくロボキチニキと魔女ネキも技術班としての仕事が忙し過ぎるし、周回ネキも人手が足りないペルソナ事件関連で全国を飛び回ってる。帝都ニキは東京の抑えで動かす訳にはいかないし、神父ニキもカトリックやプロテスタントなどのまとめ役で同じく動かせん。前聞いた時には聖剣云々とかで忙しそうだったしな」

「ヤタガラスにやったみたいな脇巫女ネキによる力付くの交渉は余りやらない方が良いらしいですし……アレはともするとヘイトを稼ぎやすいので繰り返すとこっちを危険視する者が超増えるのだとか。ヤタガラスとか」

「要するにいつもの人員不足だと。まあ名前がついて半年、組織としての活躍を初めて2年ちょいな新興組織が日本全国に手を伸ばすのは無理があるか」

 

 彼らは現状に不満こそあったが一般的な地方霊能組織と付き合いがあり、その実情をある程度は知っていたのでネオベテルの地方支援不足も『まあ仕方ない』と自分を納得させていた。

 

「でも幹部なら通行君がやってくれるんじゃないの? 脇巫女ネキからそんな感じの話を聞いたけど」

「ああそれは名案ですね。通行が幹部やって交渉を担当すれば万事解決では?」

「無茶を言うな……そういう話が脇巫女ネキからも来たけど、俺はまだ中学生だぞ? ……転生者だから実年齢は上でしょ? って話じゃなくて組織の代表で子供を出すのは流石に印象が悪いって話だ」

 

 実の所、通行自身は自分がネオベテルの幹部になるのは必要であればやっても良いぐらいには考えていたが、自分自身の年齢を考えると組織に代表である幹部として動くにはやや印象が悪いだろうし、それを覆せる程の交渉力もカリスマ性も無いから難しいだろうとも考えていた。

 この業界見た目子供でも中身が違う事なんてザラだからいけるんじゃないかという意見もあったが、そもそも自分が中学生だと向こうに知られてるから意味ないだろうと通行は考えていたので幹部関連の話は一旦保留となっている(尚、大社からはただの中学生じゃないだろとは思われてる)

 

「まあ貴女から伝えられた現在の高知県におけるメシア教の情報に関しては伝えますが。あちらもメシア教の脅威は理解してますし、近場の事なので他人事とは行きませんから動いてはくれるでしょう」

「後はマヨナカテレビとペルソナ使いについてもだな。俺たちではマヨナカテレビとかを知覚する事も難しいから、それについての噂が流れていても殆ど何も出来なかったし」

「仕方ないね、今は個人個人でやっていくしかないか。地方への支援は確約してくれるって脇巫女ネキも言ってたし頑張るか」

 

 少なくともネオベテルの活動圏へと転居した他の多くの地方転生者と違って、自分達は地方に留まる択を選んでしまったのだから可能な限り出来る事をしていこうと彼らは結論付けた。

 

「とりあえず大社へと顔つなぎをしつつマヨナカテレビ関連の情報収集をしていくかな。後は他のペルソナ系転生者に習って仲間のペルソナ使いを見つけてこっちに引き込まないと。……二人ともちょっとマヨナカテレビに入ってみない? こう運が良ければ自分のトラウマをほじくり返された挙句にペルソナ使いへ覚醒出来るかもよ」

「それは運が悪かったと超言うんじゃないんですかね?」

「俺らは雨の日の午前零時にテレビに触れても入れなかったんだが、ペルソナ使いと一緒なら入れるのか? 確か原作でもペルソナ使いが他人を引き込んだ描写があったか。……率先して入りたいとも思わんが」

 

 流石に自分のトラウマを率先してほじくり返す様な事はしたくない二人はゆかりにジト目を向けながら色々と理由を付けてマヨナカテレビ入りを拒否した。

 

「いや別に面白がって言ってる訳じゃないよ? ただホントに私一人だと戦力が足りないから仲間のペルソナ使いが欲しいだけで……こう、いい感じに心に闇を抱えてたり鬱屈してる感じの知り合いとか居ない? ペルソナ使いって大体そんな感じだし」

「心当たりが無い訳でも無いですが、流石にマヨナカテレビに積極的にぶち込むのはどうなんですかね」

「他の所の現地人ペルソナ使いも偶然認知異界に取り込まれたのを救出したのがきっかけで仲間にしたんだしなァ。そもそも現在『マヨナカテレビ』の事は噂にはなってるけど行方不明者とかは聞いてないな。概要を話しておいた大社の方でもそんな話は聞いてないし」

「まあまずは調査からするしか無いですね。……とりあえず今後ともよろしく、お二人とも」

 

 ……こうしてネオベテル香川支部メンバー(暫定)はこれから訪れる【終末】に備えながらも抗う為、『とりあえず今出来る事をしていこう、特に情報収集とコネ作り』と言った方針で活動を始めたのであった。




あとがき・各種設定解説

結月ゆかり:TS美少女ペルソナ使い
・四国に留まっているのは家族の為と地元に愛着があるから、そしてネオベテル幹部から地方及びマヨナカテレビ対策に留まってくれと頼まれたからである(当然報酬も出る)
・ネオベテルの上としても地方の情勢をリアルタイムで知れる地方民の事は重要視しているので、地方支部幹部候補には情報料として報酬を与えたり格安で物資を優先して届けるなどのサービスもやってる。
・保有ペルソナは【恋愛 キクリヒメ】で疾風属性と回復魔法を主体にや少数の補助魔法や物理攻撃スキルも使えて、更に専門のペルソナには劣るが解析やナビゲーションも可能な万能型(要するに序盤ナビ)
・本人も技術班が開発したチェーンソー【ゴッドスレイヤー】を使って戦える武闘派ではあり、ソロ活動が長かったのでレベルも20弱ある精鋭だったりするので認知異界対策に上から声を掛けられた模様。

木原兄妹:新年度になって学年が上がった
・現在は夏休みに悪魔召喚プログラムを手に入れてから半年以上経って新年度になったぐらいで、その間にレベルが上がったり妹が自分用にCOMP(スマホ型)を注文したり色々あった模様。
・こちらも地方に留まってるのは家族と地元への愛着もあるが、割と大社などともいい関係が築けているしネオベテルの為にも地方に留まるメンバーはいた方が良いという考えもある。
・後は未だ未成年で使える金やアイテムが少ない彼等なので地方手当て目当てでやってる所もあり、これらの点から現状が割と上手くいってるので態々関東圏まで引っ越す必要を感じていないのが大きい。
・……しかしながら近場にヤバ目なメシア教勢力が出来た事には頭を抱えているので、何とかネオベテル本部からの更なる支援や大社との協力関係を結べないか四苦八苦してる。


読了ありがとうございました。
新キャラ追加でネオベテル香川支部(仮)が始動しました。これから終末対策に地方の環境をどうにかするサクセスストーリーが始まる予定かも(笑)
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