「……よく来たな強き人の子よ。早速で悪いがお前達に頼みがある……死後にあのテレビの中にある異界へと囚われてしまった【夜刀神天香】の魂を救い出して、この異界を消し去って欲しいのだ」
「なンだって?」
さて、俺達がボス部屋に続いてるらしき扉を潜ったら、その中のかなり広い室内の最奥で正に玉座の様な豪奢な椅子に座っている外見はヤケに美少女な天使? からそんな事を言われた訳だが。
……とりあえず明らかに普通の天使じゃなさそうだから、まずは【アナライズ*1】か。
「……俺のアナライズの結果は【天使 パワー Lv30】って出たが、確かパワーって鎧着た天使だった筈だが。そっちは?」
「こちらも同じ結果ですわね。むしろレベル的にはさっきのプリンシパリティより格的には上位の筈なのにも弱い気がしますわ」
「こっちも同じだよ。……それでどうするの? アナライズ結果からすれば総攻撃で倒せそうだけど」
「天使を見たら向こうが何か囀る前にブチ殺すのが基本というのが一般的では?」
「……いや、私を殺すのは構わんのだが、その前にこの異界やこちらの事情を聞いてはくれんか? 今まで戦った天使が全員“あんなの”で疑う気持ちは分かるが」
俺達が『とりあえずブチ殺そうぜ!』って結論になりかけた所、座っていた【パワー(仮)】が凄く困った表情で溜息を吐きながら懇願して来た。
……どうも俺達が知ってるごく普通の天使(人格ゴミ)とは雰囲気が違う気がするな。念の為に警戒しつつもう少し見てみるか……。
「……この異界に居た同胞である筈の天使を“あんなの”呼ばわりして、更に話を聞かずにブチ殺そうとするこちらに対しても逆ギレしない辺り一般的な天使では無いみたいだな。よくアナライズしてみたらスキルに【守護天使】ってあったぞ」
「まあ一般的な天使ならそもそも人間とまともな会話をする判断すら下さないでしょうしね。自分を殺すのは構わないとすら言っていますし、確かスキルの【守護天使】は特定の人間個人を守る天使に付く汎用スキルでこれが有ると人間の認識で在り方が変質し易いらしいですわ。ウチの天使型造魔には制御用に全員着けてます」
『それと通行殿、探ってみた所あの天使は中身のマグネタイトがほぼ空です。はっきり言ってしまえばこのまま放置しておいても直に消滅するレベルで弱まっています。異界のマグネタイトを収奪する事も良くある一般的な天使とは行動パターンが違うのでは……』
「知ってはいたが一般的な天使の印象が悪過ぎる……」
うーむ、俺らの天使の印象(だいたいクソ)を聞いても逆ギレしない辺り、彼女は本当に超希少種である『真っ当な天使』である可能性が出て来たな。異界に出て来た連中がアレだったからイマイチ信用出来ないが。
「……分かりましたわ。とりあえず話を聞くだけは聞いてあげますので、貴女がこの異界に付いて知っている事を全て話しなさい。そちらの頼みを聞くかどうかはそれから判断致しますわ」
「超いいんですか? 騙されたりとかは……」
「この異界についての情報は出来る限り知りたいですし、そもそも天使の大半は人間を騙そうとする程の判断力は持っていないぐらいに話が通じませんわ。……騙そうとしているのならそれはそれで判断力と知性を持った個体ですから交渉次第では情報を抜き出せますし、最悪力付くで倒せば良いだけです」
「まあ今は情報が欲しいしね。周回ネキがそう言うのならいいんじゃない?」
「俺も話を聞いてみンのには賛成だな。ワンチャン話が通じる天使である可能性もあるからな。それに戦うのは話を聞いてからでも遅くないだろう」
『某の鼻であれば大抵の嘘は見抜けますので』
まあ紆余曲折の末、最終的には此処の異常な異界についての情報収集の必要性から『とりあえず話だけは聞こう』と言う結論になった訳だがな。
……話を聞くかどうかにも熟考の必要があるとは天使は本当に面倒だな、大体は話す前に戦闘になるか殲滅するかだから普段は気にならないのだが。
「……分かった、とにかく話を聞いてくれるのならそれで良い。……まず、私はかつてこの屋敷に住んでいた夜刀神家の家族の内、祖母に当たる【夜刀神天香】に憑いていた守護天使だったのだ。勿論敬虔な信徒ではあるが異能者では無かった彼女を守護する際には実体も意識もない一種の加護のような状態だった分霊であったのだが」
「まあ、悪魔が非覚醒者の人間を守護する際には稀にある形式ですわね。守護霊や悪魔憑きや憑き神とか呼ばれてるタイプの加護ですわ」
「資料には確かに死亡した祖母の名前は“夜刀神天香”とあンな」
ちなみに大幅に劣化しているとは言え分霊を憑依させているので通常の加護よりも与えられる恩恵は多いのだが、ある程度の霊的資質や相性も必要な上に憑かれた事によって覚醒する場合もあるので対象を守る加護と見るなら一長一短といった感じらしい。後は天使を降ろして守護天使にして自己強化する術とかもあるらしいが。
……だが、わざわざ自分の分霊を大幅に劣化させてまで非覚醒者に憑依させるので基本的に本霊側には益がほぼ無く、逆に言えばこの形式を行なっている悪魔はよっぽど加護を与える人の事を気に入っているケースが殆どの様だ(稀に超希少な資質持ちに唾を付ける意味でやる時もあるが)
「夜刀神家はもう随分と昔の話になるが私の本霊が力を貸し与えていたエクソシストの末裔が、戦後辺りに日本に帰化した家でな。その時点では既にエクソシストとしての力と血筋は途絶えていたのだが、そうなった後も熱心に主を信仰していたから私の様な簡単な加護を与えていたのだ」
「まあ流石にそこまでになると【大社】でも調べられませんか。おそらく今の夜刀神家の人間は自分の先祖が霊能者だった事も知らないでしょうしね」
「うむ、血が薄まり過ぎたからな、今の夜刀神家は現実に悪魔や天使の存在を知る事の無い普通の家系だ。それでも私は守護天使としての役目を果たし続けて、また一人天に召され様としていた夜刀神天香の魂を主の元に導こうとしたのだが……」
そこまで言った【パワー(仮)】は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて顔を俯けた……四文字の元に魂を導くとか罰ゲームじゃと思ってしまうが空気を読んで余計な事は言いません。彼女の本体はまともな可能性もあるし。
「その直前にテレビから出て来た謎の霧に天香の魂が捕らえられ、更にはテレビの中にあった集合意識寄りの異常な異界に取り込まれてしまったのだ。……勿論私も魂を取り戻そうとしたのだが当時の超劣化分霊であった状態ではあの霧の力には敵わず、情け無い事に逆に私自身もテレビの中に取り込まれてしまったのだ」
「……やはり、此処の【マヨナカテレビ】は死者の魂を取り込むのですね。事前の予想が合ってましたか」
「だから生きている人間は取り込まれなかったのかな? まだ確定じゃないから調べてみないと分からないけど」
「この異界について何か知っているのか?」
そこでパワー(仮)が【マヨナカテレビ】について聞いて来たので、とりあえず重要情報である原作知識を除いた触りの情報だけ教えておいた。
……ハヤタの鼻や俺や周回ネキ達のアナライズや霊視でも彼女は嘘を言っている様子はなかったので、多少の情報提供をしても大丈夫な相手だろうとの判断だ。それに変質した【マヨナカテレビ】の情報も知ってそうだしな。
「……成る程、【マヨナカテレビ】と言うのか彼処は。……この国の神話体系による死後の国やそれを司る悪魔相手であれば魂が奪われても交渉なり本体が力付くなりやりようはあったのだが私単独ではこの異常な異界には抗うことも出来ず、天香の魂は異界のボスである悪魔の様な“ナニカ”に、私もその配下となる異界の悪魔の一体となってしまったのだ」
「ですが、今の貴女はこの異界のボスの様な立ち位置に居るようですが?」
「それは私が天香だったナニカから一時的に異界のボスの座を掠め取ったからだ。……そのナニカは名前だけは天使である【ドミニオン】を名乗っていたが、その姿も在り方も天使はおろか普通の悪魔でもない異質な存在だった。それに加えてテレビの中から現実世界、果ては天香の家族にまで害を成そうとしたから守護天使であったパスを利用し、配下としての立場を利用してマグネタイトと異界の支配権の一部を奪いながら干渉する事で外に出ない様に誘導しながらヤツを封印したのだ。これでも本体との縁で『天使を幽閉する』事は得意なのでな」
まあ、それでも同じ天使である彼女ですら詳細なステータスが読み取れないぐらいに異常な相手だった事もあり完全には抑えきれず、その結果として報告書にあった現実への霊障や心霊現象は起きてしまった様だが。まあそのお陰で夜刀神家は屋敷を捨てて県外に引っ越してしまい取り込んだ魂と縁の深い家族が居なくなった事、そして【大社】が施した結界の効果によって【ドミニオン】の活動は小康状態となったのだとか。
ちなみに彼女の見た目が通常の【天使 パワー】と違うのは認知異界に接続した時に変質したからであり、見た目が夜刀神天香の若い頃にそっくりらしいから捕らえられた魂に引っ張られたのではないか、或いは夜刀神天香に残された意思が自分の代わりに家族を守ってくれと言っているのではないかと彼女自身は言っていた。
「……だが、そんな状況も長くは続かずGPの上昇によってどんどん抑えが効かなくなって行き、先日高位の霊能者が屋敷に訪れた事がキッカケとなってあの【ドミニオン】は現実に干渉出来る様になりこんな異界が出来てしまったのだ」
「……あー、私達が訪れた事がキッカケだったのか。でもマヨナカテレビの反応があればペルソナ使いの私達なら気付くと思うんだけど」
「多分ですが封印されて外に干渉しようとしていなかったから気付けなかったのかと。認知異界の特性なら彼女の『外に干渉させない』意思の強さで隠蔽となっていたとか。私達ペルソナ使いでもナビ特化でも無いと現実から認知異界内部を把握するのは難しいですし、意識していなければ気付けない事も有り得るでしょう」
まあ、先週はこの屋敷についても『単なる悪霊がいるちょっとした異界となっている』としか思えなかったから、態々【マヨナカテレビ】内部に入ってまで調べたりはしなかったからな。
「後は人の魂が起点になっているからある種の【パレス】か【ジェイル】に近い、ある種独立した認知異界になっているのかもしれませんわね。それなら【マヨナカテレビ】内部に入った時にこの異界に気付かなかった事にも辻褄は合います。詳しくは今後の調査が必要な案件ですが」
「……済まんがあまり時間は残されてはいないのだ。……優しかった天香の魂が人を傷つけぬ様に今も私は異界を抑え込み、更には天使を無駄に召喚して異界を管理させる事でマグネタイトを消費させて異界の拡大を抑えているが、そもそもこれまで無理をして来たからか私自身のマグネタイトがもう限界でな。おそらく後半日もせずに消滅してしまうだろう。……私の代行が出来る天使が召喚出来れば良かったのだが、召喚される天使が悉く“アレ”でなぁ……」
「「「「あぁ……」」」」
どうやら彼女は天使ガチャで爆死したらしいな……まあ、今の世界に於いてまともな天使召喚なんて排出率低いガチャのSSR並みの確率ぐらいだからしょうがないよね(笑)神父ニキ達は色々工夫して確定ガチャしてるみたいだけど。
それでも階級社会で上位からの命令を拒否出来ない天使の性質を利用して、無駄に大量のMAGを与えてレベルを上げつつ異界内に配置する事で異界のMAGを消費させてボスである【ドミニオン】が活動し難くさせるなど有効利用していた様だがな。チグハグな異界の構成はそういう理由だったらしい。
「そうして私はどうにか異界の被害が外部に行かない様にしながら、テレビに取り込まれて変質した天香の魂がこれ以上誰かを傷つけぬ様に封じ続けていたのだが……先も言ったが私自身が既に限界でな。もう間も無く封じられている【ドミニオン】モドキは外に出て、異界の主としての力を取り戻して暴虐の限りを尽くすのだろう。……故にお前達にはこれから出て来る【ドミニオン】モドキを倒して、せめて天香の魂がこれ以上罪を重ねぬ内に解放してほしいのだ」
「成る程、そういう事情だったのですわね…………ちょっとタイム! 相談しますわ」
「別に構わないが急いでくれよ、封印は後数時間しか持たないからな。正直言って私は立つのも辛いぐらいには消耗している」
どうやらずっと座ってたのは立つ事も出来ないからだったらしい彼女から少し離れて、俺達は集まってこの頼みを引き受けるかどうか話し合う事となった。
「……でも、こうなってしまったら話を受けるしか超無いのでは。どの道この異界は潰す必要があるんですし、放置しておけばレベル高そうな天使が現れて酷い事になるんでしょう。依頼自体は真っ当なものですし」
『少なくともあの天使からは嘘の匂いはしなかったので、この家で起きた事やもう封印が維持出来ない事は少なくとも本当だと思います。後は私見になりますが焦りや懇願の感情は感じましたが、こちらを騙そうとするとか上手く使ってやろうという気配は感じられませんでした』
「てことは後数時間でヤバい異界ボスが出て来ると……此処って割と街に近いんだけど被害がマズそうかな。そもそも【ドミニオン】ってどんぐらいの強さだったっけ?」
「大体レベル50前後の高位の天使ですわね。まあ一体だけなら私でも倒せる相手ではありますが、異界のボスであり異常な変質を遂げてるとなると対処出来るかは分かりませんわ」
「詳細な情報が分からないのは痛いな。……ただ、どの道討伐して異界を修祓するんだから情報は得ておいた方がいいだろ。その為に戦うって考えもある」
現状の異界のGPでそこまでのレベルの悪魔が出るというのは考え難いのだが……以前の旧校舎でレベル20超えてる【バグス】が出たりしたし、異常を来してる【マヨナカテレビ】から出て来る悪魔を普通のモノと同一視するのは危険か。
「出来れば幹部メンバー複数名で叩きたい相手になりますが時間が足りなくて援軍は期待出来ませんわね。……出て来なさい『わたくし達』、異界の外に出て間桐君にこの事を伝えて下さいませ。それとネオベテル本部とついでに大社にも」
「分かりましたわ、わたくし。【トラエスト*2】」
とりあえず周回ネキが同じ顔した分身(なんか作り出せるらしい、幹部ヤバイな)を影から呼び出して異界から脱出させて現状の情報を報告する連絡係に仕立て上げた。
……さて、後はこの異界のボスと戦うかどうかだが、こうなれば『戦う気があるかどうか』が肝心な所だろう。向こうのパワーさんもさっきから律儀に待ってくれているからそろそろ決めないとな。
「さて、まず私自身はこの頼みを受けようと思いますわ。何度も言われてますがどの道この異界は修祓する必要がありますし、マヨナカテレビの異常についても調べて起きたいので。これまでの経験からこの手の問題は後回しにすると“ひどい事”になるのが常でしたから。それに相手が【ドミニオン】であれば私だけでも十分に勝算はありますし、最悪逃げるか『奥の手』を切りますので。……それで皆様はどうしますか? 脱出したいなら【トラエスト】で送りますが」
「じゃあ私もやるよ。周回ネキが居て勝算あるならやる価値はあるでしょ。それに放置しておいて状況が悪くなったら結局は私達が戦う羽目になりそうだしね」
「確かに超そうですね、であれば私も参加しましょう。……まあレベル差がありそうなのでアイテム係になりそうですが」
『某は通行殿と最愛殿の指示に従いましょう』
「じゃあ俺もやるわ。……後、提案なんだが戦闘の勝率上げて、ついでに依頼の“報酬”を貰う策があるんだが……」
とりあえず全員が頼みを受けて異界のボスである【ドミニオン】ととりあえず戦う事に決めた所で、俺は思いついたある一つの“策”を提案してみせた。
……正直頼みを聞くのはいいのだがタダ働きは何となく嫌だったのと、不確定要素の多い異界ボス相手に少しでも勝率を上げる為の策だったのだが、周回ネキが『中々良い策ですわね。“貴方なら”成功率は高いでしょう』と言ってくれたお陰でやってみる価値はあるって事になった。
「……分かりましたわ。我々としてもどのみち異界の修祓は行おうと思っていましたので、貴女の頼みは引き受けましょう」
「そうか! 助かる「ですが、頼み事を受けるのにタダ働きというのは良くないのがこの業界の基本ですので、貴女からは“報酬”を頂きたいのですわぁ」
「む、いや報酬と言っても今の私に渡せるモノは何も無いぞ。既に数時間後の消滅を待つ身であるのだし……」
「いえいえ、貴女自身の身……“レベル30の天使”という立派な戦力となり得る報酬があるではないですか。具体的にはこちらに居る通行君の仲魔となって欲しいのです。レベルは今32である彼の方が上ですから契約は問題ありませんし、契約すればMAGも供給されますから戦えるでしょうね」
そんな風に非常にいい笑顔でこちらが考える報酬を提示した周回ネキを見て、彼女の方は目を見開きながら面食らった様な雰囲気となった。
これが俺の考えた策、というか単なる考えなのだが話を聞く限り彼女は天使としてはまともな人格をしているし、この異界のボス相手の戦闘であれば動機も十分だから信用は出来るだろうからな。
……後は異界ボスの配下になっている彼女と契約出来るかどうかなのだが、俺の持っている【スティーブン製のオリジナルCOMP】は量産型と比べると仲魔との契約ラインが強いから十分に勝算はあるという考えだ。それに失敗しても特に損にはならないから試すだけ試してみるのはありだろうしな。
「……良いだろう。我が身を報酬としてそちらに預ける程度で頼みを聞いて貰えるのなら問題無い。加えて天香の魂を救う為に戦わせてくれるのならば願っても無い事だ」
「じゃあ交渉成立だな。ただ俺は一神教徒じゃないし、今後も改宗とかする予定はねェが」
「ああ、それで構わない。お前達は自分の目的こそあれ天使である私の頼みを聞いてくれたのだから、決して悪人という訳では無いのだろうからな。この戦いに関してはお前達に全面的に協力するし、その後に関してもお前が“善き人”である限りは力を貸そう。それが不服なら合体素材にでもすれば良い」
「“善き人”ねェ……メシア教過激派みたいに『異教徒虐殺!』『信徒は天使に改造だ!』とかしなきゃ良いのか?」
「……それは“善き人”以前の問題だろう……」
まあそりゃそうだがな(笑)……さて、問題は彼女と契約出来るかどうかだったのだが、その辺りは流石スティーブン謹製の悪魔召喚プログラムと言うべきかアッサリと契約は完了して【天使 パワー Lv30】が新たに俺の仲魔となったのだった。
「……うむ、契約は無事に終わった様だな。異質な異界に取り込まれたから上手く契約出来るかは不安だったが問題なさそうだ。……とりあえずこういう時のお約束として『コンゴトモヨロシク』と言っておく」
「あァ、コンゴトモヨロシク。それでMAGの供給の方はどうだ?」
「そちらも問題無い。サマナーのMAGはかなりの量がある様だからな、契約のパスを通じてキチンと流れ込んで十分戦闘が出来る程度には回復した。……だが、私が仲魔になった事によって異界とは切り離されてしまった様だから施していた封印は直ぐに切れるぞ」
契約を終えたパワーがそう言った直後、彼女が座っていた玉座の向こう側にあった古びたブラウン管テレビの画面に激しい砂嵐が走り、更にその画面から多量の『霧』が部屋の中に流れ出てきたのだ。
「コイツは……旧校舎の時と同じか!」
「来ますわね、全員戦闘準備!」
周回ネキの号令で戦闘の構えを見せるメンバー、俺も今契約した【パワー】と属性相性に長けるから出しておいた【アマノザコ】に加えて三体目に格上相手でも簡単には落ちない狙いで【シャアザク】を召喚して迎え撃つ構えを見せる。
……その間にもテレビから出て来た霧は徐々に人の形を取っていき、多少霧が薄まったそこには白いローブを着て同じく白い羽根を生やした天使の様な人型の悪魔が居た……が、その雰囲気はこれまでに見た良くも悪くも清浄な気配を発していた天使とは異なり形容しがたい異質なモノになっており、そしてその顔には嘆いている人の顔の様な『仮面』が取り付けられていた。
『Hあレx e流ぅ家xあaアァァ!!!』
【天使/
「また種族とアルカナがダブってる表記のヤツかよ!」
「レベル55……レベルに関しては私より僅かに低いですが異界ボスである以上油断は出来ませんわね。行きますわよ!」
そうして現れた“ドミニオンの様な何か”に対して俺達は周回ネキを中心としながら戦いを挑んでいくのだった……ええいっ、俺は支部を作って楽しようと思ってたのに何でこんな修羅場を潜らなければならないんだ(n回目)!
あとがき・各種設定解説
【天使 パワー Lv30】
ステータスタイプ:力・体中心のバランス型
防御相性:電撃・破魔無効、物理耐性、衝撃・呪殺弱点
能動スキル:【ギロチンカット】【牙折り】【ジャベリンレイン】【白龍撃】【メギド】【タルカジャ】【ラクカジャ】【ディアラマ】
自動スキル:【物理耐性】
汎用スキル:【守護天使】【天使幽閉(弱体化中)】
・通行の新しい仲魔でありレア度SSRレベルの比較的マトモな天使で、自分のMAGを削って封印を維持していたからか通常の【パワー】と比べてレベルが低い。
・だが、異常なマヨナカテレビに取り込まれた際の変質と、それに対抗する為に本体から力を引き出したりした事でスキルや耐性や外見などが通常のパワーとは殆ど別物になっている。
・実際は本体と深く繋がった所為で霊基がパワーなだけの“とある大天使の弱体化している状態”とも言えるのだが、本人としては一神教徒でない通行に従うのに依存は無いなど人格は非常にまとも。
・彼女曰く『一切覚えていないのだが、それ故に“自分がキョウダイの事を忘れている”事は把握出来る。多分向こうも好き勝手やってるんだろうし、こちらも好き勝手やってもいいだろう』などのコメントを残している。
オリジナルCOMP:量産化にあたって幾らか性能はオミットされている
・仲魔との契約のパスに関しては使用者への安全性は量産型とオリジナルに差は無いが、現行ハードのスペック的にそちらにリソースを取られているので他の機能は削られている。
・具体的には『サマナーと仲魔をリンクさせる事で悪魔をレベルアップさせる』事や『契約を介して仲魔の存在を安定させる』などの機能は、オリジナルと比べて量産型は6〜8割程度になっている。
・今回の【パワー】もMAGの消費だけでなく霊基も安定していなかったが、オリジナルCOMPによる契約だったので直ぐに戦闘出来るぐらいに状態が保持されている。
・ちなみにオリジナルのCOMPにはまだ結構な空き容量が存在している模様で、ネオベテルに預けられた方は追加アプリの実験に使われている。
読了ありがとうございました。
ちなみに異界のボスは異界自体からのバックアップを受けるので、その強さは異界の規模によって乗車する。よって異界の規模次第ではレベル以上に強くなる事もある(例:恐山)し、逆に異界の規模が小さければバックアップも少なくなる。