【急募】貰った悪魔召喚プログラムの使い方   作:貴司崎

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短編集:神樹様と大社

 □久しぶりの神樹館小学校勇者部の章

 

 色々(主に支部設立案件で)あった夏休みも終わり、久し振りに神樹館小学校の勇者部にやって来た私こと木原最愛。夏休み中は香川支部設立に向けての各種調整ややって来た建築班との会議とか大変だったので、夏休み中の勇者部ボランティアにはさっぱり参加出来なかったので申し訳ないですね。

 

「お久しぶりですね皆さん。夏休み中はボランティアや霊能依頼を手伝えなくて超申し訳ありません」

「いえ大丈夫ですよ最愛さん。大社の方から事情は聞いているので……なんか霊格が凄い事になってるんですけど」

 

 そんな訳で意気揚々と勇者部部室に入って謝りつつも挨拶をしたら、何故かいきなりひなたが此方を見て顔を引きつらせたのですが……まあ、あの異界攻略の後にCOMPで私のレベルを測ったら【レベル27】になってましたからそれが原因でしょう。

 霊格云々言ってますし、おそらく神樹の巫女であり強力な霊視能力を持つ彼女から見れば『夏休み明けに再会したクラスメイトが化け物になってた』みたいなもんなんでしょう。

 

「ちょっとレベル50越えのボスがいる異界をウチの兄や幹部と一緒に攻略したらレベルが上がったんですよ。まあレベル50代後半の幹部の引率による攻略だったのでこのぐらいしか上がってないみたいですが」

「……いや十分では? むしろたった一カ月でどうすればそれだけ強くなるのか……」

「……なんか郡様みたいな大社でもトップレベルの人とかと同じ気配なんだけど……」

「それよりレベル50越えボスの異界って何タマ……?」

「最近悪魔が強くなってる事は知ってたけどそこまで……?」

 

 なので皆さんの疑問に答えるべく簡単な説明をしたのですが、霊視力高い巫女であるひなたと美佳は相変わらず引きつった顔で、球子と杏は私の説明を聞いて危機感を覚えて同じく顔が引きつってます。

 ちなみに例の異界の一件を聞いた大社の上層部達も付けている仮面越しでも分かるぐらいに狼狽していましたがね。彼等の方が正確に事態や自分達の戦力を理解してるからまあ当然であり、更にそんなボスをネオベテル幹部が倒したとも聞いたので全力で此方との連携を図る方策にしたらしいですが。

 

「やっぱり凄いね最愛ちゃんは! 私達も夏休みに偶々強い悪魔と遭遇して、みんなで協力してどうにか倒せて強くなったと思ったんだけどまだまだだったね!」

【覚醒者 高嶋友奈 Lv14】

「うむ、大社でも最近の悪魔はこれまでの比ではないぐらいに強くなっていると聞いた。この前会った千景も少し前までとは比べ物にならないぐらいに強くなっていたし、我々ももっと精進しなければ」

【覚醒者 乃木若葉 Lv16】

 

 その辺りあんまり動揺していないというか、むしろ更にやる気を出しているのが友奈と若葉の武闘派系な二人ですね。COMPで見たら夏休み前の私以上にはレベルも上がっているので、修練や実戦の経験を積んだのは確かなのでしょう。

 ……まあ、出現する悪魔の平均レベルが20超えてる現状だとちょっと心許ないですがね。私自身も(ネオベテル的には)ようやく一線級のレベルになった程度ですしもっと修行しないとインフレに置いていかれそうです。

 

「……というか千景は強さもそうだが雰囲気も大分変わっていたな。前までならレベル差で私にマウントを取って来そうだったのに、何というか“強者の風格”が出てる感じがしたな」

「若葉って意外と容赦ないものの言い方をしますよね。……まあ中学生から本格的な霊能依頼を受けるんですし、その経験から一皮向けたとかでは?」

「確かに最愛さんもそんな風格というか実戦経験の差を感じられる時があります……貴女って覚醒して一年ちょっとしか経ってない筈ですよね?」

「今更だなー」

 

 ちなみに若葉が結構酷い事を言ってる気がしますが、実は神樹館小学校勇者部の時の千景は若葉と特に霊能的な実力に関して何かと張り合っていましたからね。

 大社の名家である乃木家出身で幼い頃から訓練を積んでいた若葉と、元は高知県の一般家庭出身ながら色々あって大社に引き取られて霊能者として高い才能を有していた千景なので、まあ千景側が若葉にコンプレックスを抱いて突っかかるライバル関係みたいなもんでした。

 

「でも郡ちゃんは前に会った時に『……この業界上には上がいるし、そんな事にこだわっても虚しいだけだもの。……ふふふ、今の環境を生き残るにはそんな事するよりも目の前の依頼に集中しないと、高嶋さんも来年にはわかるわ……』って凄い遠い目をして言ってました!」

「中学校は地獄なのかー? この前の悪魔相手もヤバかったけど、タマ来年がちょっと怖くなってきたぞ」

「私と同じ内勤系の巫女だった筈の真鈴が何故かバリバリの前線型になってましたからね。本人は『こんな筈ではー! でも実情知ってると私程度が抜けるだけでもヤバい事分かって抜けられないー!』とか何とか」

「……ひょっとして私達は温室で生かされてるだけなのでは……?」

「神樹様の託宣で子供には危険な事をさせないのが大社の方針ですから。……でも最近の状況から讃州中学勇者部のメンバーに色々と依頼を出さなければならなくなってるみたいですが……」

 

 どうしてか先行きの不安さに部内が暗い雰囲気になって来ましたね……私達ネオベテルメンバーの転生者はこの世界が【終末】を迎える可能性がある事を理解した上で行動してますから今更GPの上昇ぐらいで動揺はしないのですが、まあ普通の一般業界人ならこういう反応が普通ですよね。

 それにネオベテルには脇巫女ネキを始めとする高レベル幹部達がいるので、『最終的には彼等がなんとかしてくれるだろう』という考えがあるのも現状に悲観してない理由でしょうが。まあ私としては彼等に頼りきりだと“それでもどうしようもない事態”になったら不味いのではとも超思いますがね。

 

「まあ大社とネオベテルが協力関係を結べましたし、近々この近辺にジュネスに偽装した支部とか派出所とかも建つ予定ですから。ウチにはレベル30以上の戦闘メンバーやレベル50を優に超えている幹部メンバー達もいますし、高々レベル20程度の悪魔が出る今の環境でも十分に戦えますよ」

「え? この香川県に大型スーパーマーケットのジュネスが建つとかデマでしょ」

「ネオベテルのメンバーのレベルがなんかおかしくないですかね? ……まあ最愛ちゃんを見てるとあり得るかなとも思いますが」

「でも味方なら心強いね! 名前は変だけど」

「まあ大社も現状をどうにかする為に手段を選んではいられないでしょうし……」

「ここはやはり修行しかないな!」

 

 問題は現在全国的にGPが上がってそれにより起きた事件を解決する為にネオベテル戦闘系メンバー達が派遣されていて、その所為でこっちに回せそうな人員が殆どいないぐらいに足りていない事なのですがねー。

 一応支部を作った後にはちゃんと事務員を回してくれるという話ですけど戦闘員はどの程度来てくれるか。何せうどんが美味しいぐらいしかアピールポイントが思いつかない田舎ですからねー(独断と偏見)

 

「……こんにちは、みんな揃ってるわね」

「あ、鷲尾先生! こんにちは!」

【覚醒者 鷲尾春香 Lv21】

 

 そうして部屋の空気が少しマシになった所で部室に入って来たのは神樹館小学校勇者部顧問にして大社の霊能者である【鷲尾春香】先生。彼女は大社の名家の一つである鷲尾家の出身で、その実力と人柄から彼女達『勇者』の引率係として選ばれた凄腕の霊能者です。

 ……レベルなら私の方が上というか勇者達とそんなに変わらないんじゃないか? 色々反則な転生者は除外、かつ勇者システムの担い手や神樹の巫女に選ばれた彼女達は現地民の中でも有数の霊的資質を持ってるので。実際レベルが20超えてるだけでも大社の中ではトップクラスの実力者ですよ。

 

「それで今日は何をするんですか先生。久しぶりにボランティアとか!」

「いや最近の状況からして更なる力を得る為の修行とかか? 或いは実戦を……」

「はいはい、今日集まってもらったのはボランティアや依頼の話じゃないからね。……今日は皆さんに渡したい物があるのよ」

 

 何かやる気になっている友奈と若葉の二人を制した鷲尾先生が持っていた大型バッグから取り出したのは、私にとっては非常に見覚えのある前世であったスマートフォンを少し大きくして模した様な機械……というかコレは……。

 

「コレはウチ(ネオベテル)製のCOMPですね。確か大社とネオベテルの協力関係構築と支部建設の許可と霊地譲渡の対価として送られたんでしたか」

「ネオベテル所属の最愛さんは当然知ってるわよね。……そう、コレが【万神連合ネオベテル・ウルトラスープレックスホールド】が作り上げた、これまで限られた超一流の霊能者しか使えなかった悪魔使役をおよそ誰でも使える様にした最新鋭の霊装であるCOMP。……今日はコレを皆さんに渡しに来たのよ」

 

 確かに交渉を主に担当した周回ネキの方から『【大社】からの頼みで多くのCOMPをあちらに提供する事になりましたわ。向こうは直ぐに戦力を増強出来る手段としてCOMPと悪魔召喚プログラムに目を付けたみたいですわね。コレも最初のデビルサマナーであるギリメニキが頑張ったお陰でしょうか』などと言ってましたね。

 ……まあ、悪魔を使って一流の霊能者数人分の働きをしてる通行を見ていればデビルサマナーを増やす事によって戦力不足を補えると考えるのも無理はないのですが、私の考えとしては一端のデビルサマナーとして活躍する事はかなり大変な事でもあると思うんですがね。

 

「あ、コレって最愛ちゃんが使ってるヤツだね!」

「確か悪魔を使役したり解析したり出来る機械でしたか」

「前々から便利そうだなとは思ってたんですが、まさか私達にも使える様になるだなんて……これもネオベテルとの協力関係のお陰ですか」

「まあそうね。……もう気付いてるとは思うけど最近のGP上昇によって出現悪魔のレベルが異常に上がっているわ。だからこそ今後の大社やこの地区の霊的治安を守っていくであろう貴女達が死なない様に、貴女達勇者の新たな戦力として悪魔召喚プログラムを導入する事が決まったの。神樹様のお告げもあったしね」

 

 尚、正確にはマグネタイト量や悪魔召喚系の適性のあった大社職員には既にCOMPを渡しており、ネオベテルから貰った『デビルサマナーのすヽめ(悪魔召喚プログラム付きCOMP付属取扱説明書)』とかいうマニュアルを参考にしてそれを使っての戦力増強は進めているらしい。

 それで此処にあるのはその余りであり、潜在マグネタイト量が多い勇者達なら使いこなせるであろう事と、神樹様とやらが『自分の分霊を渡すから持たせろ』と言って来たから彼女達に渡す事にしたのだとか。

 

「元々大社には神樹様の分霊をお借りして擬似的なデビルサマナーとなる術は存在していましたからね。それとこのCOMPが持つ悪魔召喚プログラムを駆使すればより効率的かつ術者の負担をほぼ無くせるレベルで運用出来ると大社技術者達は見ています。実際既に何人かの使い手が神樹様の分霊をCOMPの契約によって使役する事に成功していますから」

「成る程、元から人間に協力的な神樹様が遣わした分霊であれば安全に契約と使役を行えるとも言えますね。悪魔との契約は常に自己責任であり、例え契約があろうともそれによって齎された結果は全てサマナー自身の責任……というのがネオベテルの一般的な考え方ですし。こちらもそういう難易度の高さを緩和する為に人工悪魔である造魔の開発に力を入れていますし」

「そういう事です。流石はかの組織の一員ですね最愛さん」

 

 まあ実際には造魔が先で悪魔召喚プログラムの方が後なのですが結果的にそうなってますしそれは良いでしょう。話を聞いた勇者部のメンバーも各々COMPと取り扱い説明書を受け取って読みこんだり弄ったりしながら所有者登録をしていた。若葉や友奈など手間取っていたのもいたので私が使い方を教える事にもなりましたがね。

 ……ちなみに勇者達に渡されたのは持ち運びを考慮してスマホ型であるが、大社の職員には実戦向けのガントレット型の方が好評だったので余ったのが渡されたらしい。転生者に人気が無い(主にデザイン面)ガントレット型であるが、実戦だと使いやすいと余りを提供・販売された外部組織には好評というのは本当らしい。

 

「……それでは所有者登録も終わった様ですし、貴女達勇者部には今度の週末に讃州中学勇者部の人達と大社が管理している神樹様が作り上げた訓練用の異界で契約する分霊を受け取ってもらいます」

「あの場所か。勇者システムの訓練の為に何度か利用したが……」

「あそこに出て来る悪魔と契約するのか?」

「確か妖精とか精霊とかが出て来る場所だった様な? 偶に妖怪や悪霊っぽいのも出て来て以前はそいつらを倒してたね」

 

 前に少し話を聞いていましたが、流石に大社も四国最大規模の霊能組織だけあって訓練などの為に好きに使える異界は確保していたみたいですね(チュートリアル用異界とかアイテム生産用異界とかを複数持ってるネオベテルは言うまでもなく例外枠)

 またGPの上昇によって管理していた異界が制御出来なくなり手放さざるを得ない事も増えてきた霊能組織(ネオベテル以外)の中でも、どうやら大社は神樹様の加護によって組織に必要なだけの異界を確保出来ているのだとか。

 

「なんか色々凄そうな神樹様ってどんなんなのでしょうね? 少し気になりますが、まあ大社預かりの異界に私は入れないでしょうし、週末はみんな頑張ってくださいね」

「いえ、週末には最愛さん、貴女も神樹様の下へと来て欲しいのです」

「……ふぁ?」

 

 まあ既にCOMP持っててネオベテル所属である私には超関係無いですね……と思っていたら、まさかの鷲尾先生からとんでもない提案がやってきて超びっくり。思わず変な声が出ちゃいましたよ。勇者達も驚いてますし。

 

「……何故協力関係を結んでいるとは言え他組織である私を、そちらの最重要事項である『神樹様』に会わせるなんて話になったんです? 言っておきますが私はネオベテルを抜けてそちらの勇者になる気は有りませんよ?」

「ご心配なく、これは引き抜きなどの類ではなく神樹様からの御下命です。『【万神連合ネオベテル・ウルトラスープレックスホールド】の者を我が元へと連れて来い。出来ればこの香川に住んでいる者を』という託宣が大社上層部に直接伝えられたのです」

 

 むむむ、一体どういう事でしょうか? まあ自分を崇めてる組織が協力関係を結んだ相手に会いたいというならそこまでおかしい事は言っていないのでしょうか?

 でも以前の大社とネオベテルの会議の時には神樹様本人は姿を現さなかった筈ですし、基本的に信仰とMAGを対価に力だけ貸すだけで組織運営には余り口を出さない珍しい神格だと聞いていたんですが。

 

「ふーむ……別に強制じゃないですよね? まあ拒否する明確な理由も無いんですけど。……少し待ってくれませんか? さっきの託宣からして神樹様とやらが呼んでいるのは私と通行とゆかりでしょうから、そっちと相談して決めたいです」

「分かりました。いきなり無理を言ってごめんなさいね。……こちらからも残りの二人には話しておきますし、予定が合わなければ次の機会でも構いませんから」

 

 まあこの場では決められない事なので一旦保留して他の二人と相談するという当たり障りの無い返答で誤魔化す事に……しかし『神樹様』とは一体何者なのでしょうかね。流石に気になって来ましたよ。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 □その頃の讃州中学勇者部の章

 

 

「え? デビルサマナーとしての戦闘技術の指導? まあ依頼料くれるンなら別に良いですけど、俺じゃそんな大した事は教えられないですよ?」

「成る程これがCOMP。確かに悪魔を使役出来れば戦闘での選択肢も増え……え、必要なのはコミュ力。無理よorz」

「しかし神樹様がネオベテルメンバーに会いたいねぇ。いったいどういう事なのやら。……洗脳とかはしてこないですよね」

「流石にそこは大丈夫ですよ! 神樹様は良い神様ですし!」

「私にもCOMPが貰えるのね。嬉しいけどすっかり前線での戦闘系巫女になっちゃったわー」

「……あの、俺にはCOMP無いんですかね? 一応通行に誘われてネオベテルに入ったんですけど。カードも貰ったし」

「そのカードで割引効くから自分で金貯めて買えよ」

「えーっとごめんなさいね才人君。このCOMPは大社の備品として所属してる霊能者に渡される物だから、ネオベテルに所属してる君の分は無くて……」

「……チックショー!!!」

 

 ……彼らは大体いつも通りでしたとさ。




あとがき・各種設定解説

勇者達:結構頑張ってた
・元々霊的資質が高い少女が勇者や巫女に選ばれる上、神樹の力を借りる勇者システムの使用や神樹の託宣を聞く事などの神話体験を行ったお陰で成長限界などは拡張されている。
・なので中学に上がって何故か上位の悪魔が起こす事件に遭遇する事が増えた郡ちゃんは、強敵への勝利という試練を乗り越えた事であっという間にレベル25まで上がっている。
・まあ、それ以上にレベルが上がりまくる転生者である通行やゆかりが一緒にいるし、更に夏休み中に幹部メンバーである周回ネキと遭遇して一緒に戦ったり、更には現状のレベルでもギリギリな悪魔と戦い続けてきたので慢心とかはしてない(この世界の勇者システムは精神汚染とか無いし)


読了ありがとうございました。
最愛のレベルはレベル50越えボスよりレベル高い人が引率だった事とかボス戦ではあくまでサポートに徹していたとか人数が多かったから経験値が分散したとかが理由。ちなみに元のレベルが高かった通行とゆかりはレベル30後半になってます。
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