【急募】貰った悪魔召喚プログラムの使い方   作:貴司崎

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神樹との邂逅

「……着きました。ここが神樹様がおられる【大社】の本殿になります。……皆さま、もう目隠しをとっても構いませんよ」

「はいはい、思ったよりも早く着きましたね。やはりこの前に訪れた大社の本部とは違う場所ですか」

「あそこは通常の業務を行ったり職員の寮があるなどの普段使い用の場所なので」

「成る程……しかし中々神聖な空気のある神社ですね」

「どうも空気からして異界化もしてるみたいだな」

 

 そうして訪れたネオベテルメンバーと大社の守り神であるらしい『神樹様』との邂逅の日。俺と最愛、そしてゆかりとハヤタは目隠しをされたまま山田先生と鷲尾先生が運転する車によって神樹様が祀られている神社へと足を運んでいた。

 ……尚、目隠しをされる際に『これは神樹様がおられる場所を外部の人間に探らせる訳にはいかないという大社上層部のやむを得ない決定でして! 当然こちらは貴方達に何か害を成そうとは一切考えていませんので! 考えてませんからね!』と念入りに言われた。そこまで必死にならんでも霊能組織である以上は協力者にも見せられないモノがある事ぐらいは承知の上だから別に構わんし気にしないのだが。

 

(いくら御神体である神樹様の命とはいえ【大社】という組織の最重要地点であり最大の急所に部外者を招く事になったんですから、向こうも色々超大変そうですねぇ)

(だいぶ必死でしたからねぇ。今も私達に向けて何か監視用の術を使ってる気配があります。流石にアナライズの類いはされてませんが)

(単に見られているだけで某の鼻でも悪意は感じられませぬ。……まあ目隠しをされても某の霊視なら現在位置を割り出せてしまいますが)

(それは大社の人間には言うなよ。……目隠しだけで霊的な妨害を掛けてない事は迂闊だと思うが、多分向こうとしてもこっちの機嫌を損ねない範囲でやるしかなかったんだろう)

 

 なんか上司(神樹様)と最有力な取引先(ネオベテル)に挟まれた中間管理職の悲哀を大社職員から感じるが……まあとにかく山田先生と鷲尾先生が先導してくれる様なのでついて行くか。

 

「それじゃあ皆様、今から本殿の内部にご案内します」

「私達の後に付いて来て、くれぐれも勝手な行動とかは控えてください……ホントにお願いしますね!」

「「はーい」」

「分かってますからそンなに怯えないで下さい」

 

 ……なんか山田先生がちょっと涙目になってるし。流石に此処で事を荒らげる様な事はしないから、そこまで怯える事は無いと思うんだがな。

 或いは今回の『神樹様』の行動はずっと御神体と付き合ってきた彼ら【大社】にとってもそれだけイレギュラーな事なのか……一体どうなる事やら。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

「よく起こし下さいました、ネオベテルの皆様。いつも我々の手が及ばない様な悪魔事件の解決や重病者の治療を行ってくれて誠に感謝致します」

「いえいえ其れ程でも」

 

 そうして大社の本殿に招かれた俺達を待っていたのは和装の法服を着て仮面を付けた大社の上層部の人間達と、同じく仮面を付けて巫女服を着た多分大社の巫女達であった。

 ……ちなみにあの仮面に関してはアナライズ系の妨害機能で名前と顔を隠す事による呪術対策を目的とした物であり、可能な限り神樹様への悪影響を避ける為に此処に出入りする人間は全員付けているそうだ。

 

「……ところで今回呼び出されたのは大社の御神木である『神樹様』が俺達に会いたいからと聞きましたが」

「はい……先日神樹様の巫女が『この地を守ってくれたネオベテルのメンバーとやらに話があるから連れてきてほしい。その時は私と彼等だけで話したいと思うので他の者達は席を外してくれ』と……」

「私達と神樹様だけで話したいと? 初耳ですね」

「申し訳ありません。……神樹様がここまで組織の運営に口を出す事は、我々が愚かにも道を誤ろうとした時以外では殆ど無かったものなのでこちらとしても困惑していまして……」

 

 何でも『神樹様』はかつて大社の前身となる組織が祀っていた国津神達が、戦後の日本で起きたGHQとメシア教によるオカルト勢力狩りによって現世を離れる際に自分達の氏子に最低限の力を残す為に作り上げた神造の御神木らしい。

 作られた当初の若木だった頃は国津神達が残した術式に従って霊脈に根を張りながらその維持を行なったり、大社に所属する者の祈祷とMAGの奉納を対価として加護を与える用途の神木だったらしいが、成長するに連れて自分の意思を持ち始めて加護の強化や分霊の贈与をやってくれる様になったのだとか。

 

『ふむ、長年生きた樹木に精霊が宿ったり、意思を持った霊木へと変じるというのは割と良くある事ですからな。それが高位の神が作った物であれば短時間で自立した意思を持ったとしても不思議ではないでしょう』

「ええ、幸いにも国津神様達が人の助けになる様に作った霊木だったからか、神樹様に芽生えた意思はこちらに友好的な善性のものでした。特に自分の世話をする『巫女』や与えた力で戦う『勇者』達には好意的で、彼等彼女等へは格別の加護を与えつつも我ら大社の者へは彼等が動きやすい様な組織作りを命じたりしました」

「また子供達には出来るだけ実戦に立たせない様に言うなど心優しい人格で、その為であれば霊脈の調整や我々が自由に使える異界の創造、戦力としてこちらの言う事を聞いてくれる分霊の貸与なども行なってくれる程の力を示したりもして下さいました」

「戦後当時はオカルト狩りによって大社にはまともな霊能者がおらず、拾ってきた霊能の資質のある孤児を戦わせるしかない様な状況でしたが、神樹様が齎された恩恵によって子供を使い潰す様な愚行を犯さずに済んだと言われています。……かく言う我らも当時神樹様に守られた孤児でしたから」

 

 うーん、見たところ仮面越しでも分かるぐらい大社の人が『神樹様』を慕ってるのは伝わってくるから、いきなり呼び出したこっちに神樹様の良いところアピールしてる感もあるけど少なくとも嘘は言ってないな。ハヤタも無反応だし。

 ……とにかく、どうやら神樹様は相当に人間と上手く付き合ってるみたいではある様だし、これ以上警戒しても話が進まないだろうからな。

 

「……分かりました、とにかく俺達がその『神樹様』と会って話をすればいいんですね? それだけなら別に構いませんよ」

「ありがとうございます。……では今から神樹様の元へとご案内します」

「神樹様はこの本殿の奥、異界化している部分の最奥におられます。……本来なら神樹様の許可がなければたどり着けない場所なのですが、本日は貴方方を招くと言っておられましたので」

「まあ、とにかくその『神樹様』とやらに超会ってみましょうか。勇者部メンバーから話を聞いてちょっと気になってたんですよね」

 

 そういう訳で俺達ネオベテルメンバーは“敵に回したら色々詰みなネオベテル”と“自分達を今まで見守ってくれた神樹様”の板挟みでめっちゃビクビクしてる大社幹部の案内によって、本殿の奥にある『神樹様』が祀られている異界へと向かう事となったのだった。

 ……ハヤタがこっそりと念話で伝えてくれた事によると大社幹部からは“困惑”と“動揺”と“怖れ”の感情が主に感じ取られたらしいからね。何というか中間管理職の悲哀的な雰囲気だったし。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

「……ほえー、神社を抜けたと思ったら森の中か。……ここって異界だよね?」

「はい、ここは神樹様の力によって作られた『社の森』という名の異界です。今は神樹様が我々をお認めになられているので普通に通れていますが、もし悪意を持つ者が侵入すれば決して奥にはたどり着けず更に無数の精霊が敵として襲いくる様になっています」

「異界の中に異界があるんですか?」

『いえ、これはどちらかと言うといくつかの階層構造になった異界になっているのでしょう。……少なくともこれを作った『神樹様』とやらは相当な力を持っていると思われます』

 

 そんな事を話しながら俺達は所々に鳥居や鐘楼などが見える神秘的な森の中を歩いていた。確かに術者としてはそこそこレベルでしかない俺の目から見てもかなりの出来である異界だとは思うし、何となく“何か”に見られている気配を感じるので異界の主は侵入者を完全に把握している事が察せられる。

 ……まあ、神秘性云々に関しては【博麗神社】とかいう色々とおかしいレベルの異界を俺達は既に見ているので、今更怖気づくなどといった事はなかったのだが。術者としての修行も積んで実戦を経た今だとあそこの異常さが改めて理解出来るんだよなぁ。

 

「……ん? 何かの気配が濃くなったな」

『どうやらこの異界の主がこちらを迎え入れようとしている様ですが……』

「さっきまでとは明らかに風景が異なりますね。別の階層に入ったのか……」

 

 そうして話しながらしばらく歩いていると急に異界の様相が変貌しながら森が拓けて、気付くと俺達はより神秘的な雰囲気が増した神社の境内の様な空間に足を踏み入れていた。

 ……ただし、そこに鎮座していたのは神社では無く一目で分かる程に神聖な気配とMAGを溢れさせている一本の巨木だったが。

 

「……あれが……」

「はい、あそこにいらっしゃられるのが我ら【大社】が崇める【神樹様】になります」

【神樹 シンジュさま Lv66】

 

 ……成る程、向こうに悟られない感じで少しだけアナライズしてみたが、確かに大社の人達が崇めるのも無理のないレベルだな。見ただけでも相当な力を感じるし、他のメンバーも思わず黙るぐらいには。

 そして俺達が見ている前で突然神樹様が輝き出しながらMAGを放出して、それらが神樹様の根元に集まって一人の人型──中性的な10代ぐらいの人間っぽい姿を成していったのだ。

 

『……よし、会話用の分霊の出来はこのぐらいで良いか。あまりMAGにも余裕は無い故な。……よく来てくれたな、【万神連合ネオベテル・ウルトラスープレックスホールド】の者達よ。それと仮面衆、案内ご苦労だった』

【地霊 コダマ Lv11】

「「「ははぁっ!」」」

 

 どうやらあの人型の悪魔は神樹が作り出して自分の意識を写した分霊って感じみたいだな。横で大社の幹部達が土下座ってか平服しているし。

 

『後は私とネオベテルの者達のみで話を行う。終わり次第呼ぶのでお前達は帰って良いぞ』

「は、はぁ……神樹様、やはり我らも同席した方が……」

『心配せずとも大丈夫だ。……彼等が私に危害を加えるか、或いは私が彼等に危害を加えるかもと心配しておるのは分かるがな。この領域内でなら私に危害を加える事は出来んし、私自身彼等に悪意などはない故』

『まあ、あの『神樹様』からは悪意は感じませんが……』

「というかレベル66の相手に手を出そうとは思いませんよ」

 

 その後も物凄く心配している大社の人達を見て流石にちょっと不憫に思ったので俺達は神樹様に何かする気は無いと説得し、当の神樹様自身が“問題無い”と説得した事もあって大社の幹部達はまだ少し不安そうにしながらも『何かあったらすぐに呼んで下さい……すぐにですよ!』とだけ言い残して境内から立ち去ったのだった。

 

『……さて、ようやく我らだけになったな【万神連合ネオベテル・ウルトラスープレックスホーププッ! ……ルド】の諸君。私はこの地の者達から【神樹様】と呼ばれている者だ』

「……あれ、今超笑いませんでした?」

「まあクソダサい名前だしなァ……」

 

 そうして境内には俺達と『神樹様』が残されたのだが……こんな割とシリアスな状況なのに神様すら笑わせてくる【万神連合ネオベテル・ウルトラスープレックスホールド】の名前よ。

 

「ごほん! ……それで? 神樹様は俺達に何か話があるって聞きましたが一体何の用なンですか?」

『ああそうだったな。まあこれ以上前置きをするのもアレだし本題に入ろうか。……まず、お前達【万神連合ネオベテル・ウルトラスープレックスホールド】は一体何を目的に作られた組織なんだ? そこを知りたい』

 

 ふむ、まあ事前に予想していた範疇であるぐらいにはある意味当然の質問ではあるな。自分が面倒見ている組織と強い協力関係にある組織、しかも霊能組織としても明らかに異常な規模や人材や成長速度を有するのに詳細がイマイチ分からないなら不安に思うのも無理はないだろうし。

 ……この質問から入ったとするとやはりネオベテルに付いてこちらから情報を得るのが目的か? でも『実態は転生者がクソハードなメガテン世界を生き抜く為の相互扶助組織で、基本それぞれのメンバーが好き勝手してる緩い組織です』とは言えんしな。ここは表向きの嘘では無い理由を言うか。

 

「俺達ネオベテルはGPの上昇や危険組織の活動によって増加したオカルト事件から身を守る為、そういった事に巻き込まれてオカルトを知ったか覚醒した人間が集まって作られた相互扶助組織だ。そこに凄腕の霊能者とかも加わって今ではオカルト関係の技術開発や人材の派遣業務などを行なっている」

「元は相互扶助だけの組織だったんだけど組織の拡大が上手く行き過ぎちゃってねー。他にも最近のGP上昇を放置するのもよくないから色々な霊的組織と協力関係を結んだりしてるのよ」

「我々としてはこのままGPの上昇が続けば【終末】と言える様な大規模オカルト災害か事件が起きる可能性があるとも考えているので、技術開発や協力組織を増やすなどの行いはそれをどうにかする為でもありますね」

『成る程、まあ仮面衆からもそう聞いていたがな』

 

 当然この辺りの表向きの理由は大社と協力関係を結ぶ時に説明済みだ。この表向きの理由のキモは“転生者関連”を伏せてそれ以外はは全て真実(と言えなくもない)を使っている所だから大体これで誤魔化せる。

 ……まあ、目の前の訝しげな表情をしている神樹様が聞きたそうな言葉はこれじゃないっぽいがな。

 

『……だが、それ以外にも何か隠された目的とかがあるんじゃないか?』

「基本的には今言った事が目的である事に嘘はない。……細かな秘匿してる情報もない事はないが、それは外部の組織に教える事はないぞ。我々も裏の霊能組織だからそれなりに秘匿したい物事はある」

 

 尚、実態は細かな秘匿してる情報(転生者関連のアレコレ及びやらかし)だからな。表向きまともな霊能組織を装うには秘匿(組織の恥部的な意味で)しておく情報もあるのだ。

 とりあえずこう言っておけば業界人なら深くは突っ込まないと言う幹部メンバーからのアドバイスではあるのだが……どうもお気に召さなかったのか神樹様は何かを考え込む様な仕草を見せた後、深いため息を吐いてこちらに向き直った。

 

『……はぁぁぁぁ〜〜〜……これ以上腹の探り合いをしても意味ないか、俺は交渉得意じゃないしな。……もう単刀直入に言うぞ……【女神転生】【ペルソナ】【アトラス】……この辺りの名前に聞き覚えは?』

「「へ?」」

「……まさか」

 

 そう考えていたらいきなり神樹様の口から【俺ら】にとっては馴染み深い単語が飛び出して来た……個々の単語だけならそれぞれ違うオカルト用語と言えなくもないのだが、この三つの単語を連続して言ったとなると……。

 

「……神樹様、アンタ転生者……しかも、この世界とよく似た設定のゲームである【女神転生】や【ペルソナ】と言う作品が【アトラス】と言う会社から出ていた世界の人間を前世に持つ転生者(俺ら)だったのか?」

『いえーす。転生したら神樹様だった件って感じ。いやー【万神連合ネオベテル・ウルトラスープレックスホールド】とかいうアレ過ぎる名前だからもしかしたらと思ったけど、やっぱり転生者が起こした組織だったんだな』

 

 …………いやぁマジか〜。でも人外転生ならスライムニキっていう前例があるからあり得なくもないのか?

 ……さて、さっきとは神樹様の態度が変わってる所とか“俺ら”っぽいから嘘では無さそうだが、ホントにどうしたものか。流石に俺のキャパシティを超えてる事態なんだが、とりあえず脇巫女ネキか周回ネキ辺りカムヒア。




あとがき・各種設定解説

神樹様:今明かされる衝撃の真実
・国津神達の手で作られた神樹に入り込む形で今流行り(?)の人外転生した転生者であり、前世からの【ゆゆゆ】ファンだったので大社が健全な組織になる様に色々と頑張っていた。
・ただしばらくしてこの世界が【ゆゆゆ】じゃなくて【女神転生】の世界とわかったので頭を抱えたが、今まで面倒見て来た大社の人に情も湧いていたのでとにかく組織強化に全力で頑張っていた。
・具体的には本来霊脈の維持と簡単な加護を与えるしかない神樹の性能を術式を覚えたり国津神にMAGを奉納したりして色々と拡張し、加護の強化や異界の作成や分霊の貸与などが出来る様にした。
・そう言った強化と長期間の霊脈への接続、及び大社の人による熱心に信仰によって得たMAGによってレベルは非常に高い……が、自らのMAGの殆どを霊脈の維持や加護や国津神への上納MAGとして使ってるので割と余裕はない。
・更に神樹が直接戦闘を想定して作られていない事もあって戦闘能力は低く、MAGに余裕がない事もあって自分で作った異界の中でならギリギリ防戦が出来るぐらい。
・尚、神樹自体が国津神達が自分達の力を集めて作った複合分霊みたいなものであり、それ故に本体にMAGを上納して力を得ることが可能になっている故に国津神達には転生者が乗り移っている事はバレている。
・ただ、ちゃんと氏子の保護も想定以上にやってくれてるし上納MAGも上げてくれるのでまあいいか……となっていて、必要ならMAGの代価に自分達の分霊を送ったりもしてくれる模様。


読了ありがとうございました。
尚、この世界線での転生者の発生原因は本家様と違って日本神話神群が関わってる訳じゃないのであしからず。なので外国人転生者や人外転生なども発生する模様。
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