逆行したら天才イケメン騎士様がロリ巨乳美少女騎士様になってた 作:ちぇんそー娘
「というわけで、今年の学園祭のテーマは『新たなる光』ということになりまして。魔王現象『魔女』の活動開始により不安渦巻く情勢を踏まえ、市民の皆様に新しい力、特に1学年の生徒の力量を見せ希望を持っていただくことを趣旨にしているそうです。面倒くさっ」
「おい、アイツ委員長として不適切な発言しましたよ。誰か引きずり下ろせ」
「言葉を慎めよ委員会メンバーのモブ。私は委員長だぞ」
会議室は学園祭実行委員の話し合いと言うより、独裁者の演説会場みたいになっていた。
俺と同じ、1年で学園祭の実行委員になったロジェーナはいつも一緒にいるアウルがいないからか、それとも普通はリィビアみたいな人間が目の前にいたらこういうリアクションをするのか、ビクビク震えて縮こまってしまってるし、頼れる先輩のアローさんは笑顔でリィビアの独裁を見守っちゃってるし、もう1人の……ソルマリア先輩は、待て、あの人寝てね? 女の子がしちゃいけない顔で寝てるんだけど。
「よし、だいたいわかった」
「何がわかったんだよえっと……はい、アロー・イグニアニマ。発言どうぞ」
「あぁ、だいたいわかった!」
「だから何がだよ」
「アロー先輩、あの女沸点低いんであんまり煽るようなこと言わないでください」
「そこのモブ委員会メンバーは黙ってろ!」
「ふむ、リィビア委員長とジョイくんは仲が良いようだな! 俺は仲が良いのはいいと思うし、みんなと仲良くしたい。だから、今日はとりあえず親睦を深めるためにみんなでどこか食事にでもいかないか?」
「アタシはパス。眠いんで帰っていい?」
「あの……先輩方もビリブロードさんもとりあえずまず全体進行とか各生徒団の進言とかの確認とかした方が……」
うん、ちょっとこれ無理そうだな。アローさん、初めて喋ったけどこんなキャラなんだ。遠くから見てる限りは物静かで冷徹そうな人ってイメージだけど、近くで話すと印象が変わるあたり、アーリスの兄さんなんだなとなるし、ちょっと暑苦しい。
ソルマリア先輩はノーコメント。この人は正直めちゃくちゃ関わりたくない。そもそも発言からしてなんで学園祭実行委員会にいるんだよ。
「ちょいちょい、ロジェーナさんいいか?」
「うわっ!? あ、はい。ヴィータくんだよね? どうにかしてよ……君、場をめちゃくちゃにするの得意でしょ?」
「俺に対する同級生の認識どうなってんだよ」
ロジェーナ・ディスカベル。
蜜柑色の髪の毛を三つ編みにした大人しそうな少女。狙撃を得意としていて本人の戦闘力は低いが、あのマグノ先生の弟子だけあって狙撃技術の方はめちゃくちゃに正確。そしてアウル・ノムトと仲が良いらしくよく一緒にいる……くらいしか知らない。俺だって同級生のことをみんな調べて覚えてるほど勤勉な学生ではなかったんだよ。
「合同訓練の時めちゃくちゃやってたし、なんかビリブロードさんと仲良くしてたじゃん」
「あれが仲良く見えるならお前の感性はどうにかしてる。そしてアイツと仲良くできる人類は多分カウムくらいしかいねぇよ」
「そうなの? グッタカヴトさん、よくお茶会するけどいい人だと思うよ?」
「え? マジ? アイツお茶とか飲む文化的な生活できるの? 出会って即拳で語ってくるタイプだろ?」
「うん。むしろ向こうから誘ってくるくらいあの子お茶会好きだよ」
「ほらそこの1年生共ー! 雑談に花を咲かせてるんじゃなーい!」
ギュインギュインと義手を回転させながらリィビアはキレ気味にこっちに突っかかってきた。なんだあの機能、どう考えても無駄だけどまぁまぁかっこいいと思っちゃうのが地味に腹立つな。
「まぁ別に今は仕事ないんだけどさ。各団体の申請とか目を通すの全部私がやったし」
「お前なんのために委員『会』だと思ってんだよ」
「私がやった方が早いだろ。だからなんか適当に君達は困ってる人達の雑用でもお願い」
以上、解散と言ってリィビアはなにやら書類の束を持ってそそくさと退出していってしまい、それに続くようにソルマリア先輩も出ていき俺とロジェーナ、それからアロー先輩が残された会議室にはしばらく静寂が主役となり。
「……うむ! とりあえず仕事するか!」
アロー先輩のクソでかい声に連れられて俺たちはとりあえず外に出ることにした。
「それで、これなに?」
「何って……登録した魔力以外を探知した瞬間原因の魔力が消えるまで殴り続ける警備魔導兵ですが?」
「一般客も来るのにそんなものなんで作るの!? というか委員長許可したのそれ!?」
「いやしてるわけないじゃないですか」
「なんで堂々としてるの!?」
そんなわけで元気に何か作ってる生徒を見に来たら一発目でこれだよ。犯人は『自分なら出来ると思ったから作った』と天才にありがちな支離滅裂な供述をしていて、ロジェーナがキレ気味に対応している。
「まさかこんなすぐ問題が見つかるなんて……確かにネウラくんはちょっと変なところあるとは思ってたけど……」
「ん、アイツ知り合いなのか?」
「同級生のネウラくんだよ?」
「いや知らんが……」
言われてみれば、なんか見覚えがあるやつな気がしなくもないがマジでさすがに同級生の顔なんて一人一人覚えてるわけじゃないし……。
「同級生なんてみんな知り合いで顔なじみみたいなものじゃない? 半分くらいは友達みたいなものだし」
「何その価値観怖っ」
「え? 普通じゃない? 友達いないの?」
すっごいナチュラルにとんでもない罵倒がロジェーナの口から飛び出してきて、何も言えずにその場に崩れ落ちそうになってしまった。違うし、友達いるし。リエンとか……リエンとか、リエン……。
「……うん。残念ながら友達があんまりいないんだよな俺……うん」
「そ、そうなんだ……ごめんね? 良かったら紹介するよ? アウルとか……あ、前にファルセルダと模擬戦してたよね? 彼も知り合いだから紹介する?」
「やめろ憐れむな! 俺はそれなりに学生生活を楽しんでるんだよ!」
しかしどれだけ強がっても目の前に立つ『本物』の雰囲気には勝てる気がしない。ロジェーナ・ディスカベル。恐ろしい女だ。これは俺も負けを認めざるを得ない。
「しかし……楽そうだと思ったけれどこれ思ったよりも大変そうだなぁ……特に私達の学年ってなんか飛び抜けてる人多いし、何やらかすかわかったもんじゃない」
「お前も変わってるよな。わざわざこんな大変そうな仕事に立候補するとか」
「それを言ったらジョイくんもでしょ。あと、グラシアスさんやらリィビアやらといつも一緒になんかやらかしてる変人に言われたくない」
「なぁ俺って同級生からどんな認識されてるの?」
あまりに真面目なトーンで嫌そうに言うもんだからさすがに気になってくる。そんなに? ってくらい嫌そうなトーンだったぞ。
「変人でしょ。リィビアなんて普通会話通じないよ! というか通じてなかったでしょさっきだって! あとは……女の子に三股かけてるとか……」
「増えてる!?」
「ホントにしてるの!?」
思わず声に出てしまって変な誤解を与えてしまったがそもそも二股もしてない。けど三股って、俺なんだと思われてるんだよほんと。そしてリィビア、当然だけどガチで嫌われてるんだな……あまりに当然だけど。
「いやまぁ、安心して。さすがに本気にはしてないよ。ただ、アウルが面白そうだー、1度じっくり手合わせしたいーとかよく言ってるから」
「うえ……いつか、って言ってはぐらかしておいてくれ。勝てない勝負はしたくない」
「け、結構ダサいこと言うんだね。まぁアイツ相手じゃしょうがないか」
ロジェーナが口に出した男、アウル・ノムトはそりゃあ俺たちの学年でも三本指に入る天才だ。エアとリィビアが人の枠を突き破ってる何かだとしたら、アイツは純粋に強さを突き詰めた最強の人間だ。
正直、リィビアには引き分けられたが今の俺ではアイツに引き分けにすら持ち込める気がしない。リィビアが突きつめた強さなら、アイツは欠点のない強さだ。
史上最年少で輝剣流の免許皆伝となり、父親である現騎士団長の1人レジェ・ノムトから『
俺の前世でも、魔女と戦って勝てるのはデウスとアウルのどっちかくらいだって言われてたくらいだ。
……結局、アウルには魔女と戦う機会すら与えられなかったのだが。
「そういや、よく一緒にいるけれどロジェーナってアウルと仲いいのか?」
「いえ別に仲良くなんてないよ? たまたま家が近くて両親が仲良くて年が一緒だったから小さい頃からよく一緒にいて所謂幼なじみになっただけで別に全然仲良くないしアイツのことなんてなんとも思ってないけど? 確かに最近アイツ急に背が伸びてなんだか大人びたなぁ遠くに行っちゃったなぁって感じることもあったりするけれどもうそんな剣使うより自分で出した方が速いのにファイアソード買う買うっていつも買い物に行くとうるさいし女性を見つけたらまず口説くし口説かないと死ぬとか言って止めようとしたら本当に過呼吸起こし始めたり変なところもあってそういうところがいつまでも変わらなくて安心するなーとか思ったりするだけで別に私とアイツは特別な関係じゃないから」
うわ、なんか聞いてないのにめちゃくちゃ喋ってくるんだけど。
これなんて答えればいいんだ? 正直、気圧されて普通に言葉を失ったんだが。
「えっと……そういえばアウルのやつ俺の事もなんか話してたんだっけ? どんなこと言ってた?」
「一言一句詳細に伝えるなら『あのジョイくんだったっけ? 彼すごく面白いよね。あの土壇場の戦場にブラフで叫びながら殴り込んでくるなんてなかなかできるもんじゃない。それに、ファルセルダを倒したともなると手札も多いんだろう。彼、リベンジに意気込んでたからね』って言ってましたよ」
やばいよやばいよ。普通の子だと思って話しかけてたけどなんかとんでもないよこの子。なんで一言一句詳細に覚えてるんだよ。
この学校なのか俺の周りなのかそれともどっちもなのか、俺の周りにまともな女子いないの?
「そ、そうなんだ……」
「しかも信じられる? これ私と2人っきりの買い物の帰りに言ってきたんだよ? 最悪、デリカシーがない。ちょっと顔が良いからって調子乗ってる。最悪。すぐに女口説こうとするし」
思い出しただけで腹が立つのか、ロジェーナは青筋を立てて不機嫌そうに指でトントンと自分の太腿を叩きながら、遠くの空を見つめていた。
学園祭のパフォーマンスの練習だろうか、遠くの方で綺麗な花火が打ち上がったのが見えた。
「……でも、ムカつくくらいに綺麗で、私もずっと、それに並んでも許されるくらいの人間になりたいって、そう思った」
左目を通して、俺は一拍遅れてその魔力の光がアウル・ノムトのものであることを理解した。
そして、それを見るロジェーナの瞳は何となく、見覚えがあった。こんなに綺麗で美しいものではなかったが、多分この瞳の輝きを俺は鏡の中に見たことがある気がした。
「ところでさ……一応確認なんだけどロジェーナとアウルって幼なじみ以上でも以下でもないでいいんだよな?」
「そうだけど……何その目。なんか面白がってない?」
「いや……青春だなって」
なんだかんだ中身の年齢だとおじさんだからかこういうの見てると少し眩しいってなっちゃうんだよな。自分の今の現状はこういう甘酸っぱい感じじゃないし。文句とかじゃないんだけど、さすがに初手婚約飛び出してくるのはね……怖いよ。
「とりあえず向こう見に行ってみよう。アウルのやつ、あの魔力光明らかにミスってるもん。アイツがパフォーマンスでやるって言ってたヤツの光なら彩度と色相が少しズレてるし、あのズレ方は身体面よりメンタル面のブレの可能性が高いからなにか起きてるかもしれない」
「うん、わかった。この学年のやつってみんな天才だもんね」
「…………君だってその1人でしょ」
いくら好きな相手だからって、今の一瞬の光でそこまでわかるものじゃない。さすがは生ける伝説、『竜殺し』であるマグノ先生の弟子と言ったところか。ちょっと気持ち悪いけれど、かなりイカれた観察眼をしている。
俺は全然、彼女に並べる気なんてしない。
それでも、俺はそんな彼女ですら星を眺めるような目で見る男、アウル・ノムトを。
俺の前世で成績順位が3位以下に落ちたことのない、そんな男を超えなければエアになんて到底届きやしないのだか
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そんなふうに考えてたら、空からなんか降ってきた。声を上げてたので多分人間で、着弾地点は俺たちの目の前。土煙が晴れるとそこには、落ちてきたと言うより生えてきたと言わんばかりに垂直に地面に突き刺さったイケメンがいた。
「……アウル」
「おや。ロジェーナじゃないか、奇遇だね。そっちは……ジョイくん! はじめましてだね。噂はかねがね聞いているよ。僕はアウル・ノムト。よろしく」
「え、これこのまま話し続けていいのか?」
「いいわよ。こいつアホだから」
今頭に思い描いていた遥か高みの人物が、下半身地面に突き刺さったまま握手を求めてきたのでとりあえず応じることにした。
こいつすげぇな。地面に突き刺さってるのになんかイケメンみたいな雰囲気が消えてない。
「えっと……なんで、こんなことに?」
「僕自身が煌めくことが、最も観衆を頼みさせられるのではないか? と考えてね」
「つまり自分が物理的に光ればいいと思って魔術纏いながら空飛んで暴発して吹っ飛んでここまで飛んできたってことねほんとバカ」
俺の知らない言語で話してるのか、何故かロジェーナはアウルの言ってることが全部わかるらしい。
リィビアとかエアもそうだけど、見てる世界が違う奴らはたまに訳の分からないこと言い出すからな。リィビアとか壁に話しかけてること多いし。
「それはそうとジョイくん」
「それはそうとで話逸らすにはだいぶ絵面が面白くないか?」
「この運命の一期一会からすれば、僕の下半身が地面と熱烈なハグをしてることは些事でしかないよいてっ、……これ足折れたかな……」
「全然些事じゃなさそうじゃねぇか」
さすがにちょっと放っておくのは可哀想なので引っこ抜こうとしたけれど、もうすっげぇフィットしてて全然抜けない。
「くっ……地面も僕の魅力には抗えないみたいだ。母なる大地って言うから女性だからかな?」
「お前結構余裕ありそうだな!? 放っておいていいか?」
「ははは、そう言いながら頑張って引っ張ってくれるあたり噂通りのお人好しのようだね!」
こいつ放っておいたらリィビアが拗ねて面倒くさそうだし。ただでさえリィビア、アウルのこと結構嫌いそうな素振りしてたから下手に放っておくと変な難癖付けられて面倒くさそうなんだよ。
それに、俺としても今のコイツは当然ながら超えなければならない存在の一つなのだ。関わり合うのはやぶさかではない。
……ただ、俺現状コイツに勝てないんだよなぁって考えると悲しくなってくる。こんな垂直に地面に刺さってる男に?
「はぁ……ヴィータくんは他のところ先見に行ってて。私がコイツ引っこ抜いておくから」
ため息を吐きながら、ロジェーナはアウルの頭をぺちぺちとかなり強めに叩いてそう言った。
「でも……さすがに力なら俺の方が強いぞ?」
「なんだかんだ幼なじみなのでこういうことは前もあって慣れてるの」
「え、コイツ前も地面に突き刺さったの?」
「前は頭からだったぞ!」
実は……前世ではそれなりに憧れの相手だったんだよなアウル。
顔もカッコイイし、そりゃあ妬みもしたけれど本心ではコイツみたいに俺も強くてかっこいい人間になりたいと思ってた。
「……ヴィータくん、なんで泣いてるの?」
「古い夢が、ひとつ砕けたからかな? ありがとう、俺の心を守ってくれて」
「わけわからないこと言ってないで早く行って。仕事やっておかないとあの委員長、面倒くさいでしょ」
真の救いとは、きっと誰もが気づかないうちにしているのだろう。
ちょっとマジで凹みそうになっていたのでロジェーナに礼を言いつつ、俺は更に爆音が轟いた方向へと駆け出した。
「……アウル」
「どうしたんだいロジェーナ。さっさと引き抜くなり見捨てるなり……」
「つまんないことやめて。私は貴方のものじゃないの」
「……そればっかりは、お互い様だろうに」