B.A.D. Beyond Another Darkness -Another Story-   作:Veruhu

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Section 2

 紅い女……。

 

 雨香は今頃どうしているだろうか。雨香は最後には自分の身を顧みず、僕と繭墨を助けてくれた。雨香の事を僕は怖かったが、それでも自分の娘として愛していた。雨香は今でもあの世界で幸せな日々を暮しているのだろうか。僕の娘で居続けることを望んだ彼女は、本当に、本当にあの選択を正しいものだと思っているだろうか。

 

 

――――否だろう。

 

 

 僕と雨香は絶対的に閉じられた異界と現世との壁にて、再開することが絶望的となってしまっていた。そんな状況下であるのにも関わらず、僕の娘であり続けることは決して好ましいことではない筈だ。

 

 雨香が本当に今幸せなのか。本当に悔いはないのか。それを確かめるまで、僕は絶対に諦めない。繭墨の言う"異界への指針"を見つけるまで、僕は模索し続けるだろう。

 

 僕は例え他人から何と言われようとも絶対に諦めない、曲がらない、そんな一方通行な人間だった。

 

「…………と、ところで小田桐君。君は……僕のどこを好きになるっていうんだい?」

 

「えっ?」

 

 僕は一瞬、繭墨から言われた言葉の意味が分からずに聞き返した。繭墨は何故か震えながら体を起こし、ソファーに座った。そしていかにも平然を取り繕うかのようにチョコレートの包み紙を震えながら取り、中身を口に含んだ。

 

「い、いや、だからだね、小田桐君。君は僕の、どういう所を好いてくれるのかなって、そう聞いてるんだよ」

 

「どういう所と言われましても…………」

 

 繭墨の好きなところ……か。適当に言ってみたのだが、実際考えようとするとどういう所だろうか。

 

 

 

 ………………考えても考えても嫌いな所しか思いつかない。繭墨さんの好きなところを上げる事ほど、難しいことはあるのだろうか。

 

 僕は繭墨さんが嫌いだ。だが好いているところが少なからずある筈だ。それは…………

 

「美しい所、ですかね?」

 

「美しい所?」

 

 繭墨は首を傾げる。

 

「はい。まあ繭さんの唯一の取り柄というか、なんというか。まあ、つまりそういうことですよ」

 

「唯一の取り柄、ねぇ……」

 

「ははははは…………」

 

 繭墨は僕を睨んだ。僕は思わず視線を逸らすと、笑って誤魔化した。

 

「ふん、僕と君とが分かり合うのは難しそうだ。"僕はそれを望む"が、君はそれを望まないようだ。まあ勝手にするといいよ」

 

「…………えっ?」

 

 今繭墨は何と言った? 今、"分かりあうのを望む"などと言わなかったか?

 

「繭さん、今なんて……」

 

 

――ピンポーン

 

 

 僕は繭墨にその意味を問うとしたが、()しくも玄関のベルが鳴った。

 

 僕は一瞬、また陰惨な事件の解決を望む、依頼者が来たのではないかと危惧したが、今の繭墨には異界絡みの異能の力はない。

 

 よって繭墨の関係者はもう、必死になって繭墨を頼ろうとはしないだろうし、それを知らない一般の人間であったとしても、何かしら適当な理由を基に断れば良いだけの話だろう。

 

 僕は立ち上がった。もしかしたら雄介かもしれないし、白雪さんかもしれない。いや、定下の可能性もあるだろう。

 

 玄関に足早に歩いて行くと僕は何の疑いもなく、玄関のドアノブに触れる。しかしやはり警戒心が抜けきっていないのだろうか、一応僕はのぞき窓から外を覗いた。

 

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