カイが可愛いすぎたのでオリ主といい感じにさせたい話 作:ゼノアplus+
16話
「タンマ」
「すまねぇな。もうきのみ持ってないんだ」
俺の隣でむしゃむしゃときのみをほうばっていたタマザラシを見送りながら海を眺める。太陽に照らされて輝くこの海はやはり美しい。
〜〜〜〜♪
聞こえてくる笛の音はカイが演奏しているのであり、いつもの旋律とは違う音色だ。うまく吹けるようになった時にはわざわざ俺に1番に聞かせにきたのは今でもいい思い出である。
ここは群青の海岸。ヒスイ地方の東部に存在する海に面した場所だ。俺たちはここで調査をしにくるショウを待っている。何故俺とカイが少し離れたところにいるのかといえば……
「バッシャー!!!!」
「あぶっ!?……ははっ、楽しそうでなにより」
俺の目の前には機嫌良さそうに海を泳ぐイダイトウの姿があった。もちろん俺の手持ちのイダイトウである。コイツはバスラオ時代淡水で生きてきたため海水への順応にはだいぶ時間がかかった。凍土の水場はそこまでの広さはなく泳ぐのが好きなイダイトウはとてつもなく広いこの海を初めて見た時頗る興奮していたからな。興奮しすぎて俺に水飛沫が飛んできそうになるのは気をつけてほしいけどな。
「クシ、調査隊が歩いてくるのが見えたよ」
「分かった。イダイトウ、俺は戻るがまだ遊びたかったら泳いでていいぞ〜」
「バシャ………バッシャ!!!」
「おう」
どうやら他のイダイトウと遊んでくるらしい。てことはススキさんが世話してるイダイトウだな……オス同士気が合うんだろう。他に野生でイダイトウがいるのか知らんけど。
「やっぱり海が好きなんだね」
「凍土の川は狭いし普段は宙に浮いてるからな。こういう時はしっかり遊んでほしいよ」
俺たちは群青の海岸の入り口付近まで行くと調査隊を出迎えるために待つことにした。と、言っても特にすることもないしいつも通りにカイと話をしているだけだ。2人で横に並んで海岸を見ながら、時折俺たちに気づいてビビって逃げていくニャルマーに笑ったりしているうちに調査隊は到着した。
「うわぁ〜!!海だ!!すっごく綺麗!!って、あっちめっちゃ崖!?あぶな!!」
「「…………」」
俺たちのことが目に入っていないのか、それともただ単純にこの景色に見入ってしまっているのか。俺たちを横切って飛び出そうとしているガキンチョ……ショウだ。
「昔のクシみたいだね」
「……あの頃は海なんて見たことなかったんだよ」
「はしゃぎ方がいっしょ」
「なんで覚えてんだ……」
両手を口元に持っていきカイは笑う。こんなところで上品さは出さなくていいと思うけどな。
「海を見て『水しかない!!歩けない!?こわ!!』って」
「マジでやめて恥ずかしいから」
「へー、クシさんにもそんな時代があったんですねー」
「うおっ!?いつのまに!!」
面白い物を見るような目で俺を見やがるショウが現れた。少しずつ近寄っていたらしい。
「もしかして泳げなかったりします?」
「ぐっ」
「やっぱり!!まあ私も泳げないんですけど」
「んだとコラ」
何を自信満々に言っているのだろうか。口に手を当てながらニヤニヤと俺を見るショウは全くもって情けない。
「クシ」
「……ああ」
「どうしたんですか2人とも?」
カイの真面目な声に俺は返事をする。俺たちはしっかりとショウを見据え、心を落ち着かせた。
「勝負しないか?」
「ッ……クシさんと、ですか」
「おうよ。ほかならぬ長からのご指名だ」
「いいですよ。そろそろ追いつけたかなって思ってたんです!!レントラー!!」
「ゾロアーク、頼んだ」
気合十分、というようにゾロアークは吠えながらボールから出てくる。最近はフワライドを中心に鍛えてたから有り余ってんだろうな。
「行きますよー、レントラー『かみくだく』!!」
「よけろ」
「ガウ」
突っ込んでくるレントラーに対して、俺はたった一言指示をする。これだけで十分、なぜならば……
「かわされた!?」
「『シャドークロー』」
レントラーの攻撃が当たる寸前、小さく体を逸らす事で回避したゾロアークは攻撃の後隙で無防備なその腹へと下から『シャドークロー』を叩き込んだ。
「今どう避けたんですか!?ぜんっぜん見えなかったんですけど」
「さぁな、次行くぞ。『かえんほうしゃ』」
「むむっ、『10まんボルト』!!」
距離を離してからお互いに遠距離技を撃ち合う。ちょうど中心あたりでぶつかった2つの技は……タイプ一致技じゃないこちらが打ち負け、電撃がゾロアークに命中した。もっとも、そこまでのダメージはないがな。
「ガウッ……」
「麻痺ったか。まあ、それくらいでどうということはねえよなぁゾロアーク!!」
「グルアァ!!」
「『シャドーボール』、ありったけ叩き込め!!」
「えっ、ちょっと、それはやりすぎじゃないですか!?レントラー頑張って避けてぇ!!」
ゾロアークの周りに10を超える『シャドーボール』が浮遊している。流石に経験が無かったのかショウは目を見開きながらテンパり抽象的な指示でレントラーも困惑している。え、俺とゾロアークの時はできてた?はん、軽く10年以上の付き合いだぜ。多少のことはお互いにわかるに決まってんだろ。
「撃て」
「レントラー!!」
麻痺?動きが遅くなる?知るか、だったら動かなければいいだろう。圧倒的な物量で押し潰せ、
全て命中とはいかないが、おおよそ6割がレントラーに命中し戦闘不能にさせている。
「ッ、ありがとねレントラー。次、行きます!!ニンフィア!!」
「行けるなゾロアーク」
「ガウ」
ゾロアークはまだまだやる気十分の様子。なるほど、ショウを試したいのはゾロアークも同じか。
「『でんこうせっか』!!」
「………ん、え?」
「グルゥ?」
意気揚々と突っ込んできたニンフィアだが、ゾロアークはゴーストタイプ。その技は効かないはずだが……
「ふっふっふ……今ですよニンフィア、『力業』で『シャドーボール』!!」
「フェイントだとッ!!……ん?」
なんだそのドヤ顔……てか、コイツそういえば凍土なんか行くわけねぇしゾロアークのもう一つのタイプ知るわけないのか。
「あー……ゾロアーク、『早業』の『わるだくみ』から『シャドークロー』構えとけ」
ググッと力を込めたニンフィアが『シャドーボール』を放ちゾロアークに当たる瞬間、すり抜けた。
「ふぇ!?」
「やれ」
「グッ……グルァ!!」
ショウとニンフィアは『シャドーボール』が効かなかったことに驚き指示をせず足を止めてしまった。ゾロアークはその隙に、レントラーの時と同じように腹に攻撃を叩き込んだ。レントラーよりも育っていなかったのかニンフィアはその一撃でダウンしてしまう。まひ耐えるとかすげぇなお前。
「ニンフィア!?……うそ、なんでッ」
「ゾロアークはゴースト、
「……そんなっ。ごめんねニンフィア、私もっとがんばるね」
苦虫を噛み締めたような表情をしたショウはニンフィアをボールに戻すと新しいボールを構えた。
「ゾロアーク、無理すんな。結構まひが回ってきてるだろ」
「………ガゥ」
「意地はんな。全く誰に似たんだか……」
「絶対クシだよ」
カイ、正論は時に人を傷つけるんだ。覚えといてくれ。うん……いや、別に傷付いてはない。ないったらない。
「戻れ、よく頑張ったな」
「グルゥ」
「頼む……フワライド」
「ぷーわ」
「ギャラドス!!」
俺のフワライドとほぼ同時に、ショウのボールからギャラドスが繰り出される。
「俺がフワライドと出すって分かってたのか?」
「いえ、なんとなくですけどこうした方がいいかなって」
「ははっ、そいつぁすげぇ……それも才能だな」
「ギャラドス『たつまき』」
「『マジカルフレイム』」
いくら練度の差があるといっても効果抜群じゃない技はきかねぇな。しかも『たつまき』でかき消された挙句、その風でフワライドが巻き上げられた。やるじゃん。
「『シャドーボール』」
「かわして『アクアテール』!!」
「はっ……あぁ!!飛んだッ!?ギャラドスが!?」
おいおいマジか!!ギャラドスって飛べるのか!?初耳なんだけど……
まさかギャラドスが空を飛ぶと思ってなかった、それはフワライドも同じだったようで驚いたままギャラドスの攻撃を食らっていた。これは仕方ない。
「……相手の意表をつく、クシが言ってた戦い方だ」
「チッ……まあ俺が教えた戦い方の一つだからな。嬢ちゃんも技が決まったくらいでドヤるな。ダメージはすくねぇぞ」
「分かってますよー……クシさんの鼻を明かしてやりたかったので満足ですっ」
「
「ぷわっ!!」
フワライドの周りに現れたのは8発以上の『シャドーボール』。それが全てギャラドスへと向けられている。
「フワライドもそれするとか、そんなのありですか!?」
「出来てるからありだ」
「鬼がいる!!ここに鬼がいるぅ!!……ギャラドス『アクアテール』で避けれないやつだけ弾いて!!」
なるほど、防ぐんじゃなくて弾かせるのか。練度差がある相手にゃそれでいい判断だ。そろそろ俺ばっかりじゃ偏るか?……そこまで見てやる義理もねぇな。
「『さいみんじゅつ』」
「ッ、しまった……!!」
「…………zzZ」
攻撃的な面ばかり見せた後急に搦手を使うと対応しにくいだろう?こういう小賢しさも必要だぜショウ?
ねむけが抑え切れないと言った虚な目をしているギャラドス君を横目に俺はショウに問いかける。
「まだやるか?」
「ッッ、戻ってギャラドス」
「フワライド、お前も交代だ。よくやったな」
俺はフワライドをボールに戻し、ショウより先に新たにポケモンを繰り出すことにする。何出すかくらい教えてやってもハンデとしては足りねぇだろ。
「ムウマージ、頼む」
「ムーゥ」
本来ならイダイトウで行きたかったが遊びに行ってるので手持ちにいないのだ。まあ仕方がない。
「バクフーン!!」
「へぇ……さらに強くなったようだな」
「見ただけで分かりますか……」
「ゴーストタイプには一家言あると言っておこうか」
ショウが出してきたのはバクフーン。やる気に満ち溢れているのか首元の炎がいつも以上に激しく揺れている。
「バクフーン『ひゃっきやこう』!!」
「ああ?なんだその技……おいおいマジかよ。ムウマージ、『シャドーボール』!!」
俺の知らない技、『ひゃっきやこう』とやらが繰り出された。数えるのも億劫になるほどの鬼火がムウマージめがけて飛んでくる。ムウマージも必死に『シャドーボール』で撃ち落としてはいるが数の暴力にはどうすることもできず多数命中させられた。
「ムゥ……!?」
「やけどだと?面倒な……」
どうやらやけど状態にする技であるらしい。しかも弱点のゴースト技、なかなか悪くないダメージだ。
「もう一度『ひゃっきやこう』!!本当の力はこれからですよー!!」
「どういう意味だ……?いや、ムウマージ、『サイコキネシス』を自分の体に重ねろ。出来るだけダメージを減らせ!!」
サイコパワーを自らの表面に重ねがけする事で防御力を上げるという作戦、この時代の者なら誰も理解はできないだろうとたかを括っていた。しかしバクフーンの『ひゃっきやこう』を見れば先程よりも火の玉の火力が大きく見える。
「相手が状態異常ならこの技は威力が上がるんです!!流石のクシさんでもこれは厳しいんじゃないですか?」
ムウマージに技が命中、ダメージは減らせているが、総合的には先ほどと変わらないくらい負荷を与えてしまったかもという感じだな。やってくれる……が、まだ足りなかったな。
「ムウマージ、『全力』で『10まんボルト』」
「バクフーンの攻撃を耐えたんですか!?えっと……『オーバーヒート』!!」
俺のムウマージなら耐える。そう信じていたからこそ……というのは精神論が過ぎるか。でも俺たちはこうやって戦ってきたんでな。指示を出す速度は俺の方が上だったらしく、先にムウマージの攻撃が命中、見事バクフーンはまひ状態になり体が痺れて動くことができなかった。今日の俺、運がいいのかもしれない。
「『シャドーボール』でフィニッシュ」
「バクフーン!!あぁ……でも、まだまだぁ!!ムクホーク!!」
バクフーンが戦闘不能になり、これでギャラドスを含め4体を倒した。対する俺はダメージこそ負っているもののまだ全員倒れていない。これが練度の差だ。ポケモンも人間もだ。
「『10まんボルト』を続け……ムウマージ?」
何やらムウマージがふらふらしている……と思ったら地面に倒れ伏した。どうやらやけどのダメージが原因のようだが、まあ効果抜群の技を2回食らってここまで耐えたんだ。いい仕事をしてくれた。
「やっと1体……でも、倒せる!!」
俺のポケモンを倒したという事実はどうやらショウにとってよっぽど嬉しいことだったらしい。目の色を変えて口元にも笑みが浮かんでいる。ああ、いいなその目、俺に勝てないと諦めの表情をするかと思えば、なかなかどうしていい反応をしてくれるじゃないか。
「フワライド、もう一度いけるな?」
「ぷわっ!!」
「よし、じゃあ『マジカルフレイム』」
「躱して『ブレイブバード』!!」
エネルギーを纏ったムクホークが圧倒的な速度で突撃してくる。フワライドは炎を放つが技の段速が遅く容易に躱されてしまっている。そのままダメージを食らってしまったが、軽傷だ。自傷によりムクホークにもダメージが入っているはずだが苦痛の表情を浮かべていない。どうやらなかなかしぶとそうだ。
「もう一回『ブレイブバード』!!」
「………………今、『さいみんじゅつ』」
「ああっ!?」
先程はフワライドの攻撃を避けてから『ブレイブバード』で突っ込んできた。ならば『ブレイブバード』で突っ込んできている途中で技を打てば当たる。十分に引きつけてからの『さいみんじゅつ』を、ムクホークは避けることができず失速しながら地面に落ちていった。
「『マジカルフレイム』」
本当は『シャドーボール』を撃ちたかったがムクホークはノーマルタイプ。効果がないので威力は低くてもこの技を撃つしかない。
「ムクホーク……!!ごめんなさい。私の最後のポケモン、行きます。ハッサム!!」
「来たな」
ショウのエースポケモン、ハッサム。お得意の『はかいこうせん』はこちらには効かないが、元々ハッサムは
…………あ、そうなのか?そうらしいわ。俺の知らない記憶の方がよっぽどポケモン図鑑してるのはこの際どうでもいいが、さっきから【テクニシャン】だの【ライトメタル】だの意味の分からない単語が頭を駆け巡っている。ええい、単語だけ出すなら意味もまとめて引き出せよ俺ぇ!!
「フワライド、もう一度さいみんじゅ……「『バレットパンチ』!!」ッ……先制技か、『マジカルフレイム』」
フワライドの技が発動する前にハッサムの拳がヒットし、フワライドは倒された。よく頑張った。
「終わりにしようゾロアーク」
「グルァ……」
「ッ……でも、まひが入ってます」
「ゾロアークならいけるさ。なあ相棒?」
「ガァ!!」
気合いバッチリ、しかしショウの言う通りまひ状態なことに変わりはない。虚勢を張っているだけだ。
だけどなショウ……お前を叩き潰すには何の問題もないんだ。
「『力業』で『シャドークロー』」
「ハッサム、避けて!!」
無理だよショウ。やる気になったゾロアークからお前は逃げられない。そう思わせてくれるほど、ゾロアークとハッサムには歴然とした力の差がある。
そしてゾロアークの一撃が、何の躊躇もなくハッサムを切り裂いた。
「……うそ」
「すまんな、本気じゃなかったってわけじゃねぇ。だがゾロアークがやる気になっちまったんだ」
ハッサムはダメージを負っていなかった。なのにも関わらず、一撃で戦闘不能にされたとなれば今のショウのように現実が見えなくなるのも仕方がない。切り札をこうも簡単に潰されるなんて思わないだろうな。
「切り札とは、相手がソレを知っていたとしてもどうすることもできないほどの力だ。覚えておくといい」
決着
ハッサムを心配そうに抱きしめるショウを置いて俺はカイの下に行く。
「長、力を示した」
「やりすぎ。ショウさんの心が折れたらどうするの?」
「0から鍛え直すだけだ、俺がわざわざ時間を使ってな。嬢ちゃんには強くなってもらわないといけねぇからな」
「厳しいんだか優しいんだか……そういうところが好きなんだけど……」
「長」
「はっ……いけないいけない」
何を惚気とるか、しかも本人を目の前にして……嬉しいけど。めっっちゃ嬉しいけど?今は仕事中で目の前にショウがいる。しっかりしてくれ。
カイは気を取り直してショウへと近づいていった。俺もその後を続く。
「良い戦いだったよ」
「カイさん………でも負けました」
「ウチのクシだもの」
「……(励ますんじゃねぇのかよ)」
何故かドヤ顔で俺を褒めているカイを見ながら俺は呆れてしまった。
「勝ち負けだけが全てじゃない。大事なのは勝負を通じて何を学ぶか、だよ」
「……(俺が昔言ったことそのまま話してんなオイ)」
「カ、カイさん……!!」
何やらショウのカイを見る目が変わった気がする。惨敗した後に優しい言葉をかける……なんてマッチポンプだ……
「とりあえず嬢ちゃんのポケモンを回復させよう」
はぁ……ほんと、よく頑張ってくれたよお前ら。今度はイダイトウを働かせよう。
ゲームの場合
順当に進めていれば負けイベ。システムの都合で平均65レベル。クリア後に戦う本気のレベルは……
勝利時セリフ『マジかよ……嬢ちゃん(坊主)、いやショウ(名前)。お前は……』