篝火 始まりの街アクセル   作:焼酎ご飯

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どうもルビコン星人です。




14話

 

 

「スヤァ…」

「くそぉぅ…こっちの苦労も知らないで健やかに眠りやがってますね」

 

 

 

穏やかな寝息を立てるウィズをめぐみんに任せ、

貴方は部屋に立ち込めた煙を逃がす為に部屋の窓を開ける。

 

この煙の正体はめぐみんと共に投げ散らかしたロイドの護符である。

不死にぶつけたり貪食者を眠らせたりと、不死以外が使っているところをトンと見ないこの護符をめぐみんと共に四方八方に投げ散らかしたことで、恐ろしい存在へと変貌していたウィズを眠らせることに成功したのだった。

おかげで今やウィズの魔法商店はボヤでも出たかの様相を呈している。

通報でもされればどうやって説明しようものか。

 

 

 

「ウィズさん?が光り輝いて、あなたが産卵し始めた時は泡吹いて倒れるかと思いましたが…事なきを得てよかったです…事なき?」

 

 

 

確かにあのまま放っておけばアクセルが吹き溜まりのような有様になっていたかもしれない。

 

ちなみにめぐみんの言う産卵とは貴方が慌ててソウルからロイドの護符を取り出していた事を指しているのだが、当然貴方は産卵を行ってはいない。

不死は卵生ではないだろうし、如何な神であろうとも護符を産卵するという生態は持ち合わせてはいないだろう。

 

 

 

「ところでどうですかこのゴミクズで作ったベッド。なかなかの出来じゃないでしょうか」

 

 

 

めぐみんの自慢げな声に振り替えってみると、

そこでは無数のゴミクズに埋もれるようにして眠るウィズの姿があった。

あったかふわふわなのは確かなのだが、その正体がゴミクズである以上ウィズのローブは塵塗れになっていることだろう。

 

 

 

「確かにホコリ塗れになってますね…でもこの部屋の惨状からしたら別段大したものではないでしょう?」

 

 

 

めぐみんは部屋の中心にあいた大きな窪みをのぞき込む。

ウィズを中心にきれいなすり鉢状に空いた大きな窪みは、幸いにして壁や天井を巻き込むほどのものではなかったが、部屋の機能を失わせるには十分な大きさでそこに空いている。

 

 

 

「クレーターと呼ぶには随分きれいに穴が開いてますね。あなたは随分迅速に対応(産卵)していましたがこの現象に心当たりが有ったりするのですか?」

 

 

 

めぐみんと同じように窪みをのぞき込んだ貴方は窪みの淵を指でなぞった。

振れた部分が風に流れるように塵となって消滅する。

ソウルの核が失われた際の現象によく似ている。

 

他者のソウルを己がものとする

ソウルの業によるもので間違いないだろう。

 

 

 

「ではソウル化の技術が完成したということですか?それにしては明らかに暴走していましたし…あなたが産卵していたのはそのあたりが何か関係していたりするのですか?」

 

 

 

ロイドの護符についてはソウルの吸収を抑えることと無傷で無力化することの二つから適当に思いついた作戦だった。

 

そして貴方の思い付きは劇的な変化をもたらした。

 

 

 

そう、ウィズが眠りについたのだ。

 

 

 

つまりウィズは小人の末裔や貪欲者の神のような、

神々に疎まれる所謂素性の明るくない種族であることが疑われる。

 

 

 

「小人の末裔と貪欲者?小人ってのはドワーフとかのことですか?それに貪欲者って何ですか?聞き慣れませんがただ欲深い人という訳ではないーーーーーヒィッ!?」

 

 

 

貪欲者を言葉で説明することをあきらめた貴方は"貪欲者の烙印"を装備したところ、

めぐみんは顔面蒼白となって尻もちをついてしまった。

 

彼女は貪欲者初見ということもあってさもありなんというリアクションであった。

貪欲者の忌避感と言ったら長い巡礼の中でも慣れるものではない。

本物の八頭身貪欲者なんて見た日にはめぐみんは失神してしまうのではないだろうか。

貴方はこれが貪欲者という種族の首級であることを伝えて、直ぐに元のヘルムに戻して助け起こす。

 

 

 

「今日だけで何度驚いているかわかりませんが、今のはとびっきり心臓に悪かったです。ダンジョン擬きのようなモンスターなのでしょうか?それにしてもモンスターの頭をそのまま被るなんてめちゃくちゃ悪趣味ですね」

 

 

 

有用性はさておき悪趣味という点では完全に同意できる代物である。

 

 

 

「見た目からまともな種族ではないことはわかりました。それで、この爆睡している店主もそういったまともではない種族であるかもしれないということですか?」

 

 

 

その可能性は高い。

今現在も護符の煙が消え切らないこの部屋だが、めぐみんはぴんぴんしている一方、貴方はもう何も食べたくない気分になっていた。

つまり護符の効果はしっかりと表れており、ウィズは種族のせいで影響を受けたか、ただタイミングよく爆睡してしまったかの何れかということになる。

 

 

 

「人にしか見えませんけど擬態でもしているんでしょうか?店主が暫定モンスターとなってしまったわけですがどうしますか?正直このままぶっ殺すのは物凄く気が引けるのですが…あと何故かはわかりませんが飢える家族の顔が頭をよぎりました」

 

 

 

貴方もぶっ殺すのは遠慮したいところである。

そもそもソウル化の依頼を出している以上、ウィズの種族が人間でないことなど些事でしかない。

異種族交流は貴方にとっては慣れたものであり、言葉が通じるのはむしろ上等な方だ。

とりあえず目が覚めるまではめぐみん謹製ゴミクズベッドに放っておけばいいだろう。

 

 

 

「取り敢えずはそうするしかありませんかね…お、幸い壊れていない目覚まし時計がありますよ。なんだかドっと疲れましたし、休憩も兼ねて30分くらいで合わせておきますか」

 

 

 

ウィズのグウィネヴィアの上にセットされた目覚まし時計を見て、なんとなくこのまま眺めていたくなった貴方だったが、目覚めたウィズにあらぬ嫌疑をかけられてもたまらないのでめぐみんと共に店の外に出る。

 

そういえば貴方も目覚まし時計で起こされるという貴重な体験をしたことがあったが、あれはいつのことだっただろうか。

7~8年くらい前だった気もする。

 

 

 

~~~

 

 

 

「うっわぁ、その貪欲者っていうモンスターのビジュアル最悪ですね」

 

 

 

ウィズの店の前で時間を潰していた貴方たち

やることも無かったので貪欲者についての解説講座を開いていた。

 

地面には覚醒状態の貪欲者の絵がサイン蝋石で描かれており、頭の部分だけは実際に貪欲者の烙印が置かれている状態だ。

貴方は貪欲者の頭を描くだけの技量を持ち合わせていない。

貴方はその大きさがわかるようにその絵の近くで横たわりながら解説を行っている。

 

 

 

「宝箱から手足が生えてくるだけでも恐ろしいのに、貴方の倍近くの大きさがあってさらに機敏に動くとは」

 

 

 

この世界にあの悍ましき生物がいるかはわからないが、めぐみん曰くダンジョン擬きという擬態型のモンスターがいるとのことなので、

貴方がこれまでに培った貪欲者の特徴と対策について説明している。

 

 

 

「対処方法は擬態中に先ほどの護符を投げつけると。倒し方は覚醒状態になる前に最大火力で袋叩きにすると…え?倒しきれなかったらブリッジの体勢で追いかけてきて丸のみにしてくるんですか!?」

 

 

 

恐れおののいているめぐみんの為に烙印をもう一つ取り出してブリッジ形態の絵を書き足す。

 

見れば見る程気色の悪い生き物である。

見た目もさることながら鳴き声まで不気味なうえにとんでもなく強いという正に化け物である。

そのうち強大なソウルを有した貪欲者が爆誕するかもしれない。

 

 

 

「ダンジョン擬き対策で宝箱や階段を突っつくというのは定石ですが、貴方の体験談を聞くとその必要性を実感しますね。というかなんで丸のみにされて生きーーーーー

 

 

 

ジリリリrrrrrrrrrr

 

 

 

その折、ウィズの店の奥から目覚まし時計が鳴り響く

 

古い薪の王たちが、棺より呼び起されるだろう

深みの聖者、エルドリッチ

ファランの不死隊、深淵の監視者たち

珍品売り、ウィズ

 

何処かの婆の声が脳内に木霊したがウィズの字名は絶望的に締まらない。

 

 

 

「…?ッーーーーー!?!?」

 

 

 

「どうやら起きたみたいですね。窓も光ってませんし、再暴走はしてなさそうですね」

 

 

 

それは幸いと貴方は準備していた護符をソウルに収納する。

一先ず事情を説明する必要もあるだろうと、貴方は鎧に付いた土を払ってめぐみんと共に再度入店する。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「ほんっとうにごめんなさいいいぃぃぃぃぃ!!」

 

 

 

貴方たちがアイテムを使って暴走していたウィズを沈めた旨を伝えると

ホコリの化身ウィズは悲痛なほどの謝罪を告げる。

パッチも見習ってほしいくらいの心の底からの謝りっぷりだ。

 

 

 

「まぁ私は実害ありませんでしたし特別含むところはありませんが…貴方はどうなんですか?あの護符ってやつ山ほど投げてましたけど」

 

 

 

護符はボチボチ集めるのが大変な物だが貴重品という訳でもない。

最悪街が滅んでいたかもしれないが、事なきを得たので貴方もなんとも思っていない。

ノーカウントなどとほざき始めたらどうなっていたかわからないが、彼女がそんな外道ということも無いだろう。

 

むしろ暴走状態とはいえこちらの世界の物質をソウルとして吸収していたということはソウル化の研究が進んだとみていいのではないだろうか?

貴方としては行幸と言える。

 

 

 

「お二人がタイミングよく来ていただいて本当に助かりました…あの状態の私は酩酊状態というか何というか、欲に飲まれていた状態でして…」

「欲に?ソウルの吸収って中毒性が有ったりするんですか?」

 

 

 

確かに他者からソウルを奪うのは気分がいいが、中毒性があるかどうかは首を傾げるところである。

 

 

 

「いえこれは何というか、私の持病というか何というか…どうしても言えない秘密がありましてーーーーー

 

 

 

「あぁもしかして種族が人間じゃない云々が関わっている感じですか?それ以上の秘密があるとすれば実は胸に詰め物をしているとかですかね?さすがにデカすぎると思いませんか?」

「う゛ぇ゛っ!!!???」

 

 

 

ウィズは白目を剥いて固まってしまった。

 

まさか…本当に詰め物をしているのだろうか。

もしそんなことがあるとすれば、貴方の心は絶望に張り裂けてしまうだろう。

輪の都に秘された暗い偽りよりもはるかに残酷な嘘だ。

 

一方めぐみんは「私またなんかしちゃいましたかね?」と何故か少しドヤっている。

 

 

 

「あ゛あ、ぁのぉ~…あなたはいったい…」

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」

 

 

 

マントを翻すめぐみんに合わせて、貴方も無暗に"古き月光"を発動させてジェスチャー"紅魔族のポーズ"をとる。

また誓約が進んだ気配を感じる。

 

 

 

「あ、あぁ~!紅魔族の"方達"でしたか!改めまして私はウィズと申しますよろしくお願い…ではなく、もしかして魔眼か何かをお持ちなんですか?眼帯されてますし、それで私の…その…種族を?」

 

 

 

どうやら驚いていたのは種族の看破についてだったようだ。

貴方は安堵に深く息を吐く。

 

それにしてもめぐみんが魔眼を持っているという話は初めて聞いた。

眼球が精霊に祝福されているのだろうか。

 

 

 

「フフフ、この眼帯は我が強大な力を抑える為の神器ではありますが、魔眼の類を制御する為のものではありません。ところで魔眼ってかっこいいですね。ノーリスクで私も使える便利グッズとかあったりしませんかね?」

 

 

 

どうやら魔眼は持っていないそうだ。

貴方はめぐみんの要望に応え"邪眼の指輪"というアイテムを取り出す。

眼球に能力が備わるアイテムではないが、敵を倒すと体力回復に作用する効果をもたらすアイテムだ。

一芸特化のめぐみんには全く合わないアイテムだ。

 

 

 

「邪眼!これまたカッコいいワードですね!効果が合わないのは残念ですが、また由来とか教えてください」

 

 

 

貴方は頷いて指輪をしまう。

ついつい紅魔の杖としての使命に従ってしまったがこれ以上は話が逸れすぎてしまいそうなので、

貴方は話を戻すべくロイドの護符を取り出して見せる。

貴方は護符の効力によって神に背く種族であるということを看破したことを伝えた。

 

 

 

「回復を阻害する不死狩りの護符ですか。なるほど確かに私に効果がありそうなアイテムです…」

 

 

 

護符について説明したところ、ウィズは何やら思いつめたようにうつむく。

が、直ぐに覚悟を宿した目で貴方たちを見据えて口を開く。

 

 

 

「もう誤魔化しが効くとも思えませんので告白します。私はリッチー…いわゆるアンデッドです」

「リッチー!?リッチーってあのアンデッドの王的なあの!?」

 

 

 

リッチーという言葉にあまり馴染みが無い貴方だったが、どうやらめぐみんはそうでもないようで随分な驚き様である。

アンデッドの王というと"最初の死者 ニト"が思い浮かぶところだ。

 

 

 

「どうやら貴方はあまりピンと来ていないようですね。リッチーというのは生前アークウィザード…それも確かな能力を持った者がなんやかんやでアンデッド化した存在です。能力は生前より強化されていて、その強大な強さからアンデッドの王と呼ばれているそうです」

 

 

 

魔法が扱える上に話ができるアンデッドとは何とも心の踊る存在だ。

だが本当にアンデッドなのだろうか?

アンデッドと言えばだいたい干からび切っている者ではないだろうか?

見る限りウィズはその辺の亡者よりもはるかに健康的な肉付きに見える。

 

 

 

「ご説明ありがとうございます。めぐみんさんがおっしゃった通りのアンデッドです。その、信じていただけるかはわかりませんがあなた方や街の人たちに敵意や害意があるわけではないんです…」

「って言ってますけどどうします?まぁ私たちでどうにかできる相手とも思えませんし、むしろ私たちの方が取って食われるかもしれません」

「いやいやいや取って食うなんてそんな野蛮なことは…そ、そんなことより、お二人とも何故それほど驚いていないんですか?ーーー私としましては先ほどの告白は最悪この場で切りかかられる覚悟の重大発表だったのですが」

 

 

 

ウィズは貴方たちの反応がどうにも腑に落ちないようだ。

めぐみんは十分に驚いていたように見えたが、それでも敵意を向けないだけでも珍しい話らしい。

 

 

 

「十分驚いていたつもりだったんですが、そうですね…事前に人でないことはわかっていましたし、今日は肝を潰すような出来事ばかりだったので」

 

 

 

めぐみんは貴方をじっとりとした目で見てくる。

札束風呂、光り輝くウィズ、護符の産卵、直近だと貪欲者の烙印の突然装備もある。

確かに肝を潰すには十分なイベント量だ。

烙印については貴方も反省するところである。

 

 

そして貴方もウィズに驚いていない理由を伝える。

"知人にアンデッドがいる"のだと。

バモスなんかは炎派生で大変お世話になったものだ。

果ては猫やキノコともお話している貴方は種族の壁程度で怯むほど軟ではない。

 

 

 

「な、なるほど 私としては拒絶されるよりは遥かにありがたいです。そういえば貴方は異世界人でしたね…アンデッド交友があるとはずいぶん懐が深いというか何というか」

 

 

 

不死院生まれ 不死街育ち

言葉通じる奴はだいたい友達

 

なのでウィズを害したり、このことを吹聴したりするつもりはない事を伝える。

そもそも依頼を出しているのだからウィズに死なれては困る。

めぐみん曰くソウル化の技術を研究できる知恵者等そうそういないだろうとのことなのだ。

 

 

 

「私の知り合いが喜びそうな友達判定ですね…正直私としても"これがリッチー?"というような疑問を感じるぐらいなので、この人がなんとも思わないのであれば私も騒ぎ立てるつもりはありません」

「…ありがとうございます。受け入れやすい事情があるとはいえ、私のような存在にとっては貴方たちのように受け止めてくれる人たちは本当に救いです」

 

 

 

ウィズは改めて感傷たっぷりに深々と頭を下げた。

この反応を見る限り、恐らくこれまで知人友人のような交友は希薄だったのだろう。

それどころか過去には迫害のような辛い思いをしたのかもしれない。

ドストレートの迫害で不死院にぶち込まれた貴方はウィズの気持ちはよくわかる。

 

 

 

故に貴方は己が不死であることを伏せているのだから。

 

 

 

しかしよくよく考えてみると、今この瞬間というのはチャンスではないだろうか?

"色々起きすぎて精神疲弊しているめぐみんと"、"事故と種族のことでこちらに負い目の有るウィズ"が相手であればーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方は二人に重要な話があると言いーーーーー

 

ーーーーーおもむろに上半身の鎧を脱ぎ去った。

 

 

 




ロイドの護符ってアンデットには効かないのでは?
と思った方もいると思います。


パチパチはじけて脳みそが幸せだぜ
(深く考えていません)
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