「丁度50年前私が着ていたメイド服なら貴方の身体に合いそうね。何処に閉まっていたかしら。」
ー50年前か、丁度紅霧異変の時と重なるな。おばあちゃんからよく紅霧異変について聞かされたけどこの人はおばあちゃんと同じくらいの年なのかな?それに50年前って随分長く働いてるんだなァー
この館の一室(この部屋は彼女の自室らしい)のタンスの中を漁っている目の前の老いたメイドは顔にシワこそ寄っているもののその背筋は机に立てた鉛筆のように真っ直ぐと延びており、動きもとても機敏でまるで老いという概念を何処かに捨てているようなものだった。
「あったわ。はいこれ、着てみて。」
渡された紺と白から成るそのメイド服は綿から作られており、少しサイズは大きいが普段着ている麻の服とは比べ物にならないほど着心地が良い。メイド服という物は本で少しその単語を目にするだけで、私にとっては未知の域と言うのに値する物であった。更に言えば先ほど出会った吸血鬼と魔術師(レミリアとパチュリーと言ったか)など私を未知の域へ引き込んでくれるこの館に少しばかり興奮している。
「貴方の使い魔の管理は貴方自信に任せるわ。働き手が一人増えていいし。四足歩行だけど…。」
「いいんですか?さっき、レミリア?様?があなたに管理しろって…」
「この夜のなか妖怪に追われながら貴方を乗せて逃げ続けられたのは、相当使い魔が貴方に懐いてないと出来ないわ。私が管理するより主である貴方が管理した方がトラブルも少ないんじゃないかしら?」
私はそれを聞いてケン太が入っている管をそっと撫で下ろした。
老いたメイドは忘れ物を思い出したようにはっとし
「自己紹介を忘れていたね。私は十六夜咲夜。この紅魔館のメイド長を任せられているわ。一ヶ月だけだけどよろしくね。」
ー一ヶ月だけ、か。お父さんとお母さん心配してるだろうなァ。今頃。ー
「さて、次は貴方の自室を案内しなくちゃね。」
咲夜さんの自室を出るとやはり長い長い廊下が私の未知への不安を体現したかのように広がっている。廊下の窓からは、まるで自分が女王だと言わんばかりの満月の月光が照らされていた。
「そうね、ここにしましょうか。」
長い廊下を進んだ先の古びた木製の扉を開けると咲夜さんの装飾が施されている部屋とは違い、窓こそついており、月明かりが入って来るものの、レンガ調に机とベッドだけという殺風景な部屋だった。しかし広い。身体の小さい私には十分すぎる部屋だった。
「ここは元々紅魔館に迷いこんだ人間のための一時的な部屋だったのだけど…。いかんせん、もう長いこと人間は来てなくて。」
「私の他にもここに来た人がいるんですか!?」
「もう随分昔の話よ。そんなだから手入れなどは長いことはしていないわ。」
そう言われて周りを見渡すとクモの巣が天井に、ベッドも少しホコリっぽかった。
「仕方がないわ。今日はこれで我慢して頂戴。明日の朝にまた来るから。その時に業務内容とか説明するから。」
咲夜さんのその言葉を聞いたが最後。彼女は部屋の何処にもいなかった。開いたままだった扉も閉まっている。私が疲れているのか、あるいは…。
少々ばかりの不安を覚えた私はケン太を管の中から出し、出来るだけ近くに寄せ、眠りにつく。
ー心配してるだろうなァ、お父さんとお母さん。ー
設定などは参考にしているつもりですが、矛盾点や気になるところがあれば指摘して下さい。
ではまた。