紅魔館のメイドになりました   作:魔王ヘカーテ

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第一話 私の寝床は紅魔館

 ーざまぁ見ろ。ー

 

 自分こそが女王だと言わんばかりの満月に照らされながら、三咲とケン太は先ほど食べたばかりの少年の血の匂いを放ちながら迫り来る化け物から逃げていた。

 

ーざまぁ見ろ。ざまぁ見ろ!いつも私とケン太をいじめるからだ。罰が当たったんだ。ー

 

ケン太は三咲を乗せて馬にも劣らない速さで森をかけていた。

 そもそも三咲とケン太の話は人里ではかなり有名で、毎日その話題が尽きないほどであった。ケン太は、三咲の使い魔のような存在でその姿は犬とも狐ともとれる可愛らしい姿をしている妖獣で、訳あって三咲の水筒であった竹筒を憑き処とし、それを扱う三咲は自然と召喚士ということになった。里の人々の三咲とケン太に対する評価はきっぱりと二つに別れており、

一つは、三咲とケン太はまるで仲のいい兄弟が如くいつもくっついており見ていると何か微笑ましい。そんな存在である。と

二つに、三咲とケン太はまるで魔女と悪魔だと。今は良いかも知れないがその妖獣が成長したら襲って来るはずだ。食われるはずだ。そんな化け物は殺せ。と

更には三咲は趣味として、ネタを探しに人里に来ている烏天狗からこっそりと妖怪向けの文字の新聞を購入して鈴奈庵で解読するということを行っているが、新聞というものは隠して持ち歩ける物ではないため、見知らぬ言語が書かれてある物を持ち歩いている三咲を見た者の中には三咲を白い目で見るものもいた。しかし、三咲はそんなものは気にしなかった。三咲の父と母も三咲とケン太のことは可愛がってくれており、寺子屋には三咲が意地悪をされても守ってくれる友達もいた。先生である上白沢慧音も三咲の頭をいつも撫でてくれていた。

 喰われたのは寺子屋で同じ教室の男数人で、よせば良いものを悪ふざけでケン太を妖怪に喰ってもらおうと言い出した馬鹿がおり、日が落ちる間際に里を抜け出し(もちろん三咲達は強制連行)見事全員人喰い妖怪の腹にバイバイだ。そのザマは酷く、味噌汁をぶちまけたかのように鮮血と鮮やかな桃色をした臓物。更には灰色の脳の破片までもが転がっていた。三咲が冷静にケン太と逃げてこれているのが摩訶不思議なまでに酷く哀れなザマだった。

 三咲たちは森を抜け、湖に出た。まだ化け物は恋を諦めきれぬ男子のように執念深く追ってきていた。湖の向かいに赤く、大きな館が見えた。

 

「ケン太!あそこ!」

 

三咲が赤い館を指差すとケン太もその存在を確認し、湖に沿い、館へまた走り出した。

 彼女達は館の目と鼻の先までに近づいた。それと同時に血の匂いと化け物の息づかいが鮮明に感じるようになった。

 

ーあの大きな館だ。人がいるに違いない。ー

 

「助けて!」こうして何度叫んだだろうか

 

暗くてよくわからないが明らかに人が三咲たちの方に向かってきていた。

 

ーしまった!人が出てきちゃった!ー

 

「危ないです!化け物です!」

 

三咲がそうは叫んだものの、依然としてその者は三咲達の方へ向かって来ていた。明らかに速度を増して。

そして、その顔がはっきりと見えるまでに近くなった次の瞬間。

 

「でぇェアッッ!」

 

鉄砲玉のように化け物へ飛んで行き、化け物の顔面をボギンッといわせるまでに凄まじい回し蹴りを放っていた。当然そのような音がしたのだから化け物は無事ではなく、化け物の顔は失敗した習字の紙を丸めるが如くぐしゃぐしゃになっていた。

 

「どうもお怪我はございませんか?」

 

優しく歩み寄って来た彼女は赤髪の腰まであるかのように感じるロングヘアーであり、揉み上げあたりから三つ編みを結っている。服装もチャイナドレスのようなものを着ており、普段から本を鈴奈庵の本を読みふけっている三咲には外の世界の「ちゅうごく」という国を思わせていた。

 

「おっと。私は紅美鈴(ほんめいりん)と言います。そこの紅魔館の門番をしております。まァ、歩きながらご説明しましょう。」

 

ケン太がもう歩けなさそうと判断した三咲は管に戻してやる。

 

「ケン太、ありがとう。本当にありがとう。」

 

くうんと鳴くとケン太は幽体となり管にすぅと収まった。

 

「ありゃ!その獣、妖獣でしたか!てっきりペットだと…。」

 

「まァ、そんなものです。」

 

「今のを見ると貴方は召喚士ですか。はぁェー、貴女小さいですが見かけに寄らないものですねぇ。見たところ人里の子供らしいですね。」

 

「は、はい…。」

 

美鈴はとても饒舌であり、自分が妖怪であることや三咲の声がよく響いていたこと、紅魔館に着いたら保護してくれることなどを聞き、三咲はひとまず安心した。

 館はとても大きく、いつしか絵本で見たレンガ造りの城そのもの。いや、それ以上に大きい。門をくぐり庭園を歩いた先には老いたメイドが立っていた。

 

「全く、人一人助けられないようじゃ紅魔館の門番失格だったわよ?まさか、また居眠りしていたのかしら?美鈴?」

 

「や、やだなぁ。ソンナワケナイジャナイデスカァー。(直前まで居眠りしてただなんて言えねぇ)」

 

やれやれと呆れ顔をする老いたメイドはとうとう三咲の方に顔をやる。

 

「さてと、貴方の声、よく響いていたわ。レミリア嬢がお待ちよ、ついてきて。」

 

「あれ?もしかしてお嬢様今日お茶してました?」

 

「ええ。その最中にこの子が追われてるの見てお嬢様が心配していたのよ。それで連れて来なさいって。全く美鈴ったら。ホントに起きていたのでしょうね?」

 

ーお嬢様?どんな人なのかな?ー

 

老いたメイドに連れられて入った館の中は紅一色で

ありとあらゆる所に装飾が施されており、三咲の中の「お嬢様」という存在をより一層大きくさせた。

 

「お嬢様は吸血鬼で、とても高貴な方よ。機嫌を損ねたらその頭、握り潰されるから覚悟しておきなさい。」

 

吸血鬼…人の何倍もの力を持ち霧やコウモリなどに自在に姿を変えられ、人間の生き血をカラになるまで吸い上げるという存在。老いたメイドのその一言で三咲は青ざめ、三咲の中の「お嬢様」という存在がよりおぞましく、強大な物となっていた。

 

ーもしかしてとんでもないところに来ちゃった?ー

 

 紅魔館の長い長い階段を上りきった先、大きな木製の扉がそびえ立っていた。

 

「この先にお嬢様がおられるわ。無礼の無いようにね。」

 

老いたメイドは二度目の忠告をした直後、その扉を念入りにノックした。それは三咲の心臓を握り潰すかのように響き渡った。

 

「失礼します。例の少女、連れて参りました。」

 

老いたメイドの声は「お嬢様」という存在に慣れ親しんでいるかのように堂々としていた。

 

「いいわ。入りなさい。」

 

聞こえ来た声は明らかに幼かった。

 

「失礼します!」

「し、失礼します!」

 

扉の先のテラスにはテーブルを囲み紅茶を優雅に飲むあまりに幼い令嬢とテーブルの上のお茶菓子を手に取る妙な雰囲気を放つ女性が静かに、でも、確かな重圧を放ち、そこにはいた。

 

「パチュリー様、いらしていたのですか。」

 

「パチュリー?様?」

 

三咲はてっきり「お嬢様」一人だけがいると思っていたものだったのでパチュリーがいたことに完璧だと思ったテストの答案に間違いがあった時が如くうろたえていた。

 

「その子が、『面白いこと』というやつかしら?レミィ?」

 

ーレミィ?レミィと言うのかなあの令嬢。ー

 

「ええ、そうよ。久しぶりの人間よ。生きているね。貴女の所の泥棒はもう人ではなくなったのでしょう?パチェ?」

 

ーパチェ?名前が省略されている?つまりこの人達はかなり仲がいいのかな?ー

 

自分が未知の域へ来た事を実感している三咲は、出来るだけの情報を取得しようと思考をフル稼働させていた。しかしそうすればするほど三咲の顔は真っ青になっていくばかり。まさに、まだ収穫なんてできたようなもんじゃないトマトのような顔色だったのもだからそれを見かねたパチュリーは話を切り出した。

 

「まァ、ひとまず貴女の名前を聞きましょう。」

 

「ほ、北条三咲、とぅ、と申します。」

 

ーミサキ、ねぇ。よくレミィの重圧に耐えながらしゃべられるわね。大したものだわー

 

「さて、どちらから自己紹介しましょうか。レミィ。」

 

「パチェ、貴女からよ。当主は一番最後に名乗るものだわ。」

 

幼い令嬢の謎のこだわりにより自己紹介はパチュリーが先となった。

 

「そうね。私はパチュリー・ノーレッジ。紅魔館地下の大図書に住んでいるわ。あと私は世間一般で言われている魔法使いというものよ。気が向いたら覚えていて頂戴。」

 

パチュリーが話し終わると令嬢は手にあるティーカップをテーブルの上に静かに置き。待ってましたと言わんばかりに座っていた椅子から勢いよく飛び立つとテラスの手すりの上に立ち、翼をめいいっぱい広げ、それはもう我こそが劇場の真ん中で舞う主役と言わんばかりの勢いで

 

「ようこそ、ここ、紅魔館へ。私こそ、紅魔館当主でありとおっても誇り高き貴族レミリア・スカーレットである!ここに迷い混んだ哀れな人間よ、我々はうぬを歓迎しようぞ!」

 

三咲はどんどん薄れていくレミリアからの重圧に安心しきっていた。というか完全に深く考えすぎていたのかもしれない。しかし、そんな考えは甘いということを思い知らされる。

 

「さぁ、人間よ。久しい血だ。存分に痛め付け。地獄のような拷問を食らわせてやろう。(もちろんそんなことやんないけど!)」

 

「ひぃっ!」

 

「まずは…貴様を奴隷として散々こき使ってやろう!(衣食住付きで!休みもあるよ!)」

 

「ひぃっ!」

 

「その次は…貴様の血を腹いっぱい飲んでやろう!(私少食だからそんなに飲めないけど!)」

 

「ひぃいいいいっ!」

 

「更には!」

 

「お嬢様。」「レミィ。」

 

あまりにもノリノリなレミリアはメイドとパチュリーに引き留められるまで三咲が顔面蒼白で倒れているのに気が付かなかった。

 

「レミィ張り切りすぎよ。」

 

「そのようね…。」

 

レミリアはノリノリで最後まで言えなかったことにかなり落ち込んでいた。三咲には吸血鬼のジョークというものは通じなかったようだ。

 

「ちょっとその子起こして。話が進まないから。」

 

老いたメイドはレミリアを待たせぬよう、三咲の顔面を居眠りをしている美鈴を起こすが如くおもいっきりひっぱたいた。

 

「ぷぎゃぁっ!」

 

「あーこらこらもうちょっと優しく…。揺するとか。」

 

「いえ、これが一番手っ取り早いかと。」

 

まァ、起きたので良しとしよう。

起き上がった三咲に対しレミリアは今度はぶっ倒れさせぬよう、美しく(笑)優雅に(笑)そして、カリスマ性溢れるように!(笑)優しく、そして威厳たっぷりの態度で、我こそが大きな歌劇の主役だと言わんばかりに話し始める。

 

「所で貴女、服装から見るに人里の子ね?」

 

たとえ、あまりに幼い姿をしているとはいえ吸血鬼は吸血鬼である。三咲は恐れの念を持って、はい。と答えるしかなかった。

 

「確か、一ヶ月後にまた人里に買い出しいくのよ。そのときに返してあげるから。」

 

そうよね?とレミリアが老いたメイドを見ると彼女は、はいそうですと、頷いた。

 

「本当ですか?!」

 

三咲の目は希望を見出だした如くぱあと輝いていた。

 

「ただし、一ヶ月間ここで働いてもらうわ。」

 

「え?」

 

「安全を保証するのよ?それも一ヶ月間。悪い取引ではあるまい?それとも?あの夜の森にまた放り出されて、無惨にも妖怪の腹の中がいいかしら?」

 

そのような事を言われたら答えはただひとつ。

 

「わ、分かりました!やります!」

 

「そうこなくちゃね?あ、でも貴女の妖獣はこちらの管理とさせてもらうわ。何かあったら困るから。」

 

レミリアは管を指差した。

 

「え?そっそれは…」

 

「いいわね?後でそのメイドに預けて頂戴。」

 

はい。と問答無用で飲まざるを得なかった。

 

「いいわね?貴女も?」

 

「はい、レミリア様の御身のままに。」

 

老いたメイドは腰から浅くきれいに礼をした。

 

「彼女の服は私の古着をきさせましょう。部屋は空き室を。それでよろしいでしょうか?」

 

「ええ、是非そうして。じゃあ、早速とりかかって。」

 

そうして、老いたメイドが不安な顔をしている三咲を引き連れて中へ入っていった寸刻後。

 

「やっぱり、咲夜の負担を軽くさせてあげたいのね。あんな小さな子供をメイドにさせるなんて。」

 

パチュリーにはレミリアの思惑がバレバレだったらしい。

 

「丁度よかったのよ、彼女も年よ。妖精だけじゃ心もとないわ。それに今から育てて早く仕事を覚えさせて…。」

 

「能力があれば将来紅魔館で雇う。かしら?」

 

「……。」

 

少し悲しげな表情でレミリアは紅茶を啜った。

 

 

 

 




三咲の恐怖と頭真っ白を表現するために後半は情景などの描写を少なくしてみました。
レミリアは久しぶりの人間でノリノリです。
ちなみにケン太は思ったより大きいです。
また何かお気づきの点があれば指摘してください。
ではまた。
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