この素晴らしい世界に呪術を!   作:不落八十八

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12話

 さて、ギルド職員による今回の緊急クエストの詳細が告げられた訳だが……。

 やっぱりと言うべきか、キャベツの収穫祭であった。

 出来の良いキャベツだったらしく一玉につき一万エリスと言う太っ腹な報酬だった。

 ギルド職員が用意した檻付きのプールみたいな所へ持っていけば良いとあるが……。

 

「これ、地味に大変だな?」

 

 あくまで捕獲して引き渡した事で支払いがあるのであって、先程景気良く爆裂魔法をぶっ放して気持ちの良い顔をしながら木陰で寄り掛かっているめぐみんはノーカウントである。

 討伐数では無く捕獲数だとあれ程言ったのにな……。

 まぁ、経験値は非常に入ったようで喜んでいたからまぁいいか。

 どうせ、私たちはシェアハウスしてるからお小遣い稼ぎにしかならんしな。

 手を握ってやり魔力を供給してやれば後数分程度で動けるようになるだろう。

 マナタイトに魔力を込める方法の応用だ。

 もっとも、人に対してやるのは非常に難易度が高いので繰り返し行う事が必要になってくる。

 此処最近疲れて帰って来ためぐみんに膝枕しながら供給してやるのが日課になっているのでそこそこスムーズに熟せるようになっていた。

 そう言った点ではめぐみん専用の技術とも言えるのか。

 

「んー……、あっちでカズマくんたちも頑張ってるみたいだな」

 

 私は倒れためぐみんを連れて行くと言う形で抜け出したので、後方から四人の様子を眺める事ができた。

 ダクネスさんが肉盾し、その横合いからカズマくんとゆんゆんがスキルと魔法で頑張り、アクアさんが転がって離れてしまったものを回収する。

 そんな感じで奮闘している姿を私たちはぼけーっと見ているのであった。

 にしてもすんごいぶるんぶるんしてるなぁ。上半身の鎧が砕け、衣類が見えてしまっているのだが、ダクネスさんの巨乳が上下左右にぶるんぶるんと動いている。

 ……クーパー靭帯大丈夫か? あんなに激しいと切れるんじゃないか?

 でもまぁ職業クルセイダーだしな。防御力が上がっている筈だから靭帯も強靭になっている事だろう。

 何せ、あんなに勢いよくぶつかって来られているのに実に楽しそうにしている。

 ……あの見た目で動かない相手に剣を振って空振りする運動音痴っぷりには溜息が出るが。

 まぁ、タンクにはタンクの使い道があるので問題は無い。

 あの様子だとクルセイダーのスキルで自身の鎧よりも肉体の方が耐久値が高くなっているのだろうと推測できる。

 いや、ほんと不思議な事に鎧よりも肉体の方が強いんだよな、スキルって怖い……。

 なので、ダクネスさんには今後背水型肉盾方式で活躍して貰う事にする。

 体力が減れば減る程威力が上がるバーサーカー系職業の対であるクルセイダーにも似たようなものがあり、此方は体力が減れば減る程防御力が上がると言う代物だ。

 決死の覚悟で最後まで味方を守るためにあるスキルなのだろう。結構ポイントを使うらしい。

 今回キャベツ相手には殺傷力が高過ぎる私は後衛に回り、指示出しと不意打ちに対する迎撃に徹する予定だったのだがダクネスさんの『デコイ』の強制ヘイト集約効果が非常に高かったが故に暇になっていた。

 なので、つい先ほどまでダクネスさんのカードをお借りし、スキル内容の吟味とビルド構築を考えていたのだった。

 剣も駄目なら拳も駄目、接近戦は役立たずなダクネスさんであるが最高峰とも言える肉体強度はタンク役として素晴らしいものがある。

 

「……ぶっちゃけアクアさんが居るから死ななきゃ安いしな」

「何か物騒な事言いませんでしたかおんおん!?」

「いや、別に。ダクネスさんの使い道について考えてただけだぞ」

「それは……まぁ、その、うぅん、否定はできないですね……。アクアは最高峰のアークプリーストですし、致命傷も治せるくらいの実力がありますからね」

 

 ダクネスさんと言う案山子にモンスターが群がったとしても限界手前でアクアさんが回復してやれば何度だって使える訳だ。

 本来タンク役と言うのは死に直結する最前線であり、文字通りパーティの盾役である。

 そのため、死への恐怖に打ち勝つ強靭な心と度胸が無ければ成り立たないポジションだ。

 故に、それを被虐願望と言う性癖でカバーできるダクネスさんは最適解とも言える。

 うん、数ある性癖の中で防御力に関してはドMが一番強いんだよなぁ。

 ドM精神が折れない限り高性能な肉盾として活用できる訳だからな、便利過ぎる。

 幸いカズマくんはネトゲプレイヤーだった事もあってそこらへんの理解が得られたのは大きい。

 騎士であるパラディンでは無く、盾持ちのクルセイダーと言うのがミソだ。

 そこを勘違いしていると指示出しを間違えるだろうからな。

 『受け止めて反撃しろ』と『受け止めて足止めしろ』では大分内容が変わる。

 多分、其処を指摘してなかったらカズマくんは間違った運用をしていた事だろう。

 防波堤にそれ以上の効果を求めてはいけないんだぞカズマくん。

 ……まぁ、正直剣じゃなくて大盾を装備して欲しいものだけどな。

 後ろから鞭を振るってやるから構えろと言えば頷いてくれたりするんだろうか。

 後で聞いておくか。

 

「何か怖い事考えてませんかおんおん……?」

「いや、別に。そんな事は思って無いぞめぐみん。後ろから鞭を振るえば盾を構える様になってくれるかなぁだなんてそんな事思って無いぞ」

「……おんおんって地味にドSですよね。意地悪体質と言うか何と言うか……」

「そうか? あんまりそういった事はしてないと思うんだがな」

 

 趣味全開で良いならダクネスには衣服の下にレザーボンデージと首輪を付けてやりたいとは思うがあえて口にはすまい。

 んな事言ったらめぐみんにドン引きされるのがオチだからな。めぐみんそういう所は普通な感性だし。

 大分凶悪に仕上がると思うんだよなぁ。

 清楚な衣服の下に卑猥な衣装を着せるとか非常に興奮できるんだが。

 多分、ダクネスの被虐の方向性ってそう言う事だよなぁ。

 下卑たおっさんにくっ殺されたいとかぬかしてたし、尊厳を貶められる系のが好きな筈だ。

 ………あれ、割と有りなのでは? 年下の少女に調教管理される変態ドM痴女。

 メイドスキー中巻を書き終えた後の新作はこれで決まりだな……。

 年下令嬢に調教管理される年上のメイドの百合調教物か……、実に良しだ。

 

「あの、おんおん? 何か握る手がえっちな感じなんですけど……おんおん?」

「おっと、すまない。つい手を遊ばせてしまった。そろそろ復帰できるかめぐみん?」

「まぁ、そうですね。三割くらいは回復したので大丈夫だと思います」

「良し、それじゃ戻ろうか。手伝いをしてくれ」

「あれ、合流はしないんですか?」

「そろそろ本格的に動こうかなって」

 

 パスで了解を取ってから『鶏獣ヒヨトリア召喚』を行使し、魔力を糧に足元にヒヨトリアを召喚する。

 それを見て何をしようと思っているのか把握したらしいめぐみんが苦笑を浮かべた。

 ヒヨトリアのスキルの一つに対象を金縛り状態にする『蛇睨み』と言うのがあるので、それを使って捕縛するつもりだ。

 石化状態にしてしまうと戻すのが大変なので動きを封じるだけのスキルで十分だ。

 キャベツの性質に一度屈服するとその相手に食べられるまで大人しくなるというのがある。

 そのため、一度叩き落すなりしたキャベツをギルドの檻に保管するまで暴れる事や逃げ出す事を考慮しなくて良いのだ。

 そうでなければキャベツの捕獲報酬ももっと上がっていた事だろう。

 ある程度の強さである程度の難易度で捕獲できるからあの値段なのだから。

 ヒヨトリアを抱き抱え前線に歩き出す。今回の捕り物はパーティで山分けの予定なので、二ヵ所で捕獲できるならそっちの方が効率が良い。

 まぁ、やる事はあっちでゆんゆんがやってる『パラライズ』とそう変わりは無いしな。

 さっさと終わらせてギルドの酒場で乾杯をし直そう。

 

「と、言う事で我がパーティの総報酬はキャベツ百八十玉にレタス二十五玉で計百八十五万エリスだ。一人頭三十万と八千三百エリスと言ったところだな。そういえばこのパーティは共有資産は作らないのか? 何かしらあった時の備えとしてあった方が良いと思うぞ」

 

 ギルドの受付から受け取って来たずっしりとした布袋を一度ソウルに収納してから額を確かめ、小さな布袋に三十万八千三百エリスを入れた物を六つ作りテーブルに置いた。

 うちのパーティが収穫したキャベツとレタスを一度私がソウルに収納してから、運動会の玉入れの如く数えながら檻に放ったので手早く報酬を貰える事ができた。

 他のパーティは逐一持って来たようで、対応した別々のギルド職員の持つ集計用紙の計算が必要だった事もあり支払いは遅れているらしい。

 思い思いに布袋を手にした面々がにっこにこの表情を浮かべていた。

 ……いや、共同資産はどうするんだ。もしや作らないのか?

 いやまぁ、アークプリーストであるアクアさんが居れば一番高くなるであろう治療費が不要になるので問題は無いと言えば無いんだが……。

 まぁいいか。私たちは家に帰ってから報酬の二割を共有資産に回すから問題無いし。

 この様子だと装備費は自前でやる感じになるみたいだな。旅に出ている訳でも無いのでそれで問題は無いしな。

 

「いやぁ、大収穫でしたね。……アクアが結構な数のレタスを納品してたみたいですが」

「普通手触りで分かるだろ……。お前はアレか、ブロッコリーとカリフラワーの違いが分からないみたいな感じでキャベツとレタスの違いが分からない感じか?」

「違うわよ! ちゃんと分かるわよそれぐらい! 黄色がカリ……ブロッ……、どっちだっけ?」

「あぁ、うん、皆まで言うな。大体察したから……」

「因みにブロッコリーとカリフラワーは同じアブラナ科だから、栄養価が少し違うくらいでほとんど同じだぞ」

「なら別に見分けなくても大丈夫ね!」

「…………はぁ。なんで俺こんなの貰ったんだろ」

 

 朗らかに笑うアクアさんとは対照的にカズマくんの目は死んでいた。

 まぁ手触りが全く違うキャベツとレタスを間違えるのはある意味至難な事ではあるが、料理に携わらない人だとたまにある話らしいけどな。

 ……こっそり十玉程ソウルから変換せずに取っておいたキャベツがあるから今日の夕飯はお好み焼きにでもしようかな。

 お好みソースだなんて洒落たものは無いからケチャップもどきとマヨネーズもどきでお好みソースでも作るか。

 めぐみんとゆんゆんは子供舌だから美味しく食べられる事だろう。

 

「おんおん、今日の夕飯はキャベツを使った料理が良いです! あんなに活きの良いキャベツなら絶対美味しいですよ!」

「うん、私もそれが良いな。おんおんの作る料理美味しいし」

「ふむ、ではお好み焼きにでもするか」

「お好み焼き! 見た事も聞いた事も無いですがきっと美味しいに違いありません!」

「ふふっ、めぐみんおんおんの作ってくれる料理いつも美味しそうに食べてるもんね」

「当り前じゃないですか! というかそれはゆんゆんも同じでしょうに」

「あはは、まぁね。……お友達二人と一緒にご飯が食べられるだなんて最高なシチュだし」

「……少しは治って来たと思ってましたが、ぼっちを拗らせ過ぎなんですよゆんゆんは……。普通に喜ぶ事が出来ないんですか?」

「普通に喜んでるけど?」

 

 ……痛み過ぎてる、早すぎたんだ。どうしてこんな事になるまで放っておいたんだ。

 もはや、心の傷跡が瘡蓋と化して痛みを痛みだと感じない状態になってやしないかゆんゆん。

 シェアハウスで大分症状が緩和されたと思ってたんだがなぁ……。

 どろりと淀んでいて底なし沼のような瞳で笑ってる姿はマジでやばみを感じる。

 カズマくんが引き攣った顔でゆんゆんを見ていたので、ゆんゆんの癖の強さを改めて理解した事だろう。

 

「そ、それにしてもおんおんさんって料理が上手なんですね。めぐみんたちから聞いてましたけど、その、よく料理していたんですか?」

 

 前世でも、と言う見えない枕詞が付いていそうな感じの質問だな。

 正直に言えば同僚が料理好きでその話をよく聞いていたからある程度覚えているだけであって、社畜時代ではもっぱら惣菜と弁当が主食だったよ私は。

 まぁ、今生では一人暮らしとめぐみんの世話があったから済し崩しに料理をするようになったので此処まで手慣れてしまった訳なのだが。

 

「ふむ、自分的にはそこそこな実力だとは思ってるよ。幼い頃からめぐみんに食わせるために色々と工夫はしていたしね。知識だけはあったのさ、教えてくれる友人が居てね」

「へぇ、そうだったんですか。……作れない料理とかってあるんです?」

「……食材の問題があってな。再現できるものとできないものがある。一部の食材は輸入品頼りだから原価が高くてな。おにぎり一つで九百エリスくらいだと言えば何となく分かるだろう?」

「あるんですか米! めぐみんたちの容姿からしてそういうのもあるとは思ってたけど実在してたんですね!」

「そりゃまぁ、過去に同じような奴が来てるからな。それなりに進んでいるようだよ。大通りに輸入専門店があるから其処を覗いてみると良い。流石に魚介類は無いが穀物や醤油とかは売ってるぞ」

「うぉおおおお!! 日本食キタコレ!!」

「でもカズマ、私たち馬小屋暮らしだからそもそも料理ができないわよ」

「そうだったぁああああ!? くそっ、目の前に和食があるって言うのに食えないだなんて……!」

 

 ちらっちらっとカズマくんとアクアさんが此方を見やる。

 ……もしかして催促されているのだろうか。今夜あたり夕飯にお呼ばれしたい的な。

 まぁ日本食専門店はアクセルには無いしな。自分で作るか同じ転生者に作って貰うしか方法は無いだろう。

 だがなぁ、ぶっちゃけ面倒なんだよなぁ。三人分は作りやすい分量だから楽なのだが、この流れだとダクネスさんも誘って六人分作る事になる訳だ。

 うちの竈は二ヵ所しか火を扱えないので私だけ調理係になるのは必然。そうなると食事を一緒に取ろうとすると既に冷えている可能性もある。

 非常に面倒臭そうな雰囲気を出してカズマくんたちを見やる。彼らも理解しているのか視線を逸らした。

 

「……一枚五万エリスで良いぞ」

「たっか!? お好み焼き一枚五万エリス!? ぼったくりにも程があるだろおんおんさん!」

「そうか、なら結構だ。うちは飲食店じゃないからな、別に来て欲しい訳でも無いんだ。今日は此処で解散しようじゃないか」

「うぐぐ、めっちゃくちゃ良い顔してやがる……。でもなぁ、お好み焼き……、く、食いてぇ……!」

「ふむ、それは私も良いのかおんおん」

「払ってくれるならな」

「では、一枚頼めるだろうか。聞いた事の無い料理だし、手間賃も兼ねてそれだけの価値はあるだろう」

 

 そう言って五万エリスを差し出したダクネスさん。

 ……食事一回で五万エリスは普通に躊躇う額だぞ? 私が言うのもアレだが、金銭感覚大丈夫かこの人。

 あっさりと渡したダクネスさんにカズマくんたちが驚愕の表情を浮かべる。

 手に持った布袋を見やり、私を見やりと何度も往復し、暫くして此方に視線を止めたので小首を傾げて微笑んでやったら俊敏な速度で五万エリスが私の前に置かれていた。

 

「背に腹は代えられねぇ……! よろしくお願いしますおんおんさん! どうか、俺に美味しいお好み焼きを何卒……!」

「ね、ねぇ、おんおんちゃん、女神割引とかしてない? こう見えてアクシズ教の女神なの私……」

「三千エリスで良いですよ」

「やった! それじゃあよろしくね!」

「俺の決意が!? あっさりと踏み躙られたんだが!? えっ、どう言う事!?」

「いやほら、アクアさんのおかげでお酒飲めたし、原価代で良いかなって」

「原価代たっか!? え、ぼったくり価格じゃなかったら一枚三千エリスのお好み焼きなんですか?」

「カズマくんは普段料理をしていないようだから知らないのかもしれないな。この街の物価は微妙に高いぞ。名称通りの駆け出しの街であればもう少し物価は安いだろうけども、ベテラン冒険者も居る街なんだ。それに忘れたのかカズマくん。活きの良いキャベツ一玉いくらだったかを」

「……一万エリス、です」

「三千エリスのうち二千くらいがキャベツ代だ。あんまり前の常識に囚われては駄目だぞ?」

「そうっすね……」

 

 まぁ、ソウルに仕舞っているキャベツだから売値は付かないんだがな。

 そう何度も来られても困るので現実を教えておくに限る。

 飲食店の料理が程々な値段なのは仕入れなどの部分で安価に手に入れていると言うのが前提だ。企業努力とも言っても良いだろうな。

 ギルドの場合は輸送と解体を引き受けているし、依頼料は依頼者から出ているから中抜きと言う形で食材等を得ているので酒場であの価格で出せるのだ。

 この世界にチェーン店が無い理由はそれが大きいのだろうな。個人店であれば自分で食材を狩ってくれば食材費分が浮くのだから儲けも多いだろう。

 

「あれ、だとしたらおんおんさんお店出したらめっちゃ儲けられるのでは?」

「ん、儲ける事を目的とすれば、な。ああいう店はお客さんの喜ぶ顔が見たいだとか自分の料理を褒められたいだとか趣味が転じて天職になっただとか、そういう続けられる理由が無いと長続きしないもんだ。確かにそういう一途で一本芯の通った考えは好きだが、私自身に適用されるかと言うとそうでもない。私はめぐみんが美味しそうに食べてくれるのが嬉しいから作ってるのであって、その他有象無象が喜んでいたところでどうでも良いしな」

「あっ、はい。そうだったんですね、確かに無理を言うのもアレですもんねー」

「……なんで若干棒読みなのか分からんが、まぁ、そもそも料理を作るのは別に趣味じゃないしな。食べるなら美味しい方が良いだろって色々としてるだけだぞ。一人で食べる時は割と雑だよ」

「そうなんですか?」

「あぁ、キャベツにオリーブオイルと塩で齧るくらいには適当だ」

「雑過ぎますよ!? まさかとは思うんですが昔に干し肉齧ってた時のあれっておやつじゃなくてブランチだったんですか!?」

「……まぁ、そういう日もあるだろ?」

「ありませんよ!? あぁもう仕方ありませんね。おんおんのためですからね、私がずっと一緒に居てあげなきゃ駄目ですねこれは」

 

 ふんすと無い胸を張るめぐみん可愛いなぁ。

 だけど、いつかはお嫁に行ってくれなきゃ困るぞ?

 いやまぁ、めぐみんの人生だから独身を貫くってのも有りっちゃ有りではあるが、人並みに幸せな人生を送って欲しいとは思うので良い人が出来ればと祈るしかないな。

 ……なんであちこちから生暖かい視線を受けているんだ私は。微笑ましいものを見たって顔してるけど、今の会話に微笑ましさがあったか?

 めぐみんが私離れができないと言う意味合いだろうか。まぁ、これは追々何とかしていけば良いだろう。まだ若いんだし。

 

「……うぅ、鈍感な幼馴染を持つと苦労しますね……」

「……苦労してんだなめぐみんも」

「その言い方には物申したい気分です。はぁ。まぁ、良いでしょう。おんおんのこれはいつもの事ですし……。お好み焼きとやらを早く食べたいので帰りましょうか」

「ん、キャベツ狩りは大変だったからな。お腹すいちゃったか。なら、早く作らないとな。一応食材は揃っているからこのまま帰っても大丈夫だぞ。だが、結構残っちゃってるな……」

「緊急クエストだったもんね。あちゃー、ジュースも温くなっちゃってますね」

「まぁ、それなら良い案があるぞ。すいませーん、余り包みたいんで葉っぱ貰えますかー?」

「はーい、かしこまー!」

「葉っぱ?」

「ついつい頼み過ぎちゃったーって時にお持ち帰りできるように大き目の葉っぱを用意してくれるのよ此処って。少し多めに頼んで朝ごはんにするっていうのも良いしね」

 

 ウェイトレスさんから大き目の葉っぱを数枚貰い、汁気の少ないものを手早く包んでいく。

 まるで昭和のアニメで親父キャラがお土産を吊るして帰って来る時のあの形で余り物を包み終えたカズマくんたちが頷いた。

 どうやら準備が終わったらしい。そういう勿体無い精神を表に出せる子は好きだよ私は。

 出して貰った物は出来る限り捨てずに食べ終えたいしな。

 飲み食いした物を割り勘して支払い、ギルドを後にした私たちは大通りからシェアハウスの方へと歩いて行く。

 随分と人数が多くなったものだな。これはこれで楽しいものがある。

 ……まぁ原価相当の食材費を払ってくれたらこうしてたまに御馳走するのも良いかもしれないな。

 なーんて思いながらシェアハウスに辿り着く。

 

「あ、めぐみん洗濯物を回収して渡してくれるか? そういえば干しっ放しだったよ」

「了解です。先に入っててください」

「あいよー」

 

 鍵を回しドアを開き、先んじて靴を脱いで中へ上がりリビングの方へ。

 リビングの窓から洗濯物をリレーして貰い受け取り、脱衣所の方へ移していく。

 そうしてリビングに戻るとめぐみんに続いてカズマくんたちも居た。

 

「さて、着替えたらすぐに作ってしまうからのんびりしていてくれ」

「あ、はい、お構いなく」

 

 恐縮した様子のカズマくんに見送られ、自室へと戻って部屋着に着替え始める。

 セーター調の衣服で太腿の下まで長いので短いワンピースのようにも見えるそれに着替え、下は短パンを履く。

 一階に戻り、リビングに戻ると予備の椅子を出したようで皆座っていた。

 

「それではちゃちゃっと作っていくからな」

 

 粉物なので髪が入らない様に首の後ろで束ねておく。

 何やら後ろでカズマくんが胸を抑えて机に突っ伏していたが何かあったんだろうか。

 見やればめぐみんが手をひらひらと甲を見せて振ったので気にしない事にする。

 さて、先にベースとなるものを作っていくか。

 ボウルの中で薄力粉を水で溶き、魚介の乾物を砕いたものと卵を入れて掻き混ぜる。

 本当なら天かすを入れたいが揚げ物はあんまりしないので今回は見送りだ。

 山芋を取り出してすりおろして加え、キャベツをソウルから取り出して活〆し、一枚一枚剥いて重ねて行きざく切りにする。

 まとまりを考えて千切りにしても良いのだが手間だし、今回は一口サイズのざく切りで良いだろう。

 豚バラは……まぁ暴れ猪のバラ肉で良いか。ソウルから取り出した肉塊を薄切りにしていく。

 後は空気を含ませながらスプーンで掻き混ぜて……っと、それを三回行って三つのボウルでタネを完成させる。

 フライパンに油を引いてバラ肉を敷き、タネを丁度良いサイズに流し入れる。

 金属製の蓋をして弱火でじっくり焼いていく。その間にソースを作らねば。

 魔道冷蔵庫から作り置きのケチャップもどきと試作したマヨネーズもどきを取り出す。

 マヨネーズの卵黄はヒヨトリアの卵を使ったからか濃厚な味わいで美味しいものができた。

 二つを一対一の割合で小皿で掻き混ぜてなんちゃってお手製お好みソースの出来上がりだ。

 

「ふふふ、綺麗にこんがりと焼けたな。そう言えば六等分か。変に考えなくて良いから楽で良いな」

 

 木べらで六等分に切り分け、お皿に分けてソースを塗っていく。

 流石に一度に持っていけないのでめぐみんとゆんゆんを召喚し二皿ずつ持って行って貰う。

 

「後五枚焼く予定だから先に食べてて良いぞ。冷めちゃうからな」

「うぅ、仕方が無いですね……。それではお先にいただきます!」

「私も、いただきます!」

「うぉおおお……、美少女のお手製お好み焼きだ……。すげぇ、嬉しい。手料理とか初めて食べるし……、いただきます!!」

「ほぅ、これがお好み焼きか。キャベツをベースに焼き上げているんだな。このソースはいったい……、先ずは食して見るか。いただきます!」

「わーい! 見た事はあったけど食べた事無かったのよね。いただきまーす!」

「はい、どうぞ召し上がれ」

 

 思い思いにフォークでキッシュのようにお好み焼きを食べる光景は違和感があるが、箸文化が無いから仕方が無いよなぁ流石に。

 ……ふふっ、美味しい美味しいと食べて貰えるのは嬉しいものだな。

 新しいのを焼いている間にキッチンで食事を始める。うむ、ちゃんと中まで焼けてるな。

 お好み焼きなどの粉物を料理する時に一番気を付けないといけないのは焼き加減だ。

 外はカリカリ、中はべちょべちょでは意味がない。粉らしさが無いようにしっかりと火を通すのが鉄則だ。

 なので弱火でじっくりと蒸し焼きにしていくのが私流だ。まぁこれも受け売りだけどな。

 ホットケーキみたいに見分けが付きやすい訳では無いし、初心者にはこれがベストだろう。

 焼いては六等分して切り分けて、皆の空いたお皿に乗せていく。

 あっと言う間に皆完食して御馳走様の言葉を貰った。満足して貰えて何よりだな。

 

「いやぁ、美味かった……。ほんとおんおんさん料理の天才っすよ。また食べたいですね……」

「そうね、毎日食べたいくらいだわ!」

「うむ、我が家の食卓に出ても問題無いくらいに美味しかったな」

「そうでしょうそうでしょう! おんおんの料理は最高なんです!」

「ほんと美味しかった。ねぇ、おんおん、料理の作り方って教えて貰えたりする? 私も作ってみたいなって」

「ふむ、こういうのは数を熟す事が重要だからな。ゆんゆんには簡単なおかずを一品ずつ作って貰うようにするか。最初は基本的な卵料理からだな」

「ほんと? やったぁ!」

「ず、ずるいですよゆんゆん! おんおん! 私にも教えてください!」

「ふふふ、分かったよ。ちゃんと一から教えていくからな。基礎からしっかりとだ」

 

 そうかそうか、めぐみんとゆんゆんが料理を覚えてくれるのか。

 そうなると将来的に私の手間も減って楽ができるな。いやはや、嬉しい限りだ。

 ……切り傷用のポーションを買い足しておくか。あかぎれ対策に軟膏も用意しておかねばな。

 若いとは言えども女の子だ、スキンケアはしっかりとしておかないとな。

 春のキャベツ大行進の緊急クエストの打ち上げが大成功に終わって何よりだ。

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