感想少なくなると、需要無いのかな、だなんて血迷ってモチベ死ぬので気軽にカキコしてね(割と切実)
追記
便利なAIによる画像サイトを知ったので、おんおんのキャラ画像を目次に置いてみたので是非見て行ってね。
あー、なんだ……、つまり、この大悪魔バニルが此処に居るのは成り行きで。
魔王城から追い出されて丁度良いからとアクセルに居るらしい知人に会うついでに、丁度良さそうなダンジョンがあったから手中に収めようとしていた、と。
「……もう一度言ってくれるか?」
「うむ、心底困惑している微妙な感情だな。おやつくらいにはなろうというもの……。まぁ、良いだろう。もう一度言ってやろうではないか。この大悪魔バニルには夢があるっ! 壮絶な冒険の果てに、強敵であるこの吾輩を打ち倒した勇敢なる者が、やっとの思いで開いた宝箱がスカ箱であった時の顔を見ながら滅びたいのだ!」
「……はぁ」
で、この始末である。
「いやまぁ、気持ちは分かるが……。供給が無いから自分で作れば良いだろって言う精神なんだろうけどもさ……」
「うむ、流石は未来のお得意様だな。この吾輩の破滅願望よりもエグい尊厳破壊願望性癖を持ち合わせているだけはあるな。もっとも、お得意様の場合、相手が、と言う点がミソだが」
「やっかましいわ。人の性癖見通してるんじゃねぇ。で、あの変な人形で何してた訳よ」
「む? 知っての通り、ダンジョン改築計画の第一段階だが」
「……ボスが居ないのを良い事にモンスターを排除して下準備って事か」
「話が早くて助かる。これぐらいの頭の回転をあの貧乏店主が欠片でも持ち合わせていれば……。はぁ、まぁ、良かろう。……そこの不倶戴天の女神がこの結界を張ったのだろう。さっさと壊してくれれば貴様らに手を出す事はしないと約束しよう。このバニル『人間』は殺さぬ主義なのでな」
そう言えば悪魔と女神ってバチバチだったな。
その割にはアクアさんは退屈そうにカズマくんにちょっかい出して話半分の様子。
目の前の悪魔もアクアさんへの悪感情を殺し切れてはいないが手を出しに来ようとしていない。
……どう言う理屈だ?
「ふむ、どう言う理屈だ、と首を傾げているお得意様よ。老婆心で教えておくが、お得意様が持ち得ているその力は悪魔にも神にも通用する悍ましき力である事を自覚するべきだ。人の身でそのような業を背負うとは、どれだけ生き急いで来たのやら……。吾輩が見通す悪魔としての権能を以ってしてもきっちりかっちり読み取る事のできないお得意様であるが、現時点では有り得ないIFと言う視点であれば幾らか見れたものがある……。……流石にこのバニルの本体を殺すために地獄へ赴き、全ての悪魔のソウルを砕いて糧とし、この吾輩相手に消耗戦を仕掛けて確殺しに来るのはマジでノーサンキューである。流石にそこまでして滅ぼしに来られても重過ぎて困ると言うか……」
「する訳無いだろ、面倒な」
「……因みにそのパターンを引いた吾輩の行動だが、そこの金髪の少女に乗り移ったものの、幸せな生活を享受し被虐願望が改善傾向にあり精神が抵抗できず、支配したまま吾輩を貴殿が殺した事でそのまま一緒に死んで廃人と化したのが事の顛末だ」
「納得した。誰だってそーする、私だってそーする」
「一瞬で覚悟キメて瞳孔を開きながら睨むのは止めるのだお得意様よ。そう言う事もあって、吾輩は絶対にお得意様とガチなバトルをしたくないのだ。……誰が嬉しくて工業廃水を煮詰めたかの如く淀んだ双眸で睨み付けて歩く狂気と化したお得意様との勝てぬ戦いに赴くと言うのだ。避けれるなら絶対に避けるわ、そんなもの」
……あー、白い霧の結界でバニルを閉じ込められれば、ゾンビ戦法で確殺できるのか。
その場合、私はもはや人の形をしているかどうかも怪しいだろうけども……。
む、だが、それはあくまでバニルの理由であってアクアさんの理由にはならないのでは?
「……まぁ、そこのお花畑の化身めいた頭をしている女神は下界に落とされ弱体化しておるし、何より、残機によって吾輩を確実に滅ぼせないと分かっているが故に、そこまで脅威度が無さそうだし、お得意様が何とかしてくれるだろうと投げ出した訳だ」
「確かに女神として悪魔は罰して滅ぼすべき相手ではあるわ。けどね、……今の私じゃ勝てないし、あの見敵必殺チェスト悪魔なエリスも手を焼く存在なのよね悪魔って。そもそも地獄に本体があるから此処で潰してもほとんどノーダメージなのよね。何度も出て来て恥ずかしくないのかしらね?」
「言ってくれるではないか頭のおかしいアクシズ教に崇め奉られている水と宴会芸の女神よ。む、そこのお得意様によって方向転換して頭のおかしいの部分が外れ掛かっているのか、ふぅむ、妄想を煮詰めて文字に書き連ねた官能小説を必死に書いている信者や死ぬ程試行錯誤して木から紙を作ろうとしている信者に愛されているようだな。……自分で言っていて分からなくなってきたのだが、お得意様の影響力はとんでもないな……。良ければうちのマイナスしか生まぬ貧乏店主にコンサルティングを手掛けて貰えぬだろうか」
「……割かし冗談で言ってみた企画を全身全霊で行っているのかよ……、やっぱやべぇなあいつら」
嘘だろお前、みたいな表情で皆の視線が私に集まっている。
そこで梯子外すのかよ、みたいな雰囲気である。
いや、確かにアクシズマーケットの草案を書いたのは私だが、正直良かれと思って程度の温度で接していたのだ。
和紙の作り方を教えてやり、羽ペンとインクに代わる鉛筆の作り方も教えて、その他諸々の進捗はゼスタにぶん投げたのが真相であるからして。
恐らくあいつの事だから私がアクアさんを保護している事も加味して色々と内容を盛っているに違いない。
……まさかとは思うが、アクア様公認のイベントだとか思って無いだろうなあの変態。
あー……、流石に無いだろと思う事ではあるが、ゼスタだしなぁと言う嫌な信頼もある訳で。
近々様子見に行った方が良いかもなぁ……、だなんて一人溜息を吐いていたら場の雰囲気が何ともアレな感じになっていた。
「えーと、何と言うか色々とアレなんで纏めると、謎の人形を作ってたバニルはやる事やったから作るの止めてダンジョンの改装するんだよな?」
「うむ、お得意様の前世の性別に翻弄されていた思春期の少年よ、それで合っているぞ」
「へ?」
「ん゛ん゛っ! えーっと、俺たちはそこの魔法陣を潰しておきたい。その後はひっそりとやってくれれば良いんだが、おっけー?」
「そうだな。先程も言ったが人間は我ら悪魔にとって御馳走を作ってくれる料理人のようなものだ。勿体無い精神が働いて死なせる事は疎か、一人増えるだけで小さくガッツポーズを浮かべるくらいには好意的なのだぞ。……個人差はあるが」
「そこが一番肝要では……?」
「揚げ足を取るではない、そこの金髪少女とお得意様の営みを知ってから日夜悶々としている紅魔の少女よ」
「お前もいちいちおやつを強請るな。まったく、純情なめぐみんが恥ずかしさから、もじもじとして悶々としながらも生来のピュアさを捨てられないで葛藤するのが良いんじゃないか」
乙女の秘密を暴露され顔真っ赤のめぐみんがバニルに向かって爆裂魔法を撃とうとするのを後ろから止めておく。
身長差があんまりないのでシンプルに後ろから腕を含めて胴へと抱き着く形で抑えた。
気持ち強めに抱き締めて右肩に顎を置く形で抑え込みを強めておく。
「……お得意様は悪魔より悪魔らしいと言うか、サキュバス染みておるな……」
「古今東西、悪魔より人間の方が恐ろしい事だなんて分かり切った事だろうに。人間は短慮で自己種族中心的な社会を形成するやべー奴らだってのにまだ気付いて無かったのか? 人が栄えている水面下には子孫繁栄の営みがあるんだぞ。実際、前世の総人口はあくまで推計だが約七十九億ぐらいは居たらしいしな」
「それはまた……、悪魔にとっての楽園ではないか」
「まぁ、天使、悪魔、神様の存在は全て実証不可能と言う観点で居ない扱いされてるから、この世界の法則に則ると多分消滅するぞ?」
「と、言うと?」
「この世界における精霊が良い例だな。極め付けは冬将軍だろうな。冬の代名詞と言うだけで現実化する世界だ、逆説的に否定的な集合無意識によって存在が消される事だろうよ。故に、地球における悪魔は既に形骸化どころか幻想化していて、かつて本当に居たとしても現代には存在しないと言う否定的な無意識的バイアスによって存在が否定される訳だ。彼方に着いた途端に居なかった事にされかねないぞ」
「……恐ろしいな、お得意様の故郷の人間社会と言うのは」
「まぁ、あくまで此方の世界の法則に則れば、と言うだけだ。案外普通に居られるかもしれないぞ。おすすめはしないが」
大悪魔バニルの好物である感情は羞恥心における悪感情であるからして、大概の人間がドライな地球では珍味扱いだろうよ。
此方の世界の人間は大体がノリで生きているところがあるからな。
多分世界自体がそう言う空気をしているんだろうよ、ギャグ空間的なサムシングがスパイスになっているに違いない。
「さて、長話もこれまでだ。貴様らは吾輩の後ろのアレを処理する、吾輩はそれを見届けて手を出す事なく見送る。この場での締めはそれで良かろう?」
「まぁ、そうだな。どうするカズマくん、それで良いか?」
「え、あ、はい。良いんじゃないですかね。んじゃ、アクアよろしく」
「仕方が無いわねぇ……。……勿体無いし、この残った結界の浄化力ぶつけてやろうかしら」
何やら不穏な事をぶつくさ言っていたアクアさんだったが、ちょちょいと言う感じで今も光輝く結界の魔法陣に数秒触れただけで解体を完了した。
そして、振り向き様に宣言通りと言うべきか、手に握った光り輝くそれをバニルに投げ付けた。
「ふっ、このようなセンスの欠片も無いへなちょこボールに吾輩が当たる訳が――」
「えいっ」
「ぐぁあああぁぁああーーーっ?!」
軽快なサイドステップで避けた矢先、私の方に近付いて来たので生理的な嫌悪感から蹴飛ばしてしまった。
腰を横から蹴りつけた形になるので勢いが強く、野球ボールよろしく飛来していた浄化ボールに顔から突っ込む羽目になったバニルが悲鳴を上げた。
まぁ、腐っても元女神であるし、大悪魔でさえ通れぬ結界の余剰浄化力、それも握り拳サイズに圧縮された劇物なので当然の結果と言えよう。
恐らく本体なのだろう仮面から淡い湯気を放ってバニルが苦しみの声を上げて倒れ伏す。
顔半分を覆い隠していた仮面が砕けたかと思えば、俯せにバニルは倒れて息の根が止まった。
そんな殺悪魔事件を目撃してしまった私とアクアさん以外がSAN値チェックを受ける羽目になった。
「うわぁあああ!? おいアクア!? 何してんの? マジで何してんだよ!? 穏便に終わる流れだったろ今のは!?」
「仕方が無いじゃない。嫌なものは嫌なんだもん。それになんかむかつくし」
「子供の短気かっ!? おいおいどうするんだよ、残機があるって話だろ。恨んで闇討ちとかされねぇだろうな!?」
「そ、そそそそうですっ、私はこれからずっとおんおんの近くに居る事にしますっ。お得意様と呼ぶくらいにおんおんには好意的であると考えられますからっ」
「む、では私も妻として隣に居ようではないか。頼り甲斐のある夫がきっと守ってくれるだろうからな」
「えっ、わ、私はどうしたらっ!? 守ってくれる頼れる人も、恋人も、友達も居ないんだけどっ!? あっ、そうだ、アクアさん、アクアさんならっ」
確かにバニルを屠ったアクアさんであるが、狙われるであろう人物に守って貰おうとする魂胆はどうかと思うぞゆんゆん。
と言うか、お前もこっちに来い。幼馴染と言う名目で一緒に守ってやるから……。
……いつになったらゆんゆんのぼっち思考は治るのだか。自分から友達は居ないとか言っちゃったらもうどうしようも無いんだが。
いっそ、荒療治で恋人作らせるか? けどなぁ、ゆんゆんを託せそうな男居ないんだよなぁ。
「と、言う事なんだがバニル。お得意の見通す奴でゆんゆんの彼氏見つけられないか?」
「うーむ、我が見通す力を持ってしても無理なものは無理だぞお得意様よ」
「「「「「うわぁっ!?」」」」」
壁側の身を隠せそうな場所でこっそりと復活してひっそりしていたバニルに声を掛ければ、仕方あるまいと言う感じのテンションで颯爽と躍り出た。
全く気付いてなかった五人は私の後ろに隠れるように飛びしさり、先程倒れたバニルの死体らしき何かと現れたバニルを交互に見て困惑の極みを見せていた。
「要するにあの仮面がバニルの分身体の本体で、身体の方はさっきの自爆人形のように土から作ったんだろ」
「うむ、流石の慧眼だなお得意様よ。それともその魂を見通す瞳の力か?」
「あぁ、私の右目は万物の魂を見る力がある。お前のソウルが仮面に宿ってて、そっちに移動したのも全部見えてた」
「ふぅむ……、間接的であれば魂の簒奪は行われないようだなお得意様よ」
「いや、どちらかと言うとバニルとの相性が悪いだけだな。ソウルの動かし方を熟知しているからか、霧散させずにそのまま次の媒体に移動してるから厳密にはお前死んで無いだろ。俗に言う残機とやらを身代わりにして、核となる部分を逃がしてる訳だ」
「……その才能は本当に恐ろしいものだな。お得意様には小手先の技術は通用せんようだ。吾輩のスタイルはこの仮面。つまりは付け替えができ、スペアがあると言う事。故に、何重にも重ねて被る事で事故を防いでいる。……まぁ、魔王と約束した結界の維持を扱うための術式は先程のガワについていたので、これで吾輩も自由の身と言う訳だ。下手な芝居を打った甲斐があったと言うものだ」
「……見通す力を使って未来予知めいた事をしてるのか。面倒な千日手になりそうだから、バニルとは戦いたくないな」
「それは此方も同じだお得意様よ。いや、割と本気でお得意様と戦うのは勘弁して欲しい。あの貧乏店主の店を栄えさせる可能性が一番高い人物とは争いの火種も踏み潰しておきたいくらいなのだ」
やっぱりお前そっちが本音だろう。こいつの性格からして仮に本当に私が地獄へバニルを殺しに向かったとしても、最後の本体を地上の方に移して糞みたいな鬼ごっこが始まるに違いない。
バニルの勝利条件は私に本体を捕まえさせない事であり、意思を完全に飛ばした後の私にあるバニルへの殺意が擦り切れるまで逃げ切れば勝ちなのだから。
殺意も失い、歩む理由も無くなって完全な亡者と化した私はその場で蹲り、やがて誰かに簒奪されるまでその身を横たえさせる事だろう。
「……にしても、その貧乏店主ってのは誰なんだ? 心当たりが無いんだが」
「……捻くれた性格、旧知の仲、魔王軍幹部、結界の維持……、マジかよ、お前がウィズの知り合いかよ」
「知っているのかカズマくんっ」
「知っている事しか知りませんが、まぁ、知ってる方です。と言うか何でダンジョンの構築にウィズの店の手伝いが必要になるんだ?」
「ふっ、簡単な事だ、先程から当たっている女神のおっぱいに発情しかけている少年よ。理想のダンジョンを作るための資金が全く以って足りんのだ! 流石に素手で一からダンジョンを作り直す訳にもいかぬからな。魔族の建築家を雇うための資金を集める必要がある。そこで、旧知にして何かと恩を売っているあの貧乏店主を利用し、アルバイトと言う形で店を繁盛させ、浮いた金をプールして我がダンジョンの礎とするのだ!」
「随分と長い目の計画なんだな……。魔力さえあれば生き延びる長命たる悪魔らしい計画だな……」
強奪や強盗などのマッポーめいた手段ではなく、堅実でコツコツとした貯金によるダンジョン計画に流石に私も困惑を隠せない。
本当にこいつ悪魔か? だなんて疑問が湧いてくるが、もしやこいつのダンジョンの計画って老後のお楽しみみたいな軽いノリでやっているのであって……、ま、まさか終活的な……?
そうなると入れ込む熱が趣味のノリであるのも頷ける。長期的な計画なので目下の敵となるアクアさんと敵対関係になるのは拙いと理解しての先程の妥協な訳か。
先程の一件でアクアさんはバニルに先手を取って害してしまった事もあり、今後はそれを楔にネチネチと盾にして本格的な対立を防ぐつもりなのだろう。
実際、リッチーであるウィズさんのところにバニルが転がり込むのであれば、種族的に厄介な人物が一ヵ所に集まってくれる事もあって今後がやりやすくもある。
……まぁ、先程から連呼されているように私自身、バニルのお得意様になる可能性は非常に高い。
と言うよりも見通す力が便利過ぎる。グーグル先生よりも正確に答えをくれる万能な辞書みたいなものであるし、その利便性を加味すると敵対関係になりたくない人物でもある。
「まぁ、依頼もこれで完了だろう。帰るか……、何かどっと疲れたな」
バニルの自爆人形によって駆逐されたこのキールのダンジョンは核となるボスが不在である事もあって、活性化を止めて不活性ダンジョンとして落ち着く事となった。
バニルが奥の部屋へと向かい、ちょちょいと何かをやったらしい。
憶測であるがボスの情報を自分に書き換えたのだろうな。故に、ただの洞窟と化した訳だ。
自爆人形も私たちがほぼほぼ駆逐したのでバニルの遠隔操作で爆発させて証拠隠滅完了。
「入口は封鎖しなくて良いのか? 盗賊とかが住まないか?」
「ふむ、その可能性もあるが、まぁ、今のところは問題あるまい」
カズマくんの投げかけに肩を竦めて返答し、ちらりと私を見たバニル。いやまぁ、バレてるよなぁ。
私の冒険者としてのキルスコアは大概がモンスターであるが、その二割くらいは人間である。
主にアクセル周辺の盗賊や山賊と言った輩であり、冒険者崩れからチンピラよりも迷惑なゴロツキが野に下った者たちの総称だ。
ただでさえ新人冒険者の街と呼ばれるアクセルだ。それをカモネギに見立てて舌なめずりをするゲスな輩が多い事が気に掛かっていた。
けれども、ギルドに山賊や盗賊の討伐依頼は見た事が無く、最初の頃は不思議に思っていた。
所謂上級冒険者に対して秘密裏に送られる秘匿性緊急依頼の存在により、その謎が解けた訳だ。
上級冒険者だなんて呼ばれる輩は大概がクソツヨメンタルの持ち主であり、荒事にも長けて人間性も良い者が多い。
そのため、個人単位で受けられる緊急クエストが上級冒険者のみに手紙で送られてくる訳だ。
そして、私はソウルの在庫を増やすために最近はそれに手を付けていた。
今や両手の指では足りないくらいに今生の私は人を殺した経験があり、そしてそれに忌避感も躊躇いも罪悪感も抱かないやばい精神性を持っている事を自覚してしまった訳だ。
……明らかに人間性の欠如と言うか、最近取得してしまった『暗い穴』の影響である事は間違いない。
最初は威勢の良かった盗賊連中が下卑た瞳で私を見ていた筈なのに、一人、二人と無残に殺されていく過程を以って、泡喰った表情で必死になって私を殺しに来る彼らの何とも無様な事か。
足を切り捨てた事で地べたを這いずって逃げようとする奴の頭を踏んで潰して押し花にしてやり、両腕を失ってふらふらと逃げる背中へ矢を放ち的当てをしてやり、泣き叫んで土下座して命乞いをする奴を斬首に処し、女性を性的に暴行していて裸だった奴の男性器を切り落としてから玉を潰してやった。
あぁ、実に楽しかった。
弱い者虐めはいけないと分かっているのだが、殺しても虐めても良い塵屑共であれば問題は無い。
殺して良い奴らを残虐に殺して、帰ってくればさながら救世主を見るが如く視線で被害者から崇められ、ギルドからも手厚い報酬と信頼を得られる。
そして、何よりも人のソウルはモンスターのソウルよりも遥かに上質だ。
そこらの奴を殺して奪うよりも非常に手っ取り早く、何よりも問題にならない。
と、言う事もあって残念な事にアクセル周辺の盗賊山賊共は今やもう居ないのである。
「死んで欲しかったけれども、居なくなっては欲しくなかったんだがなぁ」
そう誰にも聞こえない小声で呟いた。
それを拾ったのか、はたまた見通したのか、バニルだけが天を仰いだ。
次はアルカンレティア辺りの奴らを狩りに行こうかな、だなんて軽く考えているあたり、私はもう地球の、現代社会に戻る事はできないだろう。
明らかに犯罪者であるし、倫理感も破綻してしまっていると自覚している。
やっぱり、報復を恐れて皆殺しにしたのが堪えたのだろうか。
最初の内は仕方が無い、守るためだと思ってやっていたが、今じゃ勿体ない精神で追い詰めて殺しに回っていたしなぁ。
『暗い穴』一つでこれだ。二つ、三つと増えていったらどうなってしまうのだろうか、私の人間性。
獣として堕ちるのか、それとも破綻者として壊れるのか、はたまた快楽に溺れるのか、私の明日はどっちだ。
死ぬに死ねないなぁと地力を鍛えていかねば、ふとした瞬間に死んだ後の事が怖い。
ソウルの貯蓄はあるが無意識に進む人間性の破綻が一番怖くなってきた。
「……本当、悪魔より悪魔であるな、お得意様は。それだからこそ見ていて面白いのだが……」
まぁ、バニルの視線を此方に引き付けられていると思えば良いのだろう。
ぶっちゃけ、こいつめっちゃくちゃ強いし。ソウルの輝きがベルディアの倍以上はあるのだから。
こいつが真に人類の敵に回ったらマジでやばい。大半の奴が詰むぞ、こいつに。
ある意味私がバニルの天敵であって良かったのだろう。こいつを押さえられているだけでも十二分の価値がある。
ウィズさんの所で程々に餌を与えて飼い殺しのように日々を謳歌させておく事がバニルの対処法である事は間違いない。
無論、ダンジョンの構築もひっそりと妨害しなくちゃならないので、ウィズさんの貧乏スキルに期待しておく事にする。
ウィズさん、ウィズさんはなぁ……、何と言うか、目利きは良いのだが致命的に商売層の事を考えない残念さを持ち合わせている。
上級冒険者であれば喜んで買うであろう品々を、駆け出しから中級が精々のアクセルで売りに出すのがそもそもの間違いだ。
王都に店を構えていればそれなりに需要があって店が回るだろうに、何かしらの理由があってアクセルに居るのだろうけども……。
これから待ち受けているであろう胃が痛くなるような苦難に苛まれるであろうバニルに黙祷しておく。
「と、言う事で依頼を達成したので報酬金を頂きたいのですが」
事の顛末を幾つかふわっとしておきながら、大悪魔バニルがキールのダンジョンのボス不在を理由に住み付こうとしていたと言うストーリーでギルドに報告を済ませる。
蹴りを一発入れていた事もありラストアタックを何故か貰っていたので冒険者カードを見せて証明を果たす。
多分、バニルの事だからアクアさんのキルスコアを増やすのが気に食わず、浄化ボールが当たる前に既に仮面を自分で砕いて逃げ出していたのだろう。
そのため、自爆扱いとなり次点である私に討伐の経験値が流れ込んだ訳だ。
実際には残機と言う身代わりを破壊しただけであるが、冒険者カードは経験値等を材料に判断しているのかこうして記載されている事から討伐したという事で良いのだ。
「ま、魔王軍幹部を二人も……。これが新進気鋭のアクセルの英雄……、流石ですね……、あぁ、貴女が産まれて来て本当に良かった……」
受付嬢が涙ぐんで私を拝むように感謝の言葉を伝えて来た。
まぁ、お仕事柄モンスターや魔王軍に殺されたりする冒険者の管理をしているようなものだし、こうして実際に対面している事もあってギルドマスターのように書類の数字だけで感情を終わらせられないのだろう。
受付嬢が冒険者と恋仲にならないと言うジンクスもそう言った点から存在している。
冒険者を見送り、帰ってこなかった人たちを何人も彼女らは知っているのだ。
けれども、仕事を円滑に進めるためにその感情を押し殺して業務を熟せねばならない。
故に、こうして魔王軍の脅威を挫く存在は彼女たちからすれば喉から手が出る程に欲しかった存在なのだ。
まぁ、それはそれとして、出す物は出して貰おうじゃないか。
「えぇ、勿論ですっ。ですが申し訳ありません、先日のデストロイヤーの報酬を渡した事もあって、すぐに用意する事ができないのが現状です。かつての英雄を超える偉業を果たしたおんおん様に不義理であるとは我らギルド一同理解しております、ですが、無い物を手渡す事ができません。本部の方に問い合わせて早急に送り届けて貰う形となります。どうか、今暫くお待ち頂く事をお許しください」
「あぁー、うん、そ、そこまで追いつめられると此方としても困る。ただでさえ、私は若輩の冒険者だ。あんまり無理を言ってギルドからの心象を悪くしたくないんだ。払う物を払ってくれる用意をしてくれるのであれば、ある程度は待ちますよ」
「ありがとうございます。我らアクセルのギルドの名を賭けて、しっかりと報酬をお渡し致しますので、どうぞ、今後もアクセルをよろしくお願い致します」
「無論だ。このアクセルに屋敷を持っているんだぞ? ちゃんと市民の一人として責務を果たすさ」
「その言葉を聞けただけでも救われる思いです。どうか、貴女が人類の希望になる事を祈っております」
そう言ってエリス教のペンダントに祈った受付嬢。
……此処でアクシズ教の勧誘したらどうなるんだろ。そんな悪戯心が芽生えたものの、しっかりと足を着けて歩ける人に松葉杖のような教えは必要無いだろう。
まぁ、最悪ゼスタにアクアさんに履かせたパンツあたりをブルセラすれば資金はできるしな。
……アクアさんはノーパンノーブラ主義者であり、洗濯物に下着が混ざった事が無いのである。
なので、新しい物とこっそり入れ替える事ができないので履かせる必要があったんですね、ってか。
そこまで貧窮していないので実行する事は無いだろうけども。
にしても魔王軍幹部二人目、か。うーむ、大丈夫かなこれヘイト私に掛かり過ぎないか?
魔王軍からしたら私の存在は正しく魔王に挑む勇者のそれだろこれ。
やはり、作るべきか……、そう考えつつ、新旧交わる熱視線に晒されながら帰路に就いたのだった。