この素晴らしい世界に呪術を!   作:不落八十八

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誤字修正&感想&ここすきありがとうございます!
Alina of the Arenaやらサイバーパンク2077にハマってたんだごめんね。
暖かい感想なども受け取っているので、最低でも二週間に一度は更新しようとは思っているので今後も宜しくお願いします。
(日曜日に五千文字ずつくらい書いていく感じで)


36話

 ふむ、やはりこんな事もあろうかと天幕付きの荷台馬車を買っておいて良かったな。

 トレントが住まう馬小屋の裏に置いておいたそれにサンドイッチが詰まったバケットと空の瓶を人数分用意し、毛布やランタンなどのキャンプ用品を幾つか乗せておく。

 『クリエイトウォーター』を瓶の中に入れてコルクで閉めてっと。

 ……ふぅ、後は何かあったかな。そう思って点検していると後ろからクリスがこそっと歩み寄っていた。

 水瓶の表面に映ったクリスはそろりそろりだなんて擬音が付きそうな動きをしており、此方を驚かそうとしているらしい。

 

「わっ!!」

「ていっ」

「うわぁぁああ!?」

 

 後ろから首に抱き着こうとしていたようなので、そのまま背中に軽いクリスを乗せるようにして荷台の毛布へと背負い投げるように放ってやった。

 ジト目の此方に気付いたクリスが可愛くテヘペロしたので、まぁ、許してやるか。

 可愛いは正義だ。これがゼスタとかだったら毛布ではなく石畳の方へ叩き付けていた事だろう。

 毛布の上でひっくり返っていたクリスが向き直り、バツが悪そうに後頭部に手を回して誤魔化していた。

 

「あはは……、まさかバレてるとはね」

「水瓶に間抜けな姿が移ってたぞ」

「あちゃー、『潜伏』してたから気配無い筈なのにって思ってたけど原因それかぁ」

「よくある古典的なミスだな。完全なステルスじゃないんだから気を付けた方が良いぞ?」

「あはは、それもそうだね。とまぁ、改めて、温泉旅行のお誘いありがとうね」

「私たちの仲だしな。放置プレイは可哀想かな、と」

「ふぅーん、釣った魚に餌くれて有難い限りだよ」

 

 ニヨニヨ顔になったクリスがよっこらせっと荷台から降りて石畳に立つ。

 ……ふむ、この前プレゼントした衣服を着てくれているようだな。

 ユウキさんの所で買ったヴァイオレット色のパンク風ジャケットに、黒のビキニトップと現代的な黒いホットパンツを合わせ、ゴテっとしたブーツを組み合わせた如何にも遊んでますと言う路地裏不良少女コーデだ。

 

【挿絵表示】

 

 艶めかしく露出した胸元やお腹、太腿が非常に色っぽい。

 クリスと言う少女の設定である悪戯好きなシーフ少女と言う雰囲気も相まって非常にセンシティブである。

 ……自分の色で染めた感があって非常に宜しいな、今度ララとめぐみんも染め上げよう。

 

「……ねぇ、おんおんにコーデして貰ったこれなんだけど」

「うむ、とっても似合っているぞ。実にむっつりでクリスらしい恰好に仕上がったな」

「その……、今まであんまり見向きもされてなかったのにすんごい視線感じるようになったんだけど」

「そりゃそうだろう。今のクリスは色気が滲み出ているからな。この恰好で上目遣いで前傾姿勢にでもなってみろ、落ちない男は居ないだろうよ」

「ふ、ふぅーん……。そっか。気に入ってくれてるんだ。なら、いっか。ちょっと恥ずかしいけど、我慢してあげる」

 

 短い自分の髪先をくるくると手遊びし始めたクリスが照れ臭そうに頬を染めていた。

 ……可愛いが過ぎるな。やはり女の子は可愛くて綺麗で美しく、そして少しだけ煽情的であるべきだな。

 少し攻めた格好をさせてみたのは実験的な部分が大きいが、ララとめぐみんの時にも活かせる事だろう。

 ララの場合、身体がもうえっちぃし顔も良くて髪も肌も良いので、センシティブな方向に舵取ると大事故起こしそうなんだよなぁ。

 普段の私服のようにタイトな感じであると露出が少ないのに関わらず、見事なボディバランスが強調されていい感じに魅せれる。

 女教師と言うか、キチっとした大学生みたいなスタイルが良いだろうか……。

 うむうむ、素材が良いから悩みどころだな。

 めぐみんは普段がスカートだからズボン系でコーデしてみたいな。

 普通に黒いワンピースとかでも似合うのだが、どうせなら少し冒険させた格好が良いだろう。

 ぶっちゃけ紅魔族って日本人の見た目のそれなのであんまり派手なのは似合わないと言うか解釈違いなんだよな。

 それこそ、ぶかぶかパーカーに芋ジャーズボンでも通用するくらいの可憐な地味さであるし。

 多分、そこらへんが紅魔族が中二病に走って派手な事をしたがる気性の根底なんだろうなぁ。

 もういっそ、完全に中二病コーデしてしまうのも良いかもしれないな。

 腕に包帯巻いて、ベルトの多いズボンに黒いトレンチコート辺りだろうか?

 それは流石に安直過ぎか。紅魔族ってパンクと言うよりかはロックな感性であるからして、ロックなコーデとか?

 革のジャケットにダメージジーンズ、黒いTシャツに髑髏とかプリントしてあったりすれば良いのだろうか。

 

【挿絵表示】

 

 刺青……は流石にやり過ぎなのでシールとかだな。

 ふむ、背丈が伸びてボーイッシュな感じに育てば大人っぽさも出てくるだろう。

 

「おんおん?」

「ん? あぁ、すまん。クリスだけに送るとなると色々とあるから少し考えてたんだ」

「へ? まさかダクネスにはまだプレゼントしてないの?」

「いや、ララには既に装備面でプレゼントしてる。衣服はまだだけどな。ベルディアの鎧から作った特注のタワーシールドに取っ突き機構を組み込んだお高い奴をな」

「いやまぁ、確かに冒険者だから装備とかが資本だけどもさ……。止めてよね、ダクネスと喧嘩したくないからね?」

「あぁ、そこらへんは大丈夫だろう。ぶっちゃけ、ララとの馴れ初めはクリスと殆ど変わらないし」

「……そ、そぉなんだ」

「と言うかクリスの事だから天界から見てたろ初めから」

 

 下手くそな口笛を吹いて誤魔化そうとするクリスに肩を竦めておく。

 さて、天幕荷台も準備終わったし、そろそろ皆を呼びに行くとするか。

 

「他の面々に準備が終わった事を伝えないとな。ついて来るか?」

「んー、二度手間になりそうだからここで待ってるよ」

「あいよ」

 

 荷台の中に入って行ったクリスを一瞥して、庭先の方へと足を運ぶ。

 そこから鈍い音ながら硬い物がぶつかり合う音がしているので、多分カズマくんがベルディアと鍛錬でもしているのだろう。

 今回ベルディアは断固拒否の構えで拒否ったのでお留守番だしな。

 何でも、アンデッド時代にアクシズ教徒から受けた仕打ちが今も若干トラウマらしく、その総本山であるアルカンレティアに誰が好き好んで行くか、との事だった。

 具体例を聞いてみれば、実力で敵わないと察してか嫌がらせの方向に舵切ったようで、腐った生卵や湿気た小麦粉などをぶつけられたり、バケツリレーで運んできた聖水を次から次へと投げ込んできたり、山の中なのに火炎瓶を投げつけて燃やそうとしたりと酷い目に遭ったらしい。

 鎧が陽射しで熱くなる頃に腐った卵と湿気た小麦粉をぶつけられ、撤退した後に他の魔王軍幹部とでくわした時のえんがちょ顔が今も脳裏に浮かぶとの事だった。

 いやまぁ、間違ってはない、相手の士気を、それもアンデッド軍団の統率を嫌がらせで撤退させたのなら大金星だろう。

 

「そらっ、踏み込みが甘いっ! だからこうも簡単に打ち返されるんだ。ちゃんとしっかり踏み込んで腰を回して振るえと言っているだろうがっ!」

「お、押忍っ!」

「そうだ! それで良い! お前の振るう剣はロングソードよりも短い、バスタードソードくらいの長さだ。小回りが利くように腰を使ってコンパクトに薙ぎ払いを放て。振り下ろしは確かに威力は高いが、その分スタミナや筋力任せな部分が多い振り方だ。確実に仕留める時か相手が動かない時、奇襲で一撃で仕留めると言う状況で使え」

「はいっ!!」

 

 うむ、実に青春してるな。

 庭先の芝生エリアで木剣を構えたベルディアとカズマくんが激しい打ち合い稽古をしていた。

 ベルディアは門番の仕事の途中だったからか銀の全身鎧で非常に動き辛そうだが、まだまだ実力が足りていないからかカズマくんをしばくには丁度良いハンデと言った様子だった。

 ……まぁ、本当の所はベルディアが身バレを恐れて兜を外したがらないだけなんだけどな。

 黒の騎士鎧と言うくっそ目立つ格好をしていたデュラハン時代でも時々兜は外していたようで、王都に居る上級冒険者の何人かは戦場でその姿を見ている……かもしれない、と疑心暗鬼になっているらしい。

 と、言うのも事の発端はうちの里にある魔王の娘の部屋が見えるバニル作の望遠鏡が原因らしく、もしかして遠目で見られていた可能性があるかもしれない、とガクブルしているようだった。

 ギルドの方でベルディアの人相書きが作られていないのは確認しているので実に杞憂なのだが、そういう特典を貰った転生者も居るかもしれないので顔を隠す方向で居るらしい。

 バレたところでお前私の召喚霊じゃん? と慰めてみたが、モンスターよか人間の方がよっぽど恐ろしいと大分濃度のある溜息を漏らしていたので重症のようだった。

 まぁ、生前に裏切り麻痺毒バックスタブによって絞首台に送られる羽目になったのが相当なトラウマになっているのだろう。

 

「む、そろそろ時間のようだな。カズマ、全員が集まるまで幾らか時間はあるだろうから汗を流してこい」

「へ? もうそんな時間か……。師範、ご指導ありがとうございました!」

「おぅ、お前も磨けば伸びる所が出始めて来たからな。慢心せず、大樹を育てるように毎日水をやって成長し続けろ。基礎を土台として踏み固めるまでが重要だからな」

「はい!」

 

 此方に気付いたベルディアが鍛錬を止め、カズマくんを風呂へと送り出す。

 デュラハン時代と違ってフルフェイスなので表情は分からないが、雰囲気がアホっぽいから後方師匠面ムーブできて喜んでいるのだろう。

 その証拠に木剣を肩に乗せてトントンと動かして気持ちを隠せていない様子。

 

「随分とうちに慣れて来たな」

「あぁ、こうも心穏やかで居られる時間は本当に久しぶりだったからな。生前の身体を半ば取り戻した時には本当に驚いたものだ。こうして騎士団長だった頃の様に、新兵に稽古を付けてやれる日が来るだなんて思いもしなかった」

「順風満帆で何よりだ」

「ジュンプーマンパン……?」

「あぁー……、船の帆が風を受けて航路が順調って意味だ」

「ふむ、勇者候補が住まう地と言うニホンと言うところのことわざか。そうだな、今の俺は地に足付けて生きてるって感じがして大分満足している。門番と言う仕事も貰えてヒモから脱却もできたしな」

「何か不便は無いか? ある程度の事なら融通するが」

「……ふははっ、何事も無し、だ。小屋も立ててくれて住む場所もあるし、給金もその日暮らしするには十分な額だ。感謝はすれど不満は全くだ」

「そうか、それなら良いが。留守番を頼んだぞ」

「あぁ、任せてくれ。あの幽霊のちっこいお嬢さんも居るし、屋敷の事は安心してくれて良いぞ」

「(呼んだ―?)」

 

 自分の話題が出たからか何処からともなくベルディアの肩に勝手に座ったアンナ。

 ベルディアの鍛えられた身体にとって少女一人の重さは軽いようで、肩を竦めてアンナのお茶目な奇行を受け流していた。

 

「関係も良好そうだな。一週間くらい、いや、冬明けを目途に戻って来るつもりだ。これはある程度の生活資金として受け取っておいてくれ」

 

 ソウルから取り出した金の入った小袋をベルディアに放り投げると、戸惑う様子無く難無くキャッチした。

 中身は三十万エリス程入っているので過不足無く優雅な休日を送れる事だろう。

 やけに重い中身を訝しんだのか紐を緩めて中を確かめたベルディアが背筋を伸ばして硬直した。

 うむ、こう言う真面目な面してる奴には札束で殴ってやるのが一番だな。

 

「こ、こんなに……、良いのか? 数ヵ月は暮らせる額だが……」

「ちょっとしたボーナスも兼ねてるからな。カズマくんに手解きしてくれているだろう? その追加報酬とでも思ってくれ。素晴らしい仕事にはそれ相応の額を。当然の事だろう?」

「……雇い主が優秀で話の分かる者だとこれほどまでに安寧を齎してくれるのだな。人の上に立つ才能があると見える。既に死に伏した俺を呼び戻してくれたのが君で本当に良かった……」

「ふっ、なに、前世では生前の君の様な勤勉な者だったんだよ、顎で使われる苦労人でもあったがね」

「そうか……。世の中やはり世知辛いな……。水と温泉の街と呼ばれる場所だ。ゆっくりと身体を休めると良いな」

「そうだな、ありがとう。では、後は任せたぞベルディ、アンナもな」

「(まっかせてー! お姉ちゃんが居なくて寂しいけど、しっかりお留守番するからね!)」

 

 ぶっちゃけ、既に地縛霊から解放されているのでお前も行けるんだけどな。

 と、視線に込めると察したのかそそくさと霊体化して屋敷の方へ消えていった。

 全く……、アンナの出不精と言うか、外への恐怖心はまだ健在か。

 以前、地縛霊だった頃に屋敷の外へと好奇心のままに飛び出したのは良いが、自身の存在が紐付けされている屋敷から離れた事でその線がか細くなり、あわや空中分解の如く存在が消え去り掛けた時のトラウマが残っているらしかった。

 死に至る訳ではなく、存在が水飛沫や泡のように虚空に溶けていくような、虚無に近寄る滅び。

 その時の恐怖は幼い精神だったアンナには劇物だったらしく、屋敷の敷地外へ一歩も踏み出せないくらいに怖がっているのが現状だ。

 まぁ、こればっかりは無理強いする事では無いし、一歩ずつ進めれば良い。

 ……近所にできたケーキ屋に一緒に行く、ぐらいから始めるべきだろうな。

 

「さて……、残りはララとめぐみんたちか。ララは自室だろうし、めぐみんは……二度寝した可能性があるか。ゆんゆんは水やりをしているだろうからちゃんと来るだろうし、後で声をかけてやれば良いか」

 

 取り敢えずめぐみんからだな。

 朝食はもう皆で取ったので最終準備をするために各々別れたのだが、めぐみんは楽しみのあまり夜更かしをしていた可能性が高い。

 朝食でもうつらうつらして私に食べさせられていたからな。確実に寝ているだろう。

 エントランスから二階、三階と上がり、めぐみんの自室へ向かう途中で見えたゆんゆんに声をかけておく。

 

「ゆんゆん、そろそろ出るから門の方へ向かってくれ」

「あ、はーい! この子に水を上げたら行くね!」

「あぁ、めぐみんは部屋か?」

「多分そうだと思う。準備は終わってるから問題ありませんって言ってたからベッドに倒れてるんじゃないかな? 学院での遠足の朝もそんな感じだったし」

「そうか……、ありがとう。先に行っててくれ」

「うん!」

 

 誰よりもこの旅行を楽しみにしていたのだろう。

 満面の笑みで頷いて返事したゆんゆんはとっても輝いていた。

 このナイススマイルを普段から出せればな……、無理か、ゆんゆんだし。

 でもまぁ、身内であれば幾らかどもらずに話せるようになってきた事であるし、アルカンレティアの孤児院にぶちこめば身内判定が増えてそれなりに成長しそうだな……。

 いずれ里に族長となるべく帰るだろうが、その時には一皮剥けた姿をお届け出来る事だろう、多分。

 ゆんゆんは割としっかり者だからこれで良いとして、問題であるめぐみんの部屋へと辿り着く。

 一応のマナーでノックしてもしもーしするが、何の反応も無い。

 ドアノブを回せばあっさりと開いたので中へと入り――、その赤さに目をやられた。

 そう、広い自室を得ためぐみんはハジけた。それはもうはっちゃけたのである。

 赤い絨毯に、クリムゾンレッド色の壁紙。シックな黒の家具を揃え、奥の方の広い部分には何やら複雑な魔法陣っぽい幾何学模様が描かれている。

 ちなみに寡聞にして知らないが、ぱっと見が魔法陣っぽいだけで何の意味の無い様に見える。

 もしかしたらめぐみんがオリジナルで魔法を……? と思ったが、それっぽい格好良い単語が散らばっているだけで何の作用も工夫もシナジーも無い様子なので、本当に思い描いた格好良い魔法陣を書いただけのようだ。

 よく見れば灯りの魔道具が床に埋め込まれているのが見えた。

 部屋を暗くしてこの魔法陣が光を放っている中で詠唱する、そんなごっこ遊びのための自信作っぽいな……。

 流石は紅魔族の申し子と言うべきか、そう言う感性は人一倍強いからなめぐみんは。

 質素な暮らしを強いられた里の自室ではやりたくても出来なかった事をこうして発散するように築いたのだろう。

 ベッドの床に荷物らしき背嚢が置かれており、その隣で掛け布団に上半身を倒れ込むようにしてすやすや寝ているめぐみんを発見した。

 恰好はいつもの制服らしく、ふにふら? だっけか、そんな名前の友人たちから貰ったらしい杖を右手に掴んで寝落ちしていた。

 旅行がよっぽど楽しみだったのだろう。

 ……でも、行き先は里からアクセルへ向かう時に一度寄っている筈なのだが。

 まぁ、家族同然の面々で遊びに向かうって言うシチュエーションが琴線に触れたんだろうな。

 床の荷物を拾い上げてソウルに仕舞い込み、めぐみんをお姫様抱っこして部屋から出る。

 

「んぅ……、まだまだ食べれます……、むにゃむにゃ」

「なんつーベタな寝言を……、まぁ、夢を見ているって事はぐっすり寝てる訳だしこのまま連れてくか」

 

 私の胸にすりすりと頬を擦らせるめぐみんに呆れを込めた微笑を浮かべ、やれやれ仕方が無いな、とそのまま馬車まで輸送する事にした。

 馬車の方まで歩いて行くと、既に一浴びしてさっぱりしたのだろうカズマくんとクリスとゆんゆんが準備を終えて談笑しているようだった。

 と、言っても談笑しているのはカズマくんとクリスで、ゆんゆんは三人組で歩いていたら一人だけ後ろを歩いて二列になってたみたいな感じでぽつんとしていた。

 

「へー、やっぱダンジョンはピンキリなんだな」

「そうそう。普通のクエストと違って報酬は自分たち次第だから、当たり外れ大きいんだよね。でも、だからこそお宝を見つけた時の達成感は病み付きになるくらい良いんだよ」

「んー、もう少しレベル上げたら行ってみるかダンジョン。こういうファンタジーな世界に居る訳だし、一度は潜ってみたいよな。キールのダンジョンは正直アレだったし、ちゃんとしたパーティ組んでガチガチにダンジョン攻略してみてぇわ」

「あはは、良いかもね。っと、あらら、眠り姫と一緒みたいだ」

「ん? あぁ、やっぱり寝落ちしてたのかめぐみん。お疲れ様です師匠」

「ベッドですやすやしてたから拾ってきたよ。クリス、そっちの毛布の所に寝かしておいてくれ」

「はいよー、っと」

 

 荷台に居たクリスにめぐみんを手渡し、毛布が置かれている場所に横たえさせる。

 その後、ニヤっと笑ったクリスによって毛布まみれにされためぐみん。

 もしかしたら半日くらいそのまますやすやしてそうだな……。

 だなんて、笑っていたら後ろから足音が聞こえたので振り返る。

 そこにはララが――、じゃねぇ、何故か肩にウィズさんを乗せたバニルが居た。

 

「すまないがこのポンコツも一緒に持って行ってくれないだろうか契約者殿よ。近々大きな商談があるのだが、こやつが居るとそのための資金に手を付けそうでな。謝礼金として、二つ程見通した結果を伝えよう」

「お、おぉ……、何と言うか、大変だなあんたも……」

「ふっ、最近あの頭お花畑な元女神と宜しくやっているらしい少年よ、分かってくれるか」

「お前のそう言う所は嫌いだわ」

「くくくっ、朝からこやつを捕縛するのに疲れたから少し欲しかったのだ、許せ。よっこいせっと」

 

 割と雑な感じで荷台の方へウィズさんを放り投げて、額の汗を拭ったバニルは良い顔をしていた。

 厄介者が消えて清々すると言った様子であり、あの手この手でポンコツを晒したウィズさんのお守りに苦労したのだろう。

 私の方に振り返り、耳元に囁く。

 ――アルカンレティアにて魔王軍幹部の妨害工作の予兆有り、噂が立ったら気を付けるべし。

 ――混浴風呂に近付く事無かれ、頭に乗せた片割れを探す邪神と出会うだろう。

 

「マジ?」

「大マジだ。一つは確定、二つ目は契約者殿次第だな。どちらも似たような時期であるので気を付けると良い。毒に関する備えをしておくと尚更に良し、だ」

「分かった。ウィズさんはこっちで預かっておくよ」

「うむ、宜しく頼む。漸く軌道に乗り始めたのだ、こんな事で座礁したくないからな……」

 

 大分疲れた顔で、ではなっ、と足早に帰って行ったバニルを見送って、私は盛大に溜息を吐いた。

 まさかララとの賭け事に負ける日が来ようとは……、はぁ、魔王軍幹部とのエンカウント率高過ぎだろう。

 死んだ目をしつつ、ソウルに仕舞い込んだ毒関連のアイテムを思い返す。

 精々が毒紫の苔玉しか錬金できていないので、相手が毒に特化した相手だときついな。

 ……まさかと思うが、ウィズ魔道具店に寄って毒関連のポーションを買わせようとしていたのだろうか。

 はぁ、契約者相手にも商魂逞しいこって。

 まぁ、アルカンレティアにはプリーストが腐る程居るから問題無いだろう。

 最悪アクアさんに解毒魔法を唱えて貰えば良いだろうし。

 

「む、そう言えばアクアさんは何処に居るんだ?」

「へ? うっわ、まだあいつ来てなかったのか。二度寝だけはするなよってアレだけ言ったのに……。すみません師匠、ちょっと連れてきます」

「あぁ、頼むよ」

 

 荷台の中を見て盛大に溜息を吐いたカズマくんが屋敷へと戻って行く。

 てっきりアクアさんを連れてこっちに来ると思っていたので予想が外れた形だ。

 屋敷へと向かったカズマくんとすれ違う形でお出かけの用意を終えたララが此方へ来る。

 一応アルカンレティアまでの道のりは旅行気分とは言えないので、全員戦闘用の衣服を着用している。

 なので、ピカピカに磨いたらしい懐かしい金属鎧を着込んでいたララは新鮮だった。

 最近までは動きやすい革鎧であったと言うのにどういう心境なのだろうか。

 

「お待たせしたな。む、あぁ、カズマが屋敷に戻ったのはそう言う……。ん? あぁ、この鎧か。いやなに、被虐性癖も薄れてきたのでな。普通に冒険者らしい恰好をしようと思っただけだ。それに、肌に傷が付くと嫌だろう?」

「んふふ、そう言う感性が戻って来てくれたようで何よりだ。まぁ、道中でそこまで強い相手と出くわす事は無いだろうけどな。終わりに近いがまだ冬だしな。冬眠しているのが殆どだろうよ」

「だろうな。まぁ、念には念を入れて、と言う所だ。そろそろあの二人も来るだろうし、トレントを繋いでおいた方が良いんじゃないか?」

「それもそうだな」

 

 ララの助言に従って馬小屋へと向かい、トレントを連れてくる。

 中身は人間なので呼ばれた理由を察して荷台の前で大人しくしてくれるので有難い限りである。

 荷台を引くためのパーツを取り付けている頃にカズマくんがぐーすか顔のアクアさんを抱えて来て、めぐみんの横に添えた。

 その隣に居たウィズさんがアクアさんの元女神っぽい神々しさに当てられたのか魘され始めたが、まぁいいか触れている訳では無いし。

 こうしてアルカンレティアへと向かうための面子が揃ったので、御者として荷台の前側に座った私はトレントの手綱を握った。

 

「よし、それではアルカンレティアへと出発しようか」

「ぶぅるるぅ、ヒィィンッ!!」

 

 やる気満々な様子のトレントが荷台をあっさりと引き、門から広場へと歩いて行く。

 後ろで門の前で見送りをしてくれたベルディアとアンナに手を振って、屋敷を後にした。

 屋敷から広場へ、大通りの馬車が通る道を通っていくに連れて薄々ながら喧噪が後ろから聞こえてくるのに気づいてしまった。

 後ろを見やれば、商魂逞しい者たちが私たちを先頭にずらっと馬車を並べているのが見えてしまった。

 どうやら私のネームバリューと言うか、戦闘力を当てにして相乗りめいた行商をしようとしているらしい。

 ……事前にそのような相談は受けていないし、最悪見捨てても問題無いな。

 と言うか、此方は旅行気分なので護衛役をする気は全く無い。

 冬である事、大行列である事、それらを加味してモンスターが近寄らない事を祈るんだな。

 アクセル内では緩めていたトレントの脚を、アルカンレティアへと向かう道に入った途端に早めていく。

 重々しい荷物を引く行商馬車、十人以上は乗る乗り合い馬車が、此方の軽い荷台馬車と同じような速度で走れるかと言うと否である。

 それに加えて霊馬たるトレントが引いているのだ、そもそもの地が違い過ぎる訳で。

 彼らは道中一泊する事を考えているのだろうが、此方としては夕方辺りに着けば良いと言う考えの違いも相まって、爆速で走る此方の馬車との距離が離れていくのは当然の事だった。

 先頭を走る馬車の見知らぬ商人がぽかんとしていたのが印象的だった。

 せめて一言、と言うか商談を此方にしていれば道のりを共にする気もあったのだがね。

 

「アクセルの最高戦力をタダで使おうだなんて舐めた事するからだ、馬鹿共め」

 

 ごぅごぅと風を切り、私は風になるっ、と意気込んでいるトレントの速度は衰える事を知らなかった。

 ……ユウキさんの所でサスペンションを作って荷台に取り付けておいて本当に良かった。

 付けて無かったら今頃酷い事になっていたに違いない。

 後ろを見やれば、眠っていためぐみんたちも起きたようで、凄まじい速度で走る馬車から見る外の風景を見てきゃーきゃーと楽しそうだった。

 アルカンレティアへの道は一本道なので、正直手綱を握っている必要は無いのだが、手放すとトレントが寂しがるので仕方が無く握っておく。

 たまにピンピンと引っ張ってやると嬉しそうにするので、まぁいいかと諦めておく。

 この様子なら昼頃に一度休憩して、ゆっくりと走らせても今日中に着きそうな感じだな。

 ……はぁ、彼方でいつ来るか分からない魔王軍幹部の影を気にしないといけないのか、面倒な。

 これはもうアクシズ教へ喧嘩を売っているのと同じだろうし、あいつらも馬車馬の如く働かせよう。

 アウェイの場所で潜入工作だなんて馬鹿な真似を考えた事を心底後悔させてやるからな……ッ!




今流行りのAIにクリスとめぐみんを書いて貰いました。
イラスト書けない人には便利なもんですねー、助かる助かる。
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