Rimworld買っちゃってMODマシマシで性癖プレイしてた次第です、ごめんね。
アルカンレティア北部に位置する渓流が流れる山の麓。
かつては鉱山として栄えていたが坑道がダンジョン化し、安定的な収入が得られなくなった事で廃鉱が決定された。
元が坑道である事からモンスターの種類は鉱山系と呼ばれる硬質で金属質なモンスターが見受けられる。
良質な水源による食物連鎖の影響でモンスターのレベルは高く、並みの冒険者でも手こずるとされている。
そんな中級者向けダンジョンに向かう事になり俺の心境はわくわくとガクブルで埋め尽くされていた。
「ふむ、カズマくんそこまで緊張するものではないよ。相手を知れば自ずとすべき事は見つけられる。ここ鉱山系のモンスターの性質は何だったかな?」
「はい、ええと、基本的に頑強で身体の素材がそもそも金属とか硬い物質で作られている事が多くて、けどその分足が遅かったり行動が鈍かったりする、でしたっけ」
「うむ、その通りだ。ブリーフィングをちゃんと覚えてて偉いぞ。そういう基本的な所を聞き逃したり、疎かにしているとあっさり死ぬからなこの世界」
ド〇クエのキャラバンよろしく再び馬車に乗った俺たちはその最中にブリーフィングを行なった。
と、言っても殆ど師匠とダンジョン経験のあるクリスとウィズの現実に沿ったアドバイスを聞いていただけだが。
リッチになる前は凄腕の冒険者だったらしいウィズの意外な蘊蓄や、ダンジョン慣れしているクリスの注意は非常にためになった。
にしても……、それについていける師匠の知識量は何処から来ているのだろうか。
幼馴染であるめぐみんやゆんゆんを比較してもその知識量の差異は月とすっぽん。
こうして歩きながらダンジョンの入り口に向かうまでに、パーティリーダーとしての心得を教えて貰っているのだが感銘を受ける事が多い。
「あの師匠、その豊富な知識は何処で手に入れたんですか? その、めぐみんたちを見ていると雲泥の差だなって……」
「あぁ、その事か。うちの紅魔の里で学生をやってた二人だが、中二病を煮詰めたような場所の学校だぞ? 格好良いモンスターやカモにしやすいが見栄えはそこそこなモンスターだとか、偏った内容の授業を受けてたらしいぞ」
「えぇ……」
「私の場合はとても簡単だ。酒場で飲みながら武勇伝として色々と教えて貰ってたのさ。エール一杯で授業代が済むしな」
あぁ……、成程なぁ。
サークルの、もとい、酒場の姫みたいな感じで師匠は人気者になっている。
あの日アクアのすすめでお酒を解禁してからと言うものの師匠はたまに酒場に入り浸る事が増えた。
一人で黙々と食べている時もあれば、宴会にしれっと混ざっていたり、共同依頼の打ち上げで乾杯している時もある。
アクセルにはサキュバス娼館があるので王都から移住した輩も居り、その活動範囲は意外と広く、今も生き残っている事から内容も濃い。
そんな浮いた話も無い冒険者野郎たちにとって、エールを一杯奢るから教えてくれと言って近づいて来てくれる師匠は紅一点のアイドルであり、男の趣味も嗜好も共感してくれて見た目も美少女であるから万々歳。
とっておきの話をするから、と逆に酒の場に誘われる事が増えていく始末。
あの手この手で師匠との歓談の時間を伸ばそうとするため、正攻法である冒険者らしい話を必死に仕入れてくる奴が増えているらしい。
無理矢理抑え込もうとした馬鹿な輩も居たらしいが、それを目撃していたらしいダストに聞けば青褪めた表情で手の甲に何かを突き刺すジェスチャーをしてみせて色々と察した。
「さて、見えてきたぞ。アルカンレティア北部の鉱山ダンジョン『鉄の穴』だ」
「……ネーミング安直過ぎません?」
「……この世界の人間だしなぁ」
「あぁ……」
師匠の呆れ口調で漏れた言葉には嫌な説得力があった。
見た目は鉄鉱山の坑道の入り口であるが、壁に打ち付けられた『ようこそ鉄の穴ダンジョンへ』と言う明らかにアクシズ教徒が作ったであろうお手製のファンシーな看板のせいでダンジョンである事が分かる。
まぁ確かにこの看板が無ければただの坑道にしか見えないけども、何でお誕生日会の飾りつけみたいなふっさふさな見た目してんだよ……。
ちらりと隣を見れば師匠の目は既に死んでいた。
あぁ、うん、そう言えばアクシズ教徒に一番振り回されてるのこの人だったわ。
非常に深い溜息を吐いてから死んだ目で師匠は振り返り、もう一度溜息を吐いた。
……結構なストレスを感じているらしい、おいたわしや師匠……。
「と、言う事で到着だ。初日は班分けはせずに全員で潜る予定だ。カズマくん」
「はい。斥候にクリス、前衛に俺と師匠とララ、その後ろにめぐみんとゆんゆんとアクア、殿にウィズの順番で進もうと思ってる。主に俺らが前衛を押さえて、後方の奴を魔法で倒して貰う感じだな。無論、めぐみんは槍働きを期待しているからな」
「そりゃまぁ、私の完璧で最強な爆裂魔法を使ったらダンジョンが無くなってしまいますからね!」
「まぁ、ゆんゆんたちに向かってくる奴をチクチクしておいてくれ。余裕があれば少し前に出て私が抑えている奴をチクってても良いからな」
「ねぇ、おんおん」
「なんだゆんゆん」
「……戦力過多じゃない?」
「……言うな。だから初日は慣らしのために集団行動をするだけだ。ダンジョン経験はクリスとウィズさんしか無いんだから」
「私も何度かクリスと同行しているのだが?」
「ならダンジョンにおける基本的な行動を言ってみろララ」
「えぇと……、その……、……足元に注意する、とか?」
自らダンジョン初心者ですと言っているようなララの返答に師匠は温かい目で見守り、そっと肩に手を置いた。
師匠の優しい肩ぽんはがっくりと膝を着いたララへの知識的戦力外通告であった。
いやまぁダンジョン経験豊富なクリスの後ろに付いて行っただけなんだろうしな、当然とも言えた。
以前のこいつってドMくっ殺騎士だったし、普通に同行してた訳じゃ無いだろうしなぁ……。
「と、言う事でダンジョンを生業にしているクリス先生の有難いお話を聞きながらダンジョンアタックするぞ」
「もぉー、そんなに期待されてても罠の位置やダンジョンの鉄則、初心者にありがちな注意ポイントしか出て来ないよ」
教師役として完璧な返答をしたクリスに待望の視線が集まる。
そうか……、異世界半年ちょいで漸くちゃんとしたダンジョンに挑めるんだな。
キールのダンジョンはその……、結局『暗視』とアクアをデコイにした感じだったから盗掘みたいな感じだったし、何よりもあのキールとの別れが印象強過ぎて冒険譚って感じじゃねぇんだよなぁ。
木材と鉄網でしっかりと補強されたダンジョンの入り口を越えて、松明に照らされる坑道を歩いて行く俺たち。
「こういうダンジョンでのお約束なんだけど、やっぱり足元だね。元が鉱山って事でギミックに使われる資材も多いから結構危ないのが多いんだ。ほら、そこの『罠感知』に引っ掛かった石に擬態したスイッチ。試しにこの棒で突いて作動させてみるとー」
一見ただの石ころにしか見えないそれにクリスが持っていた安全棒で叩くと、横合いから何かが飛翔し、反対側の壁に当たって床に落ちた。
出所を見やれば、あからさまに今ぽっかり開きましたと言わんばかりに不自然な小さな穴が壁に開いており、反対を見やれば金属製の針を長くしたような飛翔物が落ちていた。
「森林とかのダンジョンだと木の矢だったりするんだけど、ダンジョン側に余裕があるとこういう物騒な物が使われている事が多いよ。だから、初見だったりする場所だと斥候役が居なければこういう長めの棒で足元を確認してから進むと良いよ。こういう狡猾な罠は築十数年以上のダンジョンから見受けられるから、潜るダンジョンの歴史はしっかりと押さえておくと吉だね」
「ふむ、見た目からして全く分からないんだが……。『罠感知』を持たないパーティは危険そうだな」
「あっ、一応無くても判別する事はできますよ。大体この手の罠は魔力を使っているので、魔法使い系の職業であればその繋がりを追って見分ける事が可能です」
ララの唸るような懸念の声に後ろからニコニコ顔のウィズがそう助言したが、首を傾げためぐみんとゆんゆんを見て困惑を深めた。
師匠は成程なと言う顔をしているので素の技量の差異らしい。
それに気付いためぐみんとゆんゆんが師匠へと視線を向けて無言でどう言う事か促していた。
たははと笑いながら師匠は壁の穴に指を向けて、そのまま下へ下ろして先程のスイッチへと指を滑らせた。
「魔力の動線がこういう風に繋がっているんだよ。多分スイッチになる石ころが踏まれてその動線に接着する事で魔力が通って先程の罠が作動する仕組みなんだろうな。めぐみんとゆんゆんは魔法のカスタマイズはしてないだろう? そのまんまで日々使ってるから魔力操作の技術が未熟なんだよ」
「「魔法のカスタマイズ!?」」
「へぇ、おんおんさんはできるんですね。けど、前にめぐみんさんはしてましたよ? デストロイヤーに向けて爆裂魔法を撃つ際に指向性にカスタマイズしてたじゃないですか」
「……あれが。けど、アレはおんおんに後ろから操作されての事ですから全く分かりません!」
「胸張って言う事じゃねぇぞ……」
そう俺はつい口に出して咎めてしまったが、めぐみんは憤慨する様子も無く、むしろ何かを気にする素振りを見せていた。
……あっ。
理由を察した俺はさりげなく師匠を見た。
何処となく左腕を摩る曇った表情を浮かべていた師匠だが、俺たちの視線を見て首を傾げた。
……成程なぁ。デストロイヤーでの死因は焼死で、しかも燃え尽きるまでの数秒のラグを覚えているとの事だった。
なのでその反応は生理的な無意識なもので、師匠は自覚をしていないようだった。
『大発火』と言う呪術を使う事に忌避は見せていないので精神的なトラウマにはなっていないようだが、デストロイヤーと言う単語からあの時の痛みや苦しみを身体が勝手に思い出しているのだろう。
そう言えば、最近キッチンに立つ時にめぐみんやゆんゆんが手伝っている時が多いが、今思えばフライパンなどを握っている事が多かったな。
後方母親面と言う感じで腕組みして嬉しそうにしている師匠だったが、あの二人はそこらへんを考慮して気遣ってたんだなぁ。
「まぁ、そこらへんは慣れが多いからな。爆裂魔法しか撃てないめぐみんはともかく、種類豊富な魔法で取捨選択して戦うゆんゆんは覚えていて損は無い技術だぞ。具体的には枝分かれする『ライトニング』や速度の速い『ファイヤーボール』とか、色々と魔法を弄れるとその場面で使える手数が増えるからな」
「へぇ……、そういうのは学校で習わなかったけど本当にできるの?」
「いやまぁ、実際の授業を見てないから知らないが魔法をそのまんまで使う人は多いぞ。魔法のカスタマイズは必要に駆られてする事が多いから、熟練者向けなんだよ」
「……あの、それって……」
紅魔の里には行った事が無いが、紅魔族はほぼアークウィザードに就いている事から魔法はお手の物の筈なんだがな。
師匠は若干遠い目をして一言だけ呟いた。
「……紅魔族って中二病の集まりで馬鹿ばっかりだし」
中二病の単語に理解が及ばなかった面々は首を傾げたが、俺とアクアとクリスは合点がいったと納得していた。
そういや、めぐみんと邂逅した時ってバリバリ中二病患者だったな。
ばさぁっとマントを翻してアークウィザード何某って感じで自己紹介してたし。
つまりは魔法に長けているが故にそのまんまでも普通に強いからカスタマイズの必要性が無かったのだろう。
または魔法とはこういうものだ、と固定観念に囚われている可能性も高いな中二病だし。
中二病には王道的なクラシックなものと天邪鬼的なイレギュラーなものがあるが、紅魔族は前者だったのだろうな。
「とまぁ、魔法談義はそれくらいにしてダンジョンの続きだ。ダンジョンは屋内だから時間の概念が壊れやすいからゆっくりしていると体感時間が崩れて長居しちゃうぞ」
「うん、だからこういう砂時計を入った時に引っ繰り返して時間を計っておくと良いよ。此れは十二時間タイプのものだけど、始めの内は四時間くらいから始めると良いかもね」
そうクリスが腰元から砂時計を取り外して皆に見せた。
成程なぁ。確かに腕時計だなんて便利なものはないもんなこの世界。
……もしかして、腕時計を作って売れば大金になるのでは?
と、皮算用したが俺が作れる時計なんて日時計が精々だな、早々に忘れる事にした。
斥候と教師役のクリスの後をついていく形で数分程歩いた俺たちは一戸建てが入るくらいの広場に辿り着いた。
そこにはサイコロみたいな物体が散見でき、『敵感知』があれはモンスターだぞと俺に囁いていた。
「クリス、あれは?」
「えぇと……なんだろ?」
「少し待て。……あれはロックメンだな」
クリスに尋ねてみれば首を傾げられてしまったが、代わりに師匠が手帳をペラペラと捲って名前を伝えた。
……六面体だからロックメン、なのか?
そう首を傾げていた俺だったが、徐に拾った小石をロックメンに師匠が投げ付けた事でその意味を理解した。
こつんと石を当てられたロックメンは、分割するように四肢を伸ばして角ばった手足を持つ人型になった。
六面体に擬態する岩人モンスター、それがロックメンらしかった。
「ロックメンは先程の様に鉱物に擬態するんだが、身体の構造上六面体になるので判別が容易だ。言うなれば六面体に擬態する岩ゴーレムな訳だな。動きは遅いが鉱物で出来ているから身体は非常に硬いのが特徴だ。厄介なのは集団行動を取り、出入り口を塞ぎに来るらしい。普段は鉱山地帯や石切り場などに生息するモンスターらしいぞ」
「随分と博識だねおんおん」
「うむ、酒場で元鉱山夫だったクレフトが教えてくれたんだ。外だと纏まった鉱物になるから稼ぎになるモンスターだそうだ」
「となるとダンジョンだとドロップアイテムは鉱物系になるのかな?」
「多分な。一体倒して見れば良いだろう」
そう言って手帳を何処かに仕舞い込んだ師匠はウォーメイスを掴み取り、近くに居た立ち上がったロックメンの膝に一撃入れた。
関節を砕かれたロックメンが思わずその場で膝を着き、下りて来た頭に渾身のフルスイングをぶち当てた師匠。
べしゃっと地面に倒れ伏せたロックメンの肘に重たい振り下ろしを叩き込み、完全に沈黙させた師匠は黙々と頭部にウォーメイスを振り下ろして完封した。
さぁっと霧散したロックメンが居た所に同じ体表の色をしているインゴットがごとりと落ちた。
「これは……銅インゴットだな。成形要らずとは鍛冶屋泣かせなドロップ品だな」
しれっとロックメン撲殺を敢行した師匠の行動の容赦の無さに誰もがビビっていた。
その見た目と声で忘れていたが、師匠はウィズに匹敵するベテラン冒険者だったわ。
冒険者になって同じく半年くらいらしいが、俺たちと違って幾つもの依頼とモンスターを倒して来た師匠は密度が違う。
レベルも既に三十台と聞くし、掛け離れた技量と経験値の差に高嶺の花を幻視してしまう程だ。
めぐみんと同い年とは思えぬ雄姿に尊敬の念が溢れる。
……この人の弟子になって良かったなぁ、だなんて思っていたら、はい、とウォーメイスを手渡された。
「カズマくんは確かこういう武器は持っていなかっただろう。貸してあげるからそれで頑張ってくれ」
「……はい?」
「ほら、残りの二体。ちゃっちゃと始末してきて」
「アッ、ハイ」
あの、このウォーメイス片手で持てない重さなんでですけど……。
どうやって振り回してたんですかその小柄な身体で……、あ、腰を使うんすね、了解です……。
バトンタッチして前に出た俺はベルディアにしごかれた日々を思い出し、腰を落として両手にウォーメイスを握る。
後ろからこっそりとアクアが俺の腰に佩いていたデルフレプリカを持って行ってくれたので少し身軽になる。
「ふぅーん、……お熱いですねぇ」
「な、何の事かしらねっ、ほら、カズマが頑張るから、ねっ」
いや、恋人関係の事は別に隠している訳じゃないんだから言ってもいいんだぞアクア……。
まぁ、いいか。
取り敢えず、サイコロ状のままのロックメンの一体に狙いを付けてウォーメイスを振り下ろしてみるか。
相手が動かず、強い一撃を与えたい時に振り下ろす、その教えを思い出して遠心力をしっかりと使って振り下ろし――。
非常に鈍い音が聞こえ、瞬間、両手に返って来た衝撃に思わず呻きを上げてしまう。
くっっっっっそ硬いんですけど!?
ウォーメイスの握り手にゴム帯なんて巻いて無いから滑り止めの布でしか衝撃が吸収されない。
けれど、先程師匠は普通にゴンゴン叩いてたぞ!?
そんな事を考えながら両手の痺れに呻いているとのっそりとロックメンが立ち上がり、此方を見た。
――ッ!!
そうか、こいつ身体を丸めてるから外殻に当たる部分以外は柔らかいのか。
明らかに線の細い肉体、手足と頭だけに四角い外殻を纏っているだけで、その姿はまるでボクサーのそれだ。
そう言えば師匠は先に足を狙っていたし、その次は地面に倒してから肘を狙っていた筈だ。
それを思い出した俺は、気合で再び握り締めて振り返ったロックメンの右足の膝に狙って振り抜いた。
ごしゃり、と言う脆い何かを砕く感触が返って来てロックメンがよろめいていた。
「うぉぉぉおおおおっ!!」
気合を入れて渾身を込める。首元めがけてウォーメイスを叩き込み、仰向けに倒れて晒された胸元に振り下ろした。
一度、二度、三度と叩き込むと腕が疲れてきたが、HPをしっかりと削れたのかロックメンの身体がさらさらと砂状に虚空へと消えた。
よぉおっし! 勝った!!
「おめでとう、じゃあ追加だ」
喜びの余韻に浸っていた俺だったが師匠の一言に我に返り、石ころを投げ付けられて起き上がったロックメンと対峙する。
戦い方は分かった、こいつも関節を狙って――。
そう考えて再び膝を狙って振るったが、ちょいっと左手を動かされて硬い外殻で受け止められてしまった。
先程までの振り下ろしで疲れていた腕が悲鳴を上げる。
少し後退って両手を回復していると、ロックメンがボクサーのように両手を前に構えてトントンとステップを踏み始めた。
動きが遅いって戦闘態勢に入るまでが遅いって意味かよっ!?
ひゅんっと風切った極悪なグローブを纏ったジャブが此方に叩き込まれ、ウォーメイスの柄で何とか受け止める。
な、なんつー一撃だ。めっちゃくちゃ重いんだけど。
「……んー、流石に使い慣れないウォーメイスを手渡したのは間違いだったかな」
だなんて暢気な師匠の声が聞こえる。
デルフレプリカよりも1.5倍は重いウォーメイスは確かに振り辛いし、硬さも相まって両手にくる疲労も多い。
けれど、先程の振り下ろしの感じからして斬撃は多分効き目が薄いのが明白だった。
……そして、先程の師匠の戦い方からして未熟なのは俺の方だ。
ベルディアに教えて貰ってはいたものの、結局それは基礎的な事で、こうして実戦で扱えるとなるとやっぱり別物だったと言う事なのだろう。
息を吐いて、吸って、吐く。
よし、此処からが頑張り所だ、やるべきことをしっかりと、だ。
メイスの一撃を受け止められる事を前提に、ハンマーの如く叩き付けてやれば案の定硬い外殻の拳を盾に持って来た。
受け止められた際に生じた重く鈍い金属音を合図に俺はウォーメイスから片手を外し、眼前に突き付けてやる。
「『クリエイトウォーター』かーらーのっ、『フリーズ』!!」
受けに回ってがら空きの胴へと片手を向けて、腰から下へ範囲を調整。
ボクサーの売りである素早いステップを踏むための膝を狙って水をぶっかけ、即座に冷却して凍らせる。
すると突然動きを止められたロックメンはつんのめったようにビターンッと地面に倒れ伏した。
すかさず肘を砕き、渾身の一撃で魔石があるであろう胸をウォーメイスでぶち抜いた。
後ろから師匠がしてくれているのであろう拍手を浴びつつ、煙のように霧散したロックメンの死体を見て俺はガッツポーズを取った。
「上手いやり方だな。勝利に徹するのであれば、相手の長所を潰して此方の長所を押し通すのが正攻法だ。今の様に魔法を組み合わせて戦うスタイルは生き延びる冒険者のやれる事だ。また強くなったなカズマくん」
「押忍っ!」
ふぅー、これだから師匠の弟子は止められないんだ。
考えてみろよ、黒髪長髪貧乳美少女が後方師匠面で嬉しそうに褒めてくれるんだぞ、最高だろうがよ。
次々に褒められつつ、決して俺TUEEでは無いけれども、それでも成長していると実感できるこの瞬間がとっても楽しい。
いやー……、まぁ、男女比一対五だしな、ハーレム物の主人公になった気分だウェヘヘ。
「格好良かったわよ、カズマ!」
それでもまぁ、惚れたアクアに満面の笑みで労われるのが一番嬉しいもんだな。
ぴょんぴょんと跳ねて嬉しさを爆発させやがってからに、照れるだろ。
広場に居たロックメンを殲滅してから奥へと進んで行く俺たち。
……次の広場で出くわしたロックメン共の姿を見て、思わず頭痛がした。
そうだったわ、この世界のモンスターどいつもこいつも変なのばっかだったわ。
ロックメン・バスター、右腕が何か筒状になっていて伸びていた上に何か青かった。
ロックメン・ブレード、右腕が両刃のソード状になっていた上に何か赤かった。
ロックメン、RockMen、ロックマ――。
そこまで考えて師匠の手が眼前に伸びていて、思わず見れば首を振っていた。
そんな師匠の顔も何処か頭が痛そうな表情をしていた。
ですよねー……。
と言っても変な恰好をしていたとしてもモンスターはモンスター。
岩石を右手から飛ばしてくるバスターとタンク役をしてくるブレードは非常に厄介であり、俺とララがブレードを押さえている間に師匠とクリスがゆんゆんを誘導しながらバスターを迎え撃つ。
押しても引いても切れぬ盾に動きを止めたブレードを横合いから叩き潰し、『バインド』と『ストーンバインド』でぐるぐる巻きにされて拘束されたバスターは師匠の取り出したパイルバンカーで胸を穿たれた。
それからと言うものの、無言でドラミングするイワザルの群れや岩で作られた巨大な豚であるロックピッグ、キラキラと煌びやかに輝く宝石の砂塵を纏う精霊のダイヤダストなど、駄洒落みたいなモンスターがわらわらと。
名前の由来と意味の分かる俺と師匠は終始虚無な真顔でモンスターを討伐し続け、初めて見る相手にわーきゃーするアクアたちとの温度差が非常にやばかったが何とかボス部屋らしき場所に辿り着いた。
「……あの、師匠」
「……言わんでも良い」
最後に出てきたのはロックメン・フライ。
空中浮遊する丸っこいカプセル状の何かに乗ったロックメンの頭頂部はハゲていて、誰得のツインテ―ルがくっついていた。
どう見てもアレってドクターワイ――、再び師匠に遮られ、それ以上の事は考えなかった。
何処からともなく飛んできたロックメン・バスターとブレードの右腕を模した空中浮遊する巨大な腕がフライの左右に浮かび、戦闘態勢に入ったフライは地味に強敵だった。
フライが空中に居るため、魔法以外の攻撃が届かない事もあって時折壁際に誘導し、師匠が壁を蹴って一撃を与えるシーンは拍手喝采の名シーンだった。
……もっとも、その時の師匠の目は死んでいたけれども。
カプセルの上部を破壊し、フライ自体に攻撃を与える事十数回、漸く倒す事ができた時の充足感は中々だったが師匠が疲労困憊でララに担がれる事となった。
無駄に魔法耐性が強かった事もあり、ウィズとゆんゆんの援護が全く持って効いて無かったのが理由だろう。
「……もっとマシなモンスター配置しろよ」
ぐったりとした師匠の漏らした言葉に俺は強く同意した。
鉱山系のモンスターなら蝙蝠とかトカゲとかだろ普通は、と師匠の恨み辛みの籠った愚痴をBGMに俺たちは無事ダンジョンを制覇して帰還したのだった。
「初めてのダンジョン、どうだった?」
「……暫くダンジョンはもう良いかな」
クリスの悪意の無い先輩風を吹かした問いに師匠は非常に疲れた様子で答えたのだった。
時折ララの後ろから槍でチクチクしただけのめぐみんは欲求不満状態でぷんすかし、北部ダンジョンのある方角へ『エクスプロージョン』を放ったのが今回のオチだろうか。
その後、魔力欠乏状態でくったりしためぐみんを師匠が回収し、衣服からお風呂までお世話して漸く機嫌が戻ったらしい、とララから愚痴られた時は強かな事するなぁと思わず感心してしまった。
旅館に戻ってからアクアといちゃこらするに当たり、普段の師匠たちの様子を真似てみたいのか膝枕をしてくれたので疲労困憊であった俺もとっても癒された事は言うまでもないだろう。
耳かきも用意してくれて夢現な時間だったとは言っておこう。
……まぁ、普段の自堕落が此処で発動して俺も膝枕してアクアの耳かきをする事になったんだが、まぁ、いいか。