戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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処女作の為、独自展開やぶっ飛び展開があるかもしれません。


無印編
始まりの鼓動


 平和な日常というのはとても尊いものであるといつの間にか忘れてしまうもの、いつだってそれに気づくのは、それが失われた時、人は何度でもその過ちを繰り返す。

 その記憶がまるでなかったかのように、退屈だと考え新たな刺激を求める。それを他者から忠告されても、その諫言は流されてしまう。そして気づいた時には全てが失われた後であり、己が過ちを死ぬまで懺悔する。

 しかし、ある少女は違った。そんな日常を少女は愛した。だが、そんな宝物を壊さんとする魔の手が、知らず知らずのうちに伸びている事に気付かないまま、ゆっくりと蝕んでゆく。

 

 

 

「行ってきまーす。」

 

 玄関から華の女子高生が一人、父親に挨拶してから門を通った。

 彼女の名は風鳴瑠璃(かざなり るり)。私立リディアン音楽院に通う高校二年生である。

 

 肩まで僅かに届きそうな黒髪に白い肌、小柄ながらも豊かな胸を持つグラマラスな体形の持ち主。他の女子生徒からも羨ましがられる。

 そのうちの一人が

 

「やっほー!おはよー瑠璃!」

 

 瑠璃の背後から抱き着いた同級生。いきなりでバランスを崩しそうになるが、瑠璃はなんとか転倒せずに済んだ。

 

「もう……危ないよ輪。」

 

 出水 輪(いずみ りん)。それが彼女の名前である。

 瑠璃より身長が高く、髪も背中の半分ほどの長さ、天真爛漫な性格の持ち主、同じリディアンに通う二年生で、クラスメイト。新聞部に所属しており、事件やトラブルが大好き。そんな彼女に欠かせないアイテム、それはカメラである。

 

「だって瑠璃は抱き心地がいいんだもん。それにいい匂いがするし。」

 

 言っておくが輪には同性愛の趣味があるわけではなく、瑠璃に対してのみに行うスキンシップである。

 輪は元々根っからのカメラガールなのだが、瑠璃の写真を撮るのが日課となっており、データ内には瑠璃を撮った写真が七割を占めている。

 二人は入学当初からの仲であり、一年の時も同じクラスであった。今年の始業式でまた同じクラスになった事が分かると、喜びを分かち合うかのようにはしゃいだ。

 

「そういえば翼さんのニューシングルって今日だったよね?」

 

 風鳴翼。彼女の従姉である彼女もリディアンの生徒であり、現在有名なトップアーティストとして活動している。

 

「うん。帰りにCDショップに行く予定なの。」

「なら私も行くよ。どうせ帰っても小夜姉が夜勤でいないし。」

 

 その小夜姉というのは輪の姉である。輪の地元は遠方で入学にあたって偶々近くに社会人の姉が住まうマンションに住んでいるという。

 看護師であり、夜勤も当たり前で、一人でいる事も多いのだとか。

 

「なら、家に寄る?ご飯、御馳走するよ?」

「え?いいの?じゃあお言葉に甘えて!瑠璃のご飯美味しいからなぁ~。こないだお姉ちゃんが瑠璃のご飯に感動しちゃってさ!」

「そ、そんな・・・嬉しいけど、逆に恥ずかしいな・・・」

 

 こうやって他愛もない日常が瑠璃にとっては幸せなものだった。だがある日を境に、その日常が徐々に蝕まれていくことを、二人は知る由もなかった。

 

 

 放課後、新聞部の活動をしている輪は今日はやる事が多かった為、終わるのが予定より遅れてしまい、気づいたら日は落ちようとしていた。

 輪は急いで瑠璃が待っている図書館へ走った。瑠璃は特にすることがなかったので図書室で本を読んでいた。

 

「ごめん瑠璃!遅くなっちゃった!」

「図書館は静かにお願いしまーす。」

 

 図書室という静かな場所に一人騒いでいればかなり悪目立ちしてしまう。他の生徒に注目された輪は萎縮しながら図書室に入った。

 

「輪、そんなに慌てなくても……。」

「いや……思いの外時間が掛かっちゃって……。待たせるのも悪いかなって……。」

「私は平気だよ……。ほら、目立たない様に行こう……。」

 

 二人は小声でやり取りして、そのまま目立たないように図書室を後にした。

 二人は談笑しながら校門を出て、時には夕焼けを背景に瑠璃の写真を撮っていた。

 

「もう輪ったら、また撮ってる。」

「だってこんなシャッターチャンスをみすみす逃すなんて、私のカメラマン精神が許さないもーん!」

 

 憎めない程はにかむ笑顔を見せる輪。

 瑠璃はやれやれと言わんばかりに呆れるが、そんな輪が好きであり、輪もまた優しい瑠璃が好きなのだ。

 そして途中で曲がり角を曲がろうとした時

 

「CD!特典!CD!特典!」

 

 大きな声を出しながらも、曲がり角から急に飛び出した走ってくる少女に気付かず、瑠璃とぶつかってしまう。強くぶつかった為、お互いに尻餅をついた。

 

「瑠璃!大丈夫?!ちょっと!危ないじゃない!」

「痛たた……あっ!ごめんなさい!怪我は無いですか?!」

 

 輪が瑠璃を右手で、瑠璃は立ち上がる。ぶつかった少女もすぐに立ち上がって、瑠璃に頭を下げて謝罪する。

 

「だ、大丈夫。それよりもあなたの方は・・・」

「私は大丈夫です!」

 

 ハッキリとした大きな声で、輪に勝るとも劣らない笑顔を見せる。だが輪は飛び出したことによる危険性が高いと注意する。

 

「もう、ちゃんと周りを見なさいよね?自転車や車だったら、今頃……」

「輪。ちゃんと謝ったんだし、もういいよ。」

「でも……」

 

 瑠璃は自分の為に怒ってくれている輪を宥めた。輪は納得行ってないが、これ以上言っても瑠璃を困らせてしまう為、ここは引き下がる。

 

「それよりも、何か急いでたみたいだけど大丈夫?」

「あぁっ!そうだった翼さんのCDが私を呼んでいるうううううぅぅぅぅー--!!」

 

 少女は再び勢いよく走り出した。

 

「ちょっとー!だから周りに・・・」

「もう良いってば。」

 

 再び輪を宥める。

 

「瑠璃ってば、何で怒らないの?!少しくらい……」

「あの子もお姉ちゃんのファンだと思う。ちょっとしか見えなかったけど、目がとても綺麗だった。」

「あの・・・瑠璃?もしもし瑠璃さーん?」

 

 別の世界に入りかかっていた瑠璃を正気に戻してCDショップに向かおうとした時だった。瑠璃のスマホから着信音が鳴った。

 

「もしもしお父さん、どうしたの?」

《瑠璃!無事か?!》

「うん。そんなに慌ててどうしたの?」

《お前が今朝言っていたCDショップの一帯にノイズが発生している!》

 

 ノイズ。特異災害として世界で認知されている謎の生命体。ノイズは人を襲い、触れればその人間を炭素にしてその命を奪う。

 通常兵器ですら倒す事も、傷も与えられない。故に一般人はノイズが発生したら自壊するまで逃げるしかない。しかしそれでも犠牲者を出してしまうからなお恐ろしい。

 瑠璃は自分の父親である風鳴弦十郎はそんな特異災害を相手に市民を守る組織に所属しているという話を聞いたことがある。その為、ノイズが発生した時には真っ先に教えてくれる。

 

《まだ学園にいるのか?なら真っすぐ家に帰るんだ!そこまでならノイズは来ない!》

「う、うん!分かった。ありがとう。」

「オジサンから?もしかして……」

「うん。ノイズだって。真っすぐ家へ帰れって……」

「なら明日に持ち越しだね。」

 

 二人はそれぞれ変えるべき家に帰る。

 瑠璃は走って自宅まで走っている。だがその途中で・・・

 

「あの子・・・!」

 

 そうあの時走っていった少女の存在を思い出した。彼女もCDショップへと向かっていた。瑠璃は踵を返してCDショップの方へ走った。

 無我夢中で走り、気がついたら辺り一帯に黒い塵が宙を舞っているのが見えた。この塵が炭素化した塵でありノイズか人間が炭となって崩れた事を意味する。

 確証はないがもしかしたら彼女のものではないかと考え、心臓の鼓動が早くなり呼吸も荒くなってしまう。

 スマホの着信音が鳴り響くと、震えながらもその画面を確認して応答した。

 

《瑠璃!帰ったか?!》

「お……お父さん……。あの子が……」

《瑠璃?》

 

 今の瑠璃は平静じゃなかった。ここで同じ学校の生徒がノイズに襲われて死んだと想像してしまい、気が気ではなかった。

 

「どうしよう……ノイズが……人を……」

《落ち着け!》

 

 弦十郎のスマホ越しからの一喝で我に返った。

 

《良いか、その子は必ず助ける!瑠璃は危険が及ばないうちに帰るんだ!》

「う、うん。ありがとう……ごめんね。」

 

 そう言うと、通話を切った。瑠璃は塵の残骸を見て申し訳なさそうに目で見つめた後、その場を後にした。

 

 

一方その頃・・・

 

「え?!なにこれ?!どうなってるの?!」

 

 例の少女は謎の装備を身に纏っている事に驚いていた。

 


 

 翌日、少女の安否が気になったのに加えて弦十郎は仕事で帰ってこず、一人で朝食を済ませて学校へ向かった。表情は晴れず、その足取りは重い。

 無事に逃げられただろうか?それとももう、そう考えてしまい心が不安でいっぱいになってしまう。

(大丈夫かな……。)

 

 本日何度目か分からないため息をつく。

 

「響、前!」

「え?」

 

 曲がり角の人影に気付くのが遅れて、出合頭にぶつかってしまった。瑠璃はものの見事に倒された。

 

「痛た……」

「だから言ったのに。すみません、大丈夫でしたか?」

「ごめんなさい。私のせいで……」

「ううん。私は大丈……あ……」

 

 悩みが杞憂に終わった瞬間だった。

 

 

 その少女は立花響と言い、今年入学したのだとか。話を聞くと、どうやら道端で困っている人を片っ端から助けていったら色々不幸が重なってノイズの避難警報でシェルター行になったという。

 

「ああ……でも初回購入特典が……」

「まだ言ってるの響?」

 

 その隣にいるのは響の幼馴染、小日向未来。響のルームメイトであり、昨夜は遅くまで帰りを待っていたのだとか。

 響は初回限定盤が手に入らなかったのが余程悔しかったのか引きずっている様子だった。

 

「なら二人とも、私今日CD買いに行くから、それをあげるよ。」

 

 その提案は落ち込んだ響をたちまち立ち直らせた。

 

「え?!良いんですか?!」

「でも翼さんのCDってよく初日で完売してしまうことがよくあるって……」

「私、予約してるから。あるよ初回限定盤。」

 

 それを聞いた響は嬉しそうに飛び上がった。聞けば響は翼の大ファンでダウンロードとCDを揃えているくらいだとか。お互いに翼談義で盛り上がっていると、もう校舎に着いた。学年が違うので踊場で分かれる事になった。

 

「あ、そういえば名前聞いてませんでした!」

「そうだったね。私は風鳴瑠璃。じゃあまた後でね!」

 

 そう言うと瑠璃は先に教室へ向かった。

 

「今、風鳴って言ったよね?」

「うん。私も聞こえた。」

 

ええええええぇぇぇぇぇぇー----?!

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