AXZ編、開幕です。
バルベルデへ
パパ!ママ!
助けてえぇぇ!!嫌だあぁぁぁ!!
いやああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「あああああぁぁぁぁ!!」
深夜4時、瑠璃は汗をかきながら目が覚めた。
(またあの夢……?!何なの一体……?!)
「姉ちゃん……?」
眠っていたクリスの声に、瑠璃は我に帰った。
「ごめんクリス。起こしちゃった?」
「あたしは平気だ……。それよりも姉ちゃんの方が……」
瑠璃の顔色が悪いのは明白だった。瑠璃は殆ど人に言っていなかったがここの所、悪夢を見る頻度が増え寝不足に悩まされている。瑠璃から相談を受けた父 弦十郎の計らいで定期的にクリスが家に泊まりに来たり、逆にクリスの家に瑠璃が泊まっていったりしている。今夜は後者の方で、一つのベットに二人で寝ている。
「ごめん、ちょっと喉渇いちゃったからお水貰うね。」
「ああ。」
ベットから降りた瑠璃は台所からコップを取って、そこに水道水を入れて飲みほし、コップを洗うとルリは再びベットに入った。ただ喉の渇きは癒えても不安は拭えなかった。あの悪夢の恐怖から逃れられないばかりか、見る頻度までもが多くなったが故に瑠璃は眠る事を恐れていた。さらに寝不足であることが拍車をかけ、恐怖を増大させてしまっている。今瑠璃の手がシーツを強く握りしめているのが、それを証明している。
だがその手の上にクリスの手がそっと優しく重ね合わせる。
「姉ちゃんは一人じゃない。どんなに辛い事が起きても、あたしが側にいるから。」
「クリス……ありがとう……。」
結局あれから目が覚めてしまい、眠りにつけなかった。輪との映画を見に行く時も途中で転寝してしまい、事情を知らない彼女に心配れる始末。家で夕食を作る際も、食器を何枚も割ってしまうなど瑠璃らしくないミスが続いた。
「瑠璃、大丈夫か?」
「大丈夫だよ……。おかしいな……こんな事全然なかったのにどうしちゃったんだろう……。」
弦十郎の心配をよそに、瑠璃は笑顔を振りまくが弦十郎は安心できなかった。過去と向き合う日が来る事は分かっている。だがその過去が、瑠璃にとって耐え難く、悍しいものである事は本人はまだ知らない。だが普通なら死んだ方がマシに思える地獄を、今の瑠璃に向き合いきれるか、分からなかった。親として信じてあげたいが、それで瑠璃に万が一の事が起きたらと考えてしまう。
だが時は待ってくれないし、悩む時間すら与えてくれない。娘を再び戦場に送らざるを得ない状況になってしまった。しかもその行く先が、バルベルデ共和国。
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バルベルデ共和国。南アメリカ大陸に属する小国で、非常に政情が不安定な軍事政権国家である。長くからその独裁によって自国民に非常に過酷な環境での生活を強いており、その反発から反政府組織が生まれてしまう故に内戦が後を絶たない。
当然バルベルデの政府軍のモラル、練度は最悪であり、軍隊としての誇りも愛国心の欠片もない、まさに愚連隊である。さらにタチの悪さはこれだけに留まらない。
「高速で接近する車両を確認!」
「対空砲を避けるために陸路を強行してきた?だが浅薄だ、通常兵装で我々に太刀打ちできるものか。」
バルベルデのジャングルに駐屯する政府軍の兵士がパソコンのモニターで捉えた反応を、グラサンをかけた上官に報告するが、上官は想定内であると言わんばかりに余裕を見せる。すると、至るところに設置しておいたコンピュータマシンを起動すると、筒のようなものが上がり、その中から石が吐き出されるように放たれる。それらが地面に落ちて割れると、アルカ・ノイズの群れが召喚された。
彼らはアルカ・ノイズを軍備として保有しており、これが彼らのタチの悪さを助長させている。これでは通常兵器を持ってしても突破は困難である。だが政府軍が捉えた車両、その正体であるバイクは速度を緩めることなくそのまま一直線に向かっている。
「接近車両モニターで捕捉!」
ようやくその正体を捉えたが、既に手遅れだった。
「こいつは……!」
バイクに跨がる青いギアを纏う装者。そして、その後ろでその装者に掴まる藍色のギアを纏うもう一人の装者。
「振り落とされるなよ、瑠璃!」
「うん……!」
風鳴翼と風鳴瑠璃、風の姉妹が先陣を切る。
「敵は……シンフォギアです!」
天羽々斬の刃がバイクの前方、バイデントの黒槍 右側面、白槍が左側面を連結させたそれで、行く手を阻むアルカ・ノイズを切り裂いた。
【騎刃ノ一閃・星襲】
「対空砲には近づけさせ……っ!」
だが指示を出すのが遅すぎた。バイデントのブースターが点火すると、バイクのスピードが跳ね上がり、アルカ・ノイズは壊滅。さらにそこにいた兵士の持つマシンガンも両断され使い物にならなくなっていた。
そして並べられた対空砲に近付くとバイクの側面に連結させたバイデントを分離させて、二本の槍を一つの槍へと連結させると穂先にエネルギーを集めてそれを突き出す。槍の穂先と接触した対空砲は一つも残らず破壊された。
【Raging Hydra】
「緒川さん!」
翼は空に舞う巨大な凧を見上げる。その凧には緒川とその横に響とクリスが張り付いている。対空砲の破壊を確認した三人は同時に上空を飛び降りる。凧は戦車の機関銃によって撃ち抜かれるが、三人は既にそこにはいない為、凧に風穴が空くだけに終わる。
緒川が煙玉を投げ、煙幕を張る。その間に地上に降り立ったクリスのクロスボウの矢の嵐がアルカ・ノイズを撃ち抜く。風呂敷で空中落下の速度を弱らせた緒川も降り立つと兵士の項に手刀を入れて無力化させる。
アルカ・ノイズの次は政府軍。マシンガンの弾丸を刃で弾き、戦車から放たれた砲撃すらも切り裂いた。その技に恐れをなした兵士達は逃げ出し、戦車も後退しながら砲撃するが、翼の接近を許した上に戦車の砲身も斬り落とされた。
響とにもその砲撃が襲い掛かるが、放たれた砲撃を拳で打ち払う。
翼は両脚のブレードを展開させて、バーニアを点火させると身体を車輪のように高速回転、戦車をバラバラに斬る。
【無想三刃】
瑠璃は砲撃を連結させた槍の投擲で打ち砕くだけでなく、戦車の砲身がある上部の装甲ごと穿ちぬいた。
クリスが回転しながらクロスボウの矢を乱射してアルカ・ノイズを蹴散らすと、その隙を突くように兵士達がクリスに向かって一斉掃射、クリスはクロスボウと装甲で防ぐがさらにダメ押しのロケットランチャーも放たれた。ロケットが直撃して、爆発した。
「やった……!」
だがそのセリフはやっていないパターンのお決まりである。クリスには掠り傷一つすらない。さらに口から弾丸を吐き捨てるとクロスボウの矢がマシンガンを撃ち落とす。兵士達はたまらず逃げ出した。
戦車の砲撃を響は拳で打ち払って、戦車のキャタピラを引き剥がしていき、さらには戦車の上部を強引に引き抜いてはそれをバットのように他の戦車にぶち当てる。
政府軍はアルカ・ノイズ、持ち前の兵器が次々と破壊され、防衛ラインが瓦解していく。それを重く受け止めた上官はどこかへと走り去って行った。
敵の防衛ラインを粗方崩したが、突如ゲートの向こうから空に放たれた光。その上空から魔法陣が展開されると、そこから雲を退けるように現れた巨大戦艦が現れた。その規模の違いに4人は息を呑む。
「空にあんなのが……!」
「本丸のお出ましか!」
「でも、あれをどうやって……」
『あなた達!』
4人の前にS.O.N.G.のヘリ三機が低空飛行してこちらにやって来て、その中の1機を操るマリアか4人に呼び掛けた。
『ぐずぐずしないで、追うわよ!』
巨大戦艦内のブリッジでは三機のヘリがこちらに迫っているのをレーダーで探知する。
「ヘリか。ならば直上の攻撃は凌げまい!」
上官はスイッチを押す。すると戦艦の下部に搭載されていた巨大な爆弾をヘリの真上へと落とした。ヘリの真上で爆破したのをモニターで確認した上官は
「やったぜ!狂い咲き……んっ?!」
ヘリは一機も撃墜されておらず、糠喜びに終わる。さらにヘリのプロペラの上に立っている三人の装者を見て、もう一人いない事に気付いた。
「もう一人は何処に……。いやそれよりも、非常識には非常識だ!」
ガトリング砲でミサイルを撃ち落としていく。さらにクリスの乗るヘリの中から瑠璃が放った黒槍と白槍が空を縦横無尽に駆け巡ると、ミサイルを真っ二つにする。
その間に響と翼は迫りくるミサイルを足場にして飛び移っていき、戦艦に接近する。
「こっちで抑えているうちに!」
「他の二機はさっさと戦場を離脱してくれえぇ!」
瑠璃とクリスの指示で他の二機は離脱するが、一本のミサイルが一機のヘリを追尾している。フレアを放ってもその効果は全く無かった。
「駄目だ!間に合わない!」
パイロットは死を覚悟したが
「やるよ切ちゃん!」
「合点デス!」
そのヘリに搭乗していた切歌と調が扉を同時に開け、その間にミサイルが通り過ぎた。二人の機転によってヘリは無傷、そのミサイルはクリスによって撃墜される。
「やれば出来る……」
「アタシ達デェス!」
遂に巨大戦艦の前まで辿り着いた翼は、戦艦と同等の巨大な剣を形成する。
「初手から奥義にて仕る!」
それを振り下ろすと、戦艦の前部はブリッジごと真っ二つになり、中にいた上官は傷こそないがグラサンが斬り落とされた。
さらに目の前に現れた響を前にして情けない声をあげて逃げ出そうとする。対する響は右腕のバンカーユニットをドリルのように高速回転させながらブースターを点火させると、左手上官の襟を掴んでそのまま内部から装甲をぶち抜いた。
船体が壊滅状態となりこのままでは墜落してしまう。だがクリスが大型ミサイルを大量に配備してそれを発射させた。
【MEGA DETH INFINITY】
全てのミサイルが戦艦に直撃し、跡形もなく爆ぜて消えた。一方戦艦から降り立った響だがあいにく飛ぶ手段がない。
「掴まって!」
そこに槍に跨って飛行する瑠璃が現れ、響は指し伸ばされた手を掴む。そのまま地上へ降り立つ……はずだった。
「ぁぅ……っ!」
「瑠璃さん?!どうしまし……あっ!」
飛行している最中に、瑠璃が頭を抱えて苦しみだした。あの悪夢のヴィジョンが瑠璃の頭の中に流れ、それが瑠璃を苦しめる。しかもそれに気を取られた事で遠隔操作が不安定になってしまい、操作に乱れが生じ、バランスは崩壊した。
「る、瑠璃さ……うわあああああああぁぁぁーーーーー!!」
遂に操作が切れ、三人は落下してしまう。このままでは地面とぶつかってしまう。響は打撃で落下の衝撃を相殺させようとするが、それはしないで済んだ。
瑠璃が再び槍の操作を取り戻し、響と上官を拾い上げ、超低空飛行で難を逃れた。何とか地上に無傷で降り立った三人だが上官はあまりの恐怖体験に気を失ってしまっている。
「瑠璃さん、大丈夫ですか?」
響は瑠璃を心配して駆け寄る。
「うん……私は大丈夫だよ……。ごめん……響ちゃん。」
口ではそう言うが手が震えている。明らかに様子がおかしかった。先程の一連の様子はS.O.N.G.本部のブリッジでも確認されていた。
「瑠璃……。」
(まさか……お前……。)
弦十郎は瑠璃の記憶が覚醒しつつあるのではと一抹の不安を感じた。ここに連れてきてしまったのは間違いだったのか?そう考えずにはいられなかった。
1話目から不穏な空気……。
R-18版のアンケートもなかなか接戦……。