戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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パヴァリアのオリジナル錬金術師もちゃんと用意してあります。

まあどの辺で登場させるかはお楽しみということで


思い悩む雪の姉妹

 政府軍の駐屯地を制圧した後、国連軍が無事に到着し、配給所では様々な物資を現地の避難民に配られ、中には治療を受ける者もいる。その様子をフェンス越しに見ている響、翼、クリス、瑠璃。今着ているのはS.O.N.G.の制服であり、それぞれ異なる色をしたネクタイをしている。ちなみに瑠璃のネクタイは藍色になっている。

 

 

「良かったぁ。国連軍の対応が速くて。」

「そうだな。」

 

 国連軍の対応の速さに安堵した響と翼だったが、瑠璃とクリスは避難民達をフェンス越しに見ており、二人の会話に無関心だった。

 

「瑠璃さん、クリスちゃん……大丈夫?」

「あ……うん。」

「何でもねーよ……。」

 

 先程の瑠璃が苦しんでいた様子を目の当たりにしていた響は心配していた。あの様子はただ事ではないのは誰でも分かる。

 さらにクリスは先程から何か抱えているような様子だった。恐らく瑠璃の事もあるのだろうが、それだけではないような気がしていた。

 そこに背後に車が止まる。市街巡回を終えたマリア、調、切歌が戻って来たのだ。切歌は荷台から立ち上がり大袈裟に敬礼のポーズをする。

 

「市街の巡回完了デース!」

「乗って。本部に戻るわよ。」

 

 運転席に乗るマリアに声をかけられ、4人は荷台に乗り込み、本部へ戻る。数少ない舗装された道を通り、その風を受けながら調はこの現状を憂いた。

 

「私達を苦しめたアルカ・ノイズ……。錬金術の断片が、武器として軍事政権にわたっているなんて……。」

 

 アルカ・ノイズは錬金術師が作り上げた兵器である。それが一国の軍事政権が易々と手に入る代物ではない。となると背後に錬金術師がいる事が考えられる。そして響が呟いた。

 

「パヴァリア光明結社……。」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 少し遡る。弦十郎によって日本にいる装者達は本部に集められた。

 

「早速ブリーフィングを始めるぞ!」 

 

 弦十郎の一声で、本部のモニターにはロンドンにいる翼、マリアと緒川が映っている。

 

「お姉ちゃん……!」 

「マリア、そっちで何かあったの?」

『翼のパパさんの特命でね。S.O.N.G.のエージェントとして、魔法少女事変のバッググラウンドを探っていたの。』 

『私も知らされていなかったので、てっきり寂しくなったマリアが、勝手についてきたとばかり……。』

『そんなわけないでしょ?!』 

 

 調の問いにマリアが答えていたのだが、翼の発言で一気に緊張感が崩壊した。マリアは顔を赤くして否定する。

 

「あの……それで何かあったの?」

 

 苦笑いしていた瑠璃だったが、自然な流れで話を戻すと緒川が答えた。

 

『マリアさんの捜査で、一つの組織の名が浮上してきました。それが、パヴァリア光明結社です。』

 

 パヴァリア光明結社。ヨーロッパを暗黒大陸と言わせしめる原因であり、魔法少女事変においてはキャロルのチフォージュ・シャトーの建設を裏で支援していた。さらにそれだけでなく、フロンティア事変においてF.I.S.に手紙を送っており蜂起を支持していた。その証拠にマリアが手紙の封を出す。調と切歌もその印を見て思い出した。その風に刻まれている印がパヴァリア光明結社の印なのだ。

 つまりこの2つの事件には裏でパヴァリア光明結社が関与しており、次に相対する組織ということになる。だがパヴァリア光明結社は存在自体は分かっていても、その全貌どころかその端くれすら分からず、全てが謎に包まれている。だが収穫はあった。

 

『マリアさんが掴んだ情報をもとに、調査部も動いてみたところ……』

 

 緒川が開示した画像に、皆が驚愕した。そこに写っているのは

 

「アルカ・ノイズ!」

『撮影されたのは政情不安定な南米の軍事政権国家……』

「バルベルデかよ?!」

 

 クリスが真っ先に反応した。かつてルリとクリスの両親がNGO活動の一環でバルベルデに訪れた。そして両親はこの国で亡くなり、姉妹は離れ離れになった。だが今の瑠璃には両親が死んだ記憶がなく、地獄の6年間を覚えていない。

 

「待ってくれ!姉ちゃんをバルベルデには行かせられねえよ!」

『司令、私もクリスと同じ意見です。』

 

 それ故に瑠璃のバルベルデ行きを、クリスと翼は反対する。もし瑠璃が記憶が蘇っても良い結果になるはずがない。思い出さなくてもいいなら、忘れたままの方がいい。瑠璃の過去を耳にした旧二課から所属していた者達もそれは同じ思いであり、この時はそれを知らないマリア、調、切歌、エルフナインは疑問を呈する。

 

『それ、どういう事?』

「姉ちゃんを……バルベルデには行かせられねえ。それだけだ。」

 

 だがクリスは大きな過ちを犯した。ここで堂々と反対してしまった事だ。

 

「私……行く。」

「駄目だ姉ちゃん!バルベルデには……」

「パパとママが亡くなった場所……。それは分かってる……。だけど、パパとママと過ごした思い出の場所が、アルカ・ノイズに破壊されるのは嫌だよ……。だから、私も戦う。」

「それはあたし達がやる!先輩やあいつだって……」

「瑠璃。」

 

 クリスの説得を弦十郎が遮り、瑠璃の方を見る。

 

「本当に行くんだな?」

「うん……。」

「どんな結果になっても受け入れられるか?」

 

 弦十郎は脅すように問う。弦十郎も父親として、本当であれば行かせたくはない。だが瑠璃が悪夢に苛まれ始めた頃から、瑠璃は過去の記憶と向き合わなければならない時が来たのではないのかと思う事がある。故に、瑠璃の意思を確かめる。

 

「うん……。」

 

 小さく頷いた。

 

「分かった。では装者達は現地合流後、作戦行動に移ってもらう!」

 

 こうして瑠璃もバルベルデへ行く事が決まった。だが万が一があるので、響、翼、クリス、三名のうち一人を必ず同伴させる事になった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 そして戻って現在。本部に帰還した装者達は身体の汚れを洗い流すべくシャワーを浴びている。

 

「S.O.N.G.が国連直轄の組織だとしても、本来であれば、武力での干渉は許されない。」

「だが、異端技術を行使する相手であれば、見過ごすわけにはいかないからな。」

「でもそれが……錬金術師じゃない……。ただの人間が、あれを玩具のように使うなんて……。」

「アルカ・ノイズの軍事利用……!」

 

 新しい資源があればそれを軍事利用してしまう、ある意味では人間の悪い癖である。

 

「LiNKERの数が十分にあれば、私達だって、もっと……!」 

 

 ロッカーの中に綺麗に畳まれている切歌と調の制服の上に置いてある一本のガンタイプの注射器、その中にはLiNKERが入っている。だがその数が少なくなり、マリア、切歌、調が使えるのはそれぞれ1本ずつしかない。

 現在エルフナインがDr.ウェルが遺したマイクロチップ、その中にあったLiNKERのレシピを解析したのだが完成にまでは至っていない。故にその数を増やす事が出来ず、減る一方であり、ついにそれぞれ1本しか使えない状態になってしまった。

 

「ラスト一発の虎の子デス。そう簡単に使うわけには……」 

「大丈夫だよ!」

 

 シャワーを浴び終え、タオルで頭を拭きながら出て来た切歌に、響が駆け寄ってその両手を握る。

 

「何かをするのに、LiNKERやギアが不可欠ってわけじゃないんだよ!さっきだってヘリを守ってくれた!ありがとう!」

 

 響が真剣な眼差しで切歌を見るが、当の本人は視線が上下しており、響の目と身体を交互に見て顔を赤らめている。まあ今シャワールームにいる者は全裸である為、そうなるのは仕方ない。

 

「な、なんだか照れ臭いデスよ~!あっ……」

「じーっ……」

 

 切歌が照れるが、その隣で調が切歌に視線を向けていた。

 

「め、目のやり場に困るくらいデ〜ス!」

 

 そんなやり取りをしている一方、クリスは深刻そうに思いつめている。バルベルデで体験した地獄の日々の記憶が頭から離れない。

 

「くそったれな思い出ばかりが、領空侵犯してきやがる……!」

 

 そして、クリスの隣でシャワーを浴びていた瑠璃は

 

「っ……!」

 

 あのヴィジョンが頭の中に思い浮かぶだけで頭痛が起きる。突発的に見えるあのヴィジョン、それが何を意味するのか分からない。それを知ろうとしてもまるでそれを阻止するように、頭痛が酷くなる。

 

「瑠璃、大丈夫?」

 

 シャワーを浴び終え出て来ると、そこにマリアが心配そうに声を掛けに来た。

 

「大丈夫……です。はぁ……駄目ですねこれじゃ……。しっかりしなきゃ……。」

 

 瑠璃が明らかに無理をしているのが分かる。

 ブリーフィングの後、マリアは翼から、瑠璃の過去、何故瑠璃が記憶喪失になってしまったのかを聞いた。翼も、瑠璃の父親である弦十郎も、その詳細を知っているわけではないが彼女に何が起きたのか、瑠璃がどんな傷を負っているのか、何となく予想はついていた。今なら翼とクリスがあの時何故、瑠璃のバルベルデ行きを反対したのかよく分かる。だがその心の傷を乗り越えられるかは瑠璃次第だ。

 

「辛かったら、一人で背負わなくていいのよ。絆、大事にね。」

「ありがとうございます、マリアさん。」

 

 瑠璃に笑みが浮かんだ。それも、無理して作ったものではなく、本心から。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 弦十郎から召集を受けた響、翼、クリス、瑠璃はシャワーを浴びた後、身体の水滴を拭いて、制服に着替えるとブリッジに集まった。

 

「新たな軍事拠点が判明した!次の任務を通達するぞ!目標は、化学兵器を生産するプラント!川を遡上して、上流の軍事施設へ進攻する!周辺への被害拡大を抑えつつ、制圧を行うんだ!」

「「「「了解!」」」」

 

 4人は緒川が操縦するボートに乗り込み、川を渡って拠点へ向かう。その道中、クリスは両親が亡くなった時の記憶が蘇った。両親が爆発に巻き込まれ、瓦礫に潰された。炎が広がり、泣き叫ぶ姉妹。

 

 パパ!ママ!

 

 離してよソーニャ!

 

 駄目よ二人とも!危ないわ!

 

 ソーニャのせいだ!!

 

 脳裏に蘇るあの日の惨劇、思い詰めていたクリスを翼は見逃さなかった。

 

「昔の事か?」

「あ、ああ!昔の事だ!だから気にすんな!」

「詮索はしない。だが今は前だけを見ろ。でないと……。」

 

 翼はそれ以上は踏み込めない。ただクリスの先輩として、目の前の事に向けさせなければ取り返しがつかなくなる。現に眩い光が装者達を照らしている。敵のサーチライトだ。機関銃の弾丸がボートを狙う。緒川がボートを操縦して、被弾を避ける。

 

「状況開始!」

「一番槍、突貫します!」

 

 立ち上がった響がボートから飛び立つ。

 

 Balwisyall nescell gungnir tron……

 

 響が起動詠唱を唄い、ガングニールのギアをその身に纏った。




R18版アンケート、結構白熱してますなぁ〜。

一応お知らせ。

月曜の23時にアンケートを締め切らせていただきます。それで一番多かったキャラが栄えある第一話の瑠璃の相手になります。以上です
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