とは言ってもオリキャラ同士の語り合いですが。
瑠無に保健室へ連れて行かれた輪。生徒用の椅子に座り、瑠無に傷を見せると、彼女は救急箱から必要な道具を出す。消毒液を染み込ませたガーゼを傷口に当て、絆創膏を貼る。
「ありがとうございます。」
「いいえ。これもお仕事だから。それより、あそこでため息なんてついて、どうしたの?」
瑠無は背もたれが少し大きめのデスクチェアに座って輪と面と向かい合っている。
「あ……実は……親友の事で……。」
「というと?」
「最近……何だか苦しそうで……。もしかしたら、過去の事で何かあったんじゃないかって思うんです……。でも他人の私がどうこう言っても良くなるわけではないし……。」
「なるほどねぇ……。」
瑠無は脚と腕を組んで、天井を見上げて考える。
「大事なんだね。その子の事。」
「はい。瑠璃は私の一番の親友ですから。あっ……言っちゃった。」
思わず輪は瑠璃の名前を出してしまい、それに気付いて口元を隠す仕草をする。
「瑠璃?その子ってもしかして風鳴瑠璃さんの事?」
「え、知ってるんですか?!」
「ええ。ここまでの道のりを案内してくれたの。だから顔見知り。」
「へぇ……。」
世間は案外狭い事を確認した。瑠無はデスクチェアから立ち上がって、鞄から魔法瓶を出すと、紙コップにコーヒーを注ぐ。
「なるほどねぇ……。ならなおさら辛いでしょうねぇ。コーヒーは飲める?」
「あ、はい。とは言っても無糖は苦手です。」
「分かった。あ、蜂蜜入れる?」
「え?」
コーヒーに蜂蜜なんて聞いたことがない。そんなゲテモノな組み合わせが合うのかと疑問を抱くが、ちょっと試したいという好奇心もある。
「じゃあお願いします。」
好奇心が勝った。瑠無は注いだコーヒーの中に蜂蜜を入れ、それが入った紙コップを輪に渡す。
「いただきます。」
恐る恐る一口飲む。すると輪は目を見開いた。
「あ、美味しい……!」
「ふふっ……やっと笑った。」
「え?」
瑠無はデスクチェアに腰掛けながらコーヒーを飲む。
「ため息っていうのは、どんな事も良くないイメージになる。だから私はどんな時でもため息をつかない。」
「おお……何か名言っぽい。」
「まあ人の受け売りだけどね。」
「え?」
せっかくかっこいい事言ったのに、最後の一言でキョトンとしてしまう。ただ、さっきまで悩んでいたのが、嘘みたいに気が楽になった。
(過去の事は、本人がどうにかするしかない。だけど、少しでもその恐怖を和らげてあげる為に、私が側にいて支えるんだ。)
そう決意するとコーヒーを一気に飲み干した。椅子から立ち上がって紙コップをゴミ箱に捨てる。
「ごちそうさまでした。美味しかったです。」
「いいえ。また何かあったらここにおいで。」
「はい!失礼しました!」
一礼して、保健室を後にした。一人残った瑠無は、アタッシュケースを開くと筒のようなものを出した。すると突然、テーブルの上に置かれていたダイヤル式の固定電話が鳴り、受話器を取る。
「はい……私です。え……?はい……分かりました。」
瑠無は受話器を電話機に戻すと、窓の外の空を見上げ不敵な笑みを浮かべた。
(そうか……。これは……皆が来るのが楽しみだな……。)
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アルカ・ノイズを殲滅させて、指揮官は拘束して任務は果たされた。だがその中にある一つの悪いニュース。少女を庇ったステファンの右足がアルカ・ノイズの解剖器官に巻き付かれてしまった。全身が分解される前に、クリスがクロスボウの矢で右下腿を撃ち抜いた。それによりステファンは全身が分解されずに済んだが、その代償が足を失うという結果になってしまった。
「ステファン!ステファン!どうしてこんな……」
担架の上で応急処置をしているが、血が止まらない。ソーニャは痛みにうなされるステファンを呼び続けた。
「ソーニャ……。」
クリスが歩み寄った。助ける為とはいえステファンの足を撃ち抜いた事に申し訳なく思っている。もちろんクリスも好きで足を撃ち抜いたわけではない。
「クリス……!あなたが弟を……あなたがステファンの足を!」
「ああ……。撃ったのは、このあたしだ……。」
ソーニャは弟の足を撃ったクリスに怒りをぶつけた。クリスもそれを承知の上でやった事なので受け入れたのだが
「待ってください……!ソーニャ……さん……!」
「姉ちゃん……。」
「ルリ……?!」
「クリスのせいじゃないです……。私があの時……もたついたせいで……。クリスは……ただ……ステファン君を助ける為に…………」
「そんなので納得出来るわけないじゃない!」
瑠璃があの時、悪夢のヴィジョンに苦しまなければアルカ・ノイズの反応に対してすぐに対処出来ていた。そういう意味ではこれら瑠璃の失態である。
だがどんなに弁明しようともやったのはクリスだ。撃ったのがクリスである以上、彼女への怒りが収まるわけがない。
「姉ちゃん……もう良い。やったのはあたしだ。姉ちゃんは関係ねえよ。」
「クリス……ごめん……。」
クリスに要らぬ苦しみを背負わせた事に、瑠璃は罪の意識を感じていた。
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その頃、オペラハウスに戻っていたサンジェルマン達は目的の結晶の中にある人形を前に、サンジェルマンは一人、400年前の事を思い出していた。
この人形、『ティキ』と呼ばれ、かつてパヴァリア光明結社の統制局長が命じて作られたオートスコアラー。結社の悲願である革命には必要不可欠な存在だった。だがその頃、異端技術独占を狙うフィーネと衝突、激しい戦闘の末、両者はティキを失うという結果に終わり、結社の計画は頓挫しただけでなくフィーネによって歴史の裏側へと追いやられてしまった。だがこうして400年という長い歳月を経て、再び取り戻した。
「あとはこのお人形をお持ち帰りすれば、目的達成ってワケダ。」
「それはそれで面白くないわ。」
先程の戦闘でマリアによって頬に傷を負い、絆創膏で隠していたカリオストロは、どこか満足していないようだった。
「天体運航観測機であるティキの奪還は、結社の計画遂行に不可欠。何より……」
「この星に、正しく人の歴史を紡ぐのに必要なワケダ。そうだよね、サンジェルマン?」
「人は誰でも支配されるべきではないわ。」
「じゃあティキの回収はサンジェルマンにお任せして、あーしはほっぺたのお礼参りにでもしゃれこもうかしら。」
そう言うとカリオストロは、この地下倉庫から去ろうとすると、サンジェルマンはそれを咎める。
「ラピスの完成を前にして、シンフォギア装者との決着を求めるつもり?」
「勝手な行動を……それではアルベルトが黙っていないワケダ。」
彼女達にはもう一人、信頼する仲間がいる。その名はアルベルト。彼女には計画遂行の為に別行動を取っており、他にも様々な重大な任務を任せている。
「それでも、ヨナルデパズトーリがあれば、造作もない事でしょ?今までさんざっぱら嘘をついてきたからね。あの子には悪いと思うけど、せめてこれからは、自分の心には嘘をつきたくないの。」
元々は嘘にまみれた詐欺師だったカリオストロ。それも元は男だった。しかし、サンジェルマンと出会い、彼女の力によって生物学的に完全な身体構造である女へと変化、さらに自分の居所を作ってくれた事で、彼女を慕うようになり、自分の気持ちに正直に生きる事を決めた。
それ故に、借りを返さなくては気が済まないカリオストロは階段を上がって地下倉庫から出て行った。
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ステファンを都市部の病院へと送る為に、瑠璃達は緒川が運転する車の荷台にステファンを担架で担いで乗せて、自身達も荷台に乗っている。応急処置は済ませたが、包帯は既に血で赤く滲んでおり、止血しきれていない。助かったとはいえこれでは素直に喜べない。特にクリスは。
雪音姉妹とソーニャ、かつて雪音姉妹の両親がバルベルデに訪れた時、その活動を手伝っていたのがソーニャだった。二人はソーニャは姉のように慕っていたのだが、ある時ソーニャが救援物資が爆弾である事を知らずに倉庫にしまった事で、その爆破に巻き込まれた夫妻は亡くなってしまう。この時、クリスはこうい言い放った。
『ソーニャのせいだ!』
あの時、クリスはソーニャに向けてその怒りをぶつけた。ちなみにその後、ソーニャと別れてしまい、双子は戦果の中を彷徨った。その時にルリにソーニャを責めた事を咎められた。だが今の瑠璃はソーニャの事も、両親が何故死んだのかも覚えていない。
それからソーニャに謝りたいと思っていたが、ルリと離れ離れになり、クリスは反政府組織の部隊に捕まった。そして9年後、今度は逆の立場になってしまった。クリスが取った選択は間違ってはいないが、怒りというのは理屈でどうにかなるものではない。だからソーニャはクリスがステファンの足を撃った事を許せないのだろう。
クリスはステファンの足を撃った事を後悔していない。だがその責任を感じている。ステファンが魘されているのを見ると、自分を責めずにはいられなくなる。だが……
「あっ……。」
ステファンの手が、クリスの足にそっと触れた。痛くて苦しいはずのに、それでもクリスの味方でいる。その足に触れた手に、クリスは握り返すかどうか悩んだ。
「クリス……。」
瑠璃に小声で呼ばれると、静かに頷いた。その意味を悟ったクリスは、ステファンの手を握った。
(ありがとう……ステファン……姉ちゃん……。)
そこに翼の通信機に弦十郎から通信が入る。
『エスカロン空港にて、アルカ・ノイズの反応を検知した!現場にはマリア君達を向かわせている!』
先程、村に行く前にマリア達がギアを纏う為に最後のLiNKERを使ったと通信があった。つまり、まともに稼働できる時間が僅かしかない。
「了解です。都市部の病院に負傷者を搬送後、私達も救援に向かいます。」
果たして救援に間に合うか、いや間に合わせなければならない。
瑠無・カノン・ミラー
今夏リディアンに赴任したアメリカ人の養護教諭。養護教諭ではあるが、考古学にも精通していて、資料を持ち歩いている。
明るくて面倒見のいいお姉さんのような性格。過去にため息について教えてもらった事がきっかけで、ため息を吐く事をしなく鳴った。
味覚が独特で奇天烈な組み合わせ、ゲテモノ料理を好む。