でもその前にシンフォギアじゃーい!
同じ頃、日本の青空にプライベートジェットが飛んでいる。乗っているのは翼とマリアだ。二人はバルベルデが保有していた異端技術に関する資料、バルベルデドキュメントが入ったケースを手に日本に帰国するのだ。まもなく着陸態勢に入るアナウンスが流れる。
だがその瞬間、爆発とともに揺れが発生した。外からアルカ・ノイズがプリマ・マテリアを撒き散らしている。それを管制塔から眺めている仮面をつけたアルベルトとその後ろにカリオストロとプレラーティが眺めている。
「私の主義に反するが、サンジェルマンの為だ。まずは。お手並み拝見。」
機体の側面が分解され、その空いた穴へケースが飛び出そうとした所、マリアがそれをキャッチするが、今度はマリアが吸い出されるように機体から放り出されてしまった。
「マリア!」
LiNKERもなく、ギアを運用できないマリアでは海面に叩きつけられるかアルカ・ノイズによって分解されてしまう。友を救う為に翼も機体の外、上空に飛び立って起動詠唱を唄う。
Imyuteus amenohabakiri tron……
機体が完全に破壊され爆破するが、天羽々斬のギアを纏った翼にたその影響はない。爆炎から姿を現した翼は刀を大刀へと可変させて、それを振り下ろすと青いエネルギーの斬撃が放たれる。
【蒼ノ一閃】
斬撃はマリアに迫るアルカ・ノイズを纏めて両断、翼は宙を舞いながらアルカ・ノイズを斬り捨てていく。
『翼!マリア君をキャッチし、着水時の衝撃に備えろ!』
「そうはさせないワケダ。」
「畳み掛けちゃうんだからぁ〜!」
弦十郎からの通信を聞いていたかのように、カリオストロとプレラーティの命令で、残ったアルカ・ノイズがマリアに襲い掛かる。
『マリア君!加速してやり過ごすんだ!』
大の字になって空中落下速度を低下させていたが、アルカ・ノイズから逃れる為に身体を真っ直ぐに変え、落下速度を速めた。同じタイミングでアルカ・ノイズからの攻撃を受けるが、落下速度を速めたお陰で靴のヒールが分解されただけで済んだ。
翼は脚部のブレードのを点火させて、アルカ・ノイズの間をかいくぐってマリアをキャッチして抱える。そして、左手に持つ大刀を天に高く掲げると、エネルギーの剣が上空から大量に降り注ぎ、残存のアルカ・ノイズを全て斬り捨てた。
【千ノ落涙】
海面に接触する直前、翼は脚部のブレードユニットをホバーのように低空飛行して対岸へ目指す。
「流石にしぶといワケダ。」
「まあ概ね予想通りだ。でなければ期待外れもいいところだからな。」
「何を面白がってるのよ〜?けど、続きはサンジェルマンが合流してからねぇ〜。」
アルカ・ノイズが殲滅し、討伐失敗を悟った三人は撤退した。
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保健室では帰国中の翼とマリアが襲撃を受けたという知らせがクリスの通信機に入った。
「先輩が?!ああ!すぐに行く!」
通信を切るクリスの姿を見た輪は、その様子がただ事ではない事を察して心配そうに伺う。
「オジサンから?」
「ああ、先輩達が襲撃を受けた。けど心配すんな。みんな無事だ。」
「良かった……。」
翼の無事を知り安堵する輪。もはや彼女に憎悪はないから仲間として心から安堵する事が出来る。
「今から空港へ行くから、姉ちゃんはここに置いていく。だから……」
「分かってるよ。こっちは任せて。」
クリスが頼みを察した輪。瑠璃は輪に任せて保健室を飛び出す。だがその時
「うわっ!」
「あ、悪い!」
保健室に戻って来た瑠無にぶつかりそうになり、衝突はギリギリ避けられたが、それでも突然飛び出してきたクリスに、瑠無は驚いて倒れそうになる。何とか踏みとどまって転倒せずにすんだ。
「もう!校舎内は走らない!まったく……妹の方もお転婆だなぁ……。」
瑠無はブツブツと文句を言っていいつつ、保健室に入ると輪がいる事に気付いた。
「ああ、出水さん。」
「どうも。瑠璃の様子を見に来ました。クリスは急用が出来たみたいで、私一人になっちゃいましたけど。」
「でも廊下を走るのは良くないわ。後で言っておかなきゃ。」
「あはは……出来ればお手柔らかに。」
苦笑いを浮かべる輪。瑠無はデスクチェアに腰掛けて一息ついた。そこに輪が質問をする。
「そう言えば、何処に行ってたんですか?」
「ん?ちょっと知り合いに呼び出されちゃってね。調べてほしいものがあるって一方的に言われちゃって。」
そう言うと手に持っている資料を鞄にしまった。輪は気になるのか椅子から立って鞄の中を覗き見ようとするが、瑠無は急に輪の方へ振り返り、鞄の口を閉じる。
「堂々と覗くのは覗きじゃありません。」
「はい……。」
そう言いながら呆れている。鞄の口を開いて、資料の一部を出してそれをデスクに置いて見せた。
「やるならコソコソ覗きなさい。」
「いやそれ推進しちゃ駄目でしょ。っていうか良いんですか?」
「ええ。」
「ありがとうございま……うわぁ……なぁにこれぇ?」
その資料に書かれている文字は平仮名、カタカナ、漢字、ましてや英数字ですらない。恐らく古代に使われていた楔形文字なのだろうが人によっては一生見ないであろう。
「まさかこれ見せたのって……」
察しの良い輪ならすぐに分かった。読めない輪に見せても別に何の問題もないと思ったのだろう。現に瑠無が僅かに口角を上げたのを見逃さなかった。
「意地悪だなぁ……。っていうかミラー先生って養護教諭ですよね?何でこれを?」
ただの養護教諭ならこのような資料をお目に掛かる事はまずない。それを養護教諭である瑠無が関わっているのを不思議に感じるのは当然の反応である。輪に問われた瑠無は顎に手を当て、その切っ掛けとなる記憶を思い返していた。
「ああ。私、元々考古学の分野を学んでたんだけど……ある時こっちの道に行くって決めたのよね。やっぱり切っ掛けは……あの夫妻かな……。」
「夫妻……?」
「ええ……その夫妻は……っと続きはまた今度にしましょうか。」
突然中断され気になる輪だったが、瑠無がベッドの方を指して、振り返ると瑠璃が起きていた。
「瑠璃!」
輪が椅子から立ち上がって瑠璃に駆け寄った。
「輪……そんな慌てなくても……」
「こっちは心配したんだよ?あんたここの所、ずっと寝れてないってクリスから……」
「クリスが……あ、そう言えばクリスは?」
ベッドから降りて、保健室中を見渡してクリスを探す。
「あ、クリスならオジサンに呼び出しが……」
「お父さんから?何かあったのかな……。」
瑠璃は持ってきてくれた鞄を手に取って、瑠無の方を向く。
「ミラー先生。ありがとうございました。お陰で……」
「ああ、良いのよ。これも仕事だから。風鳴さん、また何かあったら来てね。」
「はい。失礼しました。」
「失礼しました。」
瑠璃と輪は一礼して、保健室から出て行った。瑠璃は弦十郎に通信を入れる為に人に聞かれないよう、一旦リディアンの郊外から出て、公園まで歩いた所で人がいない事を確認して通信する。
『瑠璃、もう大丈夫か?』
「はい。申し訳ありません。何かあったんですか?」
そこで初めて翼とマリアが帰国中にアルカ・ノイズに襲われた事を把握した。もちろん無事である事も含めて。そして体調不良の瑠璃を除いて行われた会議の内容も伝えられた。翼達がバルベルデから運び出した機密資料の解明と日本にパヴァリア光明結社の錬金術師が潜入しているという二点。そして、会議の終わり際にクリスが瑠璃を戦線から外すよう提言してきたというものだ。
「クリスが……?」
『ああ。余程お前の事が心配なんだろうな。』
ステファンの事もあったというのに、クリスはなお瑠璃の事を心配している。今は気丈に振る舞っているが、ルナアタック、フロンティア事変、魔法少女事変、全ての事件に起きた葛藤を一人で解決しようとして来た例があり、クリスは瑠璃以上に一人で抱え、葛藤を解決しようとする傾向にある。弦十郎はそれを危険視していた。
しかし今はそれよりも瑠璃の精神的なケアの方が大きな問題となっており、今後の装者の活動に影響が出ているのも事実。故にしばらくは響、翼、クリスのバックアップに周り、三人に不足の事態が起きた場合にギアを纏ってもらうという事になった。
『しばらくはマリア君達と行動を共にすることになる。だがお前はLiNKERが無くてもギアを纏える。万が一の時は……』
だが言い終わる前に、アルカ・ノイズ出現のアラートが本部に鳴り響き、通信越しで瑠璃にも聞こえた。
「お父さん!」
『ああ、アルカ・ノイズだ!瑠璃、お前はすぐに本部へ……』
「がぁっ!」
輪のうめき声が聞こえ、背後を振り返ると仮面をつけたパヴァリア光明結社の錬金術師、アルベルトが気を失った輪を小脇に抱えていた。
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アルベルトが現れる少し前、会議を終えた響が未来と合流、ファミレスの席で未来と対面する形で座っており、バルベルデで起きた事を未来に話していた。クリスがステファンの足を撃ち抜いた事、瑠璃が悪夢に苛まれるようになったことを。ただ後者の方は、会議でクリスが弦十郎に提言した事で初めて知った。
響としてはどちらも元気付けたくて未来に相談したのだが、どうすれば良いのか分からない。
「瑠璃さんとクリスちゃん、あれから落ち込んでるんだ……。何とか元気づけてあげたいんだけど……」
「大きなお世話だ。」
突然後ろの席にクリスがいた事に驚く響。しかもクリスだけではない。
「その言い草はないだろう、雪音。二人はお前達を案じているんだ。」
「翼さんもいるー?!」
「私達だけでなく、みんなが瑠璃と雪音のことを心配している。」
「分かってる!けど、放っていてくれ!あたしなら大丈夫だ!ステファンの事はああするしかなかったし、同じ状況になれば、あたしは何度でも同じ選択をする!」
「それが雪音にとっての、正義の選択というわけか。」
「ああ。だからあたしより、姉ちゃんの心配をしてやってくれ。これ以上、姉ちゃんに負担を掛けさせられねえ。姉ちゃんが苦しむ姿なんて……もう見たくない!」
クリスの握り拳が震えているのを、翼と背もたれから身を乗り出している響は見逃さなかった。特に響はこういう事があるとより一層心配になるが
「そ~いやお前、まだ夏休みの宿題を提出してないらしいな?」
「ぎょっ?!そおだったああぁぁ〜!」
うら若きJKとは思えない顔と声で絶叫しながら頭を抱える響は未来に泣きついた。響はギリギリまでやらずに、登校日になってようやく焦ったのだがそこに追い打ちをかけるようにバルベルデ行きなどがあった為、宿題を終わらせる事が出来なかったのだ。だがクリスと瑠璃はおろか、調と切歌はバルベルデ行きまで課題を終わらせていたので、ギリギリまでやらなかった響の自業自得なのだが。
「どうしよう未来ぅ〜!」
「仕方ないね。誕生日までに終わらせないと。」
誕生日というワードに翼が反応する。
「立花の誕生日は近いのか?」
「はい、13日です。」
夏休みの宿題に頭を抱え悶えている響の代わりに未来が答えた。
「へぇ〜?あと2週間もないじゃねえか。このままだと誕生日も宿題に追われ……」
そこに通信機から鳴るアラートが、他愛もない日常を壊した。響、翼、クリスが通信機を手にそれを耳に当てる。
『アルカ・ノイズが現れた!位置は第19区域、北西Aポイント!同時に輪君を攫った結社の錬金術師の一人を追って、瑠璃もそこへ向かっている!』
「輪さんが?!」
「姉ちゃんも……!」
響とクリスが驚愕の声を漏らす。輪を攫った辺り、敵が瑠璃を戦場に引きずりこもうとしているのは明白だ。
「了解、直ちに向かいます!行くぞ立花、雪音!」
「はい!」
「おう!」
三人はファミレスを飛び出し、アルカ・ノイズが出現した区域へと向かった。
同時に瑠璃もギアを纏ってアルベルトが指定した場所、アルカ・ノイズ出現区域を追っている。
アルベルトはトリックスターのような立ち位置で暗躍させる予定です。