戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

11 / 190
 瑠璃の忌まわしき真実、そして輪の過去(一部)が明かされます。

また輪のお姉さんが本格的に登場します。


瑠璃の真実、輪の傷痕

「響君の為に最初から話す。瑠璃は元々、俺の娘ではない。」

 

突然の台詞に響は戸惑いを隠せなかった。

 

「あの子の旧姓は雪音。つまり本名は雪音ルリだ。先程二人が戦った、ネフシュタンの鎧、並びにイチイバルの装者、雪音クリスの双子の姉だ。」

「あの子達は一卵性双生児なの。だから外見に多少の誤差はあっても、ぱっと見じゃあ間違えちゃうわねぇ。」

 

 了子が付け加えるように説明する。

 髪の色とほくろの有無といった多少の違いはあれど、瑠璃とクリスがそっくりだったのはまさにそういう事である。

 ここで翼が待ったをかける。

 

「待ってください司令。では、何故あの者と瑠璃は何故別々になったのですか?」

「それについても話す。ご両親はNGOで活動していてな、数年前に姉妹を連れてバルベルデ共和国に向かった。だがそこで紛争に巻き込まれて、ご両親は死亡、二人も戦果によって生き別れてしまったんだ。瑠璃は政府軍の、妹は反政府ゲリラの捕虜となり、そこで二人は別々で6年の月日を過ごした。反政府の方でも酷い扱いを受けていたが、タチが悪いのは政府軍の方だ。実態はは軍隊としてのモラルも規律もない愚連隊。そんな人でなし共の集まりに、非力な少女が放り込まれた結果、瑠璃は玩具のように弄ばれた。」

 

響と翼は絶句した。

 

「そして2年前、国連軍の救助隊の介入によって瑠璃と妹が救助される事になった。だが奴らはあろう事か瑠璃とは別人の遺体を引き渡して知らん顔と出た。」

「どこまでも外道な真似を……!」

 

 翼は国を守る軍人であるにも関わらず、小さな女の子に非人道的な扱いで愉悦に浸っていた事に憤慨した。

 

「そして先に妹だけが救助され、瑠璃は死亡扱いとされたが、その遺体が偽物であると分かった直後、瑠璃が発見され、救助されたという報告を受けた。」

「じゃあ瑠璃さんは無事に救助されて、師匠が引き取ったっていうことですよね?」

「それで済んだらどれだけ良かったか。発見された時、あの子は既に酷く衰弱していてな……すぐに治療され、一命は取り留めたが長い間眠っていた。そして目覚めた時、あの子は家族が亡くなったこと、妹がいる事、そして自分の名前や思い出すら忘れてしまっていた。」

 

 医師曰く解離性健忘であり、トラウマやショックなどが原因で記憶を失うという疾患だったという。

 

 ここで響が手を挙げる。

 

「あの、瑠璃さんに本当の事を話すことは出来ないんでしょうか?」

「それは……」

「はいは〜い。それは私が答えるわ〜。」

 

弦十郎が話そうとした所で、了子が割って入る。

 

「結論から言うと、それは得策ではないわ。」

 

 急に表情と声のトーンが真面目な雰囲気になる。

 

「どうしてですか?瑠璃さんに本当の事を言って、それでも師匠は瑠璃さんの事を……」

「あの子の記憶喪失の原因があの地獄の日々で受けた仕打ちだとしたら、あの子に真実に向き合うだけの精神力はないと思う。そんな事をしたら、あの子は一生トラウマに苛まれる事になるわ。」

 

 その為、弦十郎はこの二年間ずっと瑠璃に真実を黙殺して来たが、流石の弦十郎もこれには心苦しかった事が窺える。

 

「俺のやった事は正しいとは思わん。だがあの子を守る為に、愛情を注いで、そして妹も救う為に全力を尽くしたつもりだ。だが……結果的に俺はあの子を再び危険な目に遭わせただけでなく、本当の姉妹が殺し合うことになってしまったというわけだ。」

 

 弦十郎はこの皮肉な結果を齎した自分を嘲笑する。

 響はクリスが瑠璃を攫ったのも、本当は死んだと思っていた姉と暮らしたかっただけだったんだと気付き、理由を知らなかったとはいえ、自分はそれを阻んでしまっていた事を理解すると俯いてしまった。

 翼も防人としての立場に囚われて、姉として彼女を愛さなかった事に後悔している。

 暗い空気になってしまった所を、了子が手を叩いて鳴らす。

 

「ちょっとちょっと!皆そんな暗い顔してどうするのよ?ここには二人の装者もいるし、最強のお父さんがいるじゃない!それに生きている事が分かったんだから、助けられるチャンスがあるって事じゃない!」

 

 その顔は笑っており、了子は手持ちのタブレット端末を操作する。

 

「聞けば瑠璃ちゃんは、こちらに対して呼び掛けても何の反応もなかったのよね?」

「はい。ただ、最後に立花の呼び掛けて一度元に戻ったのですが、突然錯乱したような状態に……。」

「だとすると、瑠璃ちゃんは恐らく、暗示を掛けられたのでしょうね。それが催眠療法によるものか、聖遺物によるものか、何れにしてもあの子の持つギアについて、深く解明したいわね。でも……」

 

 笑顔だった了子の顔が真剣になものに切り替わる。

 

「それでも瑠璃ちゃんとの戦闘は、もう避けられないでしょうね。」

「心配無用です櫻井女史。傷付く事を恐れていては、あの子を助ける事など出来ません。」

 

 そう言うと、響も同調する。

 

「瑠璃さんは必ず取り戻します!」

 

「ああ。もちろん俺もこのまま引き下がるつもりはない。俺も可能な限り現場に出向いて……」

「弦十郎君?司令のあなたがそんな好き勝手して良いわけないでしょう?」

 

 弦十郎は元公安であり、以前より現場で暴れたいという本音に気付いている了子に止められてしまう。

 そこに緒川が微笑むように応える。

 

「調査なら僕に任せてください司令。」

「う、うむ……。任せたぞ。」

 

 渋々ながらも弦十郎は調査を緒川に託し、万が一戦闘担った場合は響と翼に任せる事にした。その後も方針が固まり、二課はより一致団結していた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その日の夜、輪の姉である小夜は輪を乗せた車椅子を押して外食に行こうとしている。

 というのも輪がここの所元気がない事を察知し、それを見兼ねた小夜が外食に連れて行こうとしたが、足を怪我している輪には酷という事で車椅子を借りて外出している。

 

「たまにはええな〜二人で外食も。」

「うん……。」

 

 ちなみに小夜は大学生時代に京都で一人暮らししていて、大阪で働いていた影響もあり、関西弁が抜けなくなってしまったとか。

 

「しっかりせんと。どないしたん?ここん所の輪、全然元気ないよ?」

「ちょっと、瑠璃がね……。」

「誘拐されたんやろ。」

 

 何故二課と関係ない小夜が知っているのかとビックリして、振り返る。

 

「何で小夜姉知ってるの?!」

「盗み聞きするつもりはなかったよ。けど、偶々聞いちゃってねぇ。看護師やってるとよくあるんよ。まあ性ってやつ?」

 

 実は小夜は輪が搬送された直後、弦十郎が来る前に見舞いをしたのだが、小夜が仕事に戻った後に入れ替わる形で弦十郎が見舞いに来た。

 そして勤務中に弦十郎と輪が話した事を扉越しに聞いていたという。

 

「やめなよ小夜姉!それで小夜姉が危険な目に遭ったら……あっ……」

 

 一瞬人混みの中に見覚えのある横顔。まさかと思い、輪は車椅子を全力で漕ぐ。

 

「小夜姉、ちょっとごめん!」

「ちょっと輪!どこ行くの?!」

 

 人混みを中を掻き分けて進む。

 そして手が届きそうになると、手を伸ばしてその腕を掴んだ。

 

「瑠璃!あんた、どこに行ってたの?!」

「は?ってお前……!」

 

 瑠璃に見えた少女は、あの日、自分達をノイズに襲わせて、瑠璃を拉致した張本人、クリスだった。入院中に弦十郎から真実を聞かされていた為、瑠璃と呼ばれて困惑している様子から妹ではないかと予想できた。

 

「あんたもしかして……瑠璃の本当の妹?!」

「お前、あの時の!」

 

 クリスだと分かった途端、輪は敵意を向ける。

 

「あんた、瑠璃を何処にやったの?!」

 

 輪が手に力を入れている辺り、本気で怒っている。

 でもクリスは、未だにフィーネを信じ、自分の行動が間違っていた事を認められずにいる。

 フィーネの命令通りにすれば、姉を虐げた人間達に復讐出来る、また姉と一緒になれる、だがそう信じていた結果がこのザマだ。

 

「あんたが何がしたいのか分からないけど、瑠璃を巻き込んで楽しかったの?記憶のない姉を弄んで、傷つけて……」

「ふざけんな!姉ちゃんを弄んで傷つけたのはそっちだ!あたしはただ、姉ちゃんを助けようとしたんだ!お前の友情ごっこなんざ……」

「あんたに何が分かるってんのよ?!妹であっても!あんたの物差しで!私達の友情を軽々しく語んな!!」

 

 輪の怒号が周囲の通行人達をざわつかせた。しかし輪は自分達の友情を、心無い言葉で侮辱された事に怒りを露わにしていてそんな事は気にも留めていない。

 対するクリスもやり場のない怒りに何が正しいのか分からずムシャクシャしている。

 互いに一触即発の状態、乱闘に発展してもおかしくない。

 

「やっと追い付いたで輪!あんた怪我人なんやから……って何しとん?あれぇ、瑠璃ちゃん?」

 

 ここで置いてけぼりにされた小夜が入ってきたが、やはりというべきか、クリスを瑠璃と誤認してしまった。

 

「あたしは雪音クリスだ!ルリじゃねえ!」 

「そっか、すまへんなぁ。どうにもそっくりで見間違えたわ。ほんま堪忍な。輪、その手を離してやってや。」

 

 輪は渋々クリスの腕を離す。

 だが輪はクリスを睨んでいるが、そんな輪を横目に小夜は閃いたようにポンと手を叩く。

 

「せや、クリスちゃんやっけ。お腹空いとるやろ?一緒にご飯食べへん?」

「「はぁ?!」」

 

 輪とクリス、思考と台詞がシンクロする。

 まあ見ず知らずの人を、ましてや敵を外食に誘おうなんて、そんな思考に辿り着く人なんてそうそういない。

 

「何言ってんだお前?!あたしは……」

 

 否定しようとしたがお金もなく、行く宛もないクリスの腹の虫は盛大に鳴る。

 

「腹は減っては何とやらや。ほな行こか!」

 

 小夜はクリスの腕を引っ張ってファミレスに連れて行った。

 輪は小夜がこんな性格なのをよく分かっている為、ある意味クリスに同情している。

 

3人はそこで食事を済ませたのだが、クリスが食べたハンバーグの食器周りが非常に汚い。

 

「ねえ……汚い。」

「良いんだよ食えれば。」

「まあまあええやん。にしてもクリスちゃん、妹みたいで可愛いわ〜。」

 

 クリスは小夜の自由奔放な姿を見て、こいつは悪魔なんじゃないかと思い始めた。

 

「ただな、もう少し二人ともにこやかにならんかな〜。」

「「だってこいつが!」」

 

 輪とクリスが同時に指を指すが、その息ピッタリな連携がおかしかったようで小夜は大爆笑だった。

 

「何や息ピッタリやん!ホンマは仲ええんとちゃう?」

 

 なお小夜は至って素面である。輪はこの状況が不快なのか不機嫌な様子だった。

 

「お手洗い行ってくる。」

 

 そういうとお手洗いに行こうと車椅子を方向転換する。

 

「ああ、なら押して行こか?」

「いい、一人で行ける!」

 

 輪が見えなくなったのを確認した小夜は、すぐに真面目な顔つきになる。

 

「輪を許してやってくれな。あの子すぐに感情的になるから。」

「何でここまですんだ?」

 

 見ず知らずの人を食事に誘うばかりか、そのお代まで払ってくれるという。普通ならここまでの節介は焼かない。

 

「似てるんや。クリスちゃんと、少し前の輪に。」

「どういう事だよ?」

 

 少し呼吸を整える。

 

「二年前……輪が中三の頃やったか……あの子同級生に虐められてたんや。」

 

突然の話にクリスは唖然とする。

 

「輪とその彼氏がノイズに襲われてな、輪は無事やったんけど、彼氏は輪の目の前で炭になったんやと。けど、その子の女友達共に陰湿な虐めに遭ってな。輪も我慢の限界が来て……全員いてこましたんや。それも相手が泣き入れても容赦なく。」

 

 今の姿からは考えられないような事だったが、何故ノイズを前に冷静に対処出来たのか、腑に落ちたクリス。

 

「だからあいつ……」

「けど結局、暴力で押さえても何も解決せえへんかった。逆に別の暴力に襲われるのがオチやった。最終的にはマッポのお陰で大事には至らんかったけど、あの子が変わったのもそれからや……おっと、思いの外早いお帰りやなぁ。」

 

 輪がお手洗いから帰って来たのを確認すると話は中断した。

 

「お待たせ小夜姉。」

「ええんよ。ほな、ウチが会計しとくから先に外で待っててな。くれぐれも仲良くしときや〜。」

 

 二人はお互いにギクシャクしている状態で店を出た。

 顔を合わせないで、輪が先に話した。

 

「早く帰んなよ。あんたのボスの所へ。」

 

 突然の台詞にクリスは輪の方を見た。

 

「お前、あたしの事嫌いか?」

「そうだね。瑠璃を危険な目に合わせたんだから。でも、これ以上あんたを恨んでも瑠璃は帰って来ない。だから、早く行きなよ。」

 

 輪はクリスの方を見て言った。

 

「飯、ありがとうって伝えてくれ。」

「うん。」

「じゃあな。」

 

 クリスは人混みの中へと消えていった。

 

「まったく……性格は対照的だけど、さすが双子だね。」

 

 誰にも聞かれない、ただの独り言を呟く。その後小夜が店から出て、そのまま家に帰った。




出水 小夜(24)
誕生日:10月3日
身長:165cm
B:88 W:57 H87

輪の姉であり「小夜姉(さよねえ)」と呼ばれている。
看護師勤務。
マイペースだが家族思い。
大学時代は京都で過ごしており、大阪の大学病院勤務だった影響なのか関西弁で話すようになってしまい、現在も抜けてない。
 男子からの人気は高かったのだが、悪知恵が働き、度々周囲を振り回して来た事から、学生の時のあだ名は「小悪魔美人」

ご感想お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。