戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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私も飛ぶんか〜いの回になります。



新型アルカ・ノイズ

 瑠璃の背後に突如現れたアルベルトは輪を気絶させて小脇に抱え、瑠璃はギアペンダントを握りしめて相対している。親友を傷付けられた瑠璃の表情は、先程の穏やかなものではなく、怒りが滲み出る程にアルベルトを睨みつけている。

 

「輪をどうするつもりなの……?!」

「少し利用させてもらうだけさ。心配しなくても良い。すぐに返すさ。」

 

 瑠璃の問いに答えた瞬間、アルカ・ノイズの召喚石をばら撒いた。割れた所からアルカ・ノイズが召喚されると、瑠璃は起動詠唱を唄う。

 

Tearlight bident tron……

 

 バイデントのギアを纏い、前腕のガントレットがアームドギアである二本の槍へと変形させると、右手で黒槍、白槍は左手で手にし、アルカ・ノイズの群れに切り込む。

 

「ここから西1キロ先の街に来るといい。そこで待っている。」

 

 アルベルトの足元に転移用の錬金術の陣が展開され、抱えた輪と共に姿を消した。アルカ・ノイズを滅した時に発する赤い塵、プリマ・マテリアが舞う中でそれを目の当たりにした今、すぐに追いたい所だがアルカ・ノイズを野放しには出来ない。幸い召喚されたアルカ・ノイズの数は少なかった為、一人でも対処出来る。

 黒槍と白槍を連結させて一本の槍へと可変させると、それを高速回転させてエネルギーの竜巻を発生させる。

 

【Harping Tornado】

 

 竜巻の回転に巻き込まれたアルカ・ノイズは風圧によって巻き上げられ、竜巻の中で切り刻まれた。

 アルカ・ノイズを全滅させた直後、弦十郎から通信が入った。

 

『瑠璃!大丈夫か?!』

「アルカ・ノイズは全て倒しました!でも、輪が……!」

『ああ。奴はこちらを挑発するようにわざと形跡を残している!』

 

 本部のモニターが、アルベルトを捉えているがわざわざ転移した先が、伝えた区域ではなく、その道中に姿を現し、その先に向かうようにビルの屋上を跳躍している、明らかに瑠璃を誘い込む為のものだろう。

 

『その先にある区域は翼達を向かわせる!瑠璃お前は……』

「私も行きます!」

『瑠璃?!』

 

 本部へ戻るよういい伝えようとする前に、瑠璃も戦う意思を示したが、弦十郎はそれに難色を示した。いつまたあの悪夢のヴィジョンによって苦しめられるのかも分からない状態で、出撃させるわけにはいかない。しかし、瑠璃は既に輪を取り戻す為に槍に跨って遠隔操作で目的の区域を目指している。こうなっては意地でも戻らないだろう。弦十郎は腕を組みながらため息をつくと

 

「そのまま翼達と合流しろ!」

 

 そのまま出撃を許した。だが無条件というわけにはいかない。

 

「良いか!一度でもバイタル低下を確認したらすぐに撤退するんだ!」

『了解!』

 

 瑠璃は腰のブースターを点火させてスピードを出した。輪を取り戻す為、今の瑠璃には迷いはない。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 アルカ・ノイズの出現区域にあるビルの屋上に、サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティが、辺り一帯の道を埋め尽くしたアルカ・ノイズの大群を見下ろしている。今回アルベルトが独自に開発した新型アルカ・ノイズを装者に対して投入しようというものである。現在そのアルカ・ノイズはアルベルトが所持しており、未だ到着していない。

 

「アルベルトったらまだお医者さんごっこでもしてるのぉ?」

「新型のお披露目というのに遅れるとは、随分と偉くなったワケダ。」

 

 カリオストロとプレラーティはアルベルトが来ていないことに腹立てている。

 二人は元々世界に悪名を馳せる程の大悪人だったが、その二人ですらアルベルトの掴み所がなかった。サンジェルマンの事は慕っているようだが、それでも一つ一つのセリフに欺瞞が混ざっているのも何となく感じている。

 しかし、サンジェルマンはそれを百も承知でパヴァリア光明結社に引き入れた。もしアルベルトが裏切ればサンジェルマンの手によって、あっという間に消されるだろう。だがそうしないという事は、少なくとも信頼している証だ。故に二人は手を出す事はないが、常に飄々としていて余裕を崩さないあの態度が時に怪しさを醸し出している。

 そこに噂をすれば本人が何かを抱えて、こちらに転移して姿を現した。

 

「すまないな。少し手間取ってしまった。」

「ふ〜ん。で、その子はなぁに?」

 

 カリオストロがアルベルトが小脇に抱えている女性、出水輪を指した。

 

「彼女はあくまでも餌さ。あの子が来る為のね。」

「アルベルト、例のものは?」

「ここに。」

 

 腰のベルトに留められている筒を外すと、それをサンジェルマンに私は。その筒が開くと、中にあるのはアルカ・ノイズの召喚石。この召喚石の中にいるのが新型のアルカ・ノイズである。

 

「さて、もうそろそろ来る頃だろうな。」

 

 まるで装者か来るのが楽しみにしているかのように、アルベルトは期待を膨らませていた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 アルカ・ノイズの出現区域に到着した響、翼、クリスの三人。大群の前なれど、今更アルカ・ノイズを恐れる三人ではない。

 

Balwisyall nescell gungnir tron……

 

 響が起動詠唱を唄ってガングニールのギアを纏うと、翼とクリスも続き、各々のギアを纏ってアルカ・ノイズの群れに攻め込む。そして同じタイミングでバイデントの黒槍と白槍がアルカ・ノイズを貫いた。

 

「本当に姉ちゃんが……!」

 

 クリスの頭上を飛び越え、地面に刺さった黒槍と白槍を手に取った瑠璃はそのまま白兵戦に参加する。

 

「無茶をするなよ、瑠璃!」

「うん!」

 

 翼の忠告に頷きながら、瑠璃は二本の槍でアルカ・ノイズを蹴散らしていく。アルカ・ノイズが相手では如何に数が多かろうが、苦戦することはない。だがバイデントのベッドギアと連結されているバイザーが捉えた反応はどれもアルカ・ノイズのみで輪はおろか、錬金術師の反応は見られない。

 

 ビルの屋上から見下ろしていたパヴァリアの錬金術師達。

 

「想定内、だろう?」

「ええ。」

 

 サンジェルマンが筒のダイヤルのロックを解除させると、中から三つ入っている召喚石のうち、真ん中の石を手に

 

「その力、見せてもらいましょう。」

 

 それを装者達が戦っている地上へと放り投げ、それが地面に落ちて割れた。バイデントのバイザーがその反応をキャッチした。

 

「あれは……!」

 

 割れた所から召喚された時に展開される陣がこれまでのものより一回り大きく見える。

 

「新手のお出ましだな!」

 

 いくら現れようがそれはアルカ・ノイズ。すぐに討ち取ってやろうと意気込むが、その新型アルカ・ノイズを中心に、宇宙空間を思わせる空を展開。装者達ごと一帯を広範囲に覆った。

 

「消えただとぉ?!」

「装者達の映像が捉えられません!」

「ギア搭載の集音器より、辛うじて音声を拾えます!」

 

 本部のモニターからは4人の姿が消えた様に映っていた。何が起きたのか解析しようにも、如何せん相手は新型アルカ・ノイズ。そのメカニズムの解析は困難を極める。

 

「さっきまで街中だったのに……!」

「みんな!周りを!」

 

 バイザーが反応をキャッチした先を向くとアルカ・ノイズの群れが装者達を囲うように集まってきた。いくら集まろうが所詮はアルカ・ノイズ。翼が刀を振り下ろし滅した……

 

「何っ?!」

 

 アルカ・ノイズに与えた斬撃の切り口が接合、元通りになった。瑠璃も黒槍でアルカ・ノイズを貫くが、アルカ・ノイズが消滅する際に散らす赤い塵、プリマ・マテリアが発生せず、槍を引き抜くとその風穴はまたたく間に塞がれた。

 

「どうして?!」

「全部通りやしねえのか?!」

 

 響の打撃、クリスもガトリング砲の弾丸も、今までなら通っていたはずの攻撃で塵にならない。

 

「まさかAnti LiNKER?!でも誰が……」

「いえ、各装者の適合係数に低減は見られません!」

 

 藤尭の推測は友里の報告と、別のモニターに表示されているバイタルによって否定される。4人の適合係数は一定を保っているということは、彼女達に異常はない。

 

「つまりこちらの攻撃力を下げる事なく、守りを固めているわけだな?」

 

 弦十郎は装者4人に通信を掛ける。たとえこの空間でも、通信は利くようだ。

 

『お前達、聞こえるか?!』

「お父さん、これは一体……?!」

『そこはアルカ・ノイズが作り出した、亜空間の檻と見て間違いない!』

「亜空間の檻……ですか?」

 

 ここでエルフナインが弦十郎の代わりに、新型アルカ・ノイズの解析情報を伝える。

 

『そこではアルカ・ノイズの位相差障壁がフラクタルに変化し、インパクトによる調律が阻害されています!』

 

 アルカ・ノイズは位相差障壁がノイズより弱体化しているが、ここではそれを強化されており、シンフォギアによる攻撃に耐えうる防御力を得ている。

 

「だったらドカーン!とパワーを上げてぶち抜けば!」

「防御力を崩す攻撃力を瞬間的に引き上げる機能……つまり……!」

「呪いの剣……抜き所だ!」

「「「「イグナイトモジュール 抜剣!!」」」」

 

 4人はそれぞれのギアコンバーター側面のウィング型スイッチを押して、コンバーターを外してそれを宙に投げると、外殻が逆三角形を表すように展開、開かれた内部からエネルギーの剣が出現する。そのままそれぞれの装者の胸に刺さると、ギアの白かった装甲が黒く染まり、禍々しくも荒々しい漆黒のギア、イグナイトモジュールとなった。

 4人は迫りくるアルカ・ノイズをそれぞれが持ちうる手で迎え撃つ。すると、先程のようには再生せずに消滅、プリマ・マテリアを撒き散らした。

 

(イグナイトの力でなら、守りをこじ開けられる。だが……!)

「こいつらに限りはあんのか?!」

「だけど抜剣した以上は…………っ!」

「姉ちゃん?!」

 

 身体中に襲い掛かる苦しみ、頭に流れるあの悪夢のヴィジョン。それが二重となって瑠璃に牙を向いた。

 本部のモニターでも瑠璃のバイタルが変化、警告を知らせるアラートが響く。

 

「バイデントの適合係数低下!このままではギアが強制解除されてしまいます!」

 

 弦十郎は低く声を唸らせる。ここまで順調だったにも関わらず、このタイミングで起きてしまった嫌な予感。

 さらにアルカ・ノイズが瑠璃を狙って攻撃を仕掛けてくる。だが瑠璃は身体に襲い掛かる苦痛に耐えながら、二本の槍の穂先から黒白のエネルギー波を放った。

 

【Shooting Comet:Twin Burst】

 

「苦しんでる暇はない……!イグナイトを纏った以上……時間を無駄には出来ない……!」

 

 イグナイトの稼働時間には限界がある。本部のモニターに表示されているカウントが0になった瞬間、如何なる状況であろうがギアは強制解除されてしまう。それは全員に言える事である。このままではタイムリミットを迎えてしまう。

 だがここで、エルフナインは新型アルカ・ノイズの出現時を思い返すと、あることに気付いた。戦闘中の4人に呼び掛ける。 

 

『皆さん!そこから空間の中心地点を探れますか?!こちらで観測した空間の形状は半球!であれば、制御期間は中心にある可能性が高いと思われます!』

 

「中心地点……でも……!」

 

 バイデントに搭載された戦闘補助システム、それは通常時にのみ展開されるバイザーによって使えるものであり、起動中はそれがオミットされてしまい使えない。ここに来てそれが仇となってしまった。

 

「任せろ姉ちゃん!」

 

 するとクリスはガトリング砲を四方八方に乱射、着弾地点に弾丸が刺さる。

 

「クリスちゃん?!」

「それって……もしかして……!」

「ああ!こいつはマイクユニットと連動するスピーカーだ!空間内に反響する歌声をギアで拾うんだ!」

 

 クリスが告げた通り、着弾した弾丸はスピーカーへと姿を変えた。それをソナー代わりにして、自分達と敵の位置を把握すれば、この亜空間を生み出したアルカ・ノイズを特定出来る。

 クリスと最初に察した瑠璃はもちろんその意図を汲み取った二人はアルカ・ノイズへの攻撃を続ける。4人の歌を拾ったマイクがスピーカーを伝って空間内に反響、そこから生み出される音波を4人は戦いながら察知する。そして、その音波によって僅かに捉えた敵影。

 

「そこかああぁぁ!!」

 

 クリスは腰部のアーマーを展開させて小型のミサイルを一斉掃射する。

 

【MEGA DETH PARTY】

 

 ミサイルがその敵影に撃ち込まれると、不可視だったその姿、新型アルカ・ノイズが現した。

 二足歩行に見えるが両手であろう部位が地につき、四肢にくっついている菱形のような胴体をした大型のアルカ・ノイズだ。

 

「あれが、この空間を作り出しているアルカ・ノイズ……!」

「つまりあれを倒せば……!」

「立花、乗れ!」

「はい!」

 

 翼が構えた刀に響が乗ると、それが巨大な両刃剣となり、響の両サイドにカタパルトが形成される。さらに両刃剣の大きさに合わせた巨大な黒槍の柄を右足、白槍の柄を左足の装甲側面に連結させ、両刃剣の両サイドを外殻のように繋ぎ合わせ、翼の後ろに立つ。そしてその二本の槍の上にクリスの巨大ミサイルがそれぞれ設置され、一つのそれぞれのアームドギアを合わせたそれは一つのロケットとなる。

 

「勝機一瞬!この一撃に全てを賭けろ!」

 

 翼の号令と共に、後方にあるブースターが点火させると、クリスの意思でそれが発射される。カタパルトが発射され、撃ち出された響はそのスピードに乗せてアルカ・ノイズの胴体を蹴り込んで風穴を空けた。そして瑠璃は外殻のように連結させていた槍を左右一対の翼のように展開させると、その槍からもブースターを点火、勢いを増したアームドギアはアルカ・ノイズを一刀両断させた。

 

 

【QUATRITY RESONANCE】

 

 

 亜空間の発生源であった新型アルカ・ノイズを破壊した事で、元の街中へと帰還する事が出来た。だがまだ安堵は出来ない。アルベルトに攫われた輪の救出がまだだ。

 

『瑠璃以外は輪君の捜索、瑠璃はこのまま本部に帰投しろ!』

「了解……。」

 

 悔しいが戦闘中にバイタル異常が確認された。約束通り、撤退を受け入れる。だが親友を助け出せないという瑠璃の心情を察した翼は

 

「案ずるな。出水は必ず救う。お前はメディカルチェックを……」

「その必要はない。」

 

 背後から声が聞こえた。4人は振り返るとアルベルトが拍手して佇んでいた。だが小脇に抱えていたはずの輪がいない。

 

「テメェ!あいつを何処へやった?!」

「そう噛みつかない事だ。今の私は君達とやり合いに来たんじゃない。勝者へ褒美をやりに来たんだ。」

「その物言い……随分と甘く見られたものだな!」

 

 まだイグナイト状態でギアを保っている。のこのこと単独で現れた敵をこのまま逃がすわけにはいかない。だがアルベルトの口元は笑っており、余裕の態度を崩していない。

 

「君達の奮闘を讃え、出水輪は返してやろう。と言っても、既に解放しているがね。」

 

 真偽が定かではない事を敵から告げられ、簡単に信用できるわけがない。だが弦十郎に通信が掛かってきた。相手は輪だ。要救助者から通信が入り、一度目を丸くした弦十郎だが、すぐに平静となり、通信を繋げる。

 

「輪君?!無事か?!」

『んんぅー!んぅー!』

 

 どんな問いでも言葉にならない叫びが聞こえるだけだった。藤尭が通信場所を特定した。

 

「司令!その通信の発信源はリディアンのようです!」

「リディアンだと?!」

「アタシ達が迎えに行くデス!」

「行ってくる……!」

 

 リディアンに通う調と切歌がブリッジを飛び出すようにその足でリディアンに向かった。

 

 輪の無事を知った瑠璃は一旦は安堵した。だがそれでも目の前にいるのは敵であることに変わりはない。4人はそれぞれのアームドギアを構えるが、ここでタイムリミットを迎え、ギアが強制解除されてしまう。

 

「しまった……!」

「目の前に相対する敵がいるというのに……!」

 

 元の衣服に戻り、丸腰となった少女4人ならアルベルト一人でも容易である。だが一向に攻撃する素振りすら見られない。むしろ両手を上げて交戦する気なしとアピールしているみたいだった。

 

「言っただろう?今の私には君達とやり合うつもりはないと。それに、一度話をしようと思っていたのさ。雪音ルリ。」

 

 雪音。瑠璃の旧姓である。何故アルベルトがそれを知っているのかは分からない。瑠璃は旧姓で呼ばれた事に動揺し、他の三人も驚愕を露わにする。そして、アルベルトは……

 

「ルリ、一緒に来よう。我々の結社に。」

 

そう告げると、アルベルト右手を差し伸べた。

 

 




おまけ

翼「立花!乗れ!」

響「はい!って後ろの三人は何してるんですか?!」

クリス「発射スイッチを押す係と」

瑠璃「ロボットみたいに変形させる係と」

翼「立花の勇姿を目に焼き付ける係だ!」

クリス「そういう事でポチッとな」

瑠璃「私も飛んだ〜〜〜!!」

クリス「姉ちゃぁぁぁぁぁーーーん!!」
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