戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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前回のアルベルトさんのスカウトタイムからになります。

ちょっと区切り方が悪いかな……



交差する思惑

「雪音ルリ、一緒に来よう。我々の結社に。」

 

 新型アルカ・ノイズを倒した直後に単独で姿を現したアルベルトは、なんと瑠璃を結社への勧誘を始めた。態々瑠璃の旧姓である雪音と呼んで。

 

「貴様、妹を利用して何を企むか?!」

 

 何故敵であるシンフォギア装者を仲間に引き入れようとするのか、その目的も何なのか、何もかも理解出来ないこの状況、戸惑うのも無理はない。翼の問いに、アルベルトは続ける。

 

「彼女はバイデントを操り、人と聖遺物との絆を繋ぎ合わせて、これまでの困難を乗り越えた。これは錬金術のにも当てはまる。卑金属を貴金属に変えるように……ルリには聖遺物の力を引き出す才能がある。我々ならば、ルリの望みも叶えてやれる。私と一緒に来よう。そして共に、我々の悲願を果たそうじゃないか。」

 

 演説のように瑠璃に語りかける。説得するように優しく語りかけているのだろうが、アルベルトはバルベルデを恐怖に陥れた元凶であるパヴァリア光明結社の錬金術師である。優しく語られても信用できるわけがない。勧誘されて困惑した瑠璃だが、自分の望みはただ一つだ。

 

「私の望みは……皆と笑って過ごす、何気ない日常……!だから……」

「君が抱えている苦しみを、私が解放する事が出来ると言ってもかい?」

「え……?」

 

 その誘惑を前に動揺した。瑠璃を苦しめている悪夢。それに心が追い詰められている。身体ならともかく精神的な苦しみというのはそう簡単に消えるものではなく、自然に治るものではない。現に瑠璃はその悪夢がヴィジョンとなって断片的に流れるようになっている。その苦しみは尋常ではない。

 

「君の苦しみを私は知っている。君の痛み、苦しみを真に理解出来るのは私だけだ。私だけが君を地獄から解放出来る、唯一の理解者だ。」

 

 先程まで見せていた余裕の笑みとは一転、慈しみの眼差しを向け、瑠璃の心情に寄り添った言葉を並べる。普段の精神状態であれば迷わずに断る事が出来たはずだが、今の瑠璃の心を揺さぶるには十分だった。

 

「おい、さっきからごたごた回りくどい事をくっちゃべりやがって!そりゃあどういう意味だ?!」

 

 そこにクリスが、アルベルトを睨みつける。手を差し伸べていたアルベルトは、腕を降ろす。

 

「分かりやすく教えてやろう。君達ではルリは救えない。」

「救えない……?救えないってどういう……」

「そのままの意味さ。」

 

 響の疑問に、アルベルトはフッと笑いながら答える。だが従姉である翼と実の妹であるクリスはアルベルトの言い分に納得出来るわけがない。

 

「瑠璃の弱みに付け入る者の戯言など、信ずるに値しない!」

「ああ!姉ちゃんはあたしらが守ってやるんだ!お前にとやかく言われる筋合いはねえ!」

 

 二人は共に戦う仲間として、家族として瑠璃を守ると言い張り、一歩も譲らない。

 

「ハッ……甘すぎるな……。」

 

 そう吐き捨てると、アルベルトはズボンのポケットからテレポートジェムを足元に投げて割る。足元に転移用の陣が展開された。

 

「また会おうルリ。次に会う時は、君の失った記憶を返してあげる。」

「失った記憶……?待って!」

 

 瑠璃が呼び止めようとしたが、アルベルトは転移してしまい聞くことが出来なかった。

 この一連のやり取りは本部のモニターにも捉えており、弦十郎はアルベルトが最も危険な錬金術師であると結論づける。

 

(奴は……一体何を企んでいるんだ……?)

 

 同時にリディアンに出向いていた調から通信が入った。

 

『輪先輩を発見しました!保健室のロッカーに閉じ込められてました!』

『ぷはぁっ!助かった……!』

 

 ロープで身体を縛り、ガムテープで口を塞ぐといった錬金術師らしくない現代的な方法で輪は拘束されていた。いずれにせよ、犠牲者を出さずにアルカ・ノイズを倒した事で、一度は良しとするが、パヴァリア光明結社が何を企んでいるのかは依然として謎のままである。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ある少女は母を病で亡くした。

 

 奴隷の母は、上級貴族との弄れで女の子を産んだ。

 

 当選、父親である上級貴族に愛などなかった。

 

 故に母と共に奴隷として虐げられていた。

 

 父親に助けを求めても、ゴミ同然の扱いで捨てられた。

 

 何も得る事が出来ずに家に帰ると、母は病も重なって衰弱死していた。

 

 ある日、少女は上級貴族に文字を教わった。

 

 少女を弄ぶ為だったのだろうが、それが彼女を学ぶキッカケを与える事になった。

 

 少女は大人になり、錬金術師となった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 明かりが蝋燭の火一つしかない暗い密室にいるサンジェルマンとアルベルト。アルベルトが鞄から白銀のコンパクトケースを取り出し、それを開けるとハートの形を象った結晶が4つ、蝋燭の火の光が反射して煌めく。

 ラピス・フィロソフィカス、賢者の石とも呼ばれるそれは、錬金術師なら誰もが求める叡智の結晶。それをアルベルトが考案、サンジェルマンと共に構築して作り上げていた。

 

「預かっていた5つのラピスだ。あとは最終調整するだけだ。暫し時を要したが、君がチフォージュ・シャトーから持ち出した世界構造のデータもあって、完成に近づいた。あとは最終調整を完成だ。」

 

 サンジェルマンはラピスを一つ手に取る。蝋燭の火が反射して、ラピスの輝きにサンジェルマンの風貌が映る。

 

「ラピス……。錬金の技術は、支配に満ちた世の理を正すために……。」

 

 その瞳の奥に灯る決意、蝋燭の火よりも燃え上がっている。悲願を果たす為に、止まるわけにはいかないからだ。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 S.O.N.G.一行を乗せた装甲車は現在、長野県松代にある聖遺物研究機関『風鳴機関』へと向かっていた。

 風鳴機関は第二次世界大戦時に、旧陸軍が設立した特務室である。同盟国であったドイツの聖遺物研究機関アーネンエルベやヴリル協会といった多くの研究機関と通じて、聖遺物の研究を行ってきた。そこでは天羽々斬、ドイツからもたらされたネフシュタンの鎧やガングニールといった響達には馴染み深い聖遺物も、ここで研究されていた。 

 S.O.N.G.の前身である特異災害機動部二課よりもさらに前身の組織であり、現在でも国政に多大な影響力を持っている。

 

 装甲車には司令である弦十郎や装者全員や主要オペレーター陣もおり、装者の中には瑠璃も乗っている。

 

 

 新型アルカ・ノイズとの戦いが終わった後まで遡る。、エルフナインから呼び出しを受け、脳波に異常はないか検査を受けていた。検査着に着替え、診療台に寝ていた瑠璃は、測定が終わると、頭に着けられた機材を外して起き上がった。

 

「検査の結果、外傷もなく、脳波も異常ありませんでした。」

「そっか……。ありがとう、エルフナインちゃん。」

 

 瑠璃はエルフナインにお礼をするが、エルフナインの不安は晴れなかった。瑠璃が検査を受ける少し前に、バイデントに関する資料を確認していたのだ。そこに書かれていたのは、バイデントの呪いと呼ばれる事故の数々であり、主にドイツで起きたものだった。そして資料を読んでいくと、バイデントはフィーネに掠め取られたという報告が記されているのを見つけた。

 となるとF.I.S.に関係あるのでは考えたエルフナインだが、現在F.I.S.はアメリカ政府が存在を否定してしまった事で、F.I.S.て起きた全ての事案は無かった事にされてしまったのだ。そのせいでF.I.S.で取り扱った実験記録は殆ど抹消されてしまっていた為、所属していたマリア、切歌、調に話を聞くことにした。その結果、バイデントに関する不吉な情報を耳にした。

 

「バイデントの呪い……?」 

「ええ。バイデントを起動させたメルやその実験に関わっていた研究者の何人かは死亡したわ。」

「メルのお姉さんのジャンヌも、バイデントに関わったせいで心臓病を患ったデス。」

「もしかして、瑠璃先輩もバイデントの呪いに……?」

 

 調の推測に、その場にいた4人は嫌な予感を覚えた。確かに瑠璃はバイデントを意のままに操る事が出来ていた為に気にしていなかったが、瑠璃が苦しむその姿はメルの時と同じだった。つまり瑠璃がいつバイデントの呪いがここに来て瑠璃を蝕んでいるのではと推測された。だが瑠璃の場合、最初に起動して、苦しみだしてからの期間が長く、それ以外の者が纏ったという全ての記録は最初にまとってからまもなく死亡している。その違いが分かれば、分かればいいのだがいずれにせよこのままギアを使わせるのは危険だとエルフナインは判断した。

 弦十郎もその報告を受け、表向きは緊急時以外はギアを纏うのを控えるよう言い渡したが、実質ギアを使用する事を固く禁じたようなものだった。よって瑠璃は、風鳴機関ではマリア達と共に任務に当たることになった。

 

 風鳴機関に来た目的は、先日翼とマリアが持ち帰った資料、バルベルデドキュメントを解析する為だ。バルベルデドキュメントはドイツ軍が使用している高度に暗号化されているが故に、解析機にかける必要があった。それにより高度な厳戒態勢が敷かれたのだが、その為に近隣住民に退去命令を出さざるをえなかった。それはS.O.N.G.の意思ではなく、表舞台から姿を消しても尚、裏で絶大な影響力を持つ風鳴機関と二課の前司令だった風鳴訃堂の、『守るのは人ではなく国』というものからである。

 

 とはいえ、解析中をパヴァリア光明結社の錬金術師に襲撃されるという事も考えられる為、土地も人もそれから守る必要がある。問題なくギアを纏える響、翼、クリスは周辺地区への警戒任務へ、それ以外の装者は避難に遅れた住民の捜索という事になった。

 双眼鏡を持って捜索に当たる4人。切歌と調はまるで探検家のように進み、時には双眼鏡を使って逃げ遅れた住民がいないか探しており、端から見たら家族のように微笑ましく映っている。さしずめマリアが母親、瑠璃が姉で、切歌と調は双子の妹といった所であろう。

 

「9時の方向問題なし……!」

「12時の方向も……ああぁーー!」

 

 切歌が何かを発見し、大声で叫ぶと、三人は切歌はの方を向く。切歌は農園の方を指して

 

「あそこにいるデス!252!レッツラゴーデース!」

「あ、待って切歌ちゃん!あれって……」 

「早くここから離れて……て怖っ!!人じゃないデスよぉ?!」 

 

 切歌が見つけたものを、瑠璃は双眼鏡を使わずに遠目からでも確認出来た。元気よく向かった切歌を制止しようとしたが、既に遅かった。

 

「最近の案山子はよく出来てるから……。」

 

 調も切歌に呆れながら駆け寄る。瑠璃もこのやり取りには苦笑いを浮かべるが、暗い表情になっているマリアに気付いた。

 

「マリアさんどうかしましたか?」

「いえ……。ただ……LiNKERの補助がない私達に出来るのはこれくらいと考えるとね……。あ、ごめんなさい。これじゃ……当てつけみたいに聞こえてしまうわね……。」

 

 瑠璃はLiNKERが無くてもギアを纏う事が出来るが、ギアの呪いと悪夢という2つの懸念がある。故に力はあっても戦う事ができない。故にギアがあるのに戦えないというもどかしさを理解出来る。

 

「いえ……私も皆と同じですから。ただ……それでもみんなの役に立てるよう、今出来る事をしましょう。ギアだけが全てじゃないんですから。」

「そうデスよ!今は全力で見回りをするのデス!」

「とは言っても力みすぎて空回りしないようにね?」

 

 先程の不注意もあるので、瑠璃は切歌に注意した。

 

「了解デース!よーし!任務再開デース!」

「切ちゃん後ろ!」

 

 後ろも見ずに進行方向へと駆出そうとした時、人影に気付かずにぶつかってしまった。その人は農園の持ち主であるおばあさんであり、ぶつかった時に背負っていた籠から真っ赤に熟したトマトが数個落ちてしまっている。

 切歌と調、瑠璃は慌てておばあさんに駆け寄り、膝をつく。

 

「だ、大丈夫ですか?!」

「ごめんなさいデス!」

「いやいや、こっちこそすまないねえ。」

 

 切歌の不注意だというのに、おばあさんは優しい笑顔で許してくれた。

 

「政府からの退去指示が出ています。急いでここを離れてください。」 

「はいはい。そうじゃね。けど、トマトが最後の収穫の時期を迎えていてねぇ。」 

 

 マリアが退避の勧告を促すが、おばあさんは籠を降ろすと、トマトを両手に掴んで出した。その大きさと見事に真っ赤に熟されたトマトに切歌と調は感動している。

 

 

「わぁ……!」

「美味しそうデス!」

「美味しいよぉ。食べてごらん。」

 

 おばあさんからトマトを受け取った二人は、一口かぶりついた。

 

「ん〜!美味しいデェス!調も食べるデスよぉ!」

「本当だ……!近所のスーパーのとは違う!」

「そこのお嬢さんも、一つどうぞ。」

「あ、はい。いただきます。」

 

 瑠璃もおばあさんからトマトを受け取って一口齧った。すると、瑠璃は目を見開いて

 

「美味しい……!野菜の独特な臭みが全然なくて、それでいて甘みがぎゅっと閉じ込められていて……!こんな美味しいトマト初めてです!」

 

 思わず涙が出そうになる程に感動していた。

 

「そうじゃろう。丹精込めて育てたトマトじゃからなぁ。」

 

 まるで孫のように可愛がってくれるおばあさんだが、マリアはこの状況が一転して危険になる事を危惧していた。

 

「あ、あのねお母さん……」 

「きゃはぁ〜ん♪見ぃつっけた〜!」 

 

 その嫌な予感は的中した。パヴァリア光明結社の錬金術師、カリオストロが急襲して来た。

 

 




おまけ 輪救助隊

切歌「忘れ物を取りに来たと言って何とか通してもらえたデスけど……夜の学校ってこんなに恐いデスか?!」
調「大丈夫だよ切歌ちゃん。オバケなんていないよ。」
切歌「で、で、デスよね!オバケなんて……」

ガシャン

切歌「デエエェェェーース!」
調「待って切ちゃん!」
切歌「やっぱりいるデス!オバケは実在するんデ……」

目の前に人体模型

切歌「デデデデエエェェェーー!!調ぇぇーー!!助けてほしいデエエェェェーース!」

ガタンガタンとロッカーから物音

切歌「ふぇ……?な、何デスかぁ?もう嫌デスよぉ……!」

ガタン!ガタン!むー!むー!

切歌「だ、誰かいるデスか?人デスよね?開けるデスよ?」

ロッカーを開けて懐中電灯を下から照らすと思い切り目を見開いた女がいた。

切歌「デエエェェェーース!!」

バタッ

調「切ちゃん?!大丈夫?!って輪先輩!」
輪「むー!むー!」

後日

輪「やっほー切歌!」
切歌「デデデ!こないだの幽霊デス!」
輪「誰が幽霊じゃ!」

輪が幽霊と誤認するようになり、しばらくまともに顔が見られなかったとか。
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