申し訳ありません。
マリアとエルフナインがLiNKERの最後のピースを掴む為に装置で眠っている頃、他の装者達はやる事が無い為、未来と合流して外へ出ていた。この日、公園には多くの出店が並んでおり、装者達以外にも多くの客が足を運んでいる。
そんな中、切歌は後悔している。手にしているクレープ、期間限定のチョコ明太子味クレープを購入したのだ。チョコレートがけポテトチップの甘じょっぱさに発想を店主が得た事で作られたものです博多直送のふっくら明太子を一腹、まるまると贅沢に使っているらしい。
しかし、その見た目と未知の味という先入観があり、そんなゲテモノを買う人は少ないようだ。切歌はマリアとエルフナインの無事とLiNKER完成の願掛けで購入したのだが、その勇気が揺らぎつつある。
「切ちゃん、何でそんなの買っちゃったの……?」
「お、思わず目についちゃったんデス!うぐぅ……。」
「チョコ明太子味なんて大冒険するから……。」
「アタシのおごりを残すなよ、常識人。」
「これは願掛けなんデス!全部食べたら、マリアとエルフナインの挑戦は、きっと上手くいくデス!」
切歌は揺らぎつつあった勇気を振り絞って一口かぶりついた。そこにクリスのスマホに着信が入った。相手は小夜だった。
「おう。どうしたんだ?はぁっ?!あいつが?!」
急に大声で驚愕して立ち上がったクリスに、皆がクリスを方を向いて驚く。
「そうなんよ。輪が車に轢かれたって聞いてな。うん、そんで慌てて駆けつけてな、今病院におるんけど、検査も終わって何処も異常なかったんや。けんど……さっきから瑠璃ちゃんに電話しとるんやけど繋がらないんよ。クリスちゃん何か知らへん?」
「あ……いや、何でもねえぞ!姉ちゃんならいる!大丈夫だ!何かケータイ忘れたみたいでな!」
瑠璃が入院している事を小夜は知らない。輪の事もある為、小夜にこれ以上心配させまいと嘘をついた。
「あー。瑠璃ちゃんも案外おっちょこちょいやな〜。そんなら瑠璃ちゃんにも伝えといてな〜。」
「あ、ああ。あたしもそっちに行くから。教えてくれてありがとな。」
通話を切る時、クリスは暗い表情で「あいつ……」と呟いた。
「どうしたのクリスちゃん?」
「ああ……あのパパラッチの姉貴からな……」
輪が病院へ運ばれた事を教えた同じタイミングで建物のディスプレイに映っているニュース、それはバルベルデで右足を失ったステファンが来日して、最新の義足をつける手術を受けるというものだった。
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病院へと緊急搬送された輪の検査の結果、何処も異常や怪我は無かった。念の為経過観察という形で今日は入院という事になった。瑠無も付き添いで救急車に乗り、は知らせを受けて駆けつけた小夜と合流、検査が終わると病室に入り面会していた。小夜は現在クリスと連絡を取る為に病室から外しており、輪と瑠無の二人きりである。
「にしても本当に良かったわ。何処も異常がなくて。」
「そ、そうですね!アハハハ……。」
無傷で生きているだけでもラッキーだというのに、それを素直に喜べなかった。車に轢かれそうになる寸前、輪の手から展開されたバリアが頭から離れない。一体あれは何なのか?今まであんな現象は起きた事がない。誰かが守ってくれたという線も考えたが、知り合いに装者はいても、バリアを使える人はいない。自分は一体どうしてしまったのか?考えても結論が出ない。
「けど、もう少し自分を大事にしなさい。もしかしたら、死んでたのかもしれないんだから。」
「はい……気をつけます。」
子供を助けたとはいえ、自分が犠牲になろうとするのは褒められたことではない。もし自分が死んだら小夜を悲しませる事になる。瑠無に咎められ、現に軽くお辞儀をする。
「でも、その勇気は褒めてあげる 」
そう言うと、瑠無は白衣の内ポケットを弄る。手を出すと、何か持っている。手を開かせると、ハートの結晶を象ったペンダントがあった。
「それは……?」
「日本じゃあ厄除けって言うんだっけ……?そのお守りみたいなものよ。あなたを見てると、危なっかしく感じるから、あなたにあげる。」
「は、はい……ありがとうございます……。」
ハートの結晶が放つ煌めきが、輪の心を奪う。
「綺麗……。」
「でしょう?大事にしなさい。」
そう言うと瑠無はペンダントを輪の首に掛けてあげた。すると、瑠無は何か思い出したかのように輪に問う。
「そう言えば、風鳴さんもこの病院に?」
「はい。502号室です。あ、でも面会はクリスがいないと出来ませんよ。」
「あ……そっか。ならやめておきましょうか。じゃあ私はこれで帰るわね。お姉さんによろしくって伝えておいて。」
「はい。ありがとうございました。」
瑠無は日傘を手に病室から出て行った。一人になった輪はネックレスに飾られているハートの結晶に触れて、それを眺めていた。
一方小夜は病院の外でクリスへの連絡を終えると、中へと戻り、輪がいる病室へと向かう。エレベーターの上ボタンを押して、エレベーターを待っている。
(にしてもクリスちゃん、嘘つくの下手やなぁ。あれじゃあ瑠璃ちゃんに何かありましたよ〜って言ってるようなもんや。)
クリスの嘘はあっさりと看破されてい。元々クリスが嘘をつくのは苦手であり、平気で人を騙すような事が出来ないのを知っている。小悪魔美人も繊細な性格な女の子にしつこく問い詰めるような鬼畜の所業はしない。
エレベーターが到着を知らせる音が鳴り、ドアが開いた。それに乗ろうとした時、警報が病院内にけたたましく響いた。
「何や?!」
アルカ・ノイズの出現。本部のモニターが敵影を捉えていた。これまでの亜空間型ものでもない、8つの首を持つ八岐大蛇を思わせる姿をした新型の巨大アルカ・ノイズだ。本部から通信で指令を受けた装者達は、それぞれ行動に移す。
「分かりました!すぐヘリの降下地点に向かいます!」
「もたもたは後だ!行くぞ!」
「私達は本部に!」
「マリア達の様子が気になるデス!」
残りのクレープを一口で食べきった切歌は調と共に本部へと走る。
「未来も、学校のシェルターに避難してて!」
「響!」
響もクリスと共にヘリ降下地点へ向かおうとした時、未来に呼び止められる。未来は響が何かに悩んでいるのが分かっており、故に心配していたのだ。
「誰だって、譲れない思いを抱えてる。だからって、勝てない理由になんてならない。」
「勝たなくてもいいよ。」
未来の言葉に、響は振り返った。
「だけど絶対に、負けないで。」
サンジェルマン達の理想、人類の解放。それは私利私欲でさない、決して正義に悖るものではない。だがサンジェルマンに勝ったら、サンジェルマンが掲げる理想を潰してしまう。
だが未来が贈ってくれた言葉に、響はその迷いを振り切ることが出来た。
「私の胸には歌がある!」
笑顔が戻った響は、戦場へと向かった。
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病院で避難警報が鳴り、医師や看護師達が患者達の安全を確保する為にシェルターへ誘導、中には患者を乗せた車椅子を押している。病院という事もあり、避難経路を争って暴力を振るう者はおらず、患者もスムーズに避難出来ている。ただ一人、輪は避難の流れに逆らって502号室へと目指していた。その病室には瑠璃がいる。
今の瑠璃はクリス以外の人間の事を忘れてしまっており、心を開いていない。当然親友である輪の事も忘れてしまっている。もしかしたら、クリスがいなくて怯るかもしれないし、暴れ回るかもしれない。それでも瑠璃を救いたい。
魔法少女事変でS.O.N.G.を裏切って、心無いことを言ったにも関わらず、瑠璃は最後まで見捨てないでくれた。親友だと言ってくれた。一緒に戦ってくれた。今度は自分が瑠璃を救うと決めた。何があっても、瑠璃を守る。その思いを胸に秘め、病室へと向かって走る。だが5階まで駆け上がり廊下を走ろうとした時、妙に静かである事に違和感を覚える。
「誰もいない……?!」
患者も看護師も誰一人いない。4階までは避難の為に騒がしかったにも関わらず、5階だけはその様子はない。既に避難を終えたのか?輪は思考を巡らせるが、結論は出ない。すぐに瑠璃のいる502号室を目指す。
502号室に辿り着いた輪は病室の扉を開く。
「瑠璃!だいじょ……」
扉を開けた先にいたのは、眠っている瑠璃と
「おう、輪。」
黒い日傘を持っているクリスがいた。
おまけ
小夜「うち何でこんなに出番少ないんや?もうちっと頂戴な〜!」
創世「そーだそーだ!」
詩織「雇用待遇の改善を要求します!」
弓美「やんややんやー!」
セレナ「それ、私の前で言えますか?」
(しーん……)
小夜「あはは……何か、ごめんな。」