戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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前回、何故病院にクリスがいるのか?その答えが明らかになります。


蒼き錬金術師 アルベルト

 LiNKER完成の最後のピースを見つける為に、マリアの記憶領域に入ったエルフナイン。その場所はかつてF.I.S.の『白い孤児院』と呼ばれた場所だった。そこで目にしたのは

 

「早く飲みなさい!」

 

 幼きマリアとセレナに命令するようにLiNKERを飲ませ、グズグズする子供に容赦なく鞭打つナスターシャ。この時は眼帯もしておらず、二本の足で歩く事ができた。

 白い孤児院での訓練の光景を観察するもLiNKERの完成に至るピースは見つからないばかりか、訓練の過酷さに、エルフナインも怯んでいる。

 すると、今度は荒れ果てた街に転移したかのように場所が変わった。ここは何処なのか、辺りを見回すと、なんと周囲にノイズが群がっていた。身の危険を感じたエルフナインはすぐに走る。万が一ここで死ぬような事があれば、現実世界のエルフナインは二度と目を覚ます事はない。LiNKERの完成の為にここで死ぬわけにはいかない。だがノイズは自身達の機能に従い、どこまでもエルフナインを追い掛ける。

 しかも運の悪い事に足が瓦礫に躓いてしまい、転倒してしまう。走る足が止まってしまったことで、ノイズ達に追いつかれそうになる。もはや駄目かと思われた。

 

 Seilen coffin airget-lamh tron……

 

 アガート・ラームの起動詠唱が聴こえると、エルフナインに迫った数体のノイズが斬り刻まれ、黒い塊となって散った。ギアを纏ったマリアが、エルフナインを背に降り立った。

 

「マリアさん……!」

「いくら相手がエルフナインでも、思い出を見られるのはちょっと照れくさいわね。」

 

 振り向くとマリアはその表情は少し照れくさそうにしているが、そこにいるのが今のマリアなのか確かめるべく問う。

 

「あの……いつの記憶の……どのマリアさんですか?」

「一緒に戦うって約束したばかりでしょう?この場に意識を共有するのなら、いるのはあなただけじゃない。私の中で、私が暴れて何が悪い!」

 

 つまり目の前にいるマリアは、記憶の中のマリアではなく、本物のマリアの意識である。マリアはノイズに向き直ると短剣を構えた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 八岐大蛇の如く、8つの頭を持つ巨大ドラゴン型のアルカ・ノイズの口と身体から小型のアルカ・ノイズが生み出され、地上に降り立つと進攻を開始する。

 

 本部のヘリに搭乗した響とクリスは、先に乗っていた翼と合流すると上昇したヘリが上空へ飛んだ。降下ポイントまで飛ぶと、扉を開けた響がヘリから飛び降りた。

 

 Balwisyall nescell gungnir tron……

 

 起動詠唱を唄った響、翼、クリスはそれぞれのギアを纏う。クリスが放った3発のミサイルの上に、それぞれ乗る。

 

「気になるのは錬金術師の出方だ。抜剣を控え、イグナイト抜きで迎え撃つぞ!」

「何のつもりか知らねえが、企んだ相手に遅れはとらねぇ!」

 

 クリス達を撃ち落とさんと飛行型のアルカ・ノイズが襲い掛かるが、アームドギアをガトリング砲へと可変させ、その砲門から弾丸を乱射する。

 

【BILLION MAIDEN】

 

 弾丸に貫かれた飛行型のアルカ・ノイズはプリマ・マテリアを撒き散らして消滅する。数体はその弾丸を避けるが、響がその個体を粉砕する。

 

「この身を防人たらしめるのは!血よりも熱き心意気!」

 

 翼はミサイルから飛翔、そのまま母艦型のアルカ・ノイズにぶつけさせた。宙を舞ったまま脚部のブレードのスラスターを点火させると高速回転、アルカ・ノイズを両断する。

 

【逆羅刹】

 

 足場になるミサイルを失った翼は、響が乗るミサイルの後部へと乗り移った。

 だがドラゴン型のアルカ・ノイズの身体から小型の個体を生み出す為に、いくら倒してもまた生み出されてしまう。これではキリがない。

 

「こうも奴らをうじゃつかせてるのは、あいつの仕業か!」

「つまりは狙いどころ!」

「ぶっ放すタイミングはこっちで!トリガーは翼さんに!」

 

 響と翼はミサイルから飛び降り、ガングニールの右腕のバンカーユニットを展開、天羽々斬の刀を斬馬刀のごとく大型へと変形させる。

 

「目にものを見せる!」

 

 刀を振り下ろし、拳を振り抜く。ドラゴン型のアルカ・ノイズの身体は4つに割れた。

 

「そしてあたしは、片付けられる女だぁぁ!!」

 

 クリスが12本の巨大ミサイルを展開、ドラゴン型アルカ・ノイズに向けて一斉掃射する。

 

【MEGA DETH INFINITY】 

 

 全弾直撃。ドラゴン型アルカ・ノイズは悲鳴をあげ、プリマ・マテリアが舞うかと思われた。三人は目の前の光景に驚愕した。

 

「まさか?!仕損じたのか?!」 

 

 なんとドラゴン型の身体が再生したのだ。さらに一体だったドラゴン型が3体に分裂、サイズこそ1体だった時より下回っているが、それぞれ異なる方向へと散らばって行った。だが分裂しても、それぞれ小型のアルカ・ノイズを生み出す力は健在だ。このままでは広範囲に渡って犠牲者を出してしまう。

 

「これ以上、みんなを巻き込むわけには!」

 

 三人は各地へと散ったドラゴン型の首の後を追う。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 502号室に入ると、クリスがいた事に戸惑う輪。避難警報が鳴った今、アルカ・ノイズを殲滅させるにはシンフォギアの力が必要だというのに、何故ここにいるのか理解出来なかった。

 

「クリス……あんた何で……」

「オッサンに言われたんだ。姉ちゃんの安全を確保してくれって。」

「オジサンが……?っていうかその日傘……」

 

 クリスの手にある日傘、瑠無が持っていたものと同じ黒い日傘。何故クリスが持っているのか問いただす。

 

「ああ。先生も来てたんだ。だけど急にどっかに行っちまってな。それよりも、ここは危ねえ。姉ちゃんをシェルターまで運ぶぞ。」

「う、うん。だけど看護師さんが……そうだ!小夜姉もいるんだ!すぐに……」

 

 すると予め持っていた通信端末から弦十郎から通信が入った。ここに来る前に、スマホと通信端末だけはポケットに入れてあったのだ。

 

「オジサン?!」

『輪君!今どこにいる?!』

「病院!クリスと一緒に瑠璃の病室にいるところ!」

『何?!クリス君とだと?!』

「え、どうかしたの?」

『クリス君は今アルカ・ノイズの対処に当たっている!』

 

 クリスはアルカ・ノイズの対応に当たっている。じゃあ今ここにいるクリスは一体何者なのか?不審に思った輪は振り返ると驚愕した。そこにいたのは、クリスの姿ではなかった。

  

「すぐに緒川を向かわせる!君は……」

 

 逃げろ、と伝える前に通信が切断された。

 通信端末が日傘から分離させた黒い杖によって破壊された。その杖にはハートの結晶が象られている。手にしているのは、先程までクリスの姿をしていた……

 

「ミラー……先生……?」

「ありがとう出水さん。瑠璃のいる所まで案内してくれて。」

「案内……まさか……?!」

 

 瑠無が瑠璃達が敵対している錬金術師であるとすぐに勘付いた。知らなかったとはいえ、自分がみすみす瑠璃の居所を敵に喋っていた事に気付き、その顔は青ざめている。

 

(妹の方もお転婆だなぁ……)

 

「あっ……そう言えばあの時……!」

 

 輪は瑠無がクリスの事を妹と言っていたのを思い出していた。瑠璃とクリスが双子である事を知るのはほんの一握り。だが誰から聞いたわけでもないのに、あの時走っていったクリスを双子である事をまるで最初から知っているかのように呟いていた。

 もし初めから瑠璃の事を知っているのなら、瑠璃の過去を知っているのではないのかと推測した。

 

「まさか瑠璃の心を壊したのは……ミラー先生なの?!」

「私は思い出を返しただけさ。ああそうか……。君達には、そう名乗っていたな。」

 

 不敵な笑みを浮かべた瑠無の身体に光が包まれた。その眩さに目を晦ます輪だが、次第に光が消え、視界が利くようになった。だが目の前の光景に、輪は驚愕した。瑠無の姿が再び変化したからだ。髪型は変わってないものの、金色から黒い髪へ、赤かった瞳は藍色へと変化していた。さらに白衣だったのが、タンクトップ型のワインレッドのジャケット、藍色のズボン。あの時は仮面を着けていた為、顔までは分からなかったが、その服装には見覚えがあった。

 

「あんたは……!」

 

 優しかった瑠無・カノン・ミラーはもうどこにもいない。何故ならその正体は

 

「改めて名乗っておこうか。私の名は……」

 

 

 パヴァリア光明結社の錬金術師、アルベルトだ。

 

 

 




アルベルト

パヴァリア光明結社に属する錬金術師で、瑠無・カノン・ミラーの正体。
人前では常に笑みを浮かべ、余裕を崩さぬ態度でいる。

分解よりも組み立てる事を得意とし、亜空間型アルカ・ノイズ、ラピス・フィロソフィカスのファウストローブの基礎をサンジェルマンと共に研究していた。
また過去にアーネンエルベにも潜り込んでいた事もあり、異端技術や聖遺物に関する知識は他の追随を許さない。
またキャロルの思い出を転送する技の理論を自分の手で研究し、自分の技にする事も出来た。
ルリの忌まわしき記憶を保持していた事もあり、瑠璃の地獄の6年間の結末を唯一知る人物。
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