戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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気合入れて頑張った結果、長くなりました。




相容れない

 戦艦に降り立った切歌と調が母艦型のアルカ・ノイズを両断し、残るはパヴァリアの錬金術師である。プレラーティが調に錬金術の炎を両手から放つが、そこに横から切歌が切り込む。プレラーティが後退すると、今度はカリオストロが切歌に襲い掛かる。その両掌底には光弾が形成され、それを懐へ打ち込もうとするが、大鎌の柄に阻まれ鍔迫り合いとなる。

 

「結局お薬頼りのくせして!」

「LiNKERを、ただの薬と思わないで欲しいデス!」

「みんなの思いが完成させた絆で!」

 

 調がヨーヨーを投擲する。カエルのぬいぐるみを介したバリアでそれを防ぎ、今度はプレラーティが氷の錬金術を用いて氷柱を生成、それを放った。調はそれを回避して接近すると、スカートを鋸に可変させてそのまま身体ごと回転する。

 

【Δ式・艶殺アクセル】

 

 プレラーティはバリアで受け止めるが、その一撃が重いからか表情は芳しくない。カリオストロも鍔迫り合いに押し負け、さらにイガリマの肩部アーマーからアンカーが発射された。バリアを展開したが、破られて吹き飛ばされ、プレラーティの背中にぶつかる。

 

 共に飛び立った調と切歌は手を繋ぎ、それぞれの側部のアームから大型鋸と鎌の刃が展開され、それを合体させ

 

「きっと勝利を!」

「毟り取るデス!」

 

 カリオストロ、プレラーティに向けて急降下、飛び蹴りを放つ。その間にサンジェルマンが入り、巨大なバリアを展開、飛び蹴りを防ごうとするが、二人の飛び蹴りの威力が凄まじく、その防御を破った。さらにそのまま戦艦の装甲を貫き、戦艦は連鎖的に爆発を引き起こした。

 

 戦艦が墜落し、同時に切歌と調が地面に着地した。

 

「あいつらは……いたデス!」

 

 土煙に巻かれるが、その隙間から敵影を捉える。

 

「あいつは……!」

「ミラー先生……いや、アルベルト!」

 

 土煙が晴れるとラピスのファウストローブを纏ったアルベルトが姿を現した。正体が露見している事を判断したアルベルトは、仮面を捨てた。

 

「おや、既に顔が割れてしまっていたか。」

「ここに来る前に聞いたデスよ!よくもアタシ達を騙したデス!」

「瑠璃先輩を攫って……いったい、何が目的なの……?!」

 

 出撃する前、マリア、切歌、調は瑠璃がアルベルトに攫われた事、輪がアルベルトの攻撃を受け意識を失っているという報告を受けていた。さらに、映像に映し出されたアルベルトの素顔が、瑠無と合致した事から、瑠無の正体がアルベルトである事も把握していた。

 

「全ては悲願の為に……。」

「悲願……?」

「ふっ……愚かな……。」

 

 アルベルトが不敵な笑みを浮かべたのと同時に、二人の背後から銃声が聞こえた。

 

「その命、革命の礎に。」

「切ちゃん!」

 

 三人はラピスのファウストローブを纏っており、サンジェルマンが放った弾丸は、切歌の方へと向かう。背後から不意に放たれた弾丸に、切歌は反応出来ていなかった。

 だがその弾丸は、駆けつけた響の掌で防がれ、地面へと落ちた。

 

「間違ってる……命を礎だなんて、間違ってるよ!」

 

 革命は誰かの犠牲の上で成り立つ。しかし響は、その犠牲を良しとしない。故に真っ向から対峙する。

 だがパヴァリア側は4人に対し、今いる装者は3人。数の優位性ではサンジェルマン達の方が上だ。

 

「4対3の癖に」

「随分と勇ましいワケダ。」

「ん……?」

 

 サンジェルマンとアルベルトが空の方から何かが飛来しているのを勘付くと、4人はすぐさま跳躍して回避した。4人がいた場所には無数の赤いエネルギーの矢が降り注いだ。

 

「いいや、これで6対4だ!」

 

 クリス、翼、マリアが到着した。3人が降り立ち、6人は4人の錬金術師達と真っ向から対峙する。

 

「いい加減聞かせてもらおうか、パヴァリア光明結社。その目的を!」

「人を支配から解放するっていたあなた達は、一体何と戦っているの?!あなた達が何を望んでいるのかを教えて!本当に誰かのために戦っているのなら、私達は手を取り合える!」

「手を取るだと?傲慢な!」

 

 サンジェルマンが真っ向から否定した。

 

 

「我らは神の力をもってして、バラルの呪詛を解き放つ!」

「神の力で……バラルの呪詛をだと?!」

「月の遺跡を掌握する!」

 

 サンジェルマンの強い宣言に、装者達は大きく驚愕した。月遺跡は、装者達にとって因縁の深いものだった。

 

「人を人が力で蹂躙する不完全な世界秩序は、魂に刻まれたバラルの呪詛に起因する不和がもたらす結果だ。」

「不完全を改め、完全と正す事こそ、サンジェルマンの理想であり、パヴァリア光明結社の掲げる思想なのよ。」

「月遺跡の管理権限を上書いて人の手で制御するには、神と呼ばれた旧支配者に並ぶ力が必要なワケダ。」

「故に、バルベルデを始め各地で儀式を行って来た。」

 

 バラルの呪詛は月遺跡によって制御されている。かつてフィーネは、彼女が愛する者へと到達する為に、カ・ディンギルを用いて破壊しようとした。対するサンジェルマン達は月遺跡を支配。

 サンジェルマン達の意思は、人々を思う所では響達と似通う所があるが、決定的に違うのは、犠牲の有無だ。故にここに立ち、相対する装者と錬金術師は相容れない。

 

「だとしても!誰かを犠牲にしていい理由にはならない!」

「犠牲ではない!流れた血も失われた命も、革命の礎だ!」

 

 装者達に向けられたサンジェルマンの銃の銃口から弾丸が放たれた事で、戦陣が切られた。装者達と錬金術師達は散開、飛翔した翼が刀を大剣へと可変させた。剣と足部の装甲ののバーニアを点火させて急下降、その剣先はサンジェルマンに向けて放たれる。

 

【天ノ逆鱗】

 

 それを回避下サンジェルマンは翼に向けて弾丸を3発放つ。翼は巨大化させた剣を盾として防ごうとするが、その直前に弾丸が錬金術によって鋭利化、鋭くなったそれは刀身の守りを穿ち、その内の1発が翼のアーマーを破壊した。

 響が勇ましい叫びと共に接近を試みるも、サンジェルマンの弾丸が響の足元に打ち込まれ、そこから岩の塊が突出、響は跳躍してそれを回避する。

 

 カリオストロにはマリア、アルベルトにはクリスが交戦しているが、クリスはその中でも怒りを滲ませていた。

 

「テメェ……よくも姉ちゃんと輪を!!」

 

 自分達を欺き、瑠璃を攫い、輪を傷つけたアルベルトに憎悪と共にクロスボウの矢を連射。アルベルトは杖と錬金術を用いずともそれを軽やかに避け、クリスの懐まで近づき、杖の先端がクリスの鳩尾を突いた。

 

「くそぉっ……!余裕かますなぁ!!」

 

 アルベルトの余裕の態度、倒されてもその怒りは烈火の如く燃え上がる。ガトリング砲乱射と同時に腰部のアーマージャッキから無数の小型ミサイルを発射させる。

 

【MEGA DETH PARTY】

 

「ルリと違って、君は浅はかだな。」

 

 杖の先端から錬金術のバリアが展開。それらを全て防いだ。

 

「ただ怒りをぶつけ、囀る事しか出来ない君に、ルリを救えるものか。」

「ごちゃごちゃと……」

「君達はバイデントを呪われた魔槍へと堕とした。」

 

 バイデントの名が出た事で、クリスと別の錬金術師と対峙する元F.I.S.の装者達が反応した。何故それを出したのか、理由は分からないがその余裕の笑みの中に、微かに怒りが混在している。

 

「それが、君達が愚かである理由。相容れない理由。彼女を……っ!」

 

 アルベルトが装者達と対立する理由はカリオストロが放ち、マリアが防いだ光弾の流れ弾が目前に迫られた事で遮られた。クリスは跳躍して避けるが、アルベルトの姿を見て驚愕した。

 

「あれは……!」

 

 アルベルトの左掌から青色のバリアが展開された。そのバリアの形状が、今までの錬金術によるものとは全く異なるものだった。クリスにはそれが見覚えのある。

 

「おい……それって……」

 

 アルベルトが人差し指を立てて、それを自身の唇に近付けて笑みを浮かべた。『内密に』という意味のジェスチャーだ。

 

 さらにその流れ弾はサンジェルマンにも向かっていた。それを響と共に下段へと飛んだことで事なきを得た。土煙が立ち込める中、サンジェルマンが先に起き上がる。

 

「私達は……共に天を頂けない筈……。」

「だとしても、です……。」

 

 響も起き上がり、その手を伸ばした。しかし

 

「思いあがるな!」

 

 サンジェルマンはそれを振り払い、立ち上がる。

 

 

「明日を開く手は!いつだって怒りに握った拳だけだ!」

 

 響を見下ろし、言い切った。

 

「これ以上は無用な問答……!預けるぞ、シンフォギア!」

 

 相容れない二人の戦いは、サンジェルマンがテレポートジェムで転移した事で終了となった。

 

「ここぞで任務放棄って……どういうワケダ?サンジェルマン。」

「あーしのせい?!だったらめんご、鬼めんご!」

 

 突如の撤退に理解出来ないプレラーティ、口は軽くとも本当に申し訳なく思っているカリオストロも、テレポートジェムで転移した。後はアルベルトだけだ。

 

「ミラー……先生!」

 

 響に偽装の名を呼ばれて反応したアルベルトは、響の方を向く。

 

「どうして騙すような真似を……瑠璃さんを攫って、一体何をするつもりですか?!」

「悲願と言ったな。瑠璃を使って、月遺跡を掌握するつもりか?!」

 

 響と翼に問われたアルベルトは

 

「そんなものは序の口さ。私の悲願は……その先にある。」

 

 そう言うとアルベルトもテレポートジェムを放り投げ、地に割れると転移の魔法陣が、アルベルトを覆う。

 

「相対するその時まで、輝きを磨いておく事だ。それと……バイデントは預けたよ。」

 

 告げる事を告げたアルベルトは転移して姿を消した。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 港に停泊しているS.O.N.G.本部潜水艦のブリッジでは、パヴァリア光明結社の目的である月遺跡の掌握する事について解析していた。

 

「パヴァリア光明結社の目的は、月遺跡の掌握……。」 

「そのために必要とされる、通称神の力を、生命エネルギーにより練成しようとしていると。」

「仮にそうだとしても、響君の一撃で分解するほどの規模ではいくまい……。恐らくは、もっと巨大で強大な……。」

 

 そのモニターには、かつてバルベルデでサンジェルマン達が使役していたヨナルデパストーリが映し出されていた。あの時は響の一撃によって破壊されたが、再びそれが通ずるか、不透明なままだった。 

 

「その規模の生命エネルギー……いったいどこからどうやって……」

「まさかレイラインでは……!」

「何?!」

 

 かつて魔法少女事変の黒幕、キャロルが世界分解の為に用いたレイライン。それは大地に流れる、言わば地球の生命線であり血管。それを今度は、パヴァリア光明結社が利用しているのではと推測された。

 

「キャロルが世界の分解・解析に利用しようとしたレイライン。巡る地脈から、星の命をエネルギーとして取り出すことが出来れば……。」

「パヴァリア光明結社は、チフォージュ・シャトーの建造に関わっていた。関連性は大いにありそうですよ。」

「取り急ぎ、神社本庁を通じて各地のレイライン観測所を仰ぎます。」

「うむ……。後は装者たちの状況と、輪君だな……。」

 

 それとは他に、前者の装者達の問題が2点あった。1つ目は瑠璃がアルベルトに攫われた事だ。まさか身近にパヴァリア光明結社の錬金術師が紛れ込み、心が壊れた瑠璃を攫うなど予想出来なかった。

 

(瑠璃……!)

 

 最愛の娘が攫われた弦十郎の組んでいる腕には、力が入っている。それは彼の悔しさの表れである。クリスもたった一人の姉を失い、友を傷つけられた。その張本人を相手に成す術がなかった。その悔しさから自動販売機を殴りつけている。

 そしてもう一つ、完成されたLiNKERは無事に作用され、運用出来るが、ラピスのファウストローブの呪いを焼き払う作用に、イグナイトが封じられている事だ。イグナイトを使えば、ラピスの輝きによってイグナイトは強制的に解除されるだけでなく、焼き払った事によるダメージがのし掛かる。

 先程の戦いで、切歌と調がプレラーティに対して安易に抜剣してしまった事で、そのダメージがどれほどのものかを身をもって思い知らされた。

 装者達の心は晴れるどころか、さらにその心に影を落としていた。

 

 そして、後者の問題である輪についてだ。時を同じくして、アルベルトに倒され、メディカルルームに運ばれていた輪が目を覚ました。幸い大きな怪我はなかったのだが、突如の輪の首に掛けられていたネックレスの輝き。あれが高所から落ちる輪の命を救ったのだ。それが何の物なのか、現在エルフナインがラボで解析している。

 

「僕の力では、殆ど解析出来ない……けど、これは紛れもなく……!」

 

 どういうわけか、エルフナインをもってしても解析が困難であった。しかし、このネックレスに秘められたエネルギー、同じ錬金術師であるエルフナインはすぐに勘付いた。

 

「ラピス・フィロソフィカス……!」

 

 パヴァリア光明結社の保有するファウストローブと同じ名称、賢者の石と呼ばれるラピス・フィロソフィカスであった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 パヴァリア光明結社が拠点とするホテル、そのベッドに未だに目覚めない瑠璃が寝かされている。その寝顔をアルベルトが眺めている。

 

「その子の寝顔をそんなに眺めてどうしたの?」

 

 背後から不意に、カリオストロに呼びかけられる。

 

「いや……何でもないさ。」

 

 アルベルトはズボンのポケットからネックレスを出した。チェーン繋がれた黒い結晶の煌き。その妖しい光は、まるで星々のない闇夜を思わせる。

 

「それは……もしかしてアーネンエルベから頂戴したもの?」

「ああ……。これはその一部を使ったファウストローブ。尤もその原型のその一部である欠片は、シンフォギアに使われているが。」

「ふーん……。」

 

 アルベルトの笑みに、カリオストロは冷たい目で見ていた。それは仲間に対して向けているものではなく、疑うものだった。

 




アルベルトの悲願とは……。
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