星々が輝く夜空。ある神社にてパヴァリア光明結社の錬金術師達がある目的の為にここに訪れている。ただプレラーティは未だに完治しきれていない為、ホテルで眠ったままである。
「7つの惑星と、7つの音階。星空は、まるで音楽を奏でる譜面のようね!」
夜空を見上げるティキの目から、星空が投影されている。
「始めようか、開闢の儀式を……。」
アダムの合図で、サンジェルマンは自身の纏う衣服をはだけさせる。露わになった白い背中に、アダムが手を翳した。すると、サンジェルマンの背中には先程までなかった刻印が刻まれる。サンジェルマンがそれによる苦痛の表情浮かべ、うめき声をあげる。その痛々しい様子は、流石のカリオストロとアルベルトもこれには目を背けたくなる。
アダムがサンジェルマンの肩越しに
「そろそろ選ばなくてはね……捧げる命はどれなのか……。」
まるで脅すかのように小声で告げられた。アダムが立ち上がると、カリオストロとアルベルトの方に向く。
「さぁてシンフォギアだよ、気になるのは。」
「あーしが出るわ。儀式で動けない人と負傷者には、任せられないじゃない?」
「私も行こう。単独では……」
「アルベルトはプレラーティをお願い。それに、あの子の事もあるんでしょう?」
「カリオストロ……。」
カリオストロが小さく頷く。ならばこれ以上は何も言うまいと、アルベルトは目を閉じた。
「あるのかな、何か考えでも?」
「相手はお肌に悪いほどの強敵。もう嘘はつきたくなかったけど、搦手で行かせてもらうわ。」
カリオストロが取り出したのは亜空間型アルカ・ノイズの召喚石がが収められている筒だった。
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エルフナインのラボに集められた翼とクリスを除いた装者達。シンフォギアの改修が完了し、エルフナインが持つトレーの上には赤い結晶が4つある。
「これが……。」
「はい。急ごしらえですが、対消滅バリアシステムを組み込みました。」
「見た目に変化はないけれど……」
「これで賢者の石には負けないのデス!」
各装者達は、それぞれのギアを手に取り、それをマジマジとみる。調の言う通り、見た目に変化はない。
「ところで、翼とクリスは……?」
「お二人には先に渡しておきました。お知り合いに、会いに行くそうなので。」
マリアの問いにエルフナインが答えた。今、翼とクリスは帰国を目前とするソーニャとステファンに会いに行っている。東京駅の中にあるレストランで、三人は再会、翼は瑠璃の代理で来た。
「今日の夕方の便で帰るんだ。でもその前に、この事を伝えたかった。」
車椅子に乗っているステファンの右足は義足になっている。
「術後の経過も良いから、すぐにリハビリも始められるって。」
「そうか……。」
クリスの目に映る義足とステファンの笑顔。それが少し辛い。助ける為にとはいえ、彼の足を撃ち抜いた事に罪悪感が残っている。
「すまなかった。本当は、瑠璃も会いたがっていたが……」
「うん。ルリにも伝えたかったけど、入院中じゃ仕方ないね。」
「ああ……そうだな。」
瑠璃とクリスに代わって、翼が謝罪した。ソーニャとステファンには本当の事を言っていない。
「内戦の無い国ってのをもう少し見ていたかったけれど、姉ちゃんの帰りを待っている子達も多いからさ。」
「ん?」
「彼女は瑠璃と雪音のご両親の遺志を継ぎ、家や家族を失った子供たちを支援しているそうだ。」
「えっ……」
驚愕の表情でソーニャの方を見る。ソーニャがそんな事をしていたなんて思いもしなかったからだ。
(パパとママの遺志を継いで……。分かってた……ソーニャお姉ちゃんの所為じゃないって……。だけど……なのに……!)
クリスが意を決して何か言おうとしたが、突如発生した爆発によってそれは遮られてしまう。
「取り込み中だぞ?!」
破壊された窓と壁からアルカ・ノイズが侵入してきた。間違いなく錬金術師による攻撃。
「二人は早く非難を!」
「分かったわ!」
翼に促され、ソーニャは車椅子を押す。
「むしゃくしゃのぶつけ所だ!」
Killter ichaival tron……
クリスと翼は起動詠唱を唄い、ギアを纏うとアルカ・ノイズの対処を始める。跳躍したクリスはクロスボウで、矢を乱射させてアルカ・ノイズの群れを蜂の巣にし、中のアルカ・ノイズを殲滅させる。
だが外にもアルカ・ノイズは召喚されている。避難中の民間人に被害が出ないようここで殲滅させなければならない。だがそこにはファウストローブを纏ったカリオストロがいた。
「敵錬金術師とエンゲージ!ですが……」
「単騎での作戦行動……?!」
本部がキャッチした反応はカリオストロただ一人。それ以外の錬金術師の姿はなく、反応もない。何か罠でもあるのかと推測は立てられるが、カリオストロは本当に単騎で襲い掛かってきた。
だが正確には遠くのビルからアルベルトが戦いを静観していた。
「カリオストロ……君の勇姿を見届けさせてもらう。」
だが如何なる理由があっても、援護も救援もしないようだ。
「雪音!建物に敵を近づけさせるなッ!逃げ遅れた人たちがまだ……」
「分かってる!」
クリスがクロスボウの矢を連射させるが、軽やかに避けた上にクリスの背後に立っている。
「ちょこまかとぉ!」
背後に気付き、その矢をカリオストロに向けるが、その背には東京駅。今ここで撃って避けられれば逃げ遅れた民間人を巻き込みかねない。それを恐れたクリスは発射を躊躇った。
「っ……!」
「口調ほど悪い子じゃないのね?」
カリオストロが誂うとクリスが赤面するが、その隙を突くように光弾をガントレットから放つ。防御が間に合わず吹き飛ばされる。
「雪音!」
クリスの援護に向かおうとするがアルカ・ノイズがそうはさせまいと翼を包囲する。倒れたクリスにカリオストロが近づいてくる。
「嫌いじゃないけど殺しちゃおっと。」
だがそれは蛇腹剣の刃によって阻まれる。
「大丈夫、クリスちゃん?!」
「遅えんだよ馬鹿……!」
口ではそう言うが、顔は笑っていた。調と切歌が放った鋸と鎌の刃で翼を包囲していたアルカ・ノイズは殲滅、残るはカリオストロただ一人。
「すまない……月読、暁!」
「たまには私達だって!」
「そうデス!ここからが逆転劇デス!」
「そうね。逆転劇ここからよねぇ!」
するとカリオストロが筒からアルカ・ノイズの召喚石を2つばら撒いた。それは亜空間型アルカ・ノイズの召喚石。これにより翼と調、響と切歌の二組に分断され、亜空間へと飛ばされてしまう。
この場残ったのはクリスとマリアだけになった。
「紅刃シュルシャガナと、碧刃イガリマのユニゾン。プレラーティが身をもって教えてくれたの。気を付けるべきはこの二人って。」
カリオストロはザババのユニゾン封じの為に、切歌と調を分断するように亜空間型アルカ・ノイズを使ったのだ。
「そりゃまた随分と……」
「私達もナメられたものね……!」
ガントレットから光弾を8本放つと、クリスのクロスボウの矢がそれを相殺。その余波による土煙の中からマリアが飛び出し、カリオストロに接近した。
「この距離なら飛び道具は……!」
接近戦であれば、カリオストロの光弾よりも、マリアの斬撃方が早い。カリオストロが放つのが光弾出なければ。
「まさかの武闘派あああぁぁぁーーー!!」
アガート・ラームの短剣をしゃがんで避けた。さらに右手の拳に光弾を放つ時に使われるエネルギーを纏い、がら空きとなったマリアの腹部にアッパーが叩き込まれる。
これがカリオストロの本来の戦い方である。今まで弾幕のように放っていた光弾は、言うなれば本来の戦い方を知らせない為のブラフである。
「がぁっ!」
「マリア!」
だがカリオストロに懐に入り込まれ、ボディブローを食らい、駅の壁が崩れて中のレストランまで吹き飛ばされた。クリスは何とか起き上がろうとしたが
「まだこんなところに……?!」
ステファンの車椅子が瓦礫に挟まってしまった事で動けなくなっていたソーニャとステファンがまだ残っていた。
「ごめんね。巻き込んじゃって。すぐにまとめて始末してあげるから……。」
さらにカリオストロが両手の拳に光弾のエネルギーを纏って中へ入って来た。
「そうはさせ……くっ……!」
起き上がろうとするが、先程のダメージが大きかったが為に起き上がれなかった。隙だらけになっているのを見逃すカリオストロではない。万事休すかと思われた
「うおおおおぉぉぉーーーー!」
ステファンが咆哮と共に車椅子から立ち上がり、瓦礫と共に転がっていた鉄パイプを、義足で蹴り上げた。
「自棄のやっぱち?!」
自身に飛んできた鉄パイプを、カリオストロは弾き落としたが、それがクリスの反撃を許した。クロスボウの矢を放ち、カリオストロはそれを避ける為に距離を取って、外へと出た。
「何のつもりだ?!」
ステファンの方を向いて怒鳴るクリス。だが、ステファンはソーニャの手を借りて、何とか立っている状態でもそれに動じていない。むしろ真っ直ぐに向き合っている。
「クリスがあの時助けてくれたから!俺も今、クリスを助けられた!失くした足は……過去はどうしたって変えられない!だけどこの瞬間は変えられる!きっと未来だって!」
「ステファン……。」
「姉ちゃんもクリスも、変えられない過去に囚われてばかりだ!」
ステファンは足を失った事を一度も嘆いてはいない。それはこれからもそんな事はしない。だがソーニャとクリスは、自分が決断した選択や結果に囚われたままだった。だからこそステファンは二人に訴えかけた。
「俺はこの足で踏み出した!姉ちゃんとクリスは?」
ステファンの手の上に、ソーニャとクリスの手が重なり合う。ステファンの思いが届いたのだ。
「これだけ発破かけられて、いつまでも足をすくませてるわけにはいかねえじゃねえか!」
クリスは迷いを断ち切った。その様子を、アルベルトは錬金術を使って映していた。
「この瞬間を……未来を変えられる……か。」
まるで誰かの事を言っているのか、アルベルトはポツリと呟いた。
外ではマリアとカリオストロが単騎で交戦していたが、カリオストロが放つ強力な拳を捌ききれずくらってしまう。
「トドメよぉ!っ?!」
マリアに接近しようとした時、クロスボウの矢が撃ち込まれた。放ったクリスは、マリアを背にカリオストロと対峙する。
「遅い!……だけど良い顔してるから許す!」
今のクリスの顔に迷いはない、晴れやかななものだった。
「さっきのアレ、この本番にぶつけられるか?」
「良いわよ。そういうの嫌いじゃない!」
クリスの問いにマリアは立ち上がりながら返す。
「何をごちゃごちゃとおぉぉ!」
指で大きなハートをなぞり、そこに投げキッスを投げた。
「そおおぉぉ……りゃあああぁっ!!」
その投げキッスのハートを殴りつけた。それがビームとなってクリスとマリアに放たれた。それが直撃し、爆炎が巻き上がった。自身の勝利を確信したカリオストロ……
「んっ?!」
だったが、土煙が晴れていくと二人の姿は倒れていない。それどころか煙が完全に晴れ、ハッキリとその姿を捉えると、二人はイグナイトを起動させている。
「イグナイト?!ラピス・フィロソフィカスの輝きを受けて、どうして?!」
ダインスレイフの呪いにとってラピスの輝きは天敵。少しでも触れればその作用が発動し、大きなダメージとなるはずであるが、それが全く見られない。カリオストロは思わぬ事態に驚愕を隠せない。
よく見るとそのギアのコンバーターの中心に一筋の輝きを放っていた。
「昨日までのシンフォギアと思うなよ!」
カリオストロの拳が鋼鉄のグローブに包まれ、虚空に徒手空拳を放つと、それがエネルギー波のように放たれる。二人はそれを避けながら接近し、同時に矢と蛇腹剣の刃が迫る。カリオストロはそれを捌くが、連続で打ち込まれているこの攻撃の威力が上がっていることに気付く。
(これってユニゾン?!ザババの刃だけじゃないのぉ?!)
イグナイトが解除されないだけでも驚きだった上に、イチイバルとアガート・ラーム、何の関連性のない聖遺物同士のユニゾンによるフォニックゲイン上昇。前者はエルフナイン、後者は弦十郎による考案のものだった。
ザババのユニゾンは強力なものであるが故に、切歌と調が分断される事を想定していた。その為に誰と組んでもユニゾン出来るよう心を合わせる訓練わされていたのだ。
(ラピスの輝きを封じた上でユニゾン……!こんなの、サンジェルマン達にやらせるわけには……!)
「やらせるわけにはあああぁぁぁ!!」
両手の拳に膨大なエネルギーを纏った。その力は目視でも分かる。
「高質量のエネルギー……まさか、相打ち覚悟で?!」
「あーしの魅力は……爆発寸前!!」
左右のグローブを連結させて、上空へと跳躍した。マリアの後方に立つクリスが、腰部のアーマーを2つのロケットブースターと左右一対のウィングアーマーへと変形、マリアの短剣が巨大化し、一つの戦闘機を形成させる。
【Change ✝he Future】
ロケットエンジンを点火させてカリオストロに突っ込む。上空で両者は何度もぶつかり合い、次第に強大なエネルギー同士が激突し合う。拮抗し合うこのぶつかり合い。だが両者には決定的な違いがあった。
「今を超える!!」
「力をおぉっ!!」
ステファンとソーニャが、空に向かって叫んだ。その違いというのが、背中を押してくれる者の存在。その叫びに背を押されたクリスとマリアが咆哮をあげながら、その出力を引き上げた。
「うああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」
カリオストロの断末魔が響き、大爆発が起こる。合体を解除した二人が地上へと降り立った。
「やったわね……。」
「ああ……。」
限界を超えたせいか、二人とも立つことすらままならなかった。
日が傾き、星空が見えるようになった頃。響と切歌が亜空間型のアルカ・ノイズを倒した事で無事に現実世界へと戻って来れた。同時に翼と調も戻って来た。
「クリスちゃん!」
「マリア!」
「無事だったか!皆!」
「まっ……何とかな。」
全員の無事を確認したが、その中に一人、暗い表情になる調。だからこそ、真っ先に反応できた。
「あれは……!」
何と杖を片手にアルベルトがこっちに向かって歩いてきた。
「ミラー先生!」
「まだいやがったのか?!」
全員がアームドギアを構えるが、クリスとマリアは先程の戦闘で体力を使い切ってしまったせいで、立ち上がれない。だがアルベルトはある程度まで近づくと、その歩みを止めた。
「カリオストロを倒すとは……それも、ラピスを封じてのユニゾン……。」
独り言のように呟くと、クリスの方を見やり、彼女に杖の先端をに向けた。
「狙いはあたしか……?!」
「カリオストロを倒した褒美だ。雪音クリス。君にだけに教えてやる。」
「何を……?!」
すると杖の先端から一筋の光が放たれた。その光はギアのコンバーターを直撃するが、コンバーターを包みこんだ。それと同時に、クリスの脳内にあるヴィジョンが流れ込んだ。
(こいつは……!まさか……!)
ルリが心を崩壊させる切っ掛けとなったバルベルデの地獄。その真相の記憶が、クリスに流れ込んできたのだ。だがそれは、ギアのコンバーターが包む光が消えるのと同時に我に返った。
「雪音、大丈夫か?!」
「クリスちゃん?!」
「あ、ああ……大丈夫だ。それよりも……。」
皆の心配をよそに、アルベルトの方を見る。
「お前……どうしてあたしに見せたんだ?」
クリスの問いに、アルベルトは答えることなくそのままテレポートジェムで撤退した。
アルベルトはホテルの一室へと戻ると、ベッドで眠る瑠璃を見下ろしている。
(私には、たった一つの望みがある。それが叶うならば……私はどんな事をして来た。ルリの身体を浄化させて、記憶を預かったのも……。
いつの時もアルベルトは、胸の奥に秘めている悲願の為に戦って来た。誰にも明かせない、理解されない、たった一つの悲願。それがアルベルトの望みであり、彼女を縛る鎖のように苦しめ続けていた。
アーネンエルベに残った記録。
バイデントシンフォギア計画。
発案者: 瑠無・カノン・ミラー
技術提供者:櫻井了子
瑠無・カノン・ミラー氏による発案と櫻井理論提唱者、櫻井了子の協力の下、進められる。
バイデントの穂先の欠片を触媒に、ギアペンダント完成。
適合者候補 第一号 起動実験直前、事故により死亡
適合者候補 第二号 起動成功。しかしその直後暴走。犠牲者多数出した後、本人も死亡。
適合者候補 第三号 起動実験中 心臓発作により死亡。
バイデント、紛失により計画は凍結。
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