戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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ここでオリジナルエピソードを挟みます。

調の活躍回はまた後々。


円環の刃

 愚者の石による対消滅バリアコーティング、さらにユニゾンによるフォニックゲインの上昇に成功し、カリオストロ撃破という大きな収穫を得た。だがエルフナインにも予想外の事態が起きた。

 

「ごめんなさい!対消滅の際に生じる反動の所為で、ギアのメンテナンスになってしまって……。」

 

 愚者の石による賢者の石の力を中和させた時に負荷が生じてしまったのだ。元々ラピスについてデータが不足しており、その一つを輪が所有しているとはいえ、解析されないよう数多くのシステムロックが施されてしまっている為、解明する事が出来ないまま愚者の石を使用しなくてはならなかった。その結果、それがシンフォギアの機能不全が生じてしまったのだ。

 

 それに伴いシンフォギアの使用が出来なくなったマリアにエルフナインが頭を下げていた。

 

「気にしないの。むしろ急ごしらえでよくやってくれたわ。ありがとう。」

「お陰で、抱え込まなくていい蟠りもスッキリ出来たしな。」

 

 ソーニャと和解を果たした後、姉弟はバルベルデへと帰って行った。これで抱える問題は瑠璃の事だけとなり、前を向いて瑠璃を助ける事が出来るようになった。

 

「ただ……クリスさんのギアだけに反動汚染がないというのが不思議なんです。マリアさんのアガート・ラームは、使用に支障をきたすものなのに……。」

「心当たりがあるとしたら……。」

「あいつしかいないだろうな。」

 

 アルベルトが放った一筋の光が関係しているのは間違いないが、そうなると反動汚染があるのを一瞬で見抜いたということになる。それを除去させるという事は、敵である自分達を助ける事を意味する。何故そんな行動に出たのか未だに理解出来ない。

 いずれにせよクリスはまた戦える。これからトレーニングに向かった。今トレーニングルームではもう一つ、大掛かりな訓練が始まろうとしていた。

 トレーニングルームの中央に輪が立っており、先程までユニゾンの特訓をしていた翼とクリスの協力の下、起動実験を試みようとしている。それ以外の装者と弦十郎、エルフナイン、友里が別室でその様子を見守っている。

 

「では、始めてくれ。」

「了解!」

 

 弦十郎のアナウンスで、アルカ・ノイズのホログラムが召喚される。ギアを纏った翼とクリスが交戦開始、輪はその場に立ったまま、ラピスの結晶を握りしめる。

 

「暖かい……。」

 

 エルフナインの推測によると、輪のラピスは錬金術のエネルギーとフォニックゲインによって起動出来るとの事だった。本来ファウストローブは錬金術のエネルギーによって、それがアーマーを形成する、言わばシンフォギアの錬金術版である。だが輪にはそんなものは持ち合わせていない為、それをフォニックゲインで補って起動させようという計画だ。

 その為に装者の経験が長い翼とクリスに白羽の矢が立ち、アルカ・ノイズのホログラムと戦わせ、それによって発生するフォニックゲインを起動の糧として使う。エルフナインの読み通り、ラピスに熱が帯び、心臓が鼓動を打つような感覚まで生じている。

 

(感じる……二人がが力を貸してくれてるのが……。)

 

 しかし、まだラピスに帯びる熱が高くなっただけで、起動には程遠い。友里がそれを報告する。

 

「まだ起動に必要なフォニックゲインが不足しています。」

「お前達!ユニゾンだ!」

 

 個々の歌出せるフォニックゲインで足りないならば、重ね合わせて引き出す。それがユニゾンだ。

 

「行くぞ雪音!」

「おうよ!」

 

 天羽々斬()イチイバル()、特性も神話の関連性は何一つ繋がらないもの同士のユニゾン。その歌は、魔法少女事変にて強化された新型のシンフォギアを引っ提げた時に唄った『BAYONET CHARGE』。

 性格も正反対の二人、何もかも異なれど、互いに研磨された技術とこれまで何度も同じ修羅場を潜り抜けてきた絆、これから先に戦う事になる輪への先輩としての激励、そして家族を助けたいという思いが重なり合う。   

 その思いが届くかのように、強く握りしめたラピスの輝きが、手から溢れ出している。その光に導かれるかのように、皆が輪の方を見やる。

 

「あれって……!」

「賢者の石がギラギラと輝いてるデス!」

 

 別室にいた響と切歌が声を挙げて驚愕する。どんどん強くなる光は、次第に直視出来なくなるくらいに眩くなる。

 

(熱い……!身体が……!)

 

 同時に輪の身体の体温が上昇し、その苦しさに膝をつく。

 

「ぅ…………ぁぁ…………あああああああああああぁぁぁぁーーーーー!!」

 

 叫びとともに、その輝きが輪の身体を包んだ。すると次第に光が弱まり、視界が利くようになった。

 

「どうなりやがった……?」

「無事か出水……これは!」

 

 トレーニングルームにいた翼とクリスが輪の姿を見て驚愕する。そして全員が輪の方を見ると、皆同じような反応になる。

 

「はぁ……はぁ……。」

 

 突然襲われた苦しみに膝をついていた輪。だがその姿は先程まで着ていた私服ではなかった。私服は分解され、緋色を基調としたヘソ出しのインナーとアーマー、両腕のガントレットの末端と足部の装甲の根本ににリングの装飾。長かった髪がポニーテールに結ばれている。その姿はシンフォギアを連想させる。

 

「これって……」

 

 本人は自分の姿が変わっている事に戸惑っている。しかし、それはラピスのファウストローブを纏う事に成功した事を意味する。

 

「その姿は!」

「正真正銘、ラピス・フィロソフィカスのファウストローブです!」

 

 起動に成功した事に、別室にいた装者達は大いに喜んだ。

 

「やったじゃねえか!」

「よく踏みとどまったな。」

「あ……あはは……ありがとうございます。」

 

 S.O.N.G.の装者として、起動に協力してくれた翼とクリスも、自分の事のように喜んでいる。しかしこれで終わりではないと、弦十郎が次の訓練に進めようとする。

 

「では輪君、早速だがアルカ・ノイズ相手にシュミレーションを行ってもらう。出来るか?」

「もちろん!」

「その意気だ!では行くぞ!」

 

 手始めにアルカ・ノイズの群れが召喚される。そのターゲットはただ一人、輪だ。いざ実際に目の前で対峙すると、恐怖に似た重圧感というべきか降りかかるプレッシャーに足がすくみそうになる。

 

「いやいや……瑠璃を助ける為にも、ここで立ち止まってられない!」

 

 足を大きく踏み込んで、構えの体勢に入った。前列にいるアルカ・ノイズが輪に向けて襲い掛かる。

 

「よし……行くよ!」

 

 輪は構えの体勢を捨てて走り出すと、高く跳躍して、襲い掛かるアルカ・ノイズの一体に狙いを絞って、力いっぱい拳を振りかぶった。

 

「おおおりゃああああぁぁぁ!!」

 

 拳を振り下ろして、アルカ・ノイズの身体を貫通させて、赤い塵にしてやった。

 

「やった……!アルカ・ノイズを倒した……!」

「馬鹿!浮かれんな!」

「え?」

 

 アルカ・ノイズを初めて倒して調子に乗った矢先、着地の事が頭から抜けていた輪はクリスの指摘も虚しくそのままアルカ・ノイズの群れに落下するも、ダイブしたことで下敷きとなったアルカ・ノイズが赤い塵となって消えた。

 

「痛たぁ……け、結果オーライ……」

「まだだ!来るぞ!」

「うわヤバっ!」

 

 アルカ・ノイズの解剖器官が輪に伸びる。身体を転がして躱すとすぐに立ち上がった。すぐさま襲い掛かるアルカ・ノイズを殴り、蹴って返り討ちにする。

 輪の戦闘スタイルは響と同じ弦十郎直伝の八極拳による徒手空拳でも、少々ヤンキーのケンカスタイル寄りであり、その一撃はとても重い。

 しかしいかんせんアルカ・ノイズの数が多く、攻撃しても得物がなく、徒手空拳では1体ずつでしか倒せない故に手間取ってしまう。

 

「キリがないなぁ……。」

 

 自分にも翼のような刀、クリスのようなクロスボウや銃火器があればとないものねだりをしていると、両手首を覆うように装着されているリングの装飾がロックを解除するかのように分離、一回り大きくなると円形上のブレードが展開された。リングの装飾の正体はチャクラムだった。

 

「あれって……まさかアームドギア……?!」

「あの輪っかがデスか?!」 

 

 別室の調と切歌が、輪が起動1回目でアームドギアを手にした事に驚愕する。正確にはシンフォギアではないのでアームドギアとはまた別のものであるが、シンフォギアで言うならばまさにそれである。

 リングのブレードが一部展開されていない持ち手を持つとそれを剣のように振り回す。刃に斬られたアルカ・ノイズはプリマ・マテリアを撒き散らして消滅する。

 

「チャクラムか。変わった得物だが、輪君にはピッタリのアームドギアだな。」

 

 リーチは短いが、その分小振りで振り回しやすい。さらにブーメランのように投擲すれば、遠くの敵へ攻撃する事が可能となり、短いリーチを補える。さらに、チャクラムを手放した状態であっても、徒手空拳で対応出来る。まさに理想的でバランスの取れた戦い方である。

 チャクラムに慣れてきた輪は、それを手足のように操り、あれだけ手間取っていたアルカ・ノイズを全滅させた。

 

「やった……あの数を……私がやったんだ……!」

 

 すると突然ファウストローブが解除され、思わずふらついて転びそうになるが、クリスがその背中を支える。

 

「おい、大丈夫かぁ?」

「大丈夫。ちょっと……色々あって疲れちゃっただけ。」

「だが、初めてであの立ち回り。戦果としては上々だ。」

「あ、ありがとうございます。」

 

 翼に褒められ、顔を真っ赤にして照れる。

 

「よし!ギアを纏える者は、引き続きユニゾンの特訓を、輪君はしばし休憩した後、装者と交えたシュミレーションを行う!お前達、気合入れていけ!」

 

輪がファウストローブの起動成功もあって、弦十郎の声はより力強く、装者達の気合も士気も高くなる。ただ一人、調を除いて。

 

 




輪のファウストローブ

 サンジェルマンと共に製作し、アルベルトが独自の改造を施したラピス・フィロソフィカスのファウストローブ。他のラピスとは異なり、錬金術のエネルギーだけでなくフォニックゲインに反応して起動するものとなる。今回起動に成功した事で、次回は他の装者のフォニックゲインが無くても、輪の意思で起動する事が可能となった。

イメージカラーはスカーレット
アームドギアはチャクラム

次回は原作にもありました調の不調回になります。
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