戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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遂に瑠璃に出番が?!

そして今回も長めっ!


風月ノ疾双

 調神社から提供された古文書を解読していくと夜は更けていき、皆は寝静まっていた。翼は弦十郎に調査結果を報告している為、外に出ていた。そしてもう一人、悩み続ける小さな兎が、池の水面に映る自分を見つめていた。

 

「おやおや、何か悩み事ですかな?」

 

 そこに宮司が調に声を掛けてきた。しかし調は一人で解決しようと拒否する。

 

「一人で何とかできます……。」

「それでも、口に出すと楽になりますぞ。誰も一人では生きられませんからな。」

「そんなの分かってる!でも……私は……!」

 

 分かっていても、それが出来ない、認めたくない。意地になって声を荒げてしまう。

 

「何を隠そうここは神社。困った時の何とやらには、事欠かないと思いませんか?」

 

 宮司に本殿まで案内された調。そこで宮司は二礼二拍手一礼の作法を披露する。調はそれを物珍しい目で見ていた。ずっとF.I.S.の施設で育ち、神社にお参りなどした事がなかった。何故そこまでする必要があるのだろうか分からなかった。

 

「若い方には、馴染みない作法ですかな?」

「うん……。何か……めんどくさい。」

 

 ハッキリと正直に答えた。これは神の前では聞かせられない。

 

「これはこれは。」 

「しきたりや決まり事、誰かや何かに合わせなきゃいけないって……よく分からない……。」

 

 とは言いつつも、調も二礼二拍手一礼の動作を真似る。 

 

「合わせたくっても上手くいかない……狭い世界での関係性しか、私には分からない……。引け目が築いた心の壁が、大切な人達を遠ざけている……。いつかきっと……親友までも……。」

 

 それが調が抱える悩み。姉のような存在だったマリアやジャンヌを除けば、いつだって自分の隣にいるのは切歌だった。S.O.N.G.に来てから切歌以外の誰かと関わる事が多くなった。しかし、切歌以外の誰かと上手く接する事ができない。ユニゾンの不調もそれが間接的に繋がっているのだろう。誰かと合わせて強くなれないなら、一人で強くなるしかない。

 

「あなたは良い人だ。」

「良い人?!だったらどうして私の中に壁があるの?!」

 

 まさか良い人と言われるとは思っていなかったのだろう、声を荒げるように聞き返した。

 

「壁を崩して打ち解けることは、大切なことかもしれません。ですが壁とは、拒絶のためだけにあるのではない。私はそう思いますよ?」

 

 それが何を意味するのか、調には分からなかった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ホテルの一室に急いで戻ったアルベルト。その様子は焦っているようにも見え、いつも余裕の笑みを浮かべるアルベルトには珍しいものである。

 

 目の前に一人、静かに窓の外の夜景を眺めている瑠璃。

 

「あなたは……。」

 

 瑠璃が振り返った。だがその瞳はラピスラズリのような綺麗な瞳ではなく、淀んでしまった冷たい闇だった。

 

「アルベルトか……。」

 

 名を呼ばれたアルベルトは跪いて平服した。

 

「我の羽衣は……?」

「こ……ここに……。」

 

 黒い宝石が飾られたネックレスを首に掛けて身につけた。

 

(そんな……馬鹿な……?!彼女が……ルリが……!)

 

 アルベルトの中で起きた予想外の事態。今目の前にいるのは、瑠璃でもルリでもなかった。 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

 

「ねえ、私人間になりたい!」

 

 ホテル屋上にジャグジーにアダムと共に入っているティキが突然言い出した。

 

「藪から棒だね、いつにも増して。」

「神の力が手に入ったら、アダムと同じ人間になりたいって言ってるの!人形のままだと、アダムのお嫁さんになれないでしょ?子供をボコボコ産んで、野球チームを作りたいのよ!だーかーらー!さっさと三級錬金術師を生命エネルギーに替えちゃって……」

「その話、詳しく聞きたいワケダ。」

  

 会話を遮った声の主はプレラーティ。カリオストロと同じくアダムが何かを隠していると踏んで、ここにやって来た。するとティキが穏やかならぬ事を大声でペラペラと喋っていた。ここまで聞かれた以上、もはや誤魔化す事は不可能であるが

 

「繰り返してきたはずだよ、君たちだって。言わせないよ、知らないなんて。」

 

 開き直るような物言いで、ジャグジーから立ち上がった。

 

「計画遂行の感情に入っていたのさ、最初から。君の命も、アルベルトの命も、サンジェルマンの命も……」

「そんなの聞いてないワケダ!」

 

 やはりアダムはサンジェルマンさえも犠牲にしようとしていた。これにプレラーティは憤怒とともに水の錬金術から作り出した氷柱をアダムに放つ。

 しかし、アダムは指をパチンッと鳴らした途端、氷柱は風の斬撃で砕け散り、そのままプレラーティに襲い掛かるも、それをギリギリ屈んで避けた。

 

「他に何を隠している?!何を目的としているワケダ?!」

「人形の見た夢にこそ、神の力は……。」 

(人形……?)

 

 人形に該当するティキの方を見るが、すぐにアダムの方に視線を戻した。アダムはこのままプレラーティを生かして返すつもりはない。再び指パッチンで風の斬撃を放った。プレラーティ自身はそれを避けられたが、カエルの人形は首が切断されてしまう。さらに後ろは手すりであり、これ以上後退できない。その人形の中からラピスの結晶がハメられた剣玉を取り出して、屋上から飛び降りた。

 ラピスの輝きが発せられるとファウストローブを纏った。着地時に自動車のボディを陥没させるが、そんな事はお構いなしに巨大な剣玉をバイクの様に走らせる。公道を猛スピードで走らせるが、他の自動車の事故を引き起こし、二次被害が続出している。

 

「逃げた!きっとサンジェルマンにチクるつもりだよ!どうしよう?!」

「狩り立てるのは任せるとしよう、シンフォギアに。」

 

 屋上からプレラーティの闘争を腕を組んで眺めている。自分が手を下す必要はないと判断し、そのまま逃したのだ。

 高速道路を疾走しているプレラーティは祭壇設置の儀式の準備をしているサンジェルマンにテレパシーで通信を呼び掛けるが、妨害されている。このまま直接サンジェルマンと接触するしかない。

 

 そのアダムの予想通りと言わんばかりに、調神社にいる装者達に、錬金術師が現れたと知らせが届いた。

 

『新川越バイパスを猛スピードで北上中!』

『付近への被害甚大!このまま住宅地に差し掛かることがあれば……!』

 

 これ以上被害者を出すわけには行かない。すぐに現場に向かい、錬金術師を止めなければならないが輪が調がどこにもいない事に気付いた。

 

「待って!調はどこ?!」

「あ、調!」

 

 調はすぐに見つけたが、切歌の制止を振り切って一人で飛び出してしまった。

 

『そちらにヘリを向かわせている!先走らず、ヘリの到着を待て!』

 

 一方、シュルシャガナのギアを纏い、高速道路への入り口に入った調。機動力であれば他のギアにも劣らない。だがもう一人、その後を追いかける者がいる。

 

「高機動を誇るのは、お前ひとりではないぞ!」

 

 バイクに乗っている翼。既に天羽々斬を纏っている。

 調と翼が高速道路の本線に入ると、すぐにプレラーティを発見できた。

 

「何を企み、何処に向かうッ?!」

「お呼びでないワケダ!」

 

 炎の錬金術を放って翼と調を追い払おうとするが回避され、舌打ちをする。二人がプレラーティを逃さないよう接近、それによりプレラーティの剣玉の玉が、反対車線に跨がる障壁と接触する。追跡を振りきろうと障壁を破壊、反対車線へと入った。

 

「お構いなしと来たか……!ユニゾンだ月読!イグナイトとのダブルブーストマニューバで捲り上げるぞ!」

 

 ここで仕留めなければ被害は益々大きくなってしまう。その前に、イグナイトを用いたユニゾンをやるしかない。だが調は

 

「ユニゾンは……できません……。」 

「月読……。」

「切ちゃんは……やれてる……誰と組んでも……。だけど私は……切ちゃんとでなきゃ……。人との接し方を知らない私は……一人で強くなるしかないんです!一人で!」

 

 自分の心情を吐露する調。

 

「心に壁を持っているのだな?月読は」

「壁……。」

 

 先程宮司にも言われた事。翼には調の悩みを理解出来る。

 だがそこに反対車線から再び障壁を破壊して目の前に出てきたプレラーティ。

 

「私もかつて、亡き友を想い、これ以上失うものかと誓った心が壁となり、目を塞いだ事がある。」 

「天羽奏さんとの……。」

 

 ツヴァイウィングというユニットを組み、共に歌い戦った天羽奏。大切なパートナーを失い、防人として己を剣として振る舞っていたかつての自分。今の調と重ねあわせていた。だからこそ理解出来る。

 

「月読の壁も、ただ相手を隔てる壁ではない。相手を想ってこその距離感だ。」

「想ってこその距離感……。」

「それはきっと、月読の優しさなのだろうな。」

「優しさ……。」

 

 不器用ながらも、それは仲間を大切に想っている証。それに気付いた調に、笑みが戻っている。

 プレラーティが後ろを走る二人を葬ろうと放った氷柱を、二人は避ける。

 

「優しいのは私じゃなく、周りの皆です!だからこうして気遣ってくれてる……私は皆の優しさに応えたい!」

 

 調の決意に、翼が凛とした笑みを浮かべた。

 

「ごちゃつくな!いい加減つけ回すのをやめるワケダ!!」

 

 二人の追跡に煩わしが頂点に達したプレラーティ。最大火力の炎を放つと、トンネル内に設置されたファンに直撃し、そこから爆発する。こうなればもはや追跡など出来ない。

 

「ぐうの音も出ない……」

 

 爆発するトンネルから出たプレラーティは後ろを見て追跡を振り切ったと確信したが

 

「ワケ……ダ?!」

 

 爆炎からイグナイトを纏った翼と調が現れた事に驚愕する。

 

 

「このまま行くと住宅地に……!」

 

 標識を見た翼はクラッチレバーを押しこみ、ペダルを踏んでバイクのギアを上げた。

 

「いざ、尋常に!」

 

 バイクの前部と、両側部にブレードを展開、ギアと連動させたバイクをプレラーティが走らせる巨大剣玉と並走して接近する。

 

「邪魔立てを……っ?!」

 

 反対側から禁月輪で走行する調が、側部に鋸を展開、剣玉との接触によってバランスを崩させて錬金術の発動を阻止する。

 

「動きに合わせてきたワケダ!」 

「神の力、そんなものは作らせない!」

「それもこちらは同じなワケダ!」

 

 神の力を求めるはずのパヴァリアの錬金術師が、正反対の事を言った事に、翼が一瞬疑問を呈する。プレラーティが剣玉の柄の上に立ち上がると、その両手から水の錬金術の陣を展開。そこから大量の洪水を放つ。

 

「歌女どもには、激流がお似合いなワケダぁ!!」 

「行く道を閉ざすか?!」

「そんなのは、切り開けばいい!」

 

 ツインテールのアームバインダーから小型鋸を大量に放つ。波の反対側から放たれた鋸をプレラーティはバリアで防ぐが、その量は微々たるものであり、本命は反対車線を塞ぐ障壁だった。小型鋸によって破壊された障壁は瓦礫となって積み上がり、即席のジャンプ台を作り上げた。そこを翼と調が大ジャンプで激流葬を躱した。さらにその先にいるプレラーティに目掛けて突っ込む。

 しかし、すぐに剣玉の柄を握ったプレラーティに受け流されてしまう。

 

「駆け抜けるぞ!」

 

 すぐに切り替えしてプレラーティに向かう。そして、翼のバイクの前方に巨大な剣、調のツインテールのアームが、巨大な鋸がタイヤのようになり、二つのギアが合体して、一つのマシーンとなる。

 

【風月ノ疾双】

 

「サンジェルマンに告げなくてはいけないワケダ!こんなところでえぇぇ!!」

 

 叫びとともに剣玉の玉を突き刺すと、中皿の空洞から槍のように長い刃にが展開される。

 

「アダムは危険だと、サンジェルマンに伝えなければならないワケダァ!!」

 

 両者がぶつかり合う。互いに譲れない想いとともに高まったエネルギーが衝突した事で火花が散る。

 だがカリオストロの時のクリスと同じように、調は揺るがない決意がある。その想いに応えるかのように、出力が跳ね上がった。

 

「サンジェルマン……サンジェルマアアァァァァァーーーン!!」

 

 プレラーティの断末魔とともに爆発が発生した。その中から翼と調が抜け出すと転がった。ゆっくりと起き上がり、爆発の方を見る。

 

「勝てたの……?」

「ああ……二人で掴んだ勝利だ!」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 祭壇設置の儀式の準備に取り掛かっていたサンジェルマンの背後からベルが鳴り響いた。その正体はアダムが念話する際に用いられる洋式電話。サンジェルマンはその受話器を手に取る。

 

『プレラーティはカエルのように轢き殺されたよ!お似合いだよ!』

 

 出たのはアダムではなく、ティキだった。仲間の訃報に驚愕するサンジェルマンだが、ティキはそんな心情を踏みにじるように続ける。

 

『生贄にもならないなんて無駄死にだよね。ざまぁないよね!』 

『報告に間違いはない、残念ながら。』 

「一人で……飛び出したの……?」

『急ぎ帰投したまえ、シンフォギアに。儀式を気取られる前に。』

 

 受話器を元に戻したサンジェルマン。

 

「カリオストロに続き、プレラーティまでもが……ん……?」

 

 サンジェルマンの目の前にヒラヒラと落ちる一通の手紙。封を開けて、折られた手紙を開くと、その内容は仲間を失い悲しむサンジェルマンに追い打ちをかけるものだった。

 

 

 サンジェルマンへ

 

 私はパヴァリア光明結社を抜ける。神の力を、君にも、アダムにも、誰にも手に入れさせはしない。次に会った時、君とは敵同士になる。サヨナラだ。

 

 アルベルトより

 

 唯一残された、仲間だと信頼していたアルベルトに裏切られたサンジェルマンは、本当に一人ぼっちになった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 夜が明けた早朝。装者達は本部へと帰るべく、お世話になった宮司に挨拶していた。

 

「お世話になりました!」

「いやいや。お役に立ちましたかな?」

「とっても参考になったのデェス!」

「って言いつつ真っ先に寝たよね。」

「そういうお前もな。」

 

 一方境内の外では翼とマリアが、タブレットで弦十郎と会話していた。

 

「では、あの錬金術師の向かう先には……。」

『鏡写しのオリオン座を形成する神社、レイポイントの一角が存在している』 

「ますます、絵空事ではないわけね。」

『対策の打ちどころかもしれないな。』

 

 決戦の時は近い。マリアは真っ直ぐその先を見ている。

 

「良かったら、調神社にまたいらっしゃい。この老いぼれが生きている間に。」

「神社ジョーク……笑えない……。」 

 

 相変わらずのブラックなジョークに、調は笑うことなく静かにツッコむ。そんな彼女に、宮司は調の手に、白いお守りを乗せた。

 

「「「「「ありがとうございました!」」」」」

 

 5人は宮司にお礼をして、神社を後にしようとした時、切歌がその足を止める。

 

「うーん……やっぱり不思議デス。こんなの『つき』なんて絶対読めないデスよ。」

「切ちゃーん!置いてっちゃうよ?」

「わ、分かってるデスよ!」

 

 調の呼び掛けで、切歌が急いで追い掛けた。この神社の名前。調神社、調と書いて月と読む。




果たして目覚めた瑠璃は何なのか?
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