戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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アルベルト戦、決着の時!

そしてバイデント出生の秘密、呪いの正体などが判明します!


快晴・SUNBIRTH STREAM

 眩い光が弱まり、視界が利くようになった輪は目を開いた。すると、先程まで神社への道にいたはずがいつの間にか右も左も分からない、ジャングルにいた。

 

「え?!ここ何処?!」

 

 一方、クリスはその景色に驚愕している。

 

「ここって……バルベルデ?!何で……」

「バルベルデって南米の?!私達、さっきまで神社の……」

「ここは私の記憶の中だ。」

 

 背後から突然声を掛けられ、振り返った二人。そこにはアルベルトがいる。

 

「記憶の中……?」

「厳密には、ルリが起きた出来事を見た私が、それを複製して保管した記憶だ。」

 

 つまり、ルリが体感した過去であり、アルベルトの記憶世界でもある。

 

「ここは……そうだな。私が初めてルリと会った、あの出来事だな。」

 

 アルベルトが指差した方を見ると、そこには家族とバルベルデに訪れた幼きルリと暑い中でスーツ姿のアルベルトがいた。あの時は瑠無となっていたが、口調も微笑みもアルベルトそのものである。

 

「あれが……幼かった瑠璃……。」

 

 輪は幼いルリを見るのは初めてだった。今でこそ大人しい性格であるが、昔の活発だった頃のルリを見てそのギャップの違いに驚いている。

 

「君の両親の歌は、本当に素晴らしかった。悲願を果たす為に、血に汚れた私の心を洗い流してくれた。」

 

 雪音夫妻の歌に、アルベルトは感銘を受けていたようだが、表情が変わっていないせいで、二人は信じきる事が出来なかった。

 

「次だ。」

 

 すると、今度は施設内へと転移した。政府軍兵士の前に堂々と現れたのだが、ここは記憶の世界。3人の事は認知されていない。現に輪は歩いて来る兵士と接触したはずだが、その身体をすり抜けてそのまま何処かへと行ってしまっている。

 

「ここは……ルリが連れて行かれた政府軍の軍事施設の中にある独房だ。ルリはここに押し込まれて、6年の歳月を過ごしたんだ。」

「あっ……あれって……!」

「姉ちゃん!」

 

 捕らわれた子供達の中に、幼さが消えて成長したルリを見つけた。ボロボロになった最愛の姉に手を伸ばしたが、牢の鉄格子に阻まれてしまう。

 

「大丈夫だよ。みんな助かる……頑張ろう?」

 

 ルリはいつ死ぬかもしれないという時であるにも関わらず、泣きじゃくる子供の頭を撫でて、その不安を和らげてあげていた。

 

「姉ちゃん……。」

「一人になっても……強いお姉ちゃんだったんだね。瑠璃は……。」

 

 だが、兵士が牢の鍵を開けると、憂さ晴らしと言わんばかりにルリの身体を蹴った。

 

「この野郎!」

 

 やめさせようとクロスボウを出すが、その手をアルベルトに掴まれる。

 

「無駄だ。たとえ入れたとしても、過去に干渉は出来ない。」

「何だと?!」

「次だ。」

 

 憤るクリスに構う事なく、再び場面が変わる。今度は目の前に軍事施設と思われる場所へと転移した。豪雨のせいか、外には誰もいない。代わりに一台の護送車が施設の入り口付近に停車される。すると、護送車の後部ドアから誰かが降りてきた。数人の兵士と、首輪を繋がれたルリだった。車から降りた者達は、そのまま中へと向かっており、その光景を見たアルベルトは頭を抱える。

 

「ああ……あの日か……。」

「あの日って……?」

「まさか……!」

 

 輪がオウム返しに問う間に、ルリは既に中へと連れて行かれてしまった。その意味を理解したクリスの顔は青ざめている。アルベルトはそんなクリスを見て

 

「あの日……ルリの心が崩壊した、地獄の日だ。」

 

 答えを告げられた輪も驚愕する。クリスと輪は急いで中へと入ったが、既にルリと彼らの姿はなかった。

 

「一体何処に連れてかれた?!」

「牢屋だ……!どっかに牢屋があるはずだ!」

 

 アルベルトが僅かに見せた記憶を頼りにルリを探そうとした時だった

 

「いやだあああぁぁぁ!!」

 

 ルリの悲鳴が聞こえた。地下からだ。二人は急いで地下へと通ずる階段を降りて、地下牢の入り口へと辿り着いた。扉を開けると、そこには無抵抗で泣き叫ぶルリに兵士達が醜く群がっていた。しかも周囲は兵士達に犯されている女の捕虜たちの悲鳴と嬌声が混ざっている。これからルリが何をされたのか、否が応でも理解してしまう。

 

「やだやだやだぁ!助けてクリス!!パパァァ!!ママァァァ!!」

「やめろ……やめろおおおおおぉぉぉーーーー!!」

 

 助けを求めているルリを救おうと身体が動いたクリスだったが、それは無駄な事だった。兵士達を押し退けようとしても、その身体は触れられないまますり抜けてしまう。

 目の前には、なすすべなく泣き叫びながらただ犯される運命となった姉。どんなに助けを求められても、救う事が出来ない。残酷な運命を突きつけられてしまった。

 

 

 

 

 いやああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 

「うわああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 ルリとクリス、二つの悲鳴が混ざりあった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 本部のモニターには対サンジェルマン、対アルベルトの戦闘が映し出されているが、対アルベルトのモニターの光が弱まると、クリスの叫び声が聞こえた。

 

「一体何が……?!」

 

 装者筆頭の翼でさえも、何が起きているのか掴めずに困惑する一方だ。本部にいた者は、ルリの記憶を見ていない。だから何故クリスが突然叫んだのか分からない。

 

 気が付けば、二人は元の現実世界へと戻っていた。記憶を見せたアルベルトが目の前にいる。だがクリスは、干渉できなかったとはいえ、目の前に助けを求めていた姉を、ただ慰み者として使われる様を見る事しか出来なかった。

 当時、クリスはルリが死んだと知らされ、必ず帰ってくる約束を破ったと心無い事を言ってしまっていた。そんな事があったとは露知らず、自分勝手な事を言ってしまったと後悔した。

 

「分かっただろう?君達に、ルリの苦しみが理解できない事が!」

「そんな事は……」

「出来るわけがないだろう!私に記憶を見せられるまで、ルリが受けた仕打ちを理解出来なかったのだから!」

 

 反論が出来なかった。見知らぬ土地で6年間、帰れると信じて耐えた結果があれだ。そうなったら心が壊れてしまうのも無理はない。

 輪もライブの惨劇から生還してから、ずっと正義を振りかざした暴力に晒されたとはいえ、ルリの痛みを共有出来るわけがない。

 アルベルトに記憶を戻されるまで、ルリが見ていた悪夢の正体、輪とクリスは気付いた。

 

「バイデントの呪い……姉ちゃんの忘れていた記憶へと導いたっていうのか……?!」

 

 それを聞いたアルベルトは、クリスに怒りの眼差しを向ける。

 

「違う……。バイデントにそのような性質はない……。それは、君達が作り出した呪い!君達がバイデントを……ルリを狂わせたのだ!」

「私達が作り出した呪い……まるでバイデントにそんなものは初めから……初めから……?!」

 

 輪は気付いてしまった。バイデントを作ったのは誰なのか。

 

 このやり取りは本部にも映し出されている。弦十郎とマリアも、アルベルトが言った事の意味に気付いた。

 

「まさか……バイデントを作ったのは……」

「だが、シンフォギアは了子君がいなければ……いや……そもそもバイデントをシンフォギアにする計画の発案ならば……!」

 

 シンフォギアは櫻井理論を用いなければ作る事は出来ない。さらにそのバイデントを、元々所有していたアーネンエルベから盗み出したのが、提唱者である櫻井了子、もといフィーネだった。

 だがもしアルベルトがフィーネを知っていて、最初から繋がっていたのだとしたら?バイデントのシンフォギア化を提案した人間がアルベルトなら、フィーネに容易く盗まれるはずがない。となると、無傷で奪う為には内部協力者の存在が不可欠。

 

「バイデントを作り出したのも……バイデントが盗まれたっていうのも……!」

「それが奴ならば……バイデントの失踪は自作自演……!」

 

 マリアが辿り着いた答えを、翼が代わりに言った。

 

「出水輪、勘の良い君ならすぐに分かるか。フィーネの手を借りて、バイデントをシンフォギアへと変えるようにしたのも、それを掠め取られたと狂言したのも、この私だ!」

 

 明かされる衝撃の真実。アーネンエルベの研究員として潜り込んでいたアルベルトはフィーネと繋がっていたという事になる。

 錬金術師と歌。本来この両者は現在でこそ相対する関係であるが、ルーツは元々同じ。何処かで繋がっていても不思議ではない。

 

「バイデントは元々、ただのシンフォギアだった。だが最初の起動実験で事故が発生した。だが……適合者候補と、その実験に関わった者が次々と不審な死を遂げ、いつしかバイデントは呪われたギアなどと謳われるようになった。」

 

 最初の失敗は後の事例に大きく影響する事になる。特に不審死は、悪い噂を広める格好の材料だ。そんな事が起きてしまえば、悪い噂などすぐに広まる。それが積もりに積もって、バイデントのギアは呪われたギアとして、聖遺物研究機関の至る地にその名を残す事になっていた。

 

「まさかバイデントの呪いの正体は……哲学兵装……?!先のアレクサンドリア号事件でも中心にあったという……!」

 

 哲学兵装。歌の力ではなく、人々の言葉の力で宿した力。アルベルトが公言した事実に加え、バイデントの伝承の圧倒的な少なさがそれを拍車に掛けてしまったことで、バイデントは呪われた槍となってしまった。

 

「どうやらその力は、ルリの中にあったフィーネの意識が抑え込んでいたが、出水輪に移った事でそれを歯止めをかける者がいなくなったようだな。でもまさか……ルリの手元に渡るとは……。」

 

 偶然が偶然を呼び、それはまさに運命の悪戯と言うべきだろう。

 

「君達が作った呪いがルリを苦しめるなら……私は彼女に神の力を宿して、永遠の苦しみから解放する。その為なら、サンジェルマンの理想を踏みにじってでも叶えなければならない!」

 

 それがアルベルトの言う悲願。輪はそう確信した。アルベルトの一連の行動の意味、それは全て瑠璃を助ける為。だが一つだけ不可解な事があった。

 

「じゃあ何で、私にラピスを……」

「本来であれば、ルリにプレゼントするはずだった……。だが今となっては、何故君に渡したのか……忘れてしまったよ。これで何度目か……。」

 

 輪の問いに、鼻で笑うアルベルト。長く生きている故か、己が何を果たそうとしたのか、忘れてしまう。そんな自分を嘲笑している。

 

「だが私は、ルリを助ける為にここにいる。君達が作った呪いから……ルリを苦しめるこの世界から。その為に……」

「へっ……そういう事かよ……。」  

 

 突如、クリスか不敵な笑みを浮かべた。

 

「それを聞いて安心したぜ……。お前の事……どうにも胡散臭さの塊で出来てやがると思ってた。でもよ……あたしは難しく考えすぎたせいで、誤解のオンパレードだったぜ。」

「クリス……?」

 

 そう言うと、クリスは立ち上がった。

 

「姉ちゃんを助けたい、苦しみから解放したいだの……御宅を並べやがって……。結局、テメエは姉ちゃんを利用して欲望を満たしたいクズ野郎だって事だぁ!!」

 

 背部のアーマーから大型ミサイル12本を展開して放った。

 

【MEGA DETH INFINITY】

 

 これを斬っても爆風で巻き添えを食らうと判断したアルベルトは、錬金術のバリアと青色のバリアを大量展開、結合させて巨大なバリアを作り上げ、ミサイルの爆発から己の身を守る。

 一瞬、クリスに理解してもらえたと思っていたアルベルトは憤怒するように叫んだ。

 

「何故だ……何故分からない?!君は妹だろう?!それならば、ルリを苦しませたくないのだろう?!それを私が成そうとしているというのに、何故それを阻む?!」 

「分かってないのはアンタだ!」

 

 輪がアルベルトの問いをズバッと言い放つ。それにクリスが続ける。

 

「神の力を使って、姉ちゃんが元に戻っても……結局犠牲になる奴が出続ける。そんな事……姉ちゃんが望むわけないだろうが!姉ちゃんはただ、平和な日常が好きなんだ!みんなで笑って過ごす、何気ない日々が!それをぶち壊したのは、他の誰でもねえ……お前だ!!」

 

 突きつけられた答えに、認めなくないアルベルトは怒りで歯を食いしばっている。

 

「アンタなんかに瑠璃は渡さない!神の力が何?!そんなものクソ喰らえだ!」

「今も姉ちゃんが助けを求めてるなら、あたし達のやり方で姉ちゃんを助ける!今度こそ!イグナイトモジュール、抜剣!!」

 

 クリスがイグナイトモジュールを起動させて、荒々しい漆黒のギアを纏った。そして、クリスと輪が走り出し、ガトリング砲の弾丸と投擲されたチャクラムがアルベルトに襲いかかる。

 

 魔剣と賢者の石のユニゾンだと?!そうか……賢者の石に作用されない物体を施したのか!)

 

 自身に被弾する弾丸を刃で弾き落とし、チャクラムは跳躍して避ける。

 

「二人のフォニックゲイン、飛躍的に上昇!」

「錬金術師を押しています!」

「まさか……賢者の石とダインスレイフのユニゾン?!」

「この土壇場で、そんな荒業を……!」

 

 藤尭、友里の状況報告に、モニターで戦いを静観している翼とマリアが、起きている事態に驚愕している。それもそのはず性質が正反対の二つの物質の歌が重なり合ったのだ。ましてやファウストローブは本来歌を必要としない。

 さらにファウストローブは本来錬金術のエネルギーをプロテクト化させて鎧を形成させるが、輪にはそれがない。故に足りないエネルギーをフォニックゲインで補うよう調整したのだが、それが製作者であるアルベルトに牙を向く結果となっている。

 

「瑠璃を助けたいという想いが重なり合ったユニゾン!言わば、ギアとファウストローブの垣根を超えた絆の力だ!」

 

 弦十郎が力強く言い切った。

 

 接近した輪がチャクラムを振り下ろすと、それをブレードで受け止め、鍔迫り合いとなる。

 

「私を倒した所で、既にルリは私の手から離れている!何も変わらんぞ?!ルリが苦しむ運命も、未来も!!」

「関係ねえ!運命も未来も変えられる!!」

「そうだ!だって私達は……」

「「それが出来る、強い絆があるからだ!!」」

 

 鍔迫り合いを解いた輪はアッパーカットでアルベルトを天高く吹き飛ばす。さらに2枚のチャクラムを12枚に増やし、それを隣に立つクリスと自身を囲うように展開、それらをクリスのアーマーと連結させる。

 

【快晴・SUNBIRTH STREAM】

 

 クリスと輪、二人が頭上に両手を天に掲げると、チャクラムに膨大なエネルギーが流れ込み、膨張したエネルギーは、12本のビームとなって放たれ、1つとなったビームが、天高く吹き飛ばされたアルベルトに向かった。

 

「ここまで来て……私は……敗れるというのか……?これが……絆の力というのか……?嗚呼……我が主よ……」

 

 届くはずのない月に手を伸ばしたアルベルトはビームに呑み込まれ、そこに大爆発が起きた。

 アーマーの連結を解除した二人は力を使い果たしたせいかその場に座り込んだ。

 

「勝った……んだよね?」

「ああ……勝ったんだ。」

 

 その様子は本部のモニターにも映っている。ちょうど響と切歌がサンジェルマンを倒した所だった。

 

「司令、響ちゃん達の方も!」

「ああ。残るは統制局長、アダム・ヴァイスハウプトのみ……」

 

 だがそこに、アラートが鳴り響いた。

 

 

 




楽曲

【快晴・SUNBIRTH STREAM】

瑠璃を助けたいという想いが重なり合い、シンフォギア、ファウストローブの垣根を超えた絆の曲。


ちなみに技は未来トランクスがセルを倒した時の技をモデルにしています。

所で瑠璃は何処へ?
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