戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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今回は超長め!まさかの8000字越え!


神殺し

 クリスと切歌が戦線離脱した。特に絶唱による負荷で重傷を負った切歌も、一命を取り留め、LiNKERの過剰投与による薬害も見られなかった。クリスは反動汚染によるものなので特に負傷はしておらず、ブリッジに戻った。

 現在アダムと戦えるのは響と輪、そして反旗を翻したサンジェルマンの3人。しかし輪はまだまだ離れた位置にいる為、現在アダムと対峙しているのは響とサンジェルマンである。頼みの神殺しの情報も未だに届かない。故に神の力を完成させる前に何としてもアダムを倒さなければならない。

 サンジェルマンの銃口が、アダムにその敵意と共に向けられる。

 

「神の力は、人類の未来のためにあるべきだ。ただの一人が占有していいものではない!」

「未来?人類の?くだらない!」

 

 吐き捨てるかのように帽子を投擲、そのつばは炎を纏っている。サンジェルマンが弾丸を発砲し続けてもその威力は減衰しない。サンジェルマンに直撃する直前、響が前に出て帽子を弾き返した。今でこそ共闘しているとはいえ元は敵同士。サンジェルマンは庇われる事に理解出来なかった。

 

「何故私を?!」

「ワガママだと……親友は言ってくれました。」

「ワガママ……?」

「群れるなよ、弱い者同士がぁ!」

 

 アダムの両手から放たれた炎が降り注いだ。二人は跳躍して回避する。着地したサンジェルマンはすぐに弾丸で反撃するもアダムは軽々と避けていく。舌打ちしながら肩のアーマーから弾倉を射出、それを銃にリロードして、引き金を弾くと、ビームを発射。だがアダムはそれを手に取った帽子で簡単にはいなされる。

 

「誰かの力に……」

 

 サンジェルマンは振り返ると背後にいる響が、先程のサンジェルマンの問いに答える。

 

「潰されそうになってたあの頃。支配に抗う人に助けられたら、何かが変わったのかもしれない……そう考えたら、サンジェルマンさんとは……戦うのではなく話し合いたいと、体が勝手に動いてました!」

 

 その答えを受け取ったサンジェルマンは、ティキの方を見る。

 

「立花響、お前が狙うは……ティキ。神の力へと至ろうとしている……人形だ。器を砕けば、神の力は完成しない。この共闘は馴れ合いではない……私のワガママだ!」

「我が儘だったら仕方ありませんね!誰かの為に、サンジェルマンさんの力を貸してください!」

 

 これで二人は本当の意味で戦友となった。アダムはそれを忌々しそうに見ながら、地へと降り立つ。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 クリスが放ったミサイルにしがみつきながら目的の神社へ急行する輪。慣れてきたのか叫び声や酷い形相は見られなくなった。向かっている間に響達に起きた事態を、弦十郎から通信で知らされた。

 

「響が錬金術師と共闘?!」

 

 錬金術師と共闘するなどありえないと固定概念に囚われているせいか信じられない様子だった。しかし、響の性格を考えればそうなるのも当然かと考えると、その固定概念はすぐに破れた。

 

『だがそれでも統制局長、アダム・ヴァイスハウプトは強力だ!輪君もすぐに共同戦線加わってくれ!』

「オーケー!あっ……見えた!」

 

 響とサンジェルマンがアダムに立ち向かう姿が遠くからでも見えた。輪はミサイルの上に少しずつ立ち上がり、サーフボードのように乗りこなした。そしてそのミサイルの信管の向かう先は、アダム。だがアダムも自身に害を向けられているのを見逃す間抜けではない。ミサイルの接近にはすぐに気付かれるが

 

「輪ちゃぁん……ミサアアァァァーーーーイル!!」

 

 輪はミサイルから飛び立ち、乗り捨てた。無人のミサイルはアダムに一直線に向かう。アダムはミサイルを帽子を投擲して叩き折るが、それにより爆炎と煙が撒き散る。

 

「2連打ァ!!」

 

 巨大化させた二つのチャクラムの持ち手を、左右の足でオーバーヘッドキックを蹴り込って投擲した。

 

  【雷翼・サンダードラゴン ver2】

 

 煙から2つのチャクラムが現れ片方は身体を逸して避けたが、もう一枚は左腕に直撃し、切断こそされていないがそれでも大きなダメージである事には変わりない。

 

「ラピスのファウストローブ?!何故人間が……」

 

 輪の到着と、輪がファウストローブを纏っている事に驚くサンジェルマン。

 

「輪さん!!」 

「よっと……状況はオジサンから聞いた!早くあの人形を……」

 

 ぶっ壊してと言い切る前に立ち塞がったアダム。だがその腕を見た3人が驚愕する。アダムの切り傷から流れているのは血ではなくスパーク。肉ではなく束ねられたケーブル。その意味に3人は気付いた。

 

「錬金術師を統べるパヴァリア光明結社の局長が……まさか?!」

「ヒトですらない……これって……!」

「人形?!」 

「人形だと……人形だとおおおおぉぉぉぉ?!」

 

 アダムが初めて怒りと苦痛を露わにした。それに呼応するようにティキが叫んだ。

 

「許さない!アダムをよくも、痛くさせるなんてええええぇぇぇ!!」 

 

 ティキの躯体が光り出した。

 

「何が?!」

「光が!……生まれる……!」

「まさか……神の力が?!」

 

 次第に肥大化する光が直視出来なくなり、腕で光を遮る。次第に光が弱まっていくと、目の前の光景に3人は唖然とする。

 上空には巨大な人魚の姿、それは神と呼ぶには禍々しいものである。胸元のコアパーツにはティキが封じられている。

 

「神力顕現……。持ち帰るだけのつもりだったんだけどね、今日のところは……。」

「ごめんなさい……私……アダムが酷い事されていたから……つい……」

 

 起きてしまった事は仕方ないと言わんばかりに目を瞑る。

 

「仕方ないよ、済んだことは。だけどせっかくだから、知らしめようか……完成した神の力、ディバインウェポンの恐怖を!」

 

 目を見開いたアダム。するとディバインウェポンとなったティキの口から無差別に光線が撃ち込まれた。3人は何とか避けるが、その威力は桁違いであり、爆発の余波で響と輪が吹き飛ばされる。

 次に二人が起き上がった時には、周辺の街が壊滅的被害に遭っている。木々はもちろん、建造物の殆どが瓦礫と化し、地面からは炎と爆煙が立ち込めている。輪は目の前に広がる惨劇を引き起こした力が信じられずにいる。

 

「これが……こんなのが……神の力だっていうの……?!」

「人でなし……サンジェルマンはそう呼び続けていた……何度も僕を……。」

 

 空中にいるアダムは3人を見下ろしている。

 

「そうとも……人でなしさ、僕は。何しろヒトですらないのだから……。」

「アダム・ヴァイスハウプト……貴様は一体……?!」

 

 アダムが地に降り立つ。

 

「僕は作られた……彼らの代行者として。」

「彼ら?!」

「だけど廃棄されたのさ、試作体のまま……完全すぎるという理不尽極まる理由をつけられて!」

 

 響の問いを無視してアダムは、己の出生を暴露した。怒りを滲ませながら。

 

「ありえない……完全が不完全に劣るなど……。そんな歪みは正してやる!完全が不完全を統べる事でねぇ!!」

 

 アダムの意思に呼応するようにディバインウェポンが再び光線を放とうとするが、そう何度も撃たせるわけにはいかない。立ち上がった響と輪に、サンジェルマンは問う。

 

「何を……?!」

「あんなの何度も撃たれたら、たまったもんじゃないでしょうが!」

「撃たせるわけにはぁ!!」

 

 跳躍した二人はディバインウェポンの顔面を殴った。それにより、ディバインウェポンの顔は空を向けられた。しかし、発射は阻止出来ず、放たれた光線は宇宙に浮かぶ衛星に直撃、大破した。

 さらに響がディバインウェポンの腕に文字通り虫けらのように叩き落とされた。

 

「響!!うわあぁっ!!」

 

 輪も同様に叩き落された。

 

「こんな力のために、カリオストロは、プレラーティは……まさかアルベルトはこれを……!」

 

 アダムの危険性をアルベルトは最初から知っていたと事を悟ったサンジェルマン。神の力の全容までは知らず、裏切った最大の理由は別にあるが、それでも裏切るには十分な理由である。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 本部では先程のディバインウェポンの攻撃による軍事衛星が破壊された事によって、モニターの信号が途絶。さらに各省庁からの問い合わせが殺到するが、今はそれどころではない。大至急別モニターに変更する作業をオペレーター陣が進めているが、その画面にあの男が映り出した。

 

『どうなっている?』

 

 風鳴の現当主、風鳴訃堂である。突然訃堂が何の前触れもなく通信してきた事に、弦十郎も困惑を隠せない。

 

『どうなっていると聞いている。』 

「はっ……目下確認中であり……」

『儚き者が……此度の騒乱は既に各国政府の知る所……ならば、次の動きは自明であろう。共同作戦や治安維持などと題目を掲げ、国連の旗を振りながら、武力介入が行われる事が何故分からぬ?!』

 

 訃堂にとって、自国が他国の者に足を踏み入れられる事が我慢ならない。愛国故の叱責なのだろうが、そこに人の情けなどというものはない。

 

『ですがきっと打つ手はまだあります!その為の我々であり……』

 

 聞くに堪えないと判断した訃堂は通信を一方的に切った。

 

「やはり……この国を守護せしめるは、真の防人である我を置いて他になし……。」

 

 通信を切られた弦十郎は、事態の重さを深刻そうに受け止めている。装者達も同様だ。この戦いに風鳴宗家が動き出すという事を意味する。自国を守る為ならば手段を問わない訃堂だ。たとえ死人が出たとしても意を介しないだろう。

 

「モニター出ます!」

 

 別視点からのモニターが映し出された。だがそこは倒れた響と輪だった。

 

 サンジェルマンがなんとかディバインウェポンにダメージを与えるが、損壊した場所がすぐに修復された。それもただ復元ではない。

 ヨナルデパストーリの時と同じ、無かった事にされるダメージ。これでは例えディバインウェポンを全壊させたとしてもまた最初からやり直しである。それに加えて圧倒的な破壊力である。これでは攻略しようがない。

 

「不完全な人類は……支配されてこそ、完全な群体へと完成する。人を超越した僕によって!」

「世迷うなよ……人形……!」

 

 既に支配者を気取るアダムに悪態をつくサンジェルマン。

 

「錬金術師失格だな、君は……。支配を受け入れたまえ。完全を希求するならば!」

「ハハハ……!」

 

 突然聞こえてきた笑い声。その主である輪が痛みを押し殺して立ち上がった。アダムがそれを苦々しく見下ろしている。

 

「あんた……さっきから完全だの不完全だの……言いたいことばっか言いやがって……。結局……完全を気取るあんたは……所詮程度ってわけじゃん……。」

「何……?」

 

 完全を侮辱された事に怒りを滲ませて睨みつける。

 

「人は不完全だって言ったよね……?当たり前じゃん……最初なら完全な奴なんていないし……完全に辿り着く奴なんてはなっからいないっての……!」

 

 輪を虐めて来た連中、仲間達やフィーネ、F.I.S.に錬金術師達、そして自分。多くの人間を見て来たが、誰一人完全と呼ばれる者はいない。誰しもが醜い欲望や心の闇や傷を抱えている。

 

「だけどね……人間は不完全だからこそ、何度でも立ち上がれるし、何度だってやり直せる……!失敗から学ぶ事だって沢山ある、弱かった自分を強くしてくれる!誰かを支えて、慈しんで、繋がる事だって出来る!」

 

 そして、輪はアダムに向かって指す。

 

「それに比べてあんたは薄っぺらいんだよ!何が完全だああぁん?!そういうのが一番ムカつくんだよ!その気取った態度も、上から目線も!だからぶっ飛ばす!相手が完全でも、何度だって逆らってやるよこのクソ野郎がぁ!!」

 

 どんな逆境でも己を貫き通して来た輪。今度は完全に挑もうとしている。輪は2つのチャクラムを自身を包むように高速に展開させたまま、アダムにチャージタックルする。

 

【狂嵐・ヘビーストームプレス】

 

 しかしそのリーチは短い。アダムは跳躍して範囲外へ逃げようとした時、突如チャクラムが回転する範囲が拡張された。反応が遅れたアダムの帽子のつばが斬れた。

 

「チッ……!」 

「小賢しい真似をするな……人間如きがぁ!」

 

 風の斬撃が輪に襲い掛かるが、回転するチャクラムが防御にも応用出来たお陰で守られた。さらに後方のサンジェルマンの援護射撃によって、アダムに追撃される事なく後退する。だが敵はもう一人、ディバインウェポンが響を狙っている。

 

「マズい!」 

 

 光線を発射される前に響を抱えて何とか跳躍して避けられたがその爆発の余波で吹き飛ばされてしまう。

 

「うわあああああぁぁ!!」

「輪さん!!」

「このままじゃ、あいつまでやられちまうぞ!」

「有為に天命を待つばかりか?!」 

 

 輪の悲鳴が本部に響き渡る。このまま仲間がやられる姿を黙って見ているしかない現状に、皆が歯痒くなる。

 

『諦めるな!あの子も、きっとそう言うのではありませんか?』

  

 突如ブリッジに入った通信。発信源も暗号コードによって全てが匿名化されている。だがそれと同時にモニターにあるものが映された。

 

「解析された、バルベルデドキュメント?!」

 

 その内容に藤尭が驚愕しながらも報告する。

 

『我々が持ちうる資料です。ここにある神殺しの記述こそ、切り札となり得ます。』

「神殺し!何でまた?!」

 

 遂に待ち侘びた神殺しの情報だが、突然ここに提供された事に疑問を持つクリス。そこに緒川から通信が入った。

 

『調査部に神殺しに関する情報を追い掛けていた所、彼らと接触、協力を取り付ける事が出来ました。』

 

 同時に映し出される一本の槍。間違いなくこの槍は聖遺物であろう。

 

『かつて、神の子の死を確かめる為に振るわれたとされる槍、遥か昔より伝わるこの槍は、凄まじい力を秘めていたものの……本来、神殺しの力は備わっていなかったと、記されています。』 

「それなのにどうして……?!」

 

 調の疑問通り、神殺しと呼ばれるのであればその力がなければ意味がない。匿名者は続ける。

 

「2000年以上に渡り、神の死に関わる逸話が本質を歪め、変質させた結果であると。」

「まさか……バイデントど同様、哲学兵装か?!」

『前大戦時にドイツが探し求めたこの槍こそが……』

 

 その名前がモニターに大きく表示され、驚愕した弦十郎が叫んだ。

 

「『ガングニール』……だとぉ?!」

 

 その驚愕の叫びが聞こえたのか、響が起き上がった。

 

「……そうなんですね。また……何とか出来る手立てがあって、それが私の纏うガングニールだとしたら……もう一踏ん張り、やってやれない事はない!!」

 

 立ち上がった響。

 

「気取られたか……。ティキ……!」

 

 神殺しの正体が露呈され、悪態をつくアダム。ティキに命じると、言うとおりに2つの光線を放つ。響は残った力を振り絞って回避しながら破壊すべき対象へと駆ける。

 

「行かせるものか、神殺し!」

 

 阻止せんと帽子を投擲するが、それは銃弾によって阻まれた。

 

「なるほど、得心がいったわ。あの無理筋な黄金錬成が、シンフォギアに向けた一撃ではなく、局長にとって不都合な真実を葬り去る為だったのね。」

 

 合点がいったサンジェルマンが、風鳴機関を破壊した真の理由を述べた。

 

「言ったはずなんだけどなぁ……賢しすぎると!」

 

 アダムが自身の左腕に繋がれたケーブル引きちぎり、指を立てる事でそれを剣のようにする。サンジェルマンも銃のブレードを展開して、一騎討ちとなる。

 だが同時に、それは響がディバインウェポンへ辿り着く絶好の機会となる。それに気付いたアダムはサンジェルマンを振り払おうとするが、彼女がそれを許さない。

 

「寄せつけるなぁ!!蚊蜻蛉ぉ!!」

「うおおおおおぉぉぉ!!」

「アダムを困らせるなああああァァァ!!」

 

 響とディバインウェポン、2つの拳がぶつかり合った。だが神殺しの力を備えたガングニールの一撃に神の力をぶつけてしまえば、作用してしまうのは自明の理である。ぶつかった拳は、腕ごと粉々に砕け散り、ティキが悲鳴をあげる。しかも再生出来ない。神殺しが効いているのだ。

 

 本部ではその力に息を呑む。そして朗報はそれだけではない。目覚めた切歌がブリッジに入ってきた。万全ではないが歩いても問題はないくらいに回復していた。心配していた調が切歌を抱きしめる。

 

『バルベルデから最後に飛び立った輸送機、その積み荷の中に、大戦時の記録が隠されていたのです。』

 

 調と切歌が無茶をして飛び立たせた輸送機、あれが功を奏し、巡りに巡ってこの戦局を打開させた。

 

「あの時の無茶は……無駄ではなかったのデスね。」

「教えてほしい。君の国が手に入れた機密情報を、何故我々に?」

 

 弦十郎が匿名者に問う。いくら助けてもらったとはいえ、異端技術に関する資料はブラックケースと同等の代物。はいどうぞと簡単に提示も貸与も出来るものではない。

 

『歌が……聴こえたので。』

「歌……?」

『先輩が教えてくれたんです。あの時、「燃え尽きそうな空に歌が聴こえてきた」って。そんなの……私も聴いてみたくなるじゃないですか!』

 

 響が右腕のバンカーアームを展開、ドリルの様に高速回転させる。

 

「神殺し止まれえぇ!!」

 

 アダムが叫ぶが、それで止まる響ではない。腰部のブースターを最大まで点火させる。

 

「八方極遠に達するはこの拳!いかなる門も打開は容易い!!」

 

 もはや神殺しが破壊されると判断したアダムがティキに呼びかける。

 

「ハグだよティキ!さあ、飛び込んでおいで!神の力を手放して!」

「アダム大好きいいいぃぃぃ!!」

 

 胸部に封じられているコアユニットが、ディバインウェポンから射出されてしまった。例えディバインウェポンを破壊出来ても、依代であるティキが生きていれば再び神の力を宿してしまう。

 

「させるかあああああぁぁぁーーーーー!!」

 

 だが輪の叫びと共に力いっぱい投擲されたチャクラムがコアユニットに直撃、アダムに向かっていたはずが響の方へと軌道が変わってしまう。

 

「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーー!!」

 

 ドリルがコアユニットティキの半身ごと穿ち抜いき、依代を失った事でディバインウェポンの身体が消失した。

 

「やった……!」

 

 ダメージと披露でヘトヘトの輪はその場にへたりこんだ。

 そして上半身だけとなったティキは、白目を向きながら両腕を広げて

 

「アダム好き大好き!だから抱きしめて!離さないで!ドキドキしたいの!」

 

 こんな状態であるにも関わらず、アダムに一途である。だが当の本人は

 

「恋愛脳め……いちいちが癇に障る……。だが間に合ったよ、間一髪。人形を……神の力を付与させるための……。」

 

 ティキをゴミを見るような目で見下している。もう使えないと判断して切り捨てようとしている。だがまだ空には神の力が漂っている。ティキを使えないガラクタの如く蹴飛ばすと、自身で引きちぎった左腕を天に掲げる。

 

「断然役に立つ……こっちの方が!付与させる!この腕に!その時こそ僕は至る!アダム・ヴァイスハウプトを経た、アダムカダモン!新世界の雛型へと……」

「戯言を抜かせ……人形風情が。」

 

 何処からか冷たい声が響き渡る。すると空に漂っていた神の力がアダムとは反対の方へと向かう。

 

「どういう事だ……?!」

 

 そこにいたのは病院着を着た一人の少女。その右腕に神の力が取り込まれた。

 その少女をモニターで拡大、その姿を捉えたが、それを行った藤尭が驚愕する。

 

「この子は……まさか?!」

 

 皆が驚愕する。クリスが呟いた。

 

「姉……ちゃん……?!」

 

 神の力を取り込んだのは心が崩壊し、アルベルトに攫われ行方不明だった瑠璃。だがその瞳は冷たい闇を思わせる。

 

「瑠璃……!何でここに……?!何で神の力を?!」

 

 輪もその姿を見つけたが、次々と起こる事態の理解が追いついていない。さらに瑠璃は宿した神の力の半分を、響に向けて放った。

 

「何……これ……?」

 

 身体を包むように神の力が響の身体に入り込んだ。

 

「ぁ……ぅ…………うわああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 光と共に、ツインタワービルの間に形成された心臓型の繭。光の点滅が鼓動を表してある。その上に瑠璃が到達すると、瑠璃の首に掛けられた黒い結晶が邪悪な光を発した。

 

「どうなってやがんだ?!」

 

 何が起きているのか、敵味方問わず分からない。光が弱まり、その姿がハッキリと映る。病院着ではなく、黒いインナースーツに鎧。

 

「あれは……ファウストローブ……?!」

 

 歌を介していない為、輪はすぐに瑠璃が身に纏ったそれを理解出来た。ファウストローブを纏った瑠璃が3人を見下し

 

「我は……冥府より舞い降りし……絶対の破壊者なり……。」

 

 右腕を突き出し、冷たい声で高らかに宣言した。




遂に瑠璃の久々の出番!

が……まさかの闇堕ち……?!
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