戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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遂に姿を表した闇瑠璃。
そして、輪とクリスが奴に対してブチギレます


絶対の破壊神

 ようやく再会できたと思われていたが、それは正反対の者。誰かを慈しみ、誰かを想える瑠璃が、全てを否定し、拒絶する闇を纏った絶対の破壊者として降臨していた。仲間達はそれが信じられずにいる。

 だがアダムは、目論見が崩れた事に落胆する。

 

「台無しだぁ……僕の千年計画が……。それでも……神の力をこの手に……!」

 

 アダムはその姿を消した。一方残されたサンジェルマンは目の前の光景に唖然する。神の力は、生まれ持って現在を背負う。故に神の力を宿せない。だからこそ、瑠璃がそれを操り、響に纏わせた事が信じられない。

 

「瑠璃!!」

 

 輪が叫ぶと、瑠璃が見下ろす。

 

「何で……何であんたが?!瑠璃ぃ!!」

 

 悲痛な叫びが木霊する。瑠璃を助ける為にファウストローブを纏い、戦ってきた。だが返ってきたのは

 

「お前は戦士か……?ならば構えろ。」 

「瑠璃……!」

 

 瑠璃が望んだのは、刃を交える事。それも、一番の親友であるはずの輪に。輪は絶望し、俯いて涙を流している。その姿に失望した瑠璃は

 

「戦わない戦士に興味はない……失せろ。」

 

 手にした二又槍からエネルギー波を放った。顔を上げた時にはもう避けようにも間に合わない。だがサンジェルマンが直前に輪を抱えて避けた為、無傷で済んだ。

 

「しっかりしろ!」

「サンジェルマン……さん……。」

『輪君!すぐに撤退しろ!』

 

 弦十郎からの通信で撤退を促される。しかし、瑠璃が何故自分を攻撃して来たのか、理解出来なければ素直に命令を受け入れらず、どうすれば良いのか分からない。

 

「分かんないよ……どうすれば良いのか……ここまで頑張って来たのに……その結果が……」

「行くぞ!」

 

 サンジェルマンに抱えられたまま、そのまま瑠璃から離れる事になった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 あれから2日後、響の誕生日を迎えた。だがその主役である響は神の力を取り込んだまま、あの巨大な繭の中にいる。さらに立ち塞がった絶対の破壊者瑠璃。家族である翼とクリスが、モニターに映る瑠璃を見てその変わりように困惑している。

 

「瑠璃……。」

「姉ちゃん……何で……。」

 

 さらに八紘からの通信で問題は山積みである事を認識させられる。

 

『立花響と瑠璃の両名が神の力と称されるエネルギーに取り込まれてから、48時間が超過。国連での協議は最終段階。間もなく、日本への武力介入が決議される見込みだ。そうなるとお前達S.O.N.G.は、国連指示のもと、先陣を斬らねばならないだろう。』

「やはりそうなってしまうのか……!」

『さらに状況が状況であるため、事態の収拾のため、反応兵器への使用も考えられる。』

「反応兵器?!だが、あそこには瑠璃と響君が!」

 

 反応兵器呼ばれるそれは、端的言えば核と同等の威力を誇る兵装。そんなものが撃ち込まれれば、瑠璃と響はおろか、辺り一体が焦土と化す。

 

『無論、そんな暴挙を許すつもりはない。だが、世界規模の災害に発展しかねない異常事態に、米国政府の鼻息は荒い。』

 

 あの時、ディバインウェポンによって撃ち落とされた軍事衛星が、米国だけでなく、全世界を恐怖に陥れてしまったのだ。

 

『引き続き、事態の収拾に尽力してほしい。それがこちらの交渉カードになりうるのだ。』

「分かった。すまない兄貴……。」

 

 通信が終わった。こうなれば最悪の結末だけは避けなければならない。そこにエルフナインが報告する。

 

「あの蛹状の物体内部に響さんの生体反応を確認しています。絶対の破壊者と化した瑠璃さんは、神殺しの力を持つガングニールを封じ込める為に、響さんに神の力を分け与えたのだと思います。ですが、神殺しの力が神の力の融合を食い止めていると思われます……ただそれもいつまで持つか……。」

 

 神殺しが天敵であれば、それを封じ込めてしまえばいい。まさかこの形で切り札を封じ込めてしまうとは思わなかったのだろうが、それでもまだ希望は残されている。

 ブリッジに入って来たのは、装者ではない。外部協力者、小日向未来だ。響の身を案じる未来が声を荒げて弦十郎に聞く。

 

「響があの中にいるんですね?!響は無事なんですか?!」

「もちろんだ。その為に君を呼んでいる。マリア君達に繋いでくれ。」 

 

 モニターには現場から少し離れた車両に乗っているマリアと切歌と調が映っている。

 

「どうやったら響と瑠璃さんを……助けられるんですか?」

「これを使います。」

 

 代わりにエルフナインが答える。その手にはガンタイプの注射器。その瓶の中にある赤い液体。F.I.S.だった3人はその薬に見覚えがある。

 

『LiNKER……?違う……あれは……』

『Anti LiNKERデス!』

「LiNKERとAnti LiNKERは表裏一体。LiNKERを完成させた今、LiNKERもまた生成可能です。」 

『でも、適合係数を低下させるAnti LiNKERを使って、どうやって……?』

 

 効果は知っていても、瑠璃と響相手に何故それを使うのか、マリアはエルフナインに問う。

 

「ヨナルデパズトーリとディバインウェポン。どちらも依り代にエネルギーを纏って固着させたもの。まるで、シンフォギアと同じメカニズムだと思いませんか?」

 

 エルフナインの意図を、皆はすぐに理解した。

 

「響君を取り込んだエネルギーと、ギアを形成する聖遺物のエネルギーの性質が近いものだとするならば……」

「Anti LiNKERでぽんぽんすーにひん剥けるかもしれないんだな?!」

「はい。ですが瑠璃さんの場合、それだけでは終わらない可能性があります。」

「どういう事だ?」

 

 弦十郎がその訳を問う。

 

「今の瑠璃さんは、今までのとは別人。もし過去のトラウマから己を守る為に作り出した別人格であれば、例えファウストローブを解除出来たとしても、元の人格に戻さなければ意味がありません。恐らく、その鍵となるのがクリスさんと、輪さんになります。」

「あたしらが……姉ちゃんを元に戻すための……。」

 

 これはあくまで仮定の話。正しいかどうかは証明しようがない。だが試す価値はある。もし事が上手く運べば、瑠璃が帰ってくるかもしれない。

 その為に、エルフナインは6つのギアのペンダントを出した。翼がそれに反応する。

 

「コンバーターユニット!それでは……!」

「反動汚染の除去は完了。いつでも作戦に投入可能です。念の為、バイデントのギアも愚者の石による対消滅バリアコーティング搭載してありますが……これはクリスさんが持っていてください。」

 

 エルフナインから渡されたバイデントのギアペンダントを、クリスが受け取る。

 だが不可解な事がある。何故ここに未来が呼ばれたのかだ。未来は装者ではないし、輪のようにファウストローブを持っていない。当の本人も呼ばれた理由が分かっていない。どうすれば良いのか分からず、弦十郎に聞く。

 

「あの!私にも出来る事があれば……!」

「君はこの作戦の、エースインザホール。切り札だ!」

「私が?!」 

 

 切り札が自分である事に驚く未来。どうしてそうなるのかは分からないが、エルフナインも未来の前に立って険しい顔になる。

 

「危険を承知でお願いします。」

 

 エルフナインがペコリと頭を下げた。

 

「分かりました!」

 

 未来は強い返事で答えた。

 

「そして、もう一人……。」

 

 弦十郎がモニターに目をやると、そこに映るのは落ち込んでいる輪の隣に座っているサンジェルマンだった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 あれから輪は立ち直れずセーフティルームに籠もっていた。まさか瑠璃が自分に刃を向け、戦う事になるなんて思いもしなかった。もう優しい瑠璃が何処にもいない。その現実が輪を苦しめていた。

 そこにドアがノックされた。

 

「入るわよ。」

 

 声と共に扉が開くと、サンジェルマンが中に入って来た。

 

「サンジェルマンさん……。」

「隣座るわよ。」

 

 そう言うと輪が座るベッドに、隣り合うように座る。

 

「大丈夫か?」

「まあ……少し落ち着いた……かな。」

 

 ほんの少ししか関わりがないサンジェルマンでも輪が見せているのが作り笑顔である事分かる。彼女が何故ラピスのファウストローブを纏えたのか、アルベルトを失った今、知る術はもうない。

 アダムとの戦いで見せた反逆の闘志、あれは過去に踏みにじられ、そうならないよう己を磨き上げたものであると感じた。だが今の輪にはそれが感じられない。絶対の破壊者となった瑠璃たった一人によって、輪は戦意を挫かれてしまったのだ。現に輪は俯いてばかりで何も話そうとしない。それを見兼ねたサンジェルマンは

 

「いつまで立ち止まっているのか?」

 

 いつまでも俯いている輪に、我慢がならないサンジェルマンが厳しい言葉で叱責する。

 

「あの時、お前は支配に屈する事なく、アダム・ヴァイスハウプトに立ち向かった。だが今のお前は……あの時の雄姿は、一体何処へ行ってしまったのか……」 

「何が言いたいの……?」

 

 輪がサンジェルマンを睨みつけている。ならばとサンジェルマンは答える。

 

「お前は友を助ける為に、友を傷つけるのが怖い。同時に傷付くのが怖い。そして、あの破壊者の冷たくも圧倒的な圧力。それに怖じた……だから戦えない。それは紛れもなく、逃げているだけだ。」

「違う!私は逃げてるわけじゃ……」

「では何故取り戻す為に正面から戦おうとしない?!その為にラピスを受け取っておきながら背を向ける?!」

 

 サンジェルマンに痛い所を突かれ、輪は必死になって反論しようとしたが、ぐうの音も出ないくらいに言い負かされた。認めたくなかった事実を突きつけられた輪は、再びベッドに座り込む。

 

「あんたの言う通りだよ……私……瑠璃を傷つけるのも怖いし……あの時の瑠璃……普通じゃなかった……。」

 

 瑠璃の目、あれは人を慈しむ目ではない。蹂躙する者の目だ。瑠璃らしからぬ冷徹で残忍な言動。皆が知る瑠璃とは正反対だ。

 

「これは……私の憶測だが……。あの凄まじい圧迫感と迫力……あれは人のものではない。」

「え……?」 

「錬金術師でも、あのような邪悪な力を纏った者はいない。あれは……カストディアン……中でも上位。あれは……アヌンナキだ。」

「アヌンナキ……?」

 

 聞き慣れないワードに輪は聞く。

 

「お前達の言う所の……神だ。」

「神……?!」

 

 それは瑠璃が神であると言っているようなものだ。そんな荒唐無稽で出鱈目な憶測があってたまるかと、輪はサンジェルマンの憶測を否定する。

 

「あり得ない!瑠璃が神様になるなんて……」

 

 だが輪は否定しきれなかった。確かにあれは、瑠璃とはかけ離れた残忍な言動。瑠璃ではない別人、ということに引っ掛かるのも事実。

 

「もしかして瑠璃は操られて……だとしたらアイツ!」

「アルベルトか?アルベルトはあの子にそのような小細工はしない。」

「え?」

「それとは正反対……彼女には献身的だった。」

 

 輪の推論は、サンジェルマンのアルベルト擁護であっさり否定された。確かにアルベルトはサンジェルマンを裏切った。しかし、彼女はアダムが危険である事を知った末の行動であると分かった今、アルベルトを否定する事はない。

 

 だが輪にとっては、親友を攫った張本人。そしてその親友があんな冷酷な別人へとなってしまった。簡単には許せない。

 

「別人……。まさか……」

 

 一つの可能性が閃いた途端、ノックによりそれは後回しとなった。

 

「輪君、入っても良いか?」

「あ……はい……。」

 

 応答すると、弦十郎、クリス、翼、エルフナインが入って来た。サンジェルマンが先に口を開く。

 

「情報は役に立ったかしら?」

「はい。賢者の石に関する技術無くして、この短期間に汚染の除去は出来ませんでした!ありがとうございます!」 

 

 エルフナインが礼を言う。サンジェルマンが提供したラピス・フィロソフィカスの技術のお陰で、あれだけ手こずった反動汚染の除去が短期間で終わってしまったのだ。

 

「それで、我々への協力についてだが……」

「それでも、手は取り合えない……。」

 

 弦十郎からの共闘の申し入れを断る。そこにブリッジから連絡が入る。

 

『司令、鎌倉から直接……』

 

 そこに割り込むように、セーフティルームのモニターに訃堂が映る。

 

『護国災害派遣法を適用した。』

「なぁっ?!」

「護国ぅ?」

 

 弦十郎と翼が護国災害派遣法を適応された事に驚愕する中、それが何なのか知らないクリスが問う。

 

 護国災害派遣法。ノイズや異端技術による超常現象が発生した場合、自衛隊の派遣など武力を用いて鎮圧させる法律。それを成立、施行させたのは風鳴訃堂、本人である。

 

「まさか、瑠璃と立花を、第二種特異災害へと認定したのですか?!」

「はあぁっ?!」

「じゃあ瑠璃は!」

 

 翼の問いで、クリスと輪は護国災害派遣法がどういうものか、薄々であるが勘付いている。

 

『聖遺物起因の災害に対し、無制限に火器を投入可能だ。対象を速やかに、殺傷分せよ!』 

「ふざけんな耄碌ジジイ!!姉ちゃんは被害者だぞ!!」

「あんた瑠璃のお祖父さんなんでしょう?!孫が危険に晒されてるっていうのに……」

『夷狄の娘など、孫ではないわ!』

 

 訃堂は実の息子と孫にすら愛情を注ぐ事はない冷酷非道な護国の鬼。そんな人間が養女を迎え入れるわけがない。クリスと輪の憤怒すら介さない。

 

『国連介入を許すつもりか?!その行使は反応兵器!国が燃えるぞ!』

 

 だが訃堂の言う通り、手をこまねいていれば国連決議のもと、反応兵器を使われかねない。しかし、訃堂の命令を素直に聞き入れれば、待っているのは瑠璃と響の犠牲という最悪な結末である。だがどちらもそれを望まない未来が前に出る。

  

「待ってください!響と瑠璃さんは特異災害なんかじゃありません!私の先輩と……友達です!」

 

 そして翼も並び立つ。

 

「国を守るのが風鳴ならば、鬼子の私は妹を、友を、人を防人ます!」 

『翼ぁ!その身に流るる血を知らぬか?!』

「知るものか!!私に流れているのは……天羽奏という、一人の少女の生き様だけだ!!」

 

 翼が訃堂の圧力に屈する事なく言い切った。だがそこに友里から報告が入る。

 

『司令!瑠璃ちゃんと響ちゃんの周辺に、攻撃部隊の展開を確認!』

『作戦開始は二時間後……我が選択した正義は覆さん。』 

 

 訃堂が通信を切った。訃堂は弦十郎達がどう選択しようとも、初めからそうするつもりだったのだ。

 サンジェルマンが訃堂がうつっていたモニターに向かって呟いた。

 

「あれもまた、支配を強いる者……。どうした……?」

 

 ワナワナと震える輪を見るサンジェルマン。それは怒りに満ち溢れている。

 

「あのクソジジイ!こうなったらどんな手を使っても瑠璃と響を助けるよ!クリス!」

「当たり前だ!」

 

 訃堂に対する反逆心で、再び輪に戦意が戻った。サンジェルマンはそんな輪を不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 




XD風セリフ集

夏編

瑠璃1
今年も暑くなってきたね。けど、しっかり食べないと夏バテしちゃうからね?

瑠璃2
輪が水着を選んでくれたんだけど……これ人前で着るの恥ずかしいよぉ!

輪1
暑い……溶ける……瑠璃ぃ……助けてぇ……

輪2
夏になると、毎年小夜姉主催の肝試し大会をするんだ〜。さあて、クリスを誘うか。
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