戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

142 / 190
ストーリー上、最後の番外編となります。


番外編:最後の序章

 パヴァリア光明結社との戦いを終えたS.O.N.G.の面々。装者はもちろん、戦いをサポートするオペレーター陣、司令、エージェント達にとても激しい戦いだった。だが本部の中ではエルフナインだけはまだ作業を続けていた。それはある疑問を持った所から始まった。

 

(どうして瑠璃さんは、あの時神の力を……)

 

 切っ掛けはある電子資料からだった。そこには響と未来が神獣鏡の魔を討ち祓う波動を浴びた事について記されている。神獣鏡は単に聖遺物を殺す為のものではなく、あらゆる呪いや罪を浄化させる特性を持っていた。それにより生まれ持って原罪を背負う人間には扱えない神の力を、神獣鏡の波動を受けた響は神の力を取り込む事が出来たのだ。

 では瑠璃は?瑠璃は神獣鏡の波動など浴びていない。アダムのようにアヌンナキによって作られた人形ではない。結局どんなに調べても答えは出てこなかった。

 代わりにバイデントのデータを遡っていた。バイデントのシンフォギアは元々ギリシャから持ち出された聖遺物。それがアーネンエルベにて呪われたギアとして元の変質を歪められてしまっていた。では元の変質とは何か?アーネンエルベを通じてギリシャ政府に問い合わせたのだがその結果は

 

「めぼしい情報は不明……か……。」

 

 報告を聞いた弦十郎が腕を組んで唸る。

 

「元々、ハ・デスが用いた槍以外の伝承は殆ど残っていません。恐らく呪われたギアと化してしまったのも、それが原因だと思います。」

 

 残った唯一の手掛かりといえば、バイデントのギアを発案者である瑠無・ミラーことアルベルト。彼女は結社の幹部の中では唯一の生き残りであるが、結社が瓦解して以降の消息は掴めていない。潜り込んだとされるアーネンエルベの方も同じようなものであり、国際指名手配を敷くもその尻尾すら見せない。

 結局、これらのケースは一旦保留となり当面の問題、アダムが遺したアヌンナキの降臨について当たる事になった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 パヴァリア光明結社の幹部の中で唯一の生き残りであるアルベルト。表向きではそうなっているが、裏でアーネンエルベに寝返り、神の力の奪取を目論んだ。しかし神の力はアルベルトだけの狙いであり、アーネンエルベはその事を知らない。結果的には失敗したものの、アダムが占有する事態は阻止出来ただけ良しとした。

 しかし、悠長に待つ事は出来ない。アダムの言った通り、アヌンナキの降臨は近いとアルベルトも同じ予感をしている。

 その彼女は今、武家屋敷を思わせる建物の中で静かに正座である人物と対面している。

 

「初めまして、鎌倉殿。」

 

 鎌倉と呼ばれた老人。齢100を超えた今でも、表舞台から恐れられている者。風鳴訃堂を置いて他にいない。長い時を生きてきたアルベルトですらも、目の前の巨大で強靭な気迫に、戦慄を隠すのがやっとである。

 

(この男……凄まじい……。)

 

 しかし、それでもアルベルトは余裕の態度を崩してはいない。冷静に目の前の怪物を見据える。

 

「この度は、このような謁見の機会を与えていただき……」

「つまらぬ世辞などいらん……。」

 

 訃堂にとって、アルベルトの存在、目論見など蚊トンボみたいなものだろう。利用価値がなければこうして拝謁を許してはいない。その利用価値がアルベルトが渡したデータ。

 

「神獣鏡とそのシンフォギアデータ。用があるのはそれだけ……ですかな?」

 

 拝謁前に渡したデータ、そこには神獣鏡のシンフォギアデータが入っていた。そしてそれを元にファウストローブを作る事を条件に訃堂と盟を結んだ。但し、所詮は利害が一致しただけの盟。どちらかが利用価値無しと判断すれば、破棄など容易い。それは互いに承知している。

 

「では、私はこれにて……。ファウストローブが出来次第、また……」

「たわけが……。」

 

 一礼して立ち去ろう襖に手を掛けた所を訃堂の一声で止められた。

 

「貴様の役目、それだけには留まらぬだろう。」

「というと……?」

 

 訃堂の方を向くアルベルト。訃堂がいい出そうとしている事には予想がついている。だがアルベルトにしては、それを認めたくない。

 

「夷狄の娘。」

 

 訃堂は瑠璃を身内として認めない。その証拠に彼女を名前で呼ばない。血筋を重んじる彼にとって、風鳴の血を一切持たない瑠璃など道具以下としか見ていない。アルベルトは瑠璃を蔑む彼に笑みを捨てて睨みつける。

 

「以前に3人の残党を差し出したはず。彼女達を使ってやればいい事。私には関係ありません。」

 

 少し前にアルベルトは結社の残党である3人の実験体を拾い、訃堂に遣わせた。それから彼女達は訃堂の手下として暗躍している。

 しかし、アルベルトはこれ以上瑠璃に危害を加えるつもりはない。故に拒んだ。手に掛けた襖を開いて訃堂の前から去った。

 

「儚きかな……。」

 

 一人になった訃堂はアルベルトに吐き捨てるように呟いた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 昔々……と言えば良いのだろうか。遥か昔、この星を創りし者達、カストディアン。その上位の存在であるアヌンナキの中に、二人の姉妹がいた。その姉は死を司る者。冥府を守護する者として生態系を守り、自然の理に従って死に、冥府に来たる死人達の裁きを下していた。だがそこは光が一筋も当たらぬ闇の領域。女神は光を求め、反旗を翻す為に、死人達を絶対的な破壊の力で従えていた。

 

 ある時、女神は一人の死者に目を向けた。その子供まだ地上で悲惨な事故で死を遂げた哀れな人間だった。女神の意向により、新たな肉体を与えられ、冥府の神官として彼女に仕えた。最初は失敗ばかりで、何をやっても空回りしていた。だが彼はひたむきに女神に尽くした。次第に、女神は彼に恋をした。彼もまた、女神が愛おしくてたまらなかった。自分が企てた目論見を忘れてしまう程に。

 二人は永遠の愛を誓った。愛という絆で結ばれた二人は、この先に待ち受ける障害を超えられる……

 

 はずだった……

 

 

 ■■■■■様!■■■■■様!

 

 

 ■■■……

 

 

 ■■■■■様!どうしても……行かれるのですか……?

 

 ええ……それがアヌンナキである私の……我の役目。

 

 ■■■■■様……

 

 どれ程の時が経とうとも、どんなに離れようとも、私は……あなたを愛しています。

 

 

 どうか……健やかで……。

 

 

 ■■■■■様……■■■■■様あああああああぁぁぁぁぁぁ!!

 

 これは……バラルの呪詛が起動する少し前のお話。

 

 

 ある女神はアヌンナキ達と共に戦い、激闘の果てに……女神は星を遺して散った。

 

 

 だが女神はいつの日か、いつの時代に流れた末に……未熟な形で覚醒を遂げてしまう……

 

 

 故に一度は反旗を翻した。だが、それでも歩みを止めることはない。費やしてきた時と、仲間と偽り、騙し、奪い見殺しにした命の数々。全ては己の悲願を果たす為。

 

 

「約束します……私の愛は……永遠にあなただけに……。あなただけを……愛し続けます……。」

 

 

 あの日に誓った約束。星々が煌めく夜空に手を伸ばした彼は……彼女は……錬金術師となった。

 

 

 

 

 

 

  




次回予告

遂に姿を現すカストディアン、アヌンナキ。

全てが想定外であり、規格外。

長かった悲しき魂の旅に、ようやく終着地へと辿り着く。

アルベルトの本当の悲願……それが果たされる日が来るか。

最終章 XV編 開幕



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。