戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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切り札

 棺の攻撃によって装者全員が氷漬けにされてしまい、昏睡状態に陥ってしまっている。無抵抗となった7人の所へと巨大な足音と共に棺が迫っている。その様子を遠目からこっそり見ている白いローブを着た2人の存在があった。

 

「これは……呆気なく、やられちゃったでありますか?」

 

 両手を望遠鏡のような形をして見ている桃色髪の少女、エルザ。そしてその隣にいるもう一人の青い髪に赤いメッシュと八重歯が特徴の少女、ミラアルク。寒いのかくしゃみをして鼻を擦っている。

 

「ウチらじゃまるでかないっこないデカブツが相手とはいえ、もうちょっと踏ん張ってもらいたいものだゼ。」 

 

 二人もどうやら棺に用があるようだが、勝てる見込みはないと判断して装者達と棺の戦いに静観を決め込んでいるようだ。

 

『ピンポンパンポン♪』

 

 そこにミラアルクに念話が送られてきた。声からして女性だ。その声の主はオープンカーに乗って運転している。

 

「どう?そっちは順調かしら?」

『棺の浮上を確認したところだぜ。』

『本当に局長は、あんなものの……棺の復活を阻止して、この星の支配者になろうとしたのでありますか?』

「今となっては分からないわね。少なくとも、私達の目的は局長とは違う。」

 

 すると、女はオープンカーをドリフトターンしながら停めて、そのドアに足を乗せる。

 

「こちらの狙いは、棺の破壊ではなく……その活用だもの。そう……これは、未来を奪還する戦い。だから、絶対に果たさなければならないわ。」 

 

 崖下の建物を見下ろす。彼女の名はヴァネッサである。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 装者達は未だに意識が覚醒しないまま氷漬けにされてしまっている。本部でも7人のバイタルの低下が確認されており、このままでは低体温症で死は免れない状態になってしまう。

 そこに弦十郎が手助けしようとブリッジを出ていこうとする。だがそれは緒川に呼び止められた事でその足を止める。

 

「司令!」

「案ずるな!ステテコ重ねた二枚履き、凍える前には片をつける!」

「そうではなく……」

 

 だがモニターから発せられる光が強くなった。その正体は観測基地から打ち上げられた照明弾。発射させたのは観測基地で働く非戦闘員の男だった。その反応ともう一人の生体反応が、バイデントのバイザーがキャッチ、その姦しい音によって瑠璃の意識が戻る。

 

「あ、あれは……!」  

『何やってんだ?!』

『女の子がこんな寒い所で、お腹を冷やしたら大変だろ?!』

 

 その男は響達のピンチを見て、助ける為に照明弾を打ち上げて棺の気を引こうとしたのだ。もう一発打ち上げると、男の狙い通り、棺は照明弾が打ち上げられた方に向いた。だが容赦なく光線が放たれ、基地の一部が損壊した。職員二人は必死になって逃げており、今の所は無事だ。

 だが職員の声が無線越しに聞こえた事で響も意識が戻った。

 

「皆が……いるんだ……!」

 

 すると響は諦めない不屈の闘志の如く、気合で氷の結晶を破った。

 

「そうだよ……みんなとの絆が……ある……!」

 

 すると、瑠璃が氷地に落ちた2つの槍を遠隔操作で操って、氷の結晶を破壊。自由の身となった瑠璃の手に槍が戻ると、二本の槍を連結させて二叉槍へと変化させると、そのエネルギーを穂先に一点集中。そのまま氷の結晶へ叩くように打ち込んだ。

 

【Raging Hydra】

 

 特大の一撃を受けた結晶にヒビが入り、粉々に砕け散った事で装者6人も拘束から解放される。装者7人が並び立つ。

 

「その通りだぜ姉ちゃん!」

「ああ。戦場に立つのは、立花だけではないぞ!」

『皆さん!ボクは……ボクの戦いを頑張ります!だから!』

 

 装者だけではない。エルフナインや弦十郎、S.O.N.G.の皆も共に戦ってくれている。

 

「みんなが背中を押してくれる!」

 

 響は拳を握って強く言い切った。棺の身体から再び生命体を展開。さらに先程の光線を放つタイプとは異なる、ジャベリンのように高速で回転しながら突撃を仕掛けて来る。

 響はそれらの襲撃を的確に捌いて、いなす。しかし、厚い氷層を貫き、湖に沈んだ個体が水面から姿を現す。

 翼は脚部のブレードをサーフボードのように操り、宙を舞うように攻撃を避けると、連結を解除させて自身を軸に高速回転。脚部のブレードによって空にいる群れを撃墜する。

 クリスは生命体の群れをリフレクターで防ぎながら、両手のアームドギアを巨大なボウガンに変えて、結晶の矢を4本放つ。空に打ち上げられた矢の結晶はバラバラに分離して、そのまま雨霰のごとく降り注いだ。

 

【GIGA ZEPPELIN】 

 

 瑠璃に襲い掛かる生命体の大群は、瑠璃の連結させた二叉槍を高速回転させる事で発生したエネルギーの竜巻に飲み込まれ、バラバラに切り裂かれていく。

 

 マリアの短剣の刃が蛇腹剣のように伸び、新体操のような動きで、絡めとった生命体の群れを切断する。

 

【SILVER†GOSPEL】

 

 逃げ遅れた女性の職員が生命体と鉢合わせとなり、攻撃を受けそうになるが、ヨーヨーで撃ち落としてそれを阻止する。さらにスケートのように滑走してツインテールのアームから放った巨大な鋸を2枚投擲。空の生命体の群れを蹴散らす。

 だが生命体が6体で1つの円形の隊列を組むように展開すると調に向けて光線を一斉掃射。とっさに鋸を4枚盾のように回転させるがその流れ弾が女性の背後で爆発する。その余波で吹き飛ばされるが響が受け止めた。

 生命体の群れの隊列がもう一度発射しようとするが、切歌が大鎌の刃を投擲した事で防いだ。

 

「大丈夫ですか?!」

 

 響が女性の安否確認をすると、生命体の群れがジャベリンのように襲い掛かってきた。さらにもう一方からは棺が光線を放とうとエネルギーを集約して放った。多方向からの防御はガングニールの性質上、最大の弱点となっている。このままでは片方の攻撃でやられてしまう。そこにエルフナインから通信が入る。

 

『砲撃来ます!ぶん殴ってください!!』

 

 エルフナインが通信をしながらコンソールを操作する。

 

「言ってる事!全然分かりません!!」

 

 指示を受けた響は脚部のアンカーで足を固定して光線を力いっぱいぶん殴った。するとぶん殴られた光線の軌道が分散され、その流れ弾が背後の生命体の群れに直撃した。これにより、両者からの攻撃を防ぐ事が出来た。

 

「拳の防御フィールドをアジャスト!」

「即席ですが、エルフナインちゃんが間に合わせてくれました!」

「解析からの再構築は、錬金術の原理原則!これがボクの戦い方です!」

 

 7人の全力の一斉攻撃で棺の立位バランスが崩され背後に転倒する。女性も無事に避難したが、棺の身体から棘が形成され、それを車輪のように高速回転させて、響に突っ込んできた。

 

「させない!」

 

 右腕のバンカーユニットのブーストを最大まで引き上げて、棺を殴った。突撃は何とか防いだが、棺の腕が振り下ろされ響が湖へと放り込まれた。そして棺もそのまま湖の中へと沈んだ。

 

「響ちゃん!!」

 

 響を助けるべく連結させた二叉槍の穂先にエネルギーを集約させながら、バイザーの反応を頼りに狙いを定める。バイザーには棺と響の姿を捉え、狙うべき箇所に、緑色のロックオンマーカーが表示された。

 

「うおぉりゃああああぁぁぁ!!」

 

 雄叫びとともに、二叉槍を湖へと突き出し、穂先から黒白のエネルギー波を放った。

 

【Shooting Comet :Dual Drive】

 

 エネルギー波は水中であってもその威力は衰えず、棺の腕に直撃、掴まっていた響が解き放たれる。そして、湖の底に足がつくと、両腕のガントレットを変形させて、バンカーユニットを高速回転させて巨大な2つの台風を放つ。2つの台風によって棺が空高く打ち上げられ、その巨大な体が曇り空に穴を開ける。そして、打ち上げられた湖の水が、雨のように降り注いだ。

 水中から脱する事が出来たとはいえ、ダメージは必至。瑠璃を始め、他の装者達も駆け寄る。

 

「響ちゃん!大丈夫?!」

「それより、あれを何とかしないと!」

 

 立ち上がった響が見た先は空に打ち上げられた棺。このままではその巨体が落下してしまう。

 

「狙うべきはのど元の破損個所、ギアの全エネルギーを一点収束!」

「決戦機能を動く標的に?!もし外したら……!」

「後がないデス!出来っこないデスよ!」

 

 新たな決戦機能の使用をマリアが提案する。全てのアーマーをエネルギーへと変えて、それを攻撃へと変換させる一撃必殺の決戦機能。しかし、それは全ての守りを捨てるという事を意味する。もし外せば敗北は免れない、まさに退路の無い選択である。

 調と切歌が危惧するが、クリスが払うように言う。

 

「狙いをつけるのはスナイパーの仕事だ、タイミングはアタシが取る!」

「いくぞ、皆!」 

「「「「「「「ギアブラスト!」」」」」」」

 

 インナースーツ以外の全てのアーマーをエネルギーへと変えて、それぞれの持ち主の元へと集う。だが棺の方も、察知したのか生命体の群れが棺の周囲に集まる。

 

「リフレクター気取りかよ!」

 

 クリスの左目にレンズが展開される。同時に棺の生命体の群れが光線を放つ。棺が地表に落ちるまでの距離は1200m。

 

 

「クリスちゃん!もうすぐ二人の誕生日!この戦いが終わったら……」

「そう言うのフラグはお前ひとりで建てろってんだよ……!」

「まだデスか?!まだデスか?!」

「このままだと、私達までぺしゃんこに……!」

「大丈夫だよ……!」

 

 切歌と調の心配を、瑠璃が和らげるように言う。

 

 

(焦るな……焦るな……!焦らせるな……!)

 

 遂にその時が訪れる。棺の破損箇所を捉えた。

 

「今だぁ!!」

「「「「「「「G3FA!へプタリボルバァァァァァーーーーー!!」」」」」」」 

 

 7人が拳を振り抜くと、7つの集約したエネルギーが放たれ、それが1つとなる。生命体の群れの間を潜り抜け、棺の破損箇所に直撃。周囲の生命体諸共爆ぜた。その爆発の衝撃で周囲の雲が払われ、南極は晴天となった。

 

 

 

 任務も成功を果たし、大破した事で活動を停止した棺。今は調査員達が棺を調べている。瑠璃達も、本部からその様子を静観している。

 すると、棺の僅かな隙間から蒸気が噴射され、その扉が開いた。そして、その中身を見て息を呑んだ。

 

「あれがカストディアン……。神と呼ばれた、アヌンナキの遺体。」

「つまりは聖骸、という訳ですね。」

 

 中にあったのは既に干からびているミイラ、そしてその右腕には傷一つすらない黄金の腕輪。それを見た瑠璃は一瞬、瞳の色が冷たい闇へと変わっていた。それに気が付いたのかは分からないが、クリスが瑠璃の方を見て心配する。

 

「おい姉ちゃん?」

「え?」

 

 クリスの声で、再びラピスラズリの瞳へと戻った。

 

「大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫だよ……。」

 

 クリスには平静を装っていたが、瑠璃はある違和感を覚えていた。あの腕輪は初めて見るもののはずなのに、初めて見たような感じではない。何か違和感を感じていた。

 

そしてもう一方、棺の中身が開かれた瞬間に、遠くからではあるがそれを静観している者がいた。

 

「遂に開かれた……。この瞬間から、再び始まるのか……。」

 

 いつもの余裕の笑みがない。それだけ真剣に見ている。パヴァリア光明結社元幹部の残党、アルベルトがそう呟いた。




早くもXV編で姿を現したアルベルト。この先どう立ち回るのか、装者達をどう翻弄するのか。
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