ちなみにスカイタワーでの戦いはカットとなります。
そしてまたしても瑠璃出番なし!(3話連続!)
クリスはルリを取り返す為に一人、フィーネの洋館へと向かっていたが、その中で見たものは……
「どうなってやがんだこれ……?!」
米国特殊部隊員が床に倒れ、その辺り一面が血の池地獄のような惨劇になっていた。
出血量からして、倒れている面々は全員死亡している事は容易に分かる。
「姉ちゃぁぁん!何処だああぁぁ?!」
クリスの呼び掛けが洋館中に日々聞くが、聞こえるのは呼び掛けで出来た言霊だけだった。
そこに弦十郎率いる黒服達が拳銃を持って現れる。
「ち、違う!あたしじゃ……」
「誰もお前さんがやったとは思っちゃいないさ。全ては君や、俺達の側にいた彼女の仕業だ。」
その証拠に黒服達はクリスに拳銃を向けず、この洋館の調査を始めている。
弦十郎もクリスを安心させるように頭を撫でてやる。
弦十郎は以前から信頼出来る者達と共に極秘に調査をしたが、その黒幕がすぐ側にいた事が判明した。
「風鳴司令!」
「どうした?」
「これが。」
手紙と言うには小さすぎるものだった。
そこには『I Love you SAYONARA』と書かれた。
それを一人の黒服の男が剥がそうとするが、弦十郎はそれが罠である事に気付く。
「いかん!それに触るな!!」
が、それも虚しく剥がした事が引金となり、洋館内に仕掛けられた爆弾が爆発する。
しかも爆発した事で天井が瓦礫となって落ち、そこにクリスがいた。
直撃は避けられない……
「はっ?」
その前に弦十郎がクリスを守る様に右腕一本で瓦礫を受け止めてしまった。
他の面々は負傷した者はいるだろうが、幸い死者はいなかった。
「どうなってんだよこいつは……。」
「衝撃は発勁で掻き消した。」
「そうじゃねぇよ?!放せよ!」
聞きたいのは瓦礫を防いだ方法ではなく、何故敵である自分を、しかもギアを纏ってすらない弦十郎がどうして自分を守っているのかだった。
弦十郎は瓦礫を降ろす。
「俺がお前を守るのはギアの有る無しじゃなくて、お前よか少しばかり大人だからだ。」
「大人?」
大人というクリスがこの世で一番嫌いな言葉を耳にし、胸中から途方もない嫌悪感が滲み出る。
「あたしは大人が嫌いだ!死んだパパもママも大嫌いだ!とんだ夢想家で臆病者!姉ちゃんだって、そんなくだらない夢を信じたせいで、良いように利用されてるじゃねえか!あたしはあいつらとは違う!戦地で難民救済?歌で世界を救う?良い大人が夢見てんじゃねえよ!本当に戦争を無くしたいのなら、戦う意思と力を持つ奴らを片っ端からぶっ潰せばいい!それが一番合理的で現実的だ!!」
弦十郎は黙って聞いていたが、クリスが言い終わると、口を開く。
「そいつがお前の流儀か。だが……」
すると弦十郎がクリスの頬を優しく叩いた。
「娘を侮辱する事は許さん……!」
叩かれた頬を手に当てると、クリスは弦十郎を睨みつける。
「やっぱり……姉ちゃんはもうそっち側なんだな……!パパもママも……あたしの事も忘れて……新しい家族と……。」
「違うな……。あの子はお前の言う、こっち側でも、あっち側でもない。あの子は雪音ルリでもあり、風鳴瑠璃でもある。例え記憶を失くしたとしても、君の大切な姉である事には変わりない。それに、お前言うやり方で、戦いは無くせたのか?」
痛い所を突かれ、黙りこくってしまう。
力を力でねじ伏せようと戦った結果、ルリは戦いに巻き込まれ、関係ない人間を恐怖に陥れる事しか出来なかった。
「いい大人は夢を見ない、と言ったな?そうじゃない、大人だからこそ夢を見るんだ。大人になったら背も伸びるし、力も強くなる、財布の中の小遣いだって、ちっとは増える。子供の頃はただ見るだけだった夢も、大人になったら叶えるチャンスが大きくなる。夢を見る意味が大きくなる。お前達の両親は、ただ夢を見に戦場に行ったのか?違うな、歌で世界を平和にするって叶える為、自ら望んで地獄に踏み込んだんじゃないのか?」
「何で……そんな事……」
クリスの疑問に、優しく答える。
「お前達に見せたかったんだろう。夢は叶えられるという揺るがない現実をな。」
その答えに、クリスはハッとする。
「お前は嫌いと吐き捨てたが、お前達の両親、そしてルリも、きっと大切に思ってたんだろうな。」
そう言うと弦十郎は歩み寄り、泣きじゃくるクリスを優しく抱きしめた。
「ごめん……っ。姉ちゃぁんっ……。」
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調査を終え、撤収する二課の車に乗る弦十郎だが、その前に泣き止んだクリスにこちらに来ないかと聞いた。
「やっぱり……あたしは……。」
「一緒には来られないか?」
その気持ちにはありがたみを感じていたが、どうしてもすぐに信用する事は出来なかった。
だが弦十郎はそんなクリスを受け入れた。
「お前はお前が思っている程、独りぼっちじゃない。お前が一人道を往くとしても、その道は遠からず、俺達と交わる。」
「今まで戦ってきた同士が?一緒になれるのか?世慣れた大人が、そんな綺麗事を言えるのかよ。」
そのひねくれ具合に、呆れる。
「ほんと、ひねてんなお前は。瑠璃はもっと素直だぞ?」
「姉ちゃんと一緒にするんじゃねえ!」
「ハッハッハッ!まあ良いさ。ほれ。」
弦十郎がクリスに通信機を手渡す。
「限度額内なら公共交通機関が利用出来るし、自販機で買い物も出来る代物だ。便利だぞ。」
車のエンジンを入れようとした時、クリスがある事を思い出した。
「カ・ディンギル……。フィーネが言ってたんだ、カ・ディンギルって。」
そう伝えると弦十郎はクリスの方を向く。
「それが何なのかは分からないけど、そいつはもう……完成しているみたいな事を……。」
「カ・ディンギル……。後手に回るのは終いだ。こちらから打って出てやる。」
そういうと、車を発車させる。
残ったクリスは自分に出来る事をなそうと動き出す。
車を走らせている弦十郎は通信を入れる。
『響です!』
『翼です。』
「二人とも聞こえているな?敵の目的について収穫があった……ん?了子君にはまだ繋がらないのか?」
友里が応答する。
『はい。朝から連絡不通でして……。』
『連絡が取れないとは……心配ですね。以前の広木防衛大臣や、瑠璃の件もありますし……』
翼が心配するが、響は逆だった。
『了子さんならきっと大丈夫です!何が来たって、私を守ってくれた時のように、ドカーン!っとやってくれます!』
これに翼が疑問を呈する。
『いや、戦闘訓練を碌に受講していない櫻井女史にそのようなことは……。』
以前デュランダル輸送作戦の時、了子はノイズからの攻撃をバリアのようなもので響を守った事がある。
それを守られる側として間近に見ていた響は驚きを隠せなかった。
『え?!師匠とか了子さんって、人間離れした特技とか持ってるんじゃないんですか?!』
それが普通みたいな言い方だが、そんな事が出来ること事態おかしい、むしろ普通の人間だったら出来無い。
『や〜っと繋がった!ごめんね〜寝坊しちゃったんだけど、通信機の調子が良くなくて〜。』
人が心配していたというのに、いざ応答すると緊張感も欠片もない。
「無事か。了子君、そっちに何も問題は?」
『寝坊してゴミを出せなかったけど……何かあったの?』
「ならいい、それより聞きたいことがある。」
了子にカ・ディンギルについて何か知っている事はないか聞いてみる。
『カ・ディンギルとは、古代シュメールの言葉で、『高みの存在』、転じて『天を仰ぐほどの塔』を意味してるわね。』
真面目なトーンで説明する。
「何者かが、そんな塔を建造していたとして……何故俺達は見過ごしてきたのだ?」
全員思考するが、答えは出なかったが、弦十郎が口を開く。
「だがようやく掴んだ敵の尻尾。このまま情報を集めれば、勝利も同然!相手の隙にこちらの全力を叩き込むんだ!最終決戦、仕掛けるからにはし損じるな!」
『『了解です!』』
「ちょっと野暮用を済ませてから、私も急いでそっちに向かうわ〜。」
ここで通信を切る。
(ようやくだ……瑠璃……お前を何としてでも救い出してやるからな!)
主人公不在が長引くってどうなんだろう……
感想お待ちしております。