他の方の小説を読んでいるといかに自分が文章力ないのを思い知らされる……
もっと精進せねば!
形勢は圧倒的に優位、勝利まで、分かり合えるまであともう一足、そう思われた矢先に本部が日本政府からの特殊部隊によって制圧されるという予想外の事態に発展してしまった。本部から作戦中止命令が出された以上、従わざるを得ない。それが組織であるが故の宿命だ。
「預けるであります。シンフォギア!」
「離脱するぜ、ヴァネッサ!」
唯一飛行能力を持たないエルザをヴァネッサが小脇に抱え、ミラアルクは両翼を使って離脱した。
「ヴァネッサさん……。」
もう少しで分かり合える。その可能性が失われてしまった。
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ギアを解除して、本部に帰投した装者達だったが本当に本部が日本政府によって制圧されているという事態に直面し、
「まさか……本当に……。」
「本部が制圧されるなんて……。」
「制圧とは不躾な。言葉を知らぬのか?」
いかにも悪人面の査察官がS.O.N.G.を見下すような物言いで嗤っている。だが日本政府が国連所属の組織相手にここまでやるのか、その理由を弦十郎が言う。
「護国災害派遣法第六条。日本政府は、日本国内における、あらゆる特異災害に対して優先的に介入することが出来る、だったな。」
「そうだ。我々が日本政府の代表としてS.O.N.G.に査察を申し込んでいる。威力による制圧と同じに扱ってもらっては困る。世論がザワっとするから本当に困る!」
そもそも護国災害派遣法はかの風鳴訃堂の後押しによって成立した法案。だが後押ししたのがあの訃堂だ。野党から大反対を受けており、国民からも反発を買っている。かなり強引なやり方で成立させた事が予想出来る。現にこうして無抵抗な人間に対して機関銃を突きつけていた。先程怖い目に遭った時の恨みと言うべきか藤尭がボソッと陰口を叩く。
「どう見ても同じなんだけど……。」
「あの手合いを刺激しないの……!」
友里が小声でツッコむ。
「国連直轄の特殊部隊が、野放図に威力行使できるのはあらかじめその詳細を開示し、日本政府に認可されている部分が大きい!違うかな?」
査察官のこの言い分、弦十郎は重々承知の上である。だがこうして横槍を入れられないよう入念に、詳細に報告しているにも関わらず、この現状に納得がいかない弦十郎は反論する。
「違わないでかぁ!故に我々は、前年に正式の手続きの元……」
「先程見せてもらった武装……」
査察官が待ってましたと言わんばかりに弦十郎の反論を遮った。
「開示資料にて見かけた覚えがないのだが、さて?」
査察官が指摘した武装、思い当たる節は一つしかない。エルフナインが驚愕しながらそれを言う。
「まさか、アマルガムを口実に?!」
「この口振り、最初から難癖つけるつもりだろ?!」
藤尭もこのやり方には納得が行かないようだが、弦十郎は唯一痛い所を突かれ、ぐうの音も出ない。アマルガムは先程顕現した新たな決戦機能。故に前年の開示資料には存在しない。それが護国災害派遣法に突け入る隙を与えてしまったのだ。
「風鳴司令……。ここは政府からの要求を受け入れるべきかと。」
「そうデスと……え?ええぇー?!」
「切ちゃん……今難しい話をしているから……。」
翼がまさか反論せずに迎合した事にビックリする切歌。S.O.N.G.が査察を受け入れるしかないこの状況、査察官は愉悦に浸っている。
「後ろ暗さを抱えてなければ、素直に査察を受け入れてもらいましょうか?」
悔しさを滲ませる弦十郎。だが選択の余地はない。
「いいだろう……。だが条件がある。装者の自由と、ギアコンバータの携行許可。今は戦時故、不測の事態への備えくらいはさせてもらう!」
「折り合いの付け所か……。但し!あの不明武装については、認可が下りるまで使用禁止とさせてもらおう!」
「勝手にしろ!」
「では、勝手を開始する。」
何とか出来る限りの交渉成立させたが、それでもアマルガムといつ戦力が封じられるのは痛手だ。そして、アマルガムを不明武装と言及され、気を落とす者が一人。響だ。
「あれは不明武装なんかじゃない……!拳を開く勇気なのに……!」
どれだけ響が訴えようとも、日本政府が、権力が、法案がそれを許すはずがない。ただ悔しさを吐露する事しか出来ない。
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危機的状況から脱したノーブルレッド。アルベルトに案内されて新たなアジトに入ったのだが、その場所に驚いている。
「ここが、君達の新たなアジトだ。」
「灯台下暗しなのであります……。」
「まさかここをあてがわれるとは、思ってもみなかったぜ。」
ノーブルレッドが驚く中、訃堂が黒服の男二人を伴って姿を表した。
「護災法の適用以来、国内における特異災害の後処理は全て儂の管理下にある。裏を返せば、ここは誰も簡単に手を出せぬ聖域に他ならぬ。」
護災法を施行させた訃堂だからこそ出来る手腕。しかし、見方によっては神の力を手に入れる為にそれを悪用していると言ったも過言ではない。
「つまり、アジトとするにはうってつけという訳ですわね?」
「計画の最終段階に着手してもらおう。神の力を、防人が振るう一振りに仕立て上げるのだ。ここには、その為の環境を整えてある。」
ヴァネッサのセリフを無視して話を進める訃堂。アルベルトが持っていたアタッシュケースが開くと、中にはシェム・ハの腕輪が納められている。中身を確認させると、アタッシュケースを閉じ、それをエルザに渡す。
「設備稼働に必要なエネルギーも事前に説明してある通り。手筈はすでに進めておる。」
そして黒服が持っている別のアタッシュケース。それを開かせると、中身は冷却用の保冷剤とRhソイル式の全血清剤の輸血パック。数は6つ。これだけあれば回復にも余裕が出る。
「だが、儚きかな……。」
訃堂がその一つを手にとってそれを床に叩きつけて踏み潰したのだ。唯一の回復手段が目の前で踏み潰され、3人は驚愕、アルベルトは僅かに目を細めた。
「ろくに役目を熟せぬ者がいると聞く。お陰で儂の周辺で犬が嗅ぎまわるようになっているとも。」
「それは……くっ……!」
かつてヴァネッサはファウストローブの研究の一端を担う研究者だった。ある日、不慮の事故で瀕死の重傷を追い、研究していたファウストローブの技術を用いた機械の身体となる事で一命を取り留めた。だがサイボーグとなった彼女は、『完全なる命』を至上とする錬金思想に反する者として、位階剥奪された上に実験の検体として何度も苦痛と屈辱を与えられる日々を送る事になってしまった。
それでも耐え続けられたのは、同じ被験体として同じ苦痛を受けていたミラアルクとエルザがいたからだ。三人一緒なら怖くはなかった。
そしてアダムが死に、結社が瓦解した事で3人は結社から脱走する事が出来た。だが何処へ逃げても政府機関の者に終われ、さらにRhソイル式の全血清剤がなければ、生きられない。そこに現れたのが、幹部の中でたった一人の生き残り、アルベルト。彼女の手引きによって政府機関に追われる日々は終わったと思われたが、そのまま風鳴訃堂に私兵として引き渡されてしまう。だがこのまま命令に従うだけの犬では終わりたくない。3人は血液の提供と人間に戻るという条件を提示。訃堂はそれを受け入れた事で、訃堂の私兵となった。
訃堂が言っていた犬、それはS.O.N.G.を指しているだろう。結社の残党がここまで大立ち回りが出来るはずがない。裏で糸を引いている者、ないし黒幕がいる事はいずれ勘付かれる。証拠がなければ拘束される事はないが、それも時間の問題。
「怪物ならば、怪物なりに務めを果たしてもらうぞノーブルレッド!」
全血清剤が入っているアタッシュケースを渡し、ミラアルクが受け取った。
「計画は走り出したのだ……。最早、何人たりとも止めさせぬ。」
訃堂、ノーブルレッドの3人が、破損している壁の穴から外を見下ろす。新たなアジト、それはかつてキャロルが拠点としていたワールドデストラクター、チフォージュ・シャトー。今はその機能が失われた、まるで古城のようになっている。
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風鳴八紘の端末から、一本の電話が入った。それは固定電話からではなく、自身が所有するスマホに掛けられている。八紘は端末をタップして電話に出る。相手が誰なのか、そしてその人物から連絡が来ることは予想していたかのように。
「そろそろだと思ってはいたが、盗聴は大丈夫か?」
『御用牙時分から昵懇の情報屋回線を使わせてもらっている。もちろん、念の入れようは十重に二十重だ。』
相手は弦十郎だ。八紘と内密の連絡を取る際は公衆電話に専用のUSBを刺して特殊回線を使っている。他者に足を掴ませないだけでなく、エージェントを適切な距離で配置させている。尾行も盗聴の心配もない。それを聞いた八紘は安心して本題に入る。
「お前の読み通りだ。今回の一件、正式な手続きの査察ではあるが、担当職員の中に不明瞭な経歴の者が含まれているようだ。」
『そうか……。』
「そして巧妙に秘匿されてはいるが、『鎌倉』の思惑と思しき痕跡が見受けられるな。」
鎌倉。それはつまり自分達の父親である訃堂の思惑が絡んでいると言っても良い。今回のS.O.N.G.に入った査察は間違いなくS.O.N.G.の動きを封じ込める為のもの。それを鎌倉の思惑があるという事は、訃堂自身がS.O.N.G.がこれ以上動き回れると目障りであるという事だ。
「こちらも米国と例の交渉が佳境だった故、後手に回らざるをえなかったのだが……。」
「兄貴、結社残党のノーブルレッドを擁しているのは、やっぱり……」
『早まるな弦。』
結論を急ごうとする弦十郎を諌める。真相が明らかになっていない内に鎌倉に手を出せば、躱されるどころかこちらが痛手を追う事になる。八紘は政治の世界に身を置いているからこそ、その重要性を知っている。
「全てが詳らかとなるまでは疑うな。私とて信じたいのだ。風鳴訃堂は曲がりなりにもこの国の防人。何より私達の父親ではないか。」
『ああ……。だがしかし……。』
「私は人を信じている。最終的に信じ抜く覚悟だからこそ、如何なる手段の行使すらも厭わない。」
八紘が席から立ち上がり、力強く弦十郎に説く。
「八紘兄貴……。」
「だから私は、政治を自らの戦場としているのだ。今は関係悪化している米国とも協力体制を必ず実現してみせる。月遺跡共同調査の提案も、その膳立てにすぎん。尚も拗れるなら、我が国への反応兵器発射事実を切り札に国際社会からの孤立を恫喝させてもらうさ。」
「そいつは堪える。やっぱ凄えな八紘兄貴は。兄貴の中でも一番おっかない。」
そんなおっかない兄貴である八紘が味方であることが心底嬉しい。その顔に笑みが浮かんでいる。
「前線は託すぞ弦。計画が綻びを見せるのは、いつだって走り始めてからだ。この先にチラつく尻尾を逃さず掴めば、必ず真実は明らかになる。疑うのはそれからでも遅くない。」
「ああ……。」
通話を終え、受話器を下ろすと本体からUSBを抜く。
「婆ちゃん、ありがとね。」
「またいつでもおいで。」
専用USBを煙草屋のおばちゃんに返した。物腰の柔らかい彼女もまた、裏社会と通じる情報屋である。
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しばらくカーテンを閉め切り、朝日が差し込まなかった部屋に、ようやく朝日が差し込んだ。小夜を失い、悲しみに暮れた輪がカーテンを開けたのだ。
「眩しい……。」
その眩しさに目が眩んだ。長く泣いていたせいか目の周りが赤い。あの日、両親と妹の旭を失い、悲しみに暮れていた時と同じだったことを思い出していた。
「いつまでも泣いてばかりいたら……小夜姉も怒るよね……。」
部屋のドアを開けてリビングへと入ろうとドアノブに手を掛けたその時……
「いつまで寝とるん?はよ起きんかい!」
「小夜姉?!」
亡くなったはずの小夜の声が聞こえ、急いでドアを開けた。だがそこには小夜がいるはずもない。何故小夜の声が聞こえたのか分からない。仏壇に飾られた小夜の遺影を見つける。まさか本当にあの世から叱りに来たのか。そう思っていた矢先、インターホンが鳴る。
「誰だろう……。はーい。」
玄関のドアの前まで行き、応答すると……
「あたしだ、クリスだ。」
「クリス……?」
鍵を開けて、ドアを開けた。
「クリス……えっ……?」
クリス一人だけかと思っていた輪はビックリする。クリスの隣には瑠璃がいたからだ。
おまけ
小夜「いやぁ〜うちもとうとうこっち側に来てもうたわ。」
奏「けど案外こっち側から翼達を見るのも面白いぞ。」
セレナ「マリア姉さん達のあれこれが見れますからね。」
小夜「せやけどなぁ……輪はいつまで泣いとるんや。」
奏「そりゃあ家族失ったらそうなるよな。」
セレナ「あの方、自分以外のご家族を失って……とても可哀想です……。」
小夜姉「可哀想なんはうちや!うちがくたばってもうてから引きこもってばっかやねん!こらぁ輪!いつまで寝とるん!早く起きんかぁい!」
奏「ちょっと落ち着きなって!」
小夜姉「放せぇ!一発拳骨叩き込まなきゃ腹の虫が収まらへん!」
セレナ「そんな事をしても、死んだ私達ではあの人には届きませんって!」
輪「小夜姉?!」
3人「…………」
奏「本当に聞こえたのか……?」
セレナ「本当に聞こえたのでしょうか……?」