戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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今回オリジナル要素に瑠璃とクリスの戦闘シーンがあります。
そして、輪の方も……



憤怒

 起動詠唱を唄い、ギアを纏った瑠璃とクリス。空を浮遊するアルカ・ノイズが卵を生み落とすと、そこから小型が現れる。さらにもう一つ、二人の背後にも落として小型アルカ・ノイズを生み出す。前後の道を塞がれ、完全に囲まれてしまうが、それだけで動じる二人ではない。

 

「はあぁっ!」

 

 多方向から迫りくるアルカ・ノイズの解剖器官を、黒槍と白槍で腕ごと切断させて、その身体を貫いて赤い塵へと還してやる。さらに背後から襲い掛かるアルカ・ノイズの解剖器官を、振り返らずに黒槍で防ぐと、クリスが放った弾丸によってその個体は赤い塵、プリマ・マテリアを撒き散らして消滅する。

 クリスの方もリボルバー拳銃で自身の周りに迫るアルカ・ノイズを的確に撃ち抜く。弾倉が空になり、リロードした時、その隙を待っていたかのようにアルカ・ノイズが迫る。だが投擲された二本の槍がそれを阻止する。

 

「あとはあいつだけか!」

 

 残るは上空に浮遊する大型アルカ・ノイズ。これを倒さない限り、再び小型を生み出す。

 

「クリス!」

 

 そこに瑠璃がクリスの方へと走って来る。それを察したクリスは笑みを浮かべ……

 

「ああ!乗れ!」

 

 大型のミサイルを展開して発射と同時に瑠璃がそれに乗る。2つの槍を連結させて二叉槍へと可変させると、穂先をドリルのように高速回転させる。

 

 しかし、狙われていると知ればそれを阻むのは当然の反応。アルカ・ノイズが卵のような解剖器官を爆弾のように投下させる。

 それは瑠璃の読み通り。ミサイルを蹴って高く飛躍、ミサイルは撃ち落とされたが、跳躍した瑠璃は二叉槍を力いっぱい投擲する。

 

【Horn Of Unicorn】

 

 光の一閃の如く、槍はアルカ・ノイズへと向かい、その腹を貫いた。着地した瑠璃の手元に槍が戻ると、クリスがこちらに駆け寄る。

 

「姉ちゃん!」

「うん。」

 

 息のあった双子姉妹のコンビネーション。ユニゾンでなくとも、二人は互いにどう動くのかを見なくても分かる。二人の絆はアルカ・ノイズの大群相手でも断つ事は出来ない。

 こちらのアルカ・ノイズは片付いたが、翼達がどうなっているか分からない。さらにノーブルレッド、並びにアルベルトの姿を捉えていない。不審に思った瑠璃は本部に通信する。

 

「本部、こちらのアルカ・ノイズは全て撃破。ですが、アルカ・ノイズを召喚した敵の姿は……」

「現在、装者周辺にそのような反応はありません。SG-01.2並びにSG-02は本部に帰投されたし。」

『ですが、まだお姉ちゃん達の方にアルカ・ノイズが……!』

 

 瑠璃の言う通り、バイザーからはアルカ・ノイズの反応は残っている。数では翼と響二人でも殲滅させられるだろうが、今の翼の精神状態では何を起こすか分からない。翼を案じている瑠璃に、この命令に対して納得出来るわけもなく、迷わず槍に跨って遠隔操作を応用した飛行で真っ直ぐ翼達の方へと向かう。査察官代行は脅しとも言える警告をする。

 

「SG-01.2、こちらの指示に従わない場合、行動権を凍結し、拘束される事に……」

「査察は中止だ!令状もここにある!」

 

 そこに弦十郎、緒川、マリアがブリッジに入り、弦十郎が令状を見せつける。

 

「該当査察官、見当たりません!」

「鼻が利く……!」

 

 あのいかにも悪人面をしている査察官を探していたのだが、見つからなかった。だが査察中止となって、戦闘管制が友里と藤尭に代わった事で瑠璃は命令違反の咎を受けずに済んだ。 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 翼の様子がおかしい。響は翼の戦いようからそう感じ取った。アルカ・ノイズを斬り捨てる際、背後の車や建物までもを損壊させている。普段冷静で、斬るべきと斬らざるものを的確に判断出来る翼が、力任せに刀を振り下ろしている。

 

 しかし、それには訳があった。

 

「そこにいたか……貴様あああぁぁ!!」

 

 アルカ・ノイズの群れの中に、憎きミラアルクの姿があった。翼は刀を大剣へと可変させて蒼ノ一閃を放つ。しかし、ミラアルクが一刀両断されると、赤い霧を撒き散らして消滅している。

 今斬ったのはミラアルクではなく、アルカ・ノイズだ。しかし、今の翼には全てのアルカ・ノイズがミラアルクに見えている。故にその姿を全て斬り捨てようと大剣を振り下ろすと、アルカ・ノイズ諸共ビルを破壊してしまう。

 そんな事はお構いなしに、次の標的を空を飛行する大型アルカ・ノイズに変えた翼は、脚部のブレードのバーニアを点火させてビルの壁を走る。二本の刀を連結させて、双剣へと形を変えると、紅蓮の炎を纏いながら高速回転させる。ビルから跳躍し、飛行する大型アルカ・ノイズの身体を一刀両断。だがビルの屋上にいるミラアルクの姿を捉えた。脚部のバーニアを点火させながら、巨大化させた双剣に蒼炎を纏わせた。

 

「うおおおおぉぉぉっ!!」

 

 怒りとともに巨大双剣を投擲させた。

 

【炎乱逆鱗斬】

 

 双剣はミラアルクにそのまま襲い掛かる。

 

「お姉ちゃん!」

 

 ミラアルクが翼の事をそう呼んだ。ミラアルクが翼をそう呼ぶはずがない。不審に思った翼だったが、双剣はそのままビルごとミラアルクを破壊した。着地した翼は倒したミラアルクを確認する為に振り返ったが、その光景に唖然としてしまう。

 

「ぁ……そんな…………。」

 

 そこに倒れ伏していたのはバイデントのギアを纏っていた瑠璃だった。何故瑠璃が倒れているのか、答えは明白。やったのは翼だ。

 

「姉ちゃん!!」

 

 そこに遅れて到着したクリスが瑠璃に駆け寄る。意識を失った事で瑠璃の纏うギアは強制解除され、私服姿へと戻る。

 

「姉ちゃん!しっかりしろ姉ちゃん!先輩!何があったんだよ?!」

 

 クリスの問いに、翼は答えられなかった。言えるわけがない。自分が瑠璃の姿を敵と誤認した上に、殺意を持って瑠璃に刃を向けた事を。防人としてあってはならぬ過ちに、翼は崩れ落ち泣き叫んだ。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 一方、未来はエルフナインの手を引っ張り、走っていた。響から着信が入るがそれどころではなかった。その背後から本物のミラアルクが追って来ている。

 

「手間を掛けさせやがるぜ。」

 

 そう悪態をつきながら、拳で監視カメラを破壊した。

 

 ミラアルクに追われて二人は走るが、タイミングの悪い事に、エルフナインが躓いて転んでしまう。

 

「エルフナインちゃん!大丈夫?!」

「未来?!」

 

 そこに戦場から遠くへと走っていたはずの輪と出くわした。

 

「輪さん!」

「二人とも何を……っ!」

 

 そこに未来とエルフナインの背後にミラアルクが降り立った。

 

「エルフナインってのは、そっちのどんくさい方だろ?それでもちょこまかと逃げ回ってくれたもんだぜ!」

「何なのこいつ……まさか……!」

 

 人の形をしているが、どこか人とは違う何かをしているミラアルクの姿を見て、輪は直感で察した。こいつが小夜を殺した残党の一人なんだと。分かってはいるが、確認の為に問いただす。

 

「まさか……あんた達が……」

「あ?」

「あんた達が……病院で小夜姉を殺した結社の残党なんだよね?」

 

 病院で小夜を殺したと言われ、あの日確かに一人殺した事を思い出した。

 

「だったらどうするんだぜ?」

 

 悪びれもなくミラアルクが答えた。正確にはやったのはヴァネッサだが、家族思いのミラアルクはあえて汚れ役を買う。尤も、輪にはそんな事が通じないとは分かってはいる。

 これで再び、輪の中に抑えていた怒りと憎しみが再び増大した。輪はバッグを放り投げ、コートを脱ぎ捨てて動きやすくする。

 

「知れたこと……!」

 

 未来とエルフナインを守るようにミラアルクの前に立つ。その目は憎しみに満ちている。だがエルフナインはそんな危険な真似を輪にさせるわけにはいかないと、自分が標的なら巻き込ませまいと逃げるよう叫ぶ。

 

「駄目です輪さん!ファウストローブを持たない輪さんでは……」

「未来!エルフナインを連れて早く逃げな!」

 

 そんなエルフナインの叫びを聞く輪ではない。未来にエルフナインを連れて逃げるよう促すが、未来も輪を犠牲にしたくない思いから躊躇ってしまう。

 

「でも……」

「何してんの!早く……」 

「クックックッ……こうも簡単に本部の外に連れ出せるとはなぁ。」 

 

 そこにあの査察官が下卑た笑みを浮かべながら現れた。未来と輪はその男が何者なのか知らないが、エルフナインは査察官がここに現れたことに驚愕している。どうやら彼はノーブルレッドとグルだったようだ。

 

「確保を命じられたのは、エルフナインただ一人。さぁて、あんた達の扱いはウチ一人じゃ決めあぐねるぜ。」

「その前にアンタを殺す!」

 

 輪の目に映る標的はミラアルク一人であり、査察官など眼中にない。正直言って勝ち目などないことは分かりきっているが、それでも二人を守る為に、小夜の仇を取るために逃げるわけにはいかない。

 

『ピンポンパンポン♪ミラアルクちゃんに連絡です。』

「ヴァネッサ?」

 

 ミラアルクの脳内にヴァネッサからテレパシーが送られる。何か話していると察した輪は今のうちに逃げるよう促す。

 

「逃げて二人とも!今のうちに!」

「駄目です!輪さんも……」

「私の事は良いから早く!」

「いけません!輪さんも逃げてください!」

 

 しかしここで三者とも譲らない。互いに失いたくないという思いからであろうが、逃げる好機を失ってしまう。

 

「ああ、了解したぜ。悪く思わないで欲しいぜ……!」

 

 テレパシーによる通信を終えたミラアルクの一本の爪が鋭利に伸びる。

 

「やれるもんならやってみなよ!死ぬくらいならアンタも道連れにしてやるから!」

「輪さん!」

「輪さん逃げて!!」

 

 ミラアルクが仕掛ける前に輪が駆け出した。雄叫びとともに拳を振りかぶるが、ミラアルクの方が早かった。素早く振り下ろされた爪によって、血飛沫が噴水のように噴き上がった。

 

 

 




まさかの翼さん、フレンドリーファイアをやらかす……。
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